【感想・ネタバレ】岸辺の旅のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年01月21日

三年前に失踪した夫との再会。
死者の話は悲しい。今にも実体を失って消えてしまうのではないかと気を揉む妻の切実さがよく伝わってきた。
死んだ夫と二人で足跡を辿る、こんな切ない旅があるだろうか。その先に別れが待ち受けているのを意識しながら二人を見守るのは、胸が引き裂かれそうだった。そこには透明な愛だけが...続きを読むあって、二人がずっと一緒にいられればいいのにと願わずにはいられない。
死者が生者の中に紛れて仕事をしたり物を食べたりしているのは不思議な感覚だった。でもそうだったらいいなと思う。世界との別れにだって納得する時間が欲しいから。
印象的な、口ずさみたくなるような文章がいくつもある。その中でもラストの1、2ページがとても好き。ヤコブの梯子が見える海で、二人熱いコーヒーを飲んで……こんなに静かで美しい別れのシーンがあるなんてと、うっとりしてしまう。そして渡り鳥が飛び立つシーンをそこに持ってくるのがつらい。それだけで、優介が去り瑞季も前に進まねばならないと分かる。儚いけれど二人が在るべき場所へ向かったのならそれが一番良いのだと思う。

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Posted by ブクログ 2021年01月19日

非現実的な設定なのに、不思議とすごくリアルで現実的。なんだかずっとふわぁッと夢の中を漂っているようで、堅実に日々の営みを繰り返している。本当に不思議な時間だった。
生と死はそのくらい曖昧なのかな。
その時の自分のステージで受ける印象が変わりそうな作品。またいつか読もう。何度も読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2019年12月03日

三年前に失踪した夫が突然、帰ってきた。しかし、自分はすでに海の底にいるという。2人は、優介が瑞希の元に帰るまでの3年間の道程を辿る旅に出た。交番の、優介の公開捜査の色褪せたポスターや、いつ消えてしまうとも知れない恐怖。3年間に優介が関わった生者や死者たちとの交流。瑞希が現実に体験している事なのに、妙...続きを読むにフワフワした気持ちにさせられる。瑞希を裏切っていた優介が残した濃密な2人の時間。旅を終え、優介が伝えたかった事を知った時、瑞希はとても愛してもらえていたんだと思った。2人の想いがとても沁みた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年02月07日

夫と旅に出る。
3年前突然失踪し命を落とした夫と、夫の死後の軌跡を遡る旅に。

静かで安らかな二人っきりの旅。
会話の少ない二人だけれど、行間から穏やかな想いがひしひしと伝わる。
「忘れてしまえばいいのだ、一度死んだことも、いつか死ぬことも。何もかも忘れて、今日を今日一日のためだけに使いきる。そうい...続きを読むう毎日を続けてゆくのだ、ふたりで」
生と死、本来相対する二つの領域の垣根を取り払ったかのように思えた二人。
ずっと二人でこの世をさ迷っていたかった。
けれど二人の間に静かに漂う淡い霧のような境界もいつかは晴れる。
「きみには生き運がある」
夫の発した寂しい言葉だけを後に残こして。
ずっと曖昧に描かれていた生と死の境目。
旅の終わりが近づくにつれ、くっきりと明確になってしまったことが、何より悲しくて辛い。

深津絵里さんと浅野忠信さん主演の映画もいつか観てみたい。

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Posted by ブクログ 2018年11月18日

3年前に失踪した夫が帰ってきた。だがその夫の身体は遠い深い海の底で蟹に食われてしまったという。3年かけて妻のもとに帰ってきたその道を、今度は2人で遡って旅をする。それは過去を遡る旅となり、後悔も、悲しみも、痛みも包み込んで、たどり着くであろう未来への旅路となっていく。

