湯本香樹実のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ幼い頃に母と暮らしていた『ポプラ荘』の大家のおばあさんの訃報。
そこで暮らした3年間を思いながら、千秋は居ても立ってもいられない思いで、ポプラ荘に向かう。
その頃、まだ7歳にもなっていなかった私=千秋は、交通事故で突然いなくなってしまった父の死を理解できず、得体の知れない不安や恐怖を抱えていた。
病気になった時、はじめ不気味でおそろしかった大家のおばあさんから、不思議な話を聞かされる。
おばあさんは、自分が天国へ行く時に持っていけるように、先に天国に行っている人たちへの手紙を預かっているというのだ。
それ以来、千秋はおとうさんに宛てた手紙を書いてはおばあさんに預けるようになり…
幼い頃の千秋の、脈絡のない心の震えは、忘れてしまっていたような、どこか記憶にあるような。
読み終えて、何かを思い出したような心地になった。これからきっと起こるに違いないおそろしい事に出くわさずにすむにはどうしたらいいのかと、ぐるぐる考えていたんだった。
今でも、その傾向は変わらないけれど。
『夏の庭』でも本作でも、それまで身近に感じたことのなかった血縁のない年長者との交流で、子供たちは心のなかに健やかな芯のようなものを得て、前を向いて生きる力を持つようになった。
人はみな、生まれた瞬間から死に向かって歩き始める、とよく言われる。
老いも死も知らないで生きるということは、自分もやがて通る道を知らないということ。
死への恐れは、逃れられない変化への恐れでもあるのかな…
『長生きすることのリスク』を無視することはできないけれど、生きることを楽しんでいる大人〜高齢者でいることで、年若い誰かに、“歳を取るのは悪いことばかりではない”と教えられるような歳の取り方をしたいものです。 -
Posted by ブクログ
積んで置く状態だった作品に、やっと目を通した。普通の積読ではない。毎日テレビを見る時のそば机の上に積んでいて、目の端で存在を確かめながらまる4年、それでも紐解かなかったのである。いつでも読める、内容は予想がついている、楽しい話ではない、といったことが分かっているときに、私の「直ぐにやらない脳」が発出する。
買ったのは、黒沢清監督「岸辺の旅」(深津絵里・浅野忠信主演)が素晴らしかったからである。私の人生最恐のホラーは黒沢清監督の「回路」である。時々それに似た演出を見せながら、なんと恐怖感情ではなく意も言われぬ感情が出てきた。それを確かめたくて買った。
夫・優介の失踪から3年目のある日、ふと顔をあげると配膳台の奥の薄暗がりに優介が立っているのが見える。瑞希は驚かない。優介の好物のしらたまを作っていたので、彼が幽霊であることを自然に受け入れて会話を始める。
この導入部が素晴らしい。大切な人を亡くした者ならば、必ず思うはずだ。「あの暗がりに出てきてはくれないだろうか‥‥」。
確かめたかったのは、これはいかにも黒沢清らしい演出だったのだが、いったい何処から何処までが、原作から引き出したものなのだろうか、ということだった。結論から言えば、ほぼ原作に忠実に監督は映画をつくっていた。全ての台詞と描写が映画に入っているわけではない。むしろ、どれを削ったかが、監督の仕事だったかのようだった。カンヌで監督賞を受賞したこの作品の世界観は、実は湯本香樹実の世界観だったことを知り、私は心底驚いた。
2人は失踪の3年間の優介の魂の旅を辿り、彼が入水した海の岸辺に至る。映画では何度か確かめたが、優介には影がある。食事もする。ホントは生きているのではないか。亡くなっている人とも出会うが、生きている人と、優介はその間親交を持っていた。けれども、やはり死んでいるのである。それを納得する旅でもあった。岸辺は、此岸(この世)と彼岸(あの世)の境でもある。このとき、瑞希には2つの選択肢があるだろうし、それを迷っているはずだと私は思っていた。即ち、優介を追って後追い自殺をするか、それとも優介の成仏を見送るか。原作ではどうなっているか。結果は、映画と同じだった。そうだよな。それは瑞希の迷いではなく、私の迷いだった。
ふと見上げると、机のそばの暗がりに積読状態だった「岸辺の旅」の文庫本が見えた。私は、自然とそれを読み始めた。 -
Posted by ブクログ
母とてこじいの確執が淡々と、そしてしっとりと語られます。
てこじいを邪険に扱いながらも、どこかに子としての優しい心遣いを見せる母。そしてだんまりを決めつつも、母のために行動に出るてこじい。
心情が直接語られる訳では有りません。10歳の僕の目を通して描かれる母とてこじいの矛盾した行動が、二人の精神の揺れのようなものを描き出して行きます。このあたりの描き方はとても上手さを感じさせます。
湯本さんは初めてです。2冊目のつもりだったのですが、梨木香歩さんと混乱してたようです。「夏の庭」と「裏庭」そのあたりが混乱の原因かも知れません。この作品はなかなか気に入ったのですが、他の人の書評を見る限り「夏の庭」の方が代表作のようですね。これもそのうち読んでみましょう。
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購入済み
雰囲気が好き
湯本香樹実さんの小説の文面や雰囲気が好きです。
この作品に関してもそれは健在で、現実と非現実が混在する不思議な感覚で読んでました。
ラストがあまりにもあっけなく、涙腺が中途半端に緩くなったところで止まってしまったのがちょっと残念です。
瑞希の感情がもう少し見えたらよかったかな~と思いつつ、もしまた新しい作品が出たら絶対買うんだろうなと思いました(笑) -
Posted by ブクログ
「西日の町」湯本香樹実
児童「のための」文学 とはくくれない、児童「をモチーフとした」文学でしょうか。イメージカラーはオフホワイト。
湯本さんの文章は、読むときりりと締められる感覚があってそれでいて包容力のある雰囲気が好きです。
良い意味でとても女性的な作品です。その分若干「僕」という一人称視点に違和感を感じてしまったのも事実。中性的な主人公である気がします。
それと、何故かてこじいのキャラクターがそれほど印象深くない。
ちょっと考えてもよく分からないのですが、うまく作品のなかにとけ込んで役割を担っている、と思っていいのかな。
渾身の作品!とは全く感じさせないタッチが読む側にも脱力して頭に文章を流しこめる。BGMのような感じですね。
正直なところ帯の惹句は的はずれだと思いますが(笑)(4)