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名作『夏の庭』の作家の新境地 少年の日、西の町で暮らす母と僕のアパートに「てこじい」がふらりと現れた。祖父の生涯と死、母の迷いと哀しみを瑞々しく描く
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Posted by ブクログ
思い掛けず良かった。 この著者について何も知らずに古本屋でなんとなく手に取ったのだけど。 簡潔で無駄が無いのにやわらかい、頭だか心だかにすっと入ってくる文章で、いつまでも読んでいたいと思えた。 情報ではなく空気そのものを読ませるような。 難しい言葉や表現を使っているわけでもなく淡々としているのに...続きを読むかっこいい。よごれた老人の話なのに。 こういうのを文体というのかな。 こんな文章を書けたらいいのに。 話し手の僕、僕の母、てこじい。 ほとんどこの三人だけのお話。 母とてこじいとの間の屈折した感情と、それを観察しながらゆっくりと何かを受け入れていく僕。 家族の間にある複雑な感情とかって、むりやり名前をつけて分析して定義してしまったらその瞬間につまらなく思えてしまうものだから、省略された言葉で行間に漂わせるくらいが一番心地良いのかもしれない。 最近、人生とか生き方とか、そういった事を考える出来事がおおかったから、余計におもしろかったのかな。 他の作品も読んでみたい。
母子家庭に唐突に割り込んできた祖父。母にとってどうしようもなく迷惑な父親である祖父との、短くも濃厚な3人暮らしの中で、それぞれの足りないものを、そうとは気付かないまま与え合っていたのだろう。 選りすぐりの言葉たちと音楽のような文体に、肉親を思いやる心情を織り込んだ、優しさに満ちた物語だった。
芥川賞候補作。僕のアパートに「てこじい」という母の父が突然現れて居つく。母はてこじいに冷たい態度だし、てこじいもほとんど話もせずただ居るだけだった。てこじいの秘密もだが、母の秘密、母の秘密ためにてこじいのとった行動。とにかくこれで良かったのだと、読み終わって涙がでる最後でした。
あの一年、 時間は安物の和風の壁に染み付いた、てこじいの汗だった。 黒く、ぼんやりとした輪郭を描いて、 それは今も僕の中にとどまっている。
記憶の引き出しが突然開いて、ずっと忘れていた思い出がよみがえることがある。この本はそんな引き出しの鍵かもしれない。 引き出しの中には嬉しかったことや楽しかったことがあったり、それよりちょっとだけ多く、悲しかったことや辛かったことが入ってたりする。
てこじいも母も僕も生きるのに不器用で、お互いを思いやるのに、素直になれなくて。登場人物の心情が十分に伝わってきました。ココロ豊かになれる一冊。
時間軸が回想をゆらゆらしているかのようなのに自然に入ってくるし文章も心地よい。てこじいになんで?と思いつつ僕の穏やかな心を読んでいる気持ちになる
2015.4/24 『夏の庭』と同様、老人と少年が織りなす物語。でもそれが突然転がり込んできた今はやつれた放蕩者の祖父っていうのが...言葉は多くないのにリアルで読み進めてまう。祖父の関係にハラハラする少年や、恨みつらみを抱えながら放り出せない母親の気持ちが手に取るように分かる。静かに涙した。
母とてこじいの確執が淡々と、そしてしっとりと語られます。 てこじいを邪険に扱いながらも、どこかに子としての優しい心遣いを見せる母。そしてだんまりを決めつつも、母のために行動に出るてこじい。 心情が直接語られる訳では有りません。10歳の僕の目を通して描かれる母とてこじいの矛盾した行動が、二人の精神...続きを読むの揺れのようなものを描き出して行きます。このあたりの描き方はとても上手さを感じさせます。 湯本さんは初めてです。2冊目のつもりだったのですが、梨木香歩さんと混乱してたようです。「夏の庭」と「裏庭」そのあたりが混乱の原因かも知れません。この作品はなかなか気に入ったのですが、他の人の書評を見る限り「夏の庭」の方が代表作のようですね。これもそのうち読んでみましょう。
家族の為を思うけど、不器用な父親と娘と孫の物語。 この3人の関係性だからこそ成り立つ物語だと思う。 ひどい父親と思いつつも、いい思い出を思い出したり 娘だって心から憎んでいるわけじゃないけど、 納得いかないもどかしい思い。 その間を埋める孫の存在がとてもよかったです。 卑屈にならず、いい子でほっとし...続きを読むました。
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