げみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「鎌倉香房メモリーズ」の5冊目、にして最終巻。
前巻でなんとか雪弥が工房に戻ってきたこともあってからまたゆるゆると日常の謎を絡めながら香乃の顔の困った機能が発動されるお約束の展開に。
第1話は贈り物の香木を題材に進むお話。
語られる茶事の段取りは面白く、香木に無傷で健康だった木はないというのも興味深い。
第2話は行方不明の仏像を発端に深められたチヨちゃんとその兄・理久、曽祖父・伊助さんのちょっといい関係。
2巻に“戦時中だけでなく戦争が終わった後も続く悲劇”の話があったが、今回も伊助さんがシベリアで抑留されていた際の辛い話が出てきて、この作者さんの反戦に対する強い思いを改めて知る。
第3話は送り主不明のひな人形を巡って明らかになる響己さん兄弟の仲。
赤ん坊が苦手に見える雪弥に対してナナさんが語る言葉に、「子どもはいつでも守られるべき存在だ」という、これまでも色んな本で読んできたことを思い出す。
最期は高橋くんやらみずきさんやら和馬やら最終話らしく賑々しく登場。初顔のシノヤくんが持ち込んだ「源氏香図」を巡る謎解きに雪弥の父が絡む。
決着がついたのかつかなかったのかいささか分かり難い終わり方だったが、終わってみればこのお話、香乃と手をつなげるようになり、生んでくれてありがとうと言えるようになった、雪弥の成長の物語だったように思えた。 -
Posted by ブクログ
「鎌倉香房メモリーズ」の4冊目。
前巻の残り10頁くらいになってからの急展開にとても驚かされ、『次の巻、気になる』と書いてから3カ月、やっと手にする。
いやあ、どうなることかと思っていたが、雪弥と連絡が取れずにイジイジイライラする香乃の話が続き、あの急展開から再びまったりとした通常運転の展開に、思っていたのと違いちょっと肩透かしを喰らう。
並行して、同級生の殿岡くんの母で学校の茶道部を指導してくれているふみ先生のちょっとした変調や殿岡家であるお寺で催されるクリスマス会の様子が描かれては、こちらも、まあいつもの調子。
雪弥と香乃の関係は前巻の距離の縮まり方から振出しに戻った感じで、再びどうにもじれったい。
クリスマス会の後のふみ先生のアクシデントの話になってから、香乃の家族との関係や雪弥リターンズ含めて、最後にようやく持ち直した。
何より自分が泥をかぶってまでも他人の親子のつながりをも守ろうとしたふみ先生の心情やそんな彼女を包み込む夫の政史さんの優しさにはじんと来た。
今回は全体としてはちょっと物足りなかったが、シリーズは次の「5」で終わるらしいので、最後までお付き合いしてみるとする。 -
Posted by ブクログ
「鎌倉香房メモリーズ」の3冊目。
高橋クンに届いた文香だけが入れられている封書の謎解きに始まって、学園祭でいたずらをするシーツお化けの正体を突き止めたり、いつもの通りの流れに、雪弥や香乃の家庭の事情が挟まる3つのお話。
いつも通りと言いながら、なんとなく雪弥だけがいつもとちょっと違っていて、だけども、高橋クンを慮っての徹夜の影響とか叔父に対する屈折した思いとか何より香乃に対する感情の変化だと、違和感を抱きながらもまあそんなもんかと読み進む。
第3話が終わる頃には、香乃と雪弥の距離がこれまでより縮まった感じで、お約束の面倒くささも次のステップかねと思っていたが……、残りも10頁くらいになって、それまでとはガラリとトーンが変わった展開と吊るされたままでの幕切れに、とても驚かされた。次の巻、気になる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書会@茶房武蔵野文庫(2025/11/16)、2回目の参加。
前回『蜘蛛の糸』と同様、元国語教師のファシリテーターの元、様々な経歴のメンバーとそれぞれ感想を述べ合う。
今回も実に楽しい読書会だった。
本作を高校の教科書で読んだという人もいたが、私の高校時代の教科書は同じ鴎外の作品だが『舞姫』だった。『舞姫』LOVEが過ぎる先生が、教科書での学習を終えたあとも延々と森鴎外、舞姫について語っていたのを覚えている。一学期を全て『舞姫』解説に要したのではなかったか?(笑)
森鴎外作品の思い出はその程度しかなく、本作『高瀬舟』はお初。端正な文章、無駄なく進む短編だが、文字遣いの古さ、固さは時代故にやむなし。
今の解像度で読むと、喜助、庄兵衛という限られた登場人物が、二項対立でもないが、自然体 vs 世間体とでもいおうか、なににも囚われない自由な身と、世のシガラミに絡めとられた身分の、両者の価値観がぶつかる面白い設えということがよく分かる。
さらにそれは時代を超えた普遍性を孕むものという全体感の解説には唸らされた。
使う語彙によって、そこにだけ作者の思い、存在が顔を出すなど、なかなか技巧的でもあったりする。そこに込められた思いをも読み取ることで、さらに作品に深みが出た。
討論会ではないのだが、もう少し喜助は黒か白か? をみなで議論しても面白かったかなと思うが、この作品はそこが主眼ではないので、しょうがない(笑)
因みに、自分は、最初、喜助は黒ではないかと疑って読んだが、これは京都、関西を舞台にしたお話。標準語で喋っている文体となっているが、喜助に関西弁で喋らせれば、白だということが、より明らかになる気がした。
これは、関西人にしか分からないニュアンスかもしれないけど(笑)