湯本香樹実のレビュー一覧

  • ポプラの秋

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    大好きだった父を突然亡くした8歳の少女。母に連れられ、小さなアパートへと引っ越すと、そこで出会ったのは不思議な大家のおばあさんだった。悲しみと不安で心を閉ざしてしまった少女に対し、おばあさんはとっておきの秘密を打ち明ける。おばあさんは天国に手紙を届けることができるというのだった…

    小さなアパート、父のいない暮らし、不安や悲しみを抱えながら過ごす毎日。
    全てが自分に起きているかのようで、幼い頃に感じた心細さ、好奇心、温かさが蘇る。いい意味で昔に引きずられる1冊。

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    2025年08月13日
  • ポプラの秋

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    夏の庭に続き読んでみました。
    今回も大泣きしながら読みました。

    懸命に、いろいろなことを胸に抱えながら、転びながら歩んでいく想い。
    亡くした人に対する想い。
    わかりにくい心遣いも含めて、人の営みがぐさぐさ…児童書コーナーにあったんです。何故なのでしょう。人生経験積んだ大人にも、たくさん読んでほしいです。
    次は「春のオルガン」を読みたいと思います。

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    2024年11月20日
  • 岸辺の旅

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    読み終わってからずっと心に残ってる。
    ずっと一緒にいたい、それが叶わないことが分かっていても、望んでしまうのはわがままなのだろうか。

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    2024年06月18日
  • 岸辺の旅

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    ネタバレ

    三年前に失踪した夫との再会。
    死者の話は悲しい。今にも実体を失って消えてしまうのではないかと気を揉む妻の切実さがよく伝わってきた。
    死んだ夫と二人で足跡を辿る、こんな切ない旅があるだろうか。その先に別れが待ち受けているのを意識しながら二人を見守るのは、胸が引き裂かれそうだった。そこには透明な愛だけがあって、二人がずっと一緒にいられればいいのにと願わずにはいられない。
    死者が生者の中に紛れて仕事をしたり物を食べたりしているのは不思議な感覚だった。でもそうだったらいいなと思う。世界との別れにだって納得する時間が欲しいから。
    印象的な、口ずさみたくなるような文章がいくつもある。その中でもラストの1、

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    2023年01月21日
  • ポプラの秋

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    本当に優しくて、せつなくて、人が恋しくなる本だと思う。私もおばあさんのようになりたいなぁ。
    また来年ので秋に再読したい。
    『夏の庭』も大好きだけど、こちらも好き。
    何だろう。この、悲しいような、せつないような、でもあったかくて、清々しい読後感。

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    2022年10月15日
  • ポプラの秋

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    はあ、ってため息の出るお話
    疲れるとか、つまらないとかでは全くなくて
    ただただ切なくて、美しくて、優しい
    愛は、暖かくて幸せで冷たくて苦しい

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    2022年10月06日
  • 西日の町

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    思い掛けず良かった。
    この著者について何も知らずに古本屋でなんとなく手に取ったのだけど。

    簡潔で無駄が無いのにやわらかい、頭だか心だかにすっと入ってくる文章で、いつまでも読んでいたいと思えた。
    情報ではなく空気そのものを読ませるような。

    難しい言葉や表現を使っているわけでもなく淡々としているのにかっこいい。よごれた老人の話なのに。
    こういうのを文体というのかな。
    こんな文章を書けたらいいのに。

    話し手の僕、僕の母、てこじい。
    ほとんどこの三人だけのお話。
    母とてこじいとの間の屈折した感情と、それを観察しながらゆっくりと何かを受け入れていく僕。

    家族の間にある複雑な感情とかって、むりやり

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    2022年07月06日
  • 西日の町

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    母子家庭に唐突に割り込んできた祖父。母にとってどうしようもなく迷惑な父親である祖父との、短くも濃厚な3人暮らしの中で、それぞれの足りないものを、そうとは気付かないまま与え合っていたのだろう。

    選りすぐりの言葉たちと音楽のような文体に、肉親を思いやる心情を織り込んだ、優しさに満ちた物語だった。

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    2022年05月10日
  • ポプラの秋

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    父親を亡くした少女。母と二人、ポプラの木があるアパートに移り住む。
    そこで繰り広げられる大家のおばあちゃん、隣人との心暖まる交流を描いた話。

    戸惑いや悩みを抱えながらも人を大切に思う気持ち、何かを守る気持ちが少女に芽生えていく、そんな場面をポプラの木が揺れる風や光、空気感を感じながら読めた。
    隣人との関わりや、オサム君との遊び、おかあさんへの思い、おばあちゃんへの思いなど日々の思いをお父さんへ綴る手紙には涙腺が緩む。

    ずっと少女目線で読んでいくが、最後のお母さんからの手紙でお母さんの娘への思い、お父さんへの思い、これまで生きてきた葛藤、苦難の時間を感じ、お母さん目線になる。

    人は人を許し

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    2022年01月28日
  • ポプラの秋

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    季節を感じさせる物語。少女の心の傷が癒やされ、成長していく。あたたかい気持ちになりました。また秋になったら読みます。

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    2022年01月12日
  • ポプラの秋

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    夏の庭に続く第2作目。
    自分のオススメ欄に出できて鵜呑みにして読んだ、
    サラッと読めた最後の方が衝撃だった
    この事実を持って再読すればなにか違う事が分かる

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    2021年12月26日
  • ポプラの秋

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    十代の頃は、「私」とおばあさんの関係ばかりが気になった。
    今は母親の置かれた状況と決心に震える。
    何十年後には、おばあさんのように生きるにはどうしたらいいかと考えるかもしれない。
    こういうのが、世代を超えて読むことのできる本というのじゃないか。私の人生を支える存在と呼べるのじゃないか。

