佐藤健志のレビュー一覧
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『フランス革命の省察』 エドマンド・バーク
「保守の父」と呼ばれるエドマンド・バークによる古典。フランス革命を礼賛する当時の風潮に対し、人間の理性の限界と、歴史や伝統の中で育まれた制度や慣習の重要性を説いている。
難解な内容だったが、現代の政治や社会の変化と重ね合わせながら読むことで、非常に多くの示唆を得ることができた。
バークは改革そのものを否定したのではなく、抽象的な理念だけで既存の秩序を急激に変えようとすることの危険性を指摘している。自由や権利もまた、先人から受け継ぎ、次の世代へ受け渡していくべき「相続財産」のようなものだという考え方が印象に残った。
保守主義とは単なる現状維持ではなく、人間の理性の限界を自覚しながら、伝統や歴史の中に蓄積された知恵を尊重し、必要な改革を漸進的に進める思想であることを理解できた。
理想と現実、改革と伝統のバランスについて深く考えさせられる一冊。現代の政治や社会問題を考える上でも色褪せない古典だと思う。
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エドマンド・バーク
(英: Edmund Burke、1729年1月12日 - 1797年7月9日)は、アイルランド王国生まれのイギリスの政治思想家、哲学者、政治家。「保守思想の父」として知られる。フランス革命の源泉となったルソー主義を激しく非難し、1765年から1794年までイギリス庶民院(下院)議員を務めた。
「私は革命というものが好きではない。しかるに革命が生じる兆しは、しばしば演壇の上から発せられてきた。変革を待望する発想は世間に広まりつつある。フランス人諸君は、伝統的な社会機構など、自分たちの都合や気分次第で全否定しても構わないと思っているようだが、イギリスでもいずれ同じ風潮が台頭するかもしれない。 だとすれば、わが国の法制度がどのような原則のうえに成り立っているか再確認しておく必要があろう。フランスの友よ、君もこれについて学んだほうがよい。イギリス人は長年の原則を捨て去るつもりなどないのだ。 サギ師同然の連中は、革命精神なるものをフランスへとこっそり輸出したあと、もう一度イギリスに密輸入しなおすつもりのように見受けられる。ドーバー海峡のどちら側でも、われわれはかかるインチキ商品に取り合ってはならない。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「 イギリス人は、試着もせず流行のファッションに追随するようなことはしないし、試着してみて着心地の悪かったファッションをあらためて引っ張り出すこともない。世襲による王位の合法的継承は、わが国の欠点ではなく美点なのだ。 それは腹立ちのタネならぬ自慢のタネであり、隷従のしるしどころか自由を保障するものにほかならない。われわれは自国のあり方を、現状のままでたいへん素晴らしいと考える。そして王位が確実に継承されることは、国家全体が安定して続いてゆくことを象徴的に示すものなのである。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「賢明な者は、事態の深刻さを検討して決断を下すだろう。短気な者は、圧政への反発に駆られて。気高い者は、王たる資格のない者が権力を濫用することへの怒りから。勇敢な者は、大義のために名誉ある戦いをすることを望んで。 何にせよ、思慮深く善良な者にとって、革命はほんとうに最後の手段なのだ。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「 近年のフランスがパッとしない面々によって治められてきたというのなら、彼らを飛び越し、より古い時代の英雄たちに手本を求めても良かったのだ。祖先を敬うことは、正しい自尊心を持つことに等しい。そうすれば「解放の年たる一七八九年まで、フランス人は時代の流れに取り残された、卑しい奴隷の集まりだった」などと見なすこともなかっただろう。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「私は「人間の権利」という概念を否定したいのではない。人々が自分たちの真の権利を行使するにあたって、邪魔立てする気も(そんな力が私にあるとしてだが)毛頭ない。人権主義者の振る舞いは、われわれの真の権利を完全に破壊するものにほかならず、彼らのデタラメを批判することと、権利を守ることは矛盾しないのだ。