湯本香樹実のレビュー一覧

  • 岸辺の旅

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    積んで置く状態だった作品に、やっと目を通した。普通の積読ではない。毎日テレビを見る時のそば机の上に積んでいて、目の端で存在を確かめながらまる4年、それでも紐解かなかったのである。いつでも読める、内容は予想がついている、楽しい話ではない、といったことが分かっているときに、私の「直ぐにやらない脳」が発出する。

    買ったのは、黒沢清監督「岸辺の旅」(深津絵里・浅野忠信主演)が素晴らしかったからである。私の人生最恐のホラーは黒沢清監督の「回路」である。時々それに似た演出を見せながら、なんと恐怖感情ではなく意も言われぬ感情が出てきた。それを確かめたくて買った。

    夫・優介の失踪から3年目のある日、ふと顔

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    2020年04月13日
  • 西日の町

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    時間軸が回想をゆらゆらしているかのようなのに自然に入ってくるし文章も心地よい。てこじいになんで?と思いつつ僕の穏やかな心を読んでいる気持ちになる

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    2020年02月25日
  • ポプラの秋

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    一気に読んだけれど、素晴らしかった。
    人の痛みやどうしようもない辛さなどを掘り下げていながら、暗くならない。
    なかなかないレベルで、なにも賞を取っていないのが不思議なくらいの完成度の高さだと思う。
    おすすめしまくりたい本。

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    2020年02月17日
  • ポプラの秋

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    胸の奥で眠っていた懐かしい思い出が、みずみずしくよみがえりました。

    ポプラの木を眺め、おばあちゃんと焼芋をした主人公と、
    自分が祖母と過ごした記憶が重なって、
    ラストシーンに涙しました。
    (私は、おばあちゃんっこだったのですが、亡くなってずいぶん経つので、最近では思い出すことも少なくなっていました。思い出せたことが嬉しかったです。)


    幼いころの幸せの原風景。
    おばあちゃんが自分の死に託したファンタジー。
    心温まるストーリーでした。

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    2019年10月26日
  • 岸辺の旅

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    自分の前から、この世界からいなくなってしまった人と時間を共にできたらどんなにいいだろう。相手について知りたかった事が全てわかるわけではないけれど、自分の心の整理になる。長い旅が終わりに差し掛かる気配が感じられる箇所では涙が出てきた。いい本でした。

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    2019年06月18日
  • 西日の町

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    2015.4/24 『夏の庭』と同様、老人と少年が織りなす物語。でもそれが突然転がり込んできた今はやつれた放蕩者の祖父っていうのが...言葉は多くないのにリアルで読み進めてまう。祖父の関係にハラハラする少年や、恨みつらみを抱えながら放り出せない母親の気持ちが手に取るように分かる。静かに涙した。

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    2018年01月09日
  • 西日の町

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    母とてこじいの確執が淡々と、そしてしっとりと語られます。
    てこじいを邪険に扱いながらも、どこかに子としての優しい心遣いを見せる母。そしてだんまりを決めつつも、母のために行動に出るてこじい。
    心情が直接語られる訳では有りません。10歳の僕の目を通して描かれる母とてこじいの矛盾した行動が、二人の精神の揺れのようなものを描き出して行きます。このあたりの描き方はとても上手さを感じさせます。
    湯本さんは初めてです。2冊目のつもりだったのですが、梨木香歩さんと混乱してたようです。「夏の庭」と「裏庭」そのあたりが混乱の原因かも知れません。この作品はなかなか気に入ったのですが、他の人の書評を見る限り「

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    2017年10月30日
  • 西日の町

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    家族の為を思うけど、不器用な父親と娘と孫の物語。
    この3人の関係性だからこそ成り立つ物語だと思う。
    ひどい父親と思いつつも、いい思い出を思い出したり
    娘だって心から憎んでいるわけじゃないけど、
    納得いかないもどかしい思い。
    その間を埋める孫の存在がとてもよかったです。
    卑屈にならず、いい子でほっとしました。

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    2016年10月31日
  • 岸辺の旅

    購入済み

    雰囲気が好き

    湯本香樹実さんの小説の文面や雰囲気が好きです。
    この作品に関してもそれは健在で、現実と非現実が混在する不思議な感覚で読んでました。
    ラストがあまりにもあっけなく、涙腺が中途半端に緩くなったところで止まってしまったのがちょっと残念です。
    瑞希の感情がもう少し見えたらよかったかな~と思いつつ、もしまた新しい作品が出たら絶対買うんだろうなと思いました(笑)

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    2015年05月31日
  • 西日の町

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    湯本作品2作目。この人は老人と子どもの交流を書くのが本当にうまい。作品中常に「死」の気配が漂っているのになぜか重くならないのはこの人の手腕だろう。もっと湯本作品を読もうと思う。2011/418

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    2013年11月17日
  • 西日の町

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    人物描写、風景描写が上手い。うならせられる。色々書きたいが、ありきたりすぎる言葉だが、この作品は「文学」だと思う。

