あらすじ
安倍元首相銃撃犯・山上徹也の深層、「推し」に裏切られた弱者男性、インセル、陰謀論者、負け組、オタクたちの実存の行方、ニセ情報の脅威、倍速で煽られる憎悪……。
揺らぐ民主主義と自由。加速するテクノロジー、そこに希望はあるのか!
ネットネイティブ世代の著者が徹底検証。
既存の権力や秩序から自由であり、人間の様々な問題の手垢がついていないフロンティアだったはずのサイバースペースは、今や、古くから続く政治・権力争い・謀略・戦争の世界に巻き込まれている。
この新しくも古い状況の中で人々の心は動揺し、その揺れ動きは、様々な文化や行動として現れてこざるをえない。
本書は、インターネットが大きく変えている現在の政治状況を、文化との連続性の観点から考えるものである。(本文より)
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Posted by ブクログ
面白かった!
p.36「『弱者男性』論は、「男性」の中で見過ごされてきた「弱者」の問題を提起する意義のある側面と、ミソジニストや家父長制主義者が女性を攻撃する側面とが重なりながらネットで展開していた」
かなり最近の概念である『弱者男性』について、すでにここまで鋭い解釈があるのかと感心した。世間一般的に強者とみなされる男性への福祉の行き届きづらさに焦点をあてているという意味で価値を認めつつ、インターネットの攻撃性との融合により一面的に擁護し難い論調となっていることを学んだ。弱者の声を拾い上げるインターネットのポジティブな機能がよく働いている例だとは思う。
また、ゼロ年代に隆盛した「萌え文化」が、80年代への回帰の切望から生まれたという視点は、99年生まれの自分にとっては目からウロコだった。
シンエヴァのラストシーンを見て絶望して反抗に及んだ岡田茂の話が印象的だった。自分も当時映画館で見た時、突然の現実への接続に面食らったが、庵野秀明によるポップカルチャーによる「反省と贖罪」の側面があること、しかしそれを突きつけられたオタクは絶望に追い込まれたという指摘は面白かった。『シン・エヴァンゲリオン論』も読みたいと思う。