死と生の境目ははっきりとした...続きを読む壁に遮られたものなんかではなく、ほんの少しだけ開かれたドアの隙間から漏れてくるよう光のように交わることがあるのだろう。その光は太陽のような燦々とした光ではなく、朧げで儚げな月の光のようなものだけど。水が高きから低きへ流れて、川となり、海について、また水蒸気となって天に上るように、人の命も流れ流れて巡っているのかもしれない。
人の死という避けえない悲しみを、こんなふうに安らかに静かに受け入れることが出来るならどんなに救われることだろう。それは一瞬にして出来ることではなく、時が味方となって成し得ることなのだろう。
そんな感慨にふけるのでした。

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Posted by ブクログ 2017年07月02日

ファンタジーであり不条理であり寓話でありロードムービーでありコメディでありハートウォーミングものでありホラーでもある。

浅野忠信はもとから魂の抜けているような顔。なのにチャーミングという。
ばっちりの演技。(空も風も痛いという凄まじい台詞は、そこらへんの役者には言えないだろう。)
深津絵里は静かに...続きを読む悲しみを持続しているような顔。
だからこそ笑顔や笑い声が嬉しい。
怒った手つきで白玉団子を作るとか、いい。
なにやかやと手仕事をする所作も素敵だ。
蒼井優の自信たっぷりのしたたか悪女。
ほか、小松政夫をはじめとして「いいツラ構え」のおっさんたち。

旅は4つに分割できると思うが、「自分の死に気づかない人」と生者のそれぞれの在り方を見届けることで、自分たち夫婦の在り方も決着をつけようと決意する。
死者の未練、生者の執着、それぞれがお互いを引き止めたり引っ張ったりする。

この均衡不均衡は、生者死者だけでなく夫婦の関係性でもあるのだ。
死後でも「愛の確認」をしなければならないとは。(恨みの幽霊は存在しない。)
そして普段の生活では自分に見せてくれなかった「別の顔」を見て、理解を深めていく。

生死の境界や通り道は、黒ではなく白や霧や湯気のイメージ。

全編仰々しいとともに美しく幸福なオーケストラ。
これも清節と思えてしまえるくらいには盲目的信者である。
しかし、ここまで不穏なのに幸せな感動に浸れるのは、もう清でしかありえないのではないか。

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と、映画版で書いた。

抒情的な怖さを醸し出す設定や小道具や人物や背景やは清の工夫なのだろうとてっきり思っていたが、
実は原作をかなり忠実になぞっていた。
ということは「湯本香樹実の黒沢清性」。変な表現だが。
「死者は断絶している、生者が断絶しているように。死者は繋がっている、生者と。生者が死者と繋がっているように」
という台詞なんて、「回路」に出てきてもおかしくない。
死者が自分の死に気づいていなかったり、生者に交じっていたりするところも。

むしろ映画のほうが、ピアノ勝手に触らないで! や、今度結婚するんです、ふふふ不敵な笑み、や、殴り合い、などなど、エモーショナルな場面が多くなっているほど。
つまり原作は相当に淡々としている。それでいての叙情だから、良作なのだ。

また小説で気づいたのは、決して夫婦の話に限定していない、むしろ親と子という軸が盛り込まれた作品なのだということ。

あとは全編を通じて水の気配。これは小説ならではの巧みな技巧だ。

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Posted by ブクログ 2023年02月21日

” でももしかしたら、したかったのにできなかったことも、してきたことと同じくらい人のたましいを形づくっているのかもしれない。”

表紙がすてきで購入。
とても静かな作品。ときどき息をのむような美しい表現が、水面に反射しているようにきらっ、きらっとひかる。

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Posted by ブクログ 2022年06月26日

映画になっていたんですね。テレビでこの映画を観てから本へ。映画では深津絵里さんと浅野信忠さんが主人公。静かに静かに物語が進みます。
最後の最後、二人がどうなったのかどうしても思い出せなくて本を読んだのですが、、、明記はないんですね。

もしも死んでしまった人に会えるのなら私も会いたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年06月08日