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    2021年03月03日
  • 岸辺の旅

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    非現実的な設定なのに、不思議とすごくリアルで現実的。なんだかずっとふわぁッと夢の中を漂っているようで、堅実に日々の営みを繰り返している。本当に不思議な時間だった。
    生と死はそのくらい曖昧なのかな。
    その時の自分のステージで受ける印象が変わりそうな作品。またいつか読もう。何度も読んでみたい。

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    2021年01月19日
  • 西日の町

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    ネタバレ

    詩集のように大きな字で読みやすいと思ったら、この短編小説は一文一文がまるで詩であった。
    (引用 1)
     その頃僕たちが住んでいたのは、北九州のKという町だ。Kは製鉄が生んだお金で栄えた町で、人の気質や言葉は荒っぽかったが、町並みにはしっとりしたあたたかみがあった。まだ決定的にさびれてはいないのだけれど、ある時点で進むことをやめてしまった、そういうものだけが束の間持つことの出来るあたたかみだ。

    (引用 2)
     離婚から二年ほどの間に、母は僕を連れ、まるで西日を追いかけるように西へ西へと転々とする生活を続けた。(以下略)それはまさに、「風に吹かれる二枚の木の葉のような生活だった」はずだ…

     て

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    2021年01月15日
  • 西日の町

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    ネタバレ

    42歳大学教授の、少年時代の回想録。

    離婚してからの2年間、まるで西日を追いかけるように西へ西へと点々と移動し、ようやく辿りついた北九州の町。
    母息子二人きりの、西日の照りつける寂れたアパートでの慎ましい暮らしの中に、突然として祖父が転がりこんで来た。
    いきなり浮浪者のような身なりで現れたかと思うと、部屋の片隅でじっとうずくまる"てこじい"の一挙手一投足に10歳の少年の目は釘付けになり、いつしか"てこじい"中心の生活となる。

    「夜、爪を切ると、親の死に目に会えない」という迷信を息子に教えながら、父・"てこじい"の目の前で深夜ゆっく

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    2020年10月18日
  • ポプラの秋

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    再読。
    よかった。
    生と死。子どもと老人。
    亡くなった人へ届けられる手紙。
    生きている人の再生。
    千秋がポプラ荘の大家のおばあちゃんによって、生きる力を得て行く。そしておばあちゃんの死によって、再びそのことに気づく。

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    2020年04月28日
  • 岸辺の旅

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    三年前に失踪した夫が突然、帰ってきた。しかし、自分はすでに海の底にいるという。2人は、優介が瑞希の元に帰るまでの3年間の道程を辿る旅に出た。交番の、優介の公開捜査の色褪せたポスターや、いつ消えてしまうとも知れない恐怖。3年間に優介が関わった生者や死者たちとの交流。瑞希が現実に体験している事なのに、妙にフワフワした気持ちにさせられる。瑞希を裏切っていた優介が残した濃密な2人の時間。旅を終え、優介が伝えたかった事を知った時、瑞希はとても愛してもらえていたんだと思った。2人の想いがとても沁みた。

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    2019年12月03日
  • 岸辺の旅

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    ネタバレ

    夫と旅に出る。
    3年前突然失踪し命を落とした夫と、夫の死後の軌跡を遡る旅に。

    静かで安らかな二人っきりの旅。
    会話の少ない二人だけれど、行間から穏やかな想いがひしひしと伝わる。
    「忘れてしまえばいいのだ、一度死んだことも、いつか死ぬことも。何もかも忘れて、今日を今日一日のためだけに使いきる。そういう毎日を続けてゆくのだ、ふたりで」
    生と死、本来相対する二つの領域の垣根を取り払ったかのように思えた二人。
    ずっと二人でこの世をさ迷っていたかった。
    けれど二人の間に静かに漂う淡い霧のような境界もいつかは晴れる。
    「きみには生き運がある」
    夫の発した寂しい言葉だけを後に残こして。
    ずっと曖昧に描かれ

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    2019年02月07日
  • 岸辺の旅

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    3年前に失踪した夫が帰ってきた。だがその夫の身体は遠い深い海の底で蟹に食われてしまったという。3年かけて妻のもとに帰ってきたその道を、今度は2人で遡って旅をする。それは過去を遡る旅となり、後悔も、悲しみも、痛みも包み込んで、たどり着くであろう未来への旅路となっていく。

    死と生の境目ははっきりとした壁に遮られたものなんかではなく、ほんの少しだけ開かれたドアの隙間から漏れてくるよう光のように交わることがあるのだろう。その光は太陽のような燦々とした光ではなく、朧げで儚げな月の光のようなものだけど。水が高きから低きへ流れて、川となり、海について、また水蒸気となって天に上るように、人の命も流れ流れて巡

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    2018年11月18日
  • 岸辺の旅

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    ファンタジーであり不条理であり寓話でありロードムービーでありコメディでありハートウォーミングものでありホラーでもある。

    浅野忠信はもとから魂の抜けているような顔。なのにチャーミングという。
    ばっちりの演技。(空も風も痛いという凄まじい台詞は、そこらへんの役者には言えないだろう。)
    深津絵里は静かに悲しみを持続しているような顔。
    だからこそ笑顔や笑い声が嬉しい。
    怒った手つきで白玉団子を作るとか、いい。
    なにやかやと手仕事をする所作も素敵だ。
    蒼井優の自信たっぷりのしたたか悪女。
    ほか、小松政夫をはじめとして「いいツラ構え」のおっさんたち。

    旅は4つに分割できると思うが、「自分の死に気づかな

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    2017年07月02日