スタイリッシュなアクション小説
綾瀬はるか主演で映画化すると聞き、大慌てで2023年8月初旬読了。
「東京大震災」直後の帝都・東京と云う、あまり小説の舞台設定としては、あまり御目に掛からない素晴らしい時代にしたことは、とっても高く評価します。
この頃の日本について、テレビやメディアが「軍部がのさばっていた、言いたい事も言えない暗い日本」みたいな、碌に調べもせず勝手なイメージを植え付けているので、伸びやかにカッコよく行動するヒロイン、リリーは読んでいてとても新鮮でした。玉の井界隈の描写も素敵でしたね。
これは「映画のノベライズ本なんじゃないの?!」と、読後強く感じたぐらい映像的な描写が多く楽しめました。
物語自体は、かなり無茶…、イヤ失礼、かなりぶっ飛んだ話でしたが、《謎の財宝を巡る善悪関係無しの奪い合い》で、とても楽しいお話でした。
ただ気に成ったのは序盤、最初の20%辺りまではヒロインも出て来ず、自然描写や心象描写も欠けていたせいか、ちょっと話の展開が読めず粗雑な印象でした。それから本作で『大藪春彦賞』と云うのは如何なものでしょうか。銃器描写や戦闘描写を〝誰にでも分かる程度〟にしてしまったが為に、アクション小説としての「鬼気迫る様な迫力」に相当難がある気がします。仮にも軍部同士が戦う話なんだったら、兵隊さんのやられ方が簡単すぎる気も…。
これらの点は、大藪春彦は当然の事、この分野での往年の達人である先達《生島治郎,結城昌治,船戸与一,西村寿光,(初期の)志水辰夫,大沢在昌辺り》の作品を熟読して、良く勉強して頂きたいなと思います。
主人公であるヒロインに、何故『45口径のS&W・M1917』と云う、女性が持つには武骨過ぎるリボルバーを持たせたのか?少年にプローニングやベレッタを怪我無く扱えるのか?等、銃器の選択や描写をもっと掘り込めば、更にヒロイン像やその他の人物像の厚みが格段に増すと思います。又、彼女の戦い方は、ベースとして何なのか(空手,カンフー,マーシャルアーツ等)を明示すれば、アクションの迫力度が段違いに上がる気がします。
そんな訳で、映画は楽しみにしておりますが、原作者様には上記の点をちょっと突き詰めて頂きたいと、強~くお願いいたします。