ようやく再会できた最愛のひとは、果たして私の知ってるあのひとなのか。
水の中をゆらゆら揺れるふたりの関係。姿が掴めない夫の輪郭のなさ。

そこに戸惑いつつも、新たに関係をつむぐふたり。きっと、夫と妻の立場が逆だったらこうはいかないだろう。瑞稀の愛と芯の強さ。
大切な人を亡くした人なら、誰しも幾度と...続きを読むなくもう一度会えたら、と思うだろう。夫と旅をする彼女は、羨ましくも映る。

そして、タイトルの秀逸さ。「岸辺の旅」
岸辺は、水と陸地の境にある場所。物語は、その分け隔てられた存在であるふたりが「岸辺」のようにその境が揺れながらでも隔てられていることが印象的。

ひとつに、生と死という隔たり。

瑞稀があちら側にいってしまうのではないか。それが彼女の望むことだと思う。それでも、いくら死の淵に行きかけても彼女は必ず生きる。
これからも生きていくんだということに、著者は読者へ試練であり、希望を与えているように感じた。この終わり方で良かったと思いたい。

さらに、夫婦という存在の隔たり。夫婦という決して血はつながらないのに、最も近しい存在のふたり。

隔たりと強調しつつも、この作品で生と死は親しい。死は忌み嫌うものではなく、もしかしたら本当に死者も生きている人みたいに過ごしているのかもしれないなと思わせる。

あと、出てくる食べ物が非常にリアル。美味しそう。生と死をテーマにした話なのに緩やかで、ファンタジー要素が強いのにリアリティを感じるのは登場する食べ物のおかげだろう。どんな状況にあっても、死者も生者も腹は減る、その愛おしさ。しらたま、鍋、餃子、ロールケーキ、、たべたい。

時間をかけて読んだ。  

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年01月09日

朝ドラの深津絵里が17歳の役を!すごい!となり深津絵里を検索したときに映画『岸辺の旅』のことを知った。原作が小説だったので読んでみることにした。

最初からなかなか掴みどころがないふわふわとした話だと感じた。死んだと思って3年間探し続けた夫が急に目の前に現れた時、そのときの二人の会話からああ、この夫...続きを読むは死んだんだろうなとは何となくわかる。そのあとすぐにふっと消えてしまうのだろうと思ったら、なかなかどうして、ずっとそばにいる。普通にご飯も食べているようだし、主人公以外の人にも見えているようだ。
いわゆる幽霊なの?なんなのこの存在は?と思いながら、いつ消えるのか、いつ消えるのかと思いながら読むけどなかなか消えないので、あれ、これはこのままいくのか?と淡い希望も持つ。

このままずっとそばにいてくれたらいいのにな、と思うけど、そうはいかなさそうだということはきっと主人公にも初めから分かっている。分かっているからこそ、夫のことをしっかり見つめていよう、この手からすり抜けないように掴んでいようとする姿が切ない。

ちょっと中だるみしそうかな…と思った時に、夫には実は浮気相手がおりその人と会って話をするシーンはまた物語に惹きつけられるきっかけになった。夫がいなくなった時に見つけてしまった浮気相手からの手紙が、怒りというよりは夫を探そうという気持ちを応援するお守りのような存在になっていて、そのある意味不謹慎な内容が夫を失踪や死から遠ざけていると感じられて救われていたんだろうなという辺りには、人間の複雑な心のありようを感じた。

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Posted by ブクログ 2021年05月12日

死んでしまった人に思いのある人にとってなんと心に響く物語だろう。
白玉を作っていたらひょっこり現れた優介。生者のような死者と根源に向かうような旅。静かに流れる時間がそれぞれの過去の時間軸と重なり合ってたゆたって存在している。現実感のある不思議な世界でした。

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Posted by ブクログ 2020年04月13日

積んで置く状態だった作品に、やっと目を通した。普通の積読ではない。毎日テレビを見る時のそば机の上に積んでいて、目の端で存在を確かめながらまる4年、それでも紐解かなかったのである。いつでも読める、内容は予想がついている、楽しい話ではない、といったことが分かっているときに、私の「直ぐにやらない脳」が発出...続きを読むする。