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「政治にたずさわる者は、人間の本質は何か、人間は何を欲するかについて、深い知識を持たねばならない。さらに政策を実現するうえで、何がプラスで何がマイナスかもわきまえねばならない。「人間は食べ物を得る権利がある」とか「人間は医療を受ける権利がある」とか、抽象的に論じて何になる! 重要なのは、食糧や医療を実際に提供することなのだ。ここでは哲学の教授連ではなく、農民や医師の手を借りたほうが良いのは明らかだろう。 国家を構築したり、そのシステムを刷新・改革したりする技術は、いわば実験科学であり、「理論上はうまくいくはずだから大丈夫」という類のものではない。現場の経験をちょっと積んだくらいでもダメである。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「 かかる政治手法は、きわめて好ましくない副作用をもたらす。非常事態においては、ときに非情な振る舞いも必要となるが、世の中をつねに非常事態と見なしたがる革命派は、人間を冷酷なものにしてしまうのだ。 こういった連中は、人権をめぐる理屈をこねるのに忙しくて、人間のあり方そのものを見失っている。新たな英知を切り開くつもりで、じつは心を閉ざしただけ。われわれの胸中に宿っているはずの優しさや共感は、すっかり歪められる結果となる。 陰謀、虐殺、暗殺も、それで革命が成就されるなら安いものにすぎない。犠牲や流血沙汰を回避して改革を実現するとか、死体の山を築かずに自由を獲得するのは生ぬるいようなのだ。革命派は物事をとことん変えないことには納得しない。芝居でいえば、舞台装置の大転換による派手なスペクタクルを観たくて仕方ないのである。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「プライス牧師(訳注 =イギリスにおける革命支持派。フランスを見習おうという趣旨の説教を行った。プロローグ〜第二章を参照)にとり、フランス革命はまさにそんなスペクタクルだった。説教のしめくくりで、彼は感極まってこう述べる。「いまは何と偉大な時代であることか! この革命を目の当たりにできて満足だ。『神よ、もう死んでも悔いはありません。あなたのもたらす救いをしかと見届けました』──ほとんどこう言いたくなる。英知は世に広まり、迷信と錯誤をくつがえした。人権はかつてなく理解されるに至り、自由を忘れかけていたかに思えた国々は、それを取り戻すべく立ち上がっている。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「権力を持つ者、あるいはプライドの高い者は、とかく尊大に振る舞いやすい。これを自然にやわらげてくれるのが騎士道である。君主は人々に敬愛されるべく勝手な真似を慎み、頑迷な権威は優美なものに変わる。法律に頼らないかぎり物事が仕切れない社会より、誰もが礼節を知るがゆえに物事が丸く収まる社会のほうが望ましいのは明らかだろう。 ところが、すべては変わらねばならない。騎士道のもとでは、権力は穏健であり、人々は自由の精神を保ちつつ支配を受け入れた。かくして社会の各階層は調和し、政治にも気配りや思いやりが見られた。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「慣習が消滅するとき、社会秩序は根底より揺らがざるをえない。しかしその場合でも、権力は何らかの形で存在しつづける。そして慣習という支えが失われた以上、秩序を維持するには、もっと露骨な手段──暴力に訴えるほかなくなる。伝統的なシステムをひっくり返すべく、伝統的な慣習を破壊したことのツケは、こうやって回ってくるのである。 封建制を起源とする騎士道は、忠義の精神を社会にもたらした。忠義が重んじられるかぎり、反乱が生じる恐れはない。反乱の恐れがなければ、圧政を敷く必要もなく、王と国民の双方が安心していられる。だが忠義の精神が失われたら最後、王は陰謀や暗殺の恐怖にさいなまれたあげく、不穏分子の処刑や財産の没収といった、残酷で血なまぐさい手を使い出すだろう。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「こういった忌まわしくもおぞましい状態へと、フランスが突っ走っていないことを願う。国民議会や、革命指導者たちの動向を見ると、発想の貧困や、粗野で下卑た姿勢といった特徴がすでにうかがわれる。