湯本香樹実のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ただ体が反射的に動いて、指にクリームをのせてしまった。
死んだはずの夫・優介が、夜中に食べるロールケーキのシーンがとても印象的だった。両手で掴んでかぶりつく優介。反対側から出てくるクリームを反射的にすくう妻・瑞樹。彼女のこの行動は、無意識であるが、食べることを忘れないしたたかさを持つ。食べものを通して、少しずつ生きる者と死者との境界線が見えてくる。
不思議だったのが、蟹に食べられて死んだという優介の言葉。タイトルにもあるように、全編を通して水の気配が色濃い。なぜクジラや鯵などではなく、蟹なんだろう。小さくかわいらしい、滑稽な死に方である。 -
Posted by ブクログ
『夏の庭』であまりにも有名な湯本香樹美氏の作品。娘がくれた本。
現在は医者となった主人公が、十歳の頃、母と、母の父であるてこじいと過ごした日々を回想する物語。
回想場面が中心で、そこは描写、物語の運びともうまいのだが、現在の場面ではやや不十分な感じが残った。
勤務医として単身赴任しているのだが、大学で教え子に母の面影を見たりする場面では、教え子との今後の展開を感じさせるが、何も書かれず、尻切れとんぼだったりする。
文庫版あとがきでは、なだいなだ氏が絶賛しているのだが、そうも思えず、なんだか腑に落ちない。
うまいことはうまいんだけど…。中途半端に古い感じがした。
『夏の庭』を輩出している人だけに