澤宮優のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
お金をもらえることを仕事というならば、名前もつかずに行われたり多くの人が存在も知らない仕事も合わせると、仕事というのはこれまでもこれからも無数に生まれては消えるのだろう。
そんな中で、多くの人からお金をもらえてそれを継続できて名前がついた仕事は、おそらく仕事全体の中ではエリート?と呼べるのかもしれない。
本書では昭和の時代のそんなエリートな仕事が紹介されている。
赤帽、押し屋、カストリ雑誌、新聞社伝書鳩係、木地師、おばけ暦売り、疳の虫の薬売り、荒物屋、天皇の写真売り、泣きばい•つぶ屋• はりだし、テン屋、サンドイッチマン、のぞきからくり
などなど
本書の仕事の中で自分が実際に見たことのある仕事はほとんどないが、仕事だけでなく当時の風俗や文化も合わせて感じられ、昭和の頃を思い出し懐かしい気持ちになれた。 -
Posted by ブクログ
三塁ベースコーチは攻撃時の「監督代行」と言われる。監督の作戦を走者や打者に正確に伝え、走者の後ろに飛んだ打球はすべて三塁ベースコーチが責任を持ち、相手投手のクセを見抜き、傾向を捉え、守備陣形を見て「常に」「最良の判断」を「瞬時」にやってのけねばならない。キャッチャーのブロックをかいくぐり間一髪セーフとなれば走者の手柄となり、憤死となれば「壊れた信号機」と揶揄され、非難の矢面に立たされる。
実に労多く報われない仕事である。
重責に耐えかねノイローゼになる人もいるという。
「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」の言葉は、ひとつのアウトセーフにも宿る。明らかな判断ミスでも野手の球が逸れ、セーフとなり幸運がおとずれることもあるが、概ね判断ミスは命取りとなる。そんな苦汁を舐め、判断する怖さ、難しさを知った者だけが名三塁コーチャーと呼ばれる。
本書には、牧野茂・ブレイザー・上田利治・土屋弘光・大熊忠義・伊原春樹・高代延博・辻発彦・森脇浩二…の稀代の三塁コーチが登場する。「(コーチャーズボックスを指差し)あそこに◯◯がおる」と畏怖の念の眼差しを向けられた御仁であるが、かつてはしくじり先生でもあったのだ。失敗を糧にするというのは、ある意味では能力かもしれない。
メンバーを総覧して思うのは、圧倒的にパリーグ出身者である。その源流は70年代、南海にドン・ブレイザーが、入団したことに端を発する。ブレイザーは「シンキングベースボール(現在のスモールベースボールの原点)」をチームに注入する。
パリーグはとかく豪快野球と見られがちだが、実際は集積したデータから投手のクセを見抜き、守備では打球方向の傾向から大胆なシフトを敷くといったインテリジェンスな野球を行なっていた。これを遂行する上で、戦術と判断力に秀でた三塁ベースコーチは不可欠であった。余談だけど、今や当たり前のクイックモーションも、福本の足を封じるためにノムさんが編み出したもの。
著者は「三塁ベースコーチの存在と役割」について、プロ野球界から始まりアマチュア野球界、大リーグまで取材範囲を広げていく。高校野球でも甲子園常連校では三塁ベースコーチの養成に余念がなく、メジャーリーグでは三塁ベースコーチは次期監督候補が務めるポジションとまで言われるほど「専門職」と見なされている。このあたり、かつてV9時代のジャイアンツが取り入れた「ドジャース戦法」を生んだ国だけのことはある。
「ギリギリの本塁突入の根拠をつかみ、士気を