彼らの説く自由には寛大さがない。彼らの科学なるものは無知な思い上がりにすぎない。彼らの人間性は冷酷で粗暴である。 イギリスはつねに、フランスから多かれ少なかれ影響を受けてきた。そのフランスで、文化や慣習の水源が枯渇したり、汚染されたりするならば、イギリスでも同じことが生じかねない。いや、あらゆる国に余波が及ぶ恐れすらあろう。ゆえに私は、同国で起きている事態について、ヨーロッパ全体が深い関心を持たねばならないと考える。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「人間はいつでも善いことをするとはかぎらないものの、望ましい固定観念に支えられれば善行をする習慣が身につく。つまりは社会にたいする義務を、本能的に果たすようになるのである。 フランスのインテリや政治家たち、ついでにわが国の「啓蒙主義」一派は、こういうことがさっぱり理解できないらしい。彼らは他人の英知に敬意を払おうとせず、そのかわり自分の英知を絶対視する。古くから続いてきた制度は、ただ古いというだけで否定されてしまう。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「 政府の形態など、ファッションのごとくコロコロ変わって構わないことになる。憲法への愛着にしても、とりあえず都合が良ければ、という程度。それどころか彼らは、祖国すらほんとうには愛していない。自分たちが好きにいじり回せる間だけ、愛国心を抱いているような気になるだけの話。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「聞くところによると、フランス国内では、今回の革命はイギリスの事例を手本にしたなどという説が出回っているとか。断言させてもらうが、目下そちらで起きている騒動は、わが国の政治のあり方とは似ても似つかない。革命派の唱える理念にしても、大多数のイギリス人の考え方とはおよそ異なる代物にすぎない。 ついでに言えば、われわれはフランス革命から何かを学ぶつもりも毛頭ない。事態のなりゆきに無関心でいられないのは事実だが、それは影響が及んだりしないよう、距離を取らねばならないと用心しているのだ。 かりにこの革命が、あらゆる社会問題を解決する万能薬だったとしても、われわれは真似したいとは思わない。必要のない薬を服用するのは、決して良い結果をもたらさないからである。ましてこの革命は、とんでもない疫病かもしれない。その場合は厳重な隔離措置によって、わが国への蔓延を阻止しなければなるまい。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「フランスの革命派は、宗教を迷信と片付けているようだ。しかし宗教こそは文明社会の基盤であり、あらゆる善と幸福の源である。これは観念論ではなく、われわれの実感にほかならない。 人間とは不合理なものなので、長い年月が過ぎるうち、宗教も少々サビついて迷信じみてくることはありうる。けれどもイギリス人は、宗教自体の必要性については揺るぎない確信を持っている。「迷信を一掃すべく、宗教そのものを否定せよ」などという主張には、一〇〇人のうち九九人までが反対するに違いない。システムに生じた腐敗や欠陥を正し、完璧なものにしようとこだわるあまり、システム全体をぶち壊してしまうのはバカげたことではないか。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「民衆の行動は、世論によって必ず支持される。世論とは民衆の意見なのだから、これは当然であろう。完璧な民主主義こそ、もっとも恥知らずな政治形態なのだ。そして恥知らずということは、とんでもないことを平然としでかすことを意味する。 やりすぎのせいで罰せられるのではないかと恐れる者はいない。いや、民衆はそんな不安を抱く必要がないのだ。刑罰とは本質的に、民衆全体を保護するための見せしめとしての性格を持つ。裏を返せば、民衆全体を罰することなど誰にもできない。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「だからこそ「民意はつねに正しい」という発想を許容してはならないのである。好き勝手に権力を行使してはいけない点では、君主も民衆も同じだ。しかも民衆の横暴は、君主の横暴と比べても、社会に大きなダメージを与える。 民主主義が機能するためには、民衆はエゴイズムを捨てねばならない。宗教の力なくして、これはまったく不可能と言える。