買ったのは、黒沢清監督「岸辺の旅」(深津絵里・浅野忠信主演)が素晴らしかったからである。私の人生最恐のホラーは黒沢清監督の「回路」である。時々それに似た演出を見せながら、なんと恐怖感情ではなく意も言われぬ感情が出てきた。それを確かめたくて買った。

夫・優介の失踪から3年目のある日、ふと顔をあげると配膳台の奥の薄暗がりに優介が立っているのが見える。瑞希は驚かない。優介の好物のしらたまを作っていたので、彼が幽霊であることを自然に受け入れて会話を始める。

この導入部が素晴らしい。大切な人を亡くした者ならば、必ず思うはずだ。「あの暗がりに出てきてはくれないだろうか‥‥」。

確かめたかったのは、これはいかにも黒沢清らしい演出だったのだが、いったい何処から何処までが、原作から引き出したものなのだろうか、ということだった。結論から言えば、ほぼ原作に忠実に監督は映画をつくっていた。全ての台詞と描写が映画に入っているわけではない。むしろ、どれを削ったかが、監督の仕事だったかのようだった。カンヌで監督賞を受賞したこの作品の世界観は、実は湯本香樹実の世界観だったことを知り、私は心底驚いた。

2人は失踪の3年間の優介の魂の旅を辿り、彼が入水した海の岸辺に至る。映画では何度か確かめたが、優介には影がある。食事もする。ホントは生きているのではないか。亡くなっている人とも出会うが、生きている人と、優介はその間親交を持っていた。けれども、やはり死んでいるのである。それを納得する旅でもあった。岸辺は、此岸(この世)と彼岸(あの世)の境でもある。このとき、瑞希には2つの選択肢があるだろうし、それを迷っているはずだと私は思っていた。即ち、優介を追って後追い自殺をするか、それとも優介の成仏を見送るか。原作ではどうなっているか。結果は、映画と同じだった。そうだよな。それは瑞希の迷いではなく、私の迷いだった。

ふと見上げると、机のそばの暗がりに積読状態だった「岸辺の旅」の文庫本が見えた。私は、自然とそれを読み始めた。

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Posted by ブクログ 2019年06月18日

自分の前から、この世界からいなくなってしまった人と時間を共にできたらどんなにいいだろう。相手について知りたかった事が全てわかるわけではないけれど、自分の心の整理になる。長い旅が終わりに差し掛かる気配が感じられる箇所では涙が出てきた。いい本でした。

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購入済み

雰囲気が好き

2015年05月31日

湯本香樹実さんの小説の文面や雰囲気が好きです。
この作品に関してもそれは健在で、現実と非現実が混在する不思議な感覚で読んでました。
ラストがあまりにもあっけなく、涙腺が中途半端に緩くなったところで止まってしまったのがちょっと残念です。
瑞希の感情がもう少し見えたらよかったかな~と思いつつ、もしまた新...続きを読むしい作品が出たら絶対買うんだろうなと思いました(笑)

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Posted by ブクログ 2016年07月23日

3年前死んだ夫がある日帰ってきた。死者と言っても生前と全く変わらない姿。そして2人は死後の軌跡をたどる旅にでる。
その旅は突然失踪した夫の後悔や、妻の喪失感を埋めるものなのでしょうが、それが強く表に出てくるわけではありません。死者となった夫が彷徨った3年間に出会った様々な人々との再会が中心に描かれて...続きを読むいきます。
面白いかと問われると、ちょっと困ってしまいますが。。。
不思議な話です。死と生が渾然と混じり合って、なんとも言えない独自の世界を作り上げています。
そして如何にもこの物語に相応しい静謐なエンディングでした。

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Posted by ブクログ 2022年06月21日

終始「水」のイメージを強く感じた。
水のように一箇所に留まらず、流されるように旅を続ける瑞希と優介。瑞希の、優介に会えた嬉しさよりも、優介がまた居なくなるかもしれない恐怖が強く感じられて、ずっと光の届かない海底にいるような、ゆらゆらと揺れるような話。

