藤田直哉のレビュー一覧
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日米貿易摩擦で、アメリカ人は日本人を「エコノミック・アニマル」と蔑称し、駆逐しようとした。その折、映画『ブレードランナー』では、人間らしいロボットを処理することが仕事の主人公が、ロボットに恋した。
戦後の日本はとことん西洋化した。西洋の精神などちっとも受け入れないまま、形式だけが西洋化し、プリンシプルは無く、「ニセモノ」と言う言葉が日本人の脳裏をよぎった。
押井守版・『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のワンシーン
人形使い:一生命体として政治的亡命を希望する...
人間:バカな!自己保存のプログラムに過ぎん!
人形使い:それを言うならあなたたちのDNAもまた自己保存の -
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ネタバレ面白かった!
p.36「『弱者男性』論は、「男性」の中で見過ごされてきた「弱者」の問題を提起する意義のある側面と、ミソジニストや家父長制主義者が女性を攻撃する側面とが重なりながらネットで展開していた」
かなり最近の概念である『弱者男性』について、すでにここまで鋭い解釈があるのかと感心した。世間一般的に強者とみなされる男性への福祉の行き届きづらさに焦点をあてているという意味で価値を認めつつ、インターネットの攻撃性との融合により一面的に擁護し難い論調となっていることを学んだ。弱者の声を拾い上げるインターネットのポジティブな機能がよく働いている例だとは思う。
また、ゼロ年代に隆盛した「萌え文化 -
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サイバーミステリというジャンルを一冊丸ごと語り尽くした評論本。評論という体裁ではあるものの、サイバーミステリという単語に馴染みのない人間を想定して描かれているため、非常に分かりやすく、かつ興味を抱かせる内容となっている。特にSNSを一度でも使ったことの有る人間なら分かるであろうセキュリティの問題や、ネットで醸成される空気感や個の埋没化などは非常に共感を覚える部分であろう。当然、評論としても非常に面白く、サイバーミステリと従来のミステリで変化した部分や、サイバー空間におけるミステリの拡張性などの部分は興味深い内容になっている。特に、データ同定問題における、従来のミステリに比べて物的証拠の正誤を確
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「観念的で現実否定的な理想を実現することではなく、不完全で猥雑なこの世界そのものを肯定することを選ぶこと。様々な生命が生まれ続けている不確定で流動的で未知なこの世界を丸々肯定しようとする覚悟。そこに至った点が、旧『エヴァ』との大きな違いであり、その「ありのまま」の態度こそが、登場人物たちをも救済していく。
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「ありのまま」を認めるとは、仏教の思想でもある。世界や自己や生命を、「ありのまま」に、つまり言葉や概念に惑わされずに認識することが、仏教においては目指され、悟りの境地であると言われることがある。
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『シン・』の中では、ありのままに認めることを目指す仏教的な境 -
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シン・エヴァ論というよりざっくりした庵野秀明論。
この10年ほどガンガン活躍中の藤田氏。
に乗っかる感じで自分語りを始めてしまいたくなる自分がいる……著者の境遇に共感したりして。
危ない危ない。
シン・エヴァで「成仏」した人向けの本だなとは思う。
いわゆる謎本や衒学ではまったくない、ちゃんと誠実にロジックに落とし込んだ上で、平易。
(というか往時の謎本論調が異様だっただけだろうけれど。
そして本書の修験道云々はやや怪しいかなと思わないでもないけれど。)
戦後日本のオタク成熟論であるとか、庵野にとっての富野由悠季が、自分たちにとっての庵野にあたるとか、観点が整理された。
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目次
まえがきー -
Posted by ブクログ
全くの同い年の著者の、エヴァに対する思いが伝わってきた。考察もなるほどなと思うけど、共にエヴァに触れながら数十年を生き、そしてシンエヴァで完結を迎え、世界を、現実をありのまま受け入れて生きるという境地にたどりついた末に感じる思いに本当に共感させられた。
EOEの驚愕のラストから、こんなに豊かで温かい作品に成長させてくれた監督はじめスタッフに本当に感謝したい。テレビ版、EOE、シン劇場版と、全てが愛おしい、本当に人生において欠かすことのできない作品である。
そしてその作品をここまで丁寧に解説し論じてくれた著者の作品に対する愛情に敬意を表したい。