国家は聖なるものであり、権力は神の御心に沿うべく行使されるとき、はじめて正当なものとなる──かかる認識が定着しないことには、粗野で無能な連中が政権の座についてしまうだろう。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「時代の風潮やら流行やらに流されて、国家のあり方をコロコロ変えてしまうなら、社会の本質である連続性が破壊される。世代間のつながりは失われ、われわれは夏の間だけブンブン飛んでいるハエ同然の代物となるに違いない。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「ところが世の中には、老いた親を八つ裂きにするかのごとく、祖国をズタズタにして平気な者たちも存在する(訳注 =第三章でバークは、革命派による共和制の導入により、フランス各地に自治体が乱立、国家としてのまとまりがなくなったと批判している)。こういう手合いは黒魔術を信奉しているらしい──バラバラになった親の死体、もとへ国家の残骸を、「改革」という名の大釜に放り込み、毒草を加えて呪文を唱えるだけで、すべてが元通りに復活すると思っているのだ。ゾッとする光景としか言いようがない。 既存の秩序の全否定を正当化しうるもの、それは「他にいかなる選択の余地もない」という絶対的な必要性のみである。革命とは「したいからする」ものではなく、「否応なしにせざるをえない」ものでなければならない。熟考とか、議論とか、客観的証拠といったレベルを超えて、誰もが革命の必要性を肌で実感するまで待つべきなのだ。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「知識人一派はかなり前から、キリスト教を否定するための大計画とも呼ぶべきものをつくり上げ、これにカルト的な情熱を注ぎ込んだ。まずは「誰であれ合理主義に改宗すべし」という信念に取り憑かれ、やがて「教会はあらゆる方法で攻撃すべし」という信念にも取り憑かれたのだ。 直接的な行動で教会をすぐ倒すのは無理でも、宗教を否定する方向へ世論を導くことはできる。そのためには世論にたいする影響力を掌握しなければならない。自分たちの仲間でなければインテリとして評価されないよう、知識人一派は周到に画策していった。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「代表者が増えることで、金持ちはメリットを得るどころか、ますます立場が弱くなってしまうのだ。富裕な地域ほど、金持ちへの逆差別は激しくなる。また地域ごとの格差をこんなふうに容認することが、国家全体のバランスや安定にどう寄与するのか、私には理解できない。 個人の場合と同じく、地域と地域の間でも、おのれの利害に固執したり、いがみ合ったり、嫉妬したりという事態が続発するだろう。それどころか地域レベルの対立は、個人レベルのものより深刻になりうる。下手をすれば、内乱一歩手前の状態に陥るのではあるまいか。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「「一七八九年七月(あの永遠に記念されるべき時)、市の財政はまだ健全だった。歳出と歳入は釣り合っており、銀行には一〇〇万リーブル(四万ポンド)の金が預けられていた。だが革命勃発いらい、市が負担しなければならなかった支出金額は二五〇万リーブルに上る。自主納税や献納にも大幅な落ち込みが生じた。パリは『一時的に金がない』状態にあるのではない、『まったく金がない』状態に置かれているのだ」 パリには過去一年間、財政を維持するために莫大な金がつぎ込まれた。フランス各地から吸い上げられた金である。にもかかわらず、結果はこんな具合。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
「 自由には道徳が不可欠なのだ。頭が空っぽのくせに「自由、自由」と叫びたがる連中は不愉快きわまりない。思い上がりもいい加減にしろと言いたくなる。 高らかに自由を謳うこと自体を否定しているのではない。そこには胸を熱くするものがある。われわれは大きな心で寛大に行動するようになるし、争いの場では勇気をかき立てられる。」
—『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき (PHP文庫)』エドマンド・バーク著
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Posted by ブクログ
