湯本香樹実のレビュー一覧
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積んで置く状態だった作品に、やっと目を通した。普通の積読ではない。毎日テレビを見る時のそば机の上に積んでいて、目の端で存在を確かめながらまる4年、それでも紐解かなかったのである。いつでも読める、内容は予想がついている、楽しい話ではない、といったことが分かっているときに、私の「直ぐにやらない脳」が発出する。
買ったのは、黒沢清監督「岸辺の旅」(深津絵里・浅野忠信主演)が素晴らしかったからである。私の人生最恐のホラーは黒沢清監督の「回路」である。時々それに似た演出を見せながら、なんと恐怖感情ではなく意も言われぬ感情が出てきた。それを確かめたくて買った。
夫・優介の失踪から3年目のある日、ふと顔 -
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母とてこじいの確執が淡々と、そしてしっとりと語られます。
てこじいを邪険に扱いながらも、どこかに子としての優しい心遣いを見せる母。そしてだんまりを決めつつも、母のために行動に出るてこじい。
心情が直接語られる訳では有りません。10歳の僕の目を通して描かれる母とてこじいの矛盾した行動が、二人の精神の揺れのようなものを描き出して行きます。このあたりの描き方はとても上手さを感じさせます。
湯本さんは初めてです。2冊目のつもりだったのですが、梨木香歩さんと混乱してたようです。「夏の庭」と「裏庭」そのあたりが混乱の原因かも知れません。この作品はなかなか気に入ったのですが、他の人の書評を見る限り「 -
購入済み
雰囲気が好き
湯本香樹実さんの小説の文面や雰囲気が好きです。
この作品に関してもそれは健在で、現実と非現実が混在する不思議な感覚で読んでました。
ラストがあまりにもあっけなく、涙腺が中途半端に緩くなったところで止まってしまったのがちょっと残念です。
瑞希の感情がもう少し見えたらよかったかな~と思いつつ、もしまた新しい作品が出たら絶対買うんだろうなと思いました(笑) -
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「西日の町」湯本香樹実
児童「のための」文学 とはくくれない、児童「をモチーフとした」文学でしょうか。イメージカラーはオフホワイト。
湯本さんの文章は、読むときりりと締められる感覚があってそれでいて包容力のある雰囲気が好きです。
良い意味でとても女性的な作品です。その分若干「僕」という一人称視点に違和感を感じてしまったのも事実。中性的な主人公である気がします。
それと、何故かてこじいのキャラクターがそれほど印象深くない。
ちょっと考えてもよく分からないのですが、うまく作品のなかにとけ込んで役割を担っている、と思っていいのかな。
渾身の作品!とは全く感じさせないタッチが読む側にも -
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子供の頃にそばで見守る大人は多い方が良い。
特に親がいない子供は安心できる大人が必要だ。
片親だとどうしても補えないものがある。
私がそうだった。
父の代わりは母にはできない。
母の代わりも父にはできない。
どんなに愛してくれたとしてもどうしようもなく本人ではないのだ。
大家のおばあさんはうってつけだったと思う。
家族ではないがいつでもいてくれる存在。
小さな子供にとってどんなに心強かったことだろう。
おばあさんは本当に色んな人に秘密を実行していた。
私はそれが主人公にだけ話していた嘘でも良いと思っていた。
色黒の悪者のポパイの様な顔をしたおばあさんの優しさ。
最後のおばあさんの『落ち葉を掃