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Posted by ブクログ 2022年02月03日


西日暮里 BOOK APARTMENTで購入。
表紙が見えないようにされており、「考えると変な話ですが妙に残ってしまいます。」という一文の紹介で購入。
感想「確かに。」

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年01月03日

深津絵里に興味を持って主演映画の原作ということで読んでみた
こんな本も書く人だったのか
そういえば生き死にについてよく書く人だな
夏の庭を読み返そう
こんなにも集中して情景を想像するって作業は初めてしたかも
岸辺の旅ってタイトルと装丁がぴったり
これも浅野忠信だからか、私の男の、日本の果ての海を思い...続きを読む出した
別れが分かっている時に、おっきな月だねえだなんて関係ないこと言わせるの理解できなかったけど、もし私が同じ場面に立たされたら、ほっとするのかもしれないって初めて思った

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Posted by ブクログ 2021年10月02日

行方不明だった夫が帰ってきた
しかし体は蟹に食べられたという・・・
死者?となった夫との旅物語
語り手の女性はでも普通に受け入れて旅生活を続ける
そんな世界があってもいいのかなと感じたけど
でも実際にあったらいろいろと混乱するなとも

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Posted by ブクログ 2021年06月10日

静かでじんわりとした余韻が残る作品。
三年前に失踪した、瑞希の夫・優介が、ふいに現れます。
ですが、優介いわく“俺の体は海の底で蟹に喰われてしまった”と。つまり、既に死んでいるというのです。
そんな優介に導かれ、彼の三年間の足どりを遡るように二人は旅に出ます。
旅の間、失踪中の不在だった期間を埋める...続きを読むようによりそう、二人の何気ないやり取りに、かけがえのない人と過ごす時間の尊さというものが伝わってきます。
もしかしたら、個人的に最近身内を亡くした事もあり、そうした事情で、“死者との繋がり”というものが殊更心に染みてくるのかもしれません。
全体的に“水の気配”が濃厚に漂う、朧げな雰囲気は、常世と現世の狭間を感じさせるものがあります。
この作品は、深津絵理さんと浅野忠信さん主演で映画化されているので、そちらも観てみたいと思いました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年07月28日

生と死のはざまってこういうことなのかな?
生きている側も死んだ側も楽しくて辛い旅なんだろうと
感じた作品

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Posted by ブクログ 2020年03月13日

失踪した夫が戻ってきたけれど、彼は既に海の底で蟹に食べられて死んだ人だった。
衝撃の幕開けだったけれど、その死んだ地から主人公の元へ帰ってくるまでに辿った土地土地をゆっくりと旅する二人のペースはとても心地よかった。

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Posted by ブクログ 2019年12月10日

上手く言えないけど、水のようなクラシック音楽のような文章だった。世界が流れてくる、いつのまにか不思議な世界にいるような感覚。
みっちゃんは受動的なのか逞しいのか。最愛の人とどこかで似通ってて通じ合ってるなら幸せだなと思った。
私は最愛の人そもそもいないし、無くした経験もないけれど、生と死はずっと隣り...続きを読む合ってるよね。物語を通して生と死が揺らぎつつ、くっきりとその境目が見えてくる。

・夏は急速に色あせ、日の光に繊細な角度がつき、夜の闇は濃くなった。
・したかったのにできなかったことも、してきたことと同じくらい人のたましいを形づくっているかもしれない。

しらたま作って食べたくなった。

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Posted by ブクログ 2019年03月07日

死んだ夫が帰ってきて、一緒に旅をする話。いわゆる幽霊とは違い、ものを食べたり、生きている人と変わらないような行動をするけれど、夫本人も妻も、彼が死んでいることを判っている。こんなことが本当にできたらいいなと思う一方、ハッピーエンドになりようがないことも判っていて読むわけで、読んでいる間中、ずっとどこ...続きを読むか寂しい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年01月19日