英国人からフランス革命への強い批判がなされる本書は、保守主義のバイブルとも言われ、時代を超えて読み継がれてきた名著です。
改革とか変革なんていう言葉はいつの時代も持て囃されますが、急激な変化は副作用もとても大きい。
フランス革命といえば、高邁な理想を掲げ圧政を打ち破った民衆の戦い、という理解が一般的かもしれません。
しかしながら、その急進主義は社会に様々な混乱や弊害をもたらし、10年後にはナポレオンによるクーデターで終焉を迎えることとなります。
著者のバークは、革命の終焉を見届けることなく没するのですが、本書で述べられる革命への批判は非常にインパクトの強いものです。
現代社会にも当てはまる教訓が、そこかしこに散りばめられています。
この新訳版は、原著の全訳ではなく抄訳ではありますが、ダイナミックかつ読みやすい翻訳のおかげで、急進主義的な改革が内包する問題点がよく理解できました。
社会の問題はどうやって解決されるべきか、という点において、現代社会にも警鐘を鳴らす一冊だと思います。 -
Posted by ブクログ
新自由主義のようなリベラルな考え方が、実は同じような価値観を押し付ける帝国主義的な考え方ではないか?と言う視点は面白いと思いました。
とは言え、世界で盛り上がりを見せているナショナリズムが単純に正解と言うわけはなさそうですし、それぞれの国の文化や習慣と言った内的なものと、地政学など外的なものを、その国にとってベストな政策を選んでいく必要があると理解しました。
個人レベルの話としては、グローバル化により株価は上がっても、実際に多くの国民は苦しんでおり、一人一人は弱い国民が団結して中間団体を形成し、資本家や国に立ち向かうと言う形が必要なのかもしれませんが、それも今やなかなか難しそうです。
地域や業界など、人々の連帯と言うのはこれからの時代の一つの鍵になると考えていきたいと思います。 -
ネタバレ
革命思想にご用心
一部ご紹介します。
・「革新」に憧れる精神とは、身勝手で浅はかなものだ。自分たちの祖先を顧みない者が、自分の子孫のことを思いやるはずがない。
・人は自由や権利を相続財産のように看做せば、「前の世代から受け継いだ自由や権利を大事にしなければならない」という保守の発想と、「われわれの自由や権利を後の世代にきちんと受け継がせなければならない」という継承の発想が生まれることをわきまえる。そしてこれらは「自由や権利を、より望ましい形にしたうえで受け継がせたい」という進歩向上の発想とも完全に共存しうる。
・社会が複雑なものである以上、「多くの目標が不完全に、かつ途切れ途切れに達成される」ほうが、「いくつかの目標は完璧に達成されたが、そのせいで残りの目標は放置されたか、悪化した」よりもましだ。
・長年にわたって保たれてきた価値観や慣習が失われることの損失は計り知れないものだ。それは航海中の舟が羅針盤を無くすことに等しい。われわれは自分たちが正しい方向に進んでるかは無論、そもそもどんな方向を目指しているかさえ分からなくなり、沈没してしまう。
・誰であれ、いずれは神の御前に立ち「自分の行動について申し開きをしなければならない」とわきまえていれば、無責任な行動や恥知らずな言動をしようとは思わなくなるものだ。
・民主制が機能するためには、民衆はエゴイズムを捨てなければならない。宗教の力が無ければ不可能なことだ。
・国家というものは、今生きている者と、墓石になった祖先と、これから産まれてくる子孫とで育まれる精神の共同体なのである。
・私有財産無くして自由はなく、自由無くして美徳はない。
・民主制には暴政との共通点が数多くある。民主制において、多数派は少数者に対して最も残酷な弾圧を加えることができる。
・われわれは歴史から正しい教訓を学ぶとは限らない。気を付けていないと、人々の目を曇らせ、争いを惹き起こすために歴史が悪用されることもある。
・あらゆる変更の目的は、これまで享受してきた幸福を今後も維持すること、すなわち保守に置かれるべきだ。そして、変更を行う際も、「問題のない箇所はそのまま残す」ほうがいい。古くなった建物の補修工事を行うように。付け加えたいものがあるならそれも結構だろう。しかし、祖先が残していった大切なものだけは守っていくべきだ。
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Posted by ブクログ
保守の前提と革新の前提