    “てこじい”の強烈なキャラクター。芯のあるキャラクターだ。こゆい。

    親子、老人と子ども。その両方の有り様と可能性を静かな文体で語りかけてくれる。

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    2012年04月26日
  • 西日の町

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    薄明るい西日に照らされた
    幻影のような思い出語り。


    まだ敗戦国だということを
    引きずっていた時代の男と
    その家族の話。


    風来坊は
    他人なら魅力的だけど
    家族は大変だなあと。


    死にむかっていくてこじい自身より
    母幸子の
    父親の死をうけいれるための
    時間をもうすこしくれと
    願うところ、
    母がみせた
    死をうけいれていく変化。
    鮮やかでした。

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    2011年11月29日
  • 西日の町

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    ネタバレ

    なめらかにまっすぐには向き合えない、てこじいと母。
    それを見つめる僕。
    せつなさやいらだちを抱えながらも、深いところでつながっている家族。
    トゲトゲしいはずの場面でも、そこには寂しさやきつくなりきれない優しさが漂い、
    やわらかで静かな気持ちで読み終えることができました。

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    2012年06月17日
  • 西日の町

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    「西日の町」湯本香樹実
    児童「のための」文学 とはくくれない、児童「をモチーフとした」文学でしょうか。イメージカラーはオフホワイト。

    湯本さんの文章は、読むときりりと締められる感覚があってそれでいて包容力のある雰囲気が好きです。
    良い意味でとても女性的な作品です。その分若干「僕」という一人称視点に違和感を感じてしまったのも事実。中性的な主人公である気がします。
    それと、何故かてこじいのキャラクターがそれほど印象深くない。
    ちょっと考えてもよく分からないのですが、うまく作品のなかにとけ込んで役割を担っている、と思っていいのかな。

    渾身の作品!とは全く感じさせないタッチが読む側にも

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    2010年12月12日
  • ポプラの秋

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    父を亡くした少女と、大家さんのお婆さんとの心の交流を描いた物語。
    とても変わり者のお婆さんだけど、多感な少女の心に寄り添い、生きる力を与えていた。
    今は少なくなった心の触れ合いが、心に沁みた。

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    2025年04月17日
  • ポプラの秋

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    夏の庭は中学生頃読書感想文を書くのに読んだことがあって、凄く好きだったのでそれからだいぶ経ちましたが他の作品も読みたくなり、ようやくこちらを読みました。家族愛や周りの人たちの温かい雰囲気が感じられ湯本さんらしいなと思いました。ただ凄く個人的なことですが私はそういったものに無縁だったため見ていて辛かったです。あと、千秋ちゃんの文章があまりに漢字が少ないので年齢より幼く感じられ、そこが少し違和感でした。

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    2024年11月16日
  • ポプラの秋

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    生きるのが寂しい人がいるのだな、と思いました。
    生きるのをやめてしまった人のことを思って、苦しむことはなくならないと思うけど、元気を出して、って声をかける以外のやり方で、そっとその苦しみを思いやることができるのだと思いました。
    そうされた人は、苦しんでいる人の気持ちを、思いやることができるようになるんだな、と思いました。

    生きるのは苦しいけど、苦しみを抱えているのに、周りの苦しみを思いやろうとする人がいるなら、明日、生きてみようかな、と思いました。

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    2023年07月11日
  • ポプラの秋

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    子供の頃にそばで見守る大人は多い方が良い。
    特に親がいない子供は安心できる大人が必要だ。
    片親だとどうしても補えないものがある。
    私がそうだった。
    父の代わりは母にはできない。
    母の代わりも父にはできない。
    どんなに愛してくれたとしてもどうしようもなく本人ではないのだ。

    大家のおばあさんはうってつけだったと思う。
    家族ではないがいつでもいてくれる存在。
    小さな子供にとってどんなに心強かったことだろう。
    おばあさんは本当に色んな人に秘密を実行していた。
    私はそれが主人公にだけ話していた嘘でも良いと思っていた。
    色黒の悪者のポパイの様な顔をしたおばあさんの優しさ。
    最後のおばあさんの『落ち葉を掃

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    2023年02月22日
  • ポプラの秋

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     ゆったりと静謐な時間が流れる作品。映画化もされている。
     お葬式というのが作品を貫くテーマになっているが、決して喪失感が滲み出るわけではなく、むしろ過去の思い出が蘇ってきてむしろ明るい雰囲気すら持っている。
     日常生活のように慌ただしくドタバタする作品も面白いが、この作品のようにゆっくりとした雰囲気を味わうのも時にはいいものだと思う。

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    2022年11月04日
  • 西日の町

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     他人には言えない事柄を人は抱えて生きているということが実感される作品。それは決して家族であっても、友人で会っても打ち明けられないものがある。
     しかし、家族の場合はいざという時にはそうした微妙な関係性が瓦解して寄り添うことができるようになることもある。本作はそうした家族の心の揺れを捉えている。

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    2022年07月03日