長い間失踪していた夫・優介がある夜不意に帰ってきた。ただ、もうこの世の人ではないという。妻・瑞希は優介と共に彼が死後歩んだ軌跡をたどる。

彼岸と此岸の行き来しながらの二人の道行きが、湯本さんならではの美しい文章で描かれると、こうして亡くなってからもあの世に行かずに生活している人がいそうな気がしてく...続きを読むるから不思議。
二人の旅の途中で出会う人々もそれぞれに後悔や過去の重たい何かを抱えて生きているのが哀しい。

再生の物語は好きじゃないし、心震える結果にもならなかったけど、湯本さんの文章はどこまでも美しくて、静かな水辺の景色が脳内で再生されて、正に映画化にピッタリの作品だと思った。
もちろん優介は浅野忠信、瑞希は深津絵里で脳内再生。優介が浮気していたのはなんだかな~だったけど、浅野忠信なら許すか・・・

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Posted by ブクログ 2018年03月21日

解離性健忘 長い戒名のついた位牌でも突きつけられたように畏まった 剃刀負け 歯科医らしい器用な指先 一度死んだことも、いつか死ぬことも。何もかも忘れて、今日を今日一日のためだけに使い切る。そういう毎日を続けていくのだ、二人で。 アップライトピアノ 辻説法でもするように彼は今ある世界の不思議を説く 川...続きを読む面が輝いている 諍い 真鍮しんちゅう 荼毘に付された 細かな泡粒あわつぶ 迷い箸をするように鋏を揺らしている そうだ、そうやって少しずつ、お互いの世界をひろげていったのだ。 しらたま 既に体は海の底で蟹に食べられてしまった 生と死がとても親しい 寧ろ混じり合うことを希求するふうに 生と死の狭間で宙吊りにされてきた歳月 くつろ寛い 抗いようなない現実 死と馴染あう用意があったことを見逃してはならない 万物流転ばんぶつるてん 生者と死者がお互いを赦しあう旅でもあるのだった 平松洋子

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Posted by ブクログ 2018年01月27日

「生と死」という概念について、ライフワークとでも申しましょうか、絵本であれ、小説であれ、その境界領域を描いてらっしゃる湯本香樹実さんです。「くまとやまねこ」、大好きです。今回、「岸辺の旅」(2012.8 文庫)を読みました。生者・瑞希(みずき)と夫優介(死者)の彼岸・此岸の旅の物語。なんとも不思議な...続きを読む世界に迷い込みました。生者と死者がお互いを見つめ、お互いを赦し合う、そんな世界なのかもしれません。私には、まだ難しい物語でした。配偶者というのは、わかるという意味、わからないという意味、不思議な関係ですね!

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Posted by ブクログ 2017年09月08日

ただ体が反射的に動いて、指にクリームをのせてしまった。

死んだはずの夫・優介が、夜中に食べるロールケーキのシーンがとても印象的だった。両手で掴んでかぶりつく優介。反対側から出てくるクリームを反射的にすくう妻・瑞樹。彼女のこの行動は、無意識であるが、食べることを忘れないしたたかさを持つ。食べものを通...続きを読むして、少しずつ生きる者と死者との境界線が見えてくる。
不思議だったのが、蟹に食べられて死んだという優介の言葉。タイトルにもあるように、全編を通して水の気配が色濃い。なぜクジラや鯵などではなく、蟹なんだろう。小さくかわいらしい、滑稽な死に方である。

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Posted by ブクログ 2017年06月17日

静謐なお話の中に、思わず読みすすめてしまうものがあった。なんだろう。
非日常な旅の中で描かれる日本の風景が、どれも「この風景見たことあるかも」というリアルな感じで、そのアンバランスからくるものなのかな。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年12月05日

不幸を背負い込むのはきらいだ。
だけど、血とか肉とかになるのかもしれない。
こころの奥へ。深く深く。

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Posted by ブクログ 2016年07月31日

すごく盛り上がりのあるストーリーというわけではないのに、なぜか早く読み進めたくなる一冊。非現実な設定だけど、夫婦の一つの穏やかな形を垣間見たような、柔らかな感情になれる小説だった。

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