自由・平等・博愛といったおめでたい夢幻を掲げ、過去の権威や伝統を根絶やしにして達成されたフランス革命を「保守の父」エドマンド・バーグが痛烈にコキ貶したのがこの「フランス革命の省察」。
新訳 フランス革命の省察―「保守主義の父」かく語りき
その貶しようは、イギリスの首相ピットに「この罵倒は芸術的だ」と言わしめるほどの内容。
この本は、まだ保守という言葉すらないフランス革命当時に書かれたものですが、人名や党名、地名を現代風にアレンジすれば、現代十分通用する普遍性を備えています。
保守も革新もその目的や手段は時代や洋の東西によって変化していますが、それぞれの前提となる思想はバーグの時代からずっと変わっていません。
この前提を知ると、ウィンストン・チャーチルが「20歳の時にリベラルでないなら、情熱が足りない。四〇歳のときに保守主義でないなら、思慮がたりない。」と言ったのか?また、保守はどうしてこうも魅力がない年寄りじみたものなのか?そしてリベラルはどうして人を魅了するが、こうも「無能」なのか?その理由をよく理解できるようになるだろう。
バーグはこの本の中で保守とリベラルの前提を次のように述べている。
保守の前提。
フランスの革命派諸氏は、自分たちが叡智の光に満ちていると風潮する。わが国の父祖たちは、そんなうぬぼれとは無縁だった。人間は愚かであり、とかく過ちを犯しやすいーこれこそ彼らの行動の前提となった発想である。
自分たちの掲げたお題目に酔い、権威も伝統もぶち壊してどんちゃん騒ぎをしている様を聞いてバーグが抱いた感情は、おそらく「蒼天航路」という漫画の中で慢心極まった袁紹を見て曹操孟徳が言ったセリフと同じだったのではないかと思う。
“生来の己を忘れきった破廉恥な威厳。
天の寛容を真似る陶然とした笑み
醜悪だ!
心に闇をもたぬ者が慢心極めればいいここまで醜くなるものか!”
人間は間違いを犯し、愚かである。そのような闇を持っていると自覚するからこそ謙虚に振る舞い、過去の伝統を重んじ、変えるべきものと捨て去るものの選別を慎重に行う。
特に国家の根幹に関わることは石橋を叩きすぎるほど慎重に行うべきである。十分熟慮を重ね、決して勢いだけで変えるべきではない。
それは端から見ればノロく、臆病にしか見えないし、場合によったらただの「尻拭い」に徹することになるから当然、魅力がない。
しかし、政治の最大の成果は魅力的であることよりも、安定し確実であることである。
リベラルの四つの前提。
人間は、社会のあり方を望ましくする方法を適切に考案する理性、およびこれを確実に実現して行く能力を持っている。
社会を望ましくする方法論が二つ以上存在する場合、人間は個人的な利害関係や感情にとらわれることなく、どちらが良いかを冷静に判断できる。
右の二つの前提は社会全体で成立している。言い換えれば、自らのあり方を望ましくしようとすることにかけて、社会は首尾一貫した単一の意思を持っているとみなして構わない。
社会のあり方を変えることに伴うコストや副作用は、変化のスピードを上げたからといって顕著に増大することはない。
この四つの前提を読んでも分かる通り、実に聞こえはいいが、中身は空疎でただの絵空事だということがわかる。
人間の行動のほとんどが場当たり的で感情的であって、理性など全く当てにならない代物だ。それはトランプの当選をみても明らか。
理想へ至る道のスタート地点は常に現在地である現実からスタートすべきであり、おめでたい美辞麗句が並んだ夢物語から始めるべきではない。
夢物語からスタートすれば必然的にスタートよりも悲惨な現実という名のゴールに至る。
だからリベラルは余程の幸運に恵まれないかぎり、失敗が決定づけられてしまう。たとえ上手くいったとしても、時間が経ち運の効果が切れれば、いずれ瓦解するのは必定。
しかし、失敗が決定づけられた絵空事から破滅へ至る過程は逆に魅力的でもある。
今年は、世界情勢が劇的に変化する年になると言われています。
行き詰まりの資本主義やグローバリゼーションと原理主義のイデオロギー対立、衰退の一途を辿る世界経済などなど、このようなあらゆる前提が崩れ混迷を極めた現代だからこそ、目新しい思想にしがみつくのではなく、人間の暗部をしっかり見据えて政治のあり方を解く「フランス革命の省察」を熟読することをお勧めします。
ぜひ、バーグの慧眼と芸術的な罵詈雑言を味わって頂きたい。 -
Posted by ブクログ
中野剛志氏らによる座談会は、日本経済の長期停滞の根源を、小泉政権以降「改革」の名の下で推進された新自由主義にあると分析する。この思想は、民主主義の基盤である中間組織や共同体を「既得権益」として切り捨て、個人と国家を直結させた。その結果、社会の連帯が失われ、格差が拡大する一方で、トップダウンの決定に従うだけの受動的な国民が増殖したと指摘する。
議論では、行き過ぎたリベラリズムが文化や伝統を排除し、必然的に強権国家を招く危険性が示唆された。真の民主主義には、国民の多様性を尊重するナショナリズムと、社会を支える中間組織の再評価が不可欠である。また、財政出動を恐れる緊縮財政からの脱却と、危機時にボトムアップで修正可能な強靭な社会基盤の整備が求められている。
日本は独自の長期ビジョンを欠き、陳腐化したグローバリズムに追従し続けている。国家としての自律性を取り戻し、効率化の名の下に破壊された社会の余力を再構築することが、今後の危機の時代を生き抜く道であると論じている。
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Posted by ブクログ
イギリス人は自由や権利を相続財産のように見なせば「前の世代から受け継いだ自由や権利を大事にしなければならない」という保守の発想と「われわれの自由や権利を後の世代にちゃんと受け継がなければならない」という継承の発想が生まれる。そしてこれらは「自由や権利を一層望ましい形にした上で受け継がせたい」という進歩発想とも完全に共存しうる。
リーダーは往々にして自分が率いる人によって逆に率いられる。指図を受ける側の価値観、能力、あるいは気質といったものが指図の内容そのものに制約を加えるのだ。
文明社会は人間に利益をもたらすために作られる。社会が成立していることによって得られる利益はすなわち人間の権利となる。人間が文明社会を作るに至った動機の一つに「正義とは客観的なものでなければならない」というものがある。
「国はこうあるべし」という自己の理論にようあまり、現実の国家に良い点を見出そうとしないものは本当の意味での社会に関心を持っていない。
既存の秩序の全否定を正当化しうるもの、それは「他のいかなる選択の余地もない」という絶対の必要性のみである。 -
Posted by ブクログ
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レキシントンの戦いから八ヶ月以上が過ぎた十七七六年一月の時点においても、独立を積極的に主張するアメリカ人は少数派だったのだ!
イギリスの態度に不満はある、けれども戦争に訴えてでも独立をめざすのは行き過ぎではないか――多くの人々はこんな葛藤を抱え、態度を決めかねていた。
『コモン・センス』は、この状況を一変させた。
もはや流れは決まった。独立戦争の遂行はアメリカの常識となったのだ。13
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『コモン・センス』はまずもって、「イギリスとの全面対決をためらうアメリカ人にたいし、新大陸にやってきたばかりのイギリス人が、独立を目指して決起せよ!と激烈にアジった本」ではないか。同書は「あるイギリス人の著作」と銘打たれていたのだから、アメリカ人はこれから戦おうとしている人間に鼓舞されて、戦場へと向かったことになる。42
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二つの国の違いはどこにあるか?フランスでは王の意思が、勅令や布告としてストレートに下達される。ひきかえイギリスでは、議会によって決められた法律という、より手ごわい形を取って下達される。
「横暴な真似をするときは、そうっとバレないように巧妙にやらねばならない」と悟ったのだ。86
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王たちのプライドこそ、人類を争いに陥れたきた元凶なのである。オランダを見るがいい。王を持たぬ同国は、ここ一世紀ほどの間、ヨーロッパのいかなる王国も及ばぬ平和を享受してきた。91
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ギデオンや預言者サムエルを想起せよ。「王によって国を治めるべからず」というのが神の意志だと、彼らは宣言しているではないか。92
ギデオンは王になる栄誉を辞退したのではない。誰かを王に祭り上げる資格など、人間には与えられていないと言い切ったのだ。95
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答えは三種類しかありえない。神、ないし神意を代弁する者から任命されたか、選挙の結果か、力ずくで王位を手に入れたかだ。
初代の王が任命によって即位したとすれば、それは「次の王も任命で選ばれるべきだ」という前例をつくったにひとしく、世襲は否定される。
人々が王を選挙することで、王朝が始まった場合もしかり。そのこと自体が、「以後の王も選挙で決まられるべし」という前例をつくる。107
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独立を勝ちとらないかぎり、デメリットがなくなる日はない。
一部の者は、こんな主張を展開する。アメリカはこれまで、イギリスとのつながりのもとで繁栄してきた。ゆえに将来の幸福も、この縁なしにはありえない。イギリスの植民地であることこそ、変わらぬ繁栄のカギである。122
イギリスはわれわれを守ってきてくれたではないか、こう抗弁する者もいる。なるほど、同国がアメリカを縄張りとしてきたのは事実だ、新大陸の植民地を外敵から防衛する費用も、大半をアメリカ人に出させたとはいえ、多少自腹を切ったことは認めよう。
だとしても、向こうの動機は何だ?アメリカ人に物を売りつけて利益を得ることと、新大陸の支配権を確保すること。利益と支配権が伴うなら、イギリスはトルコのことだって「守る」に違いない。123
親方イギリスと自慢してきたものの、向こうはこちらに愛着など持っていない。ソロバンを弾いているだけである。
アメリカの利益を守るべく、アメリカの敵を抑え込む――そんなことをイギリスがしてくれたことはない。あの国がやってきたのは、イギリスの利益を守るべく、新大陸においてもイギリスの敵を抑え込むことなのだ。124
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独立をめぐる真の不安材料は、あるとしても一つだけ。国の体制、言いかえれば国体をどうするか、具体案が固まっていない点だ。156
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これぞ潮時と言える。国力が現在のレベルに達する前に独立を試みるのはもとより、現在のレベルを上回ったあとで独立を試みるのも、致命的な結果をもたらしかねない。173
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アメリカは独立を勝ちとるに十分なだけの人口を有する。かりに人口がもっと多かったら、今度は人々の団結が弱まってしまうことだろう。
人口が増えれば、商業や交易が盛んになる。経済活動にとらわれた人々は、他の事柄に感心を持たなくなるのである。191
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良い習慣は、若いうちに身につけておくのが望ましい。個人の場合でも、国家の場合でも、この真理に変わりはない。
今から五十年も経ってしまったら、新大陸に統一政府つくりあげるのは非常に難しくなるだろう。不可能になるとさえ言えるのではあるまいか。192
五十年後のアメリカは、商業がいっそう発達し、人口も増えているだろう。人々の関心や利害は、こうして多種多様なものとなる。193
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偉大なるモンテスキューを知っているかね。彼はこう述べている。いわく、自分たちの国体を維持したいのであれば、宗教、法律、慣習、すべてにおいて大きく異なる国とだけ同盟関係を結ぶこと。アメリカがジョージ三世に尻尾を振りつづければ、イギリス国民にとってプラスどころかマイナスとなる。王の権力や影響力が強まってしまうからだ。270
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Posted by ブクログ
性急な革新に反対し,「伝統」として結実した人間の英知に学ぶ「保守」を提唱する。
平等原則を徹底することに対する懐疑的態度や法の支配を重視する思想など,後の「保守」派に受け継がれた思想の萌芽がちりばめられている。
ただし,結論だけが書かれているという印象で,「保守」思想にシンパシーを感じる人でなければ,読んでも不愉快になるだけだと思う。
なお,“prejudice”は,「固定観念」と翻訳されている(「偏見」と翻訳されることが多い。)。
また,砕けた訳文で,よく言えば「親しみやすく,手紙としての本質をよく表現している」が,悪く言えば「品がない」。
抄訳であることを補うための注が丁寧に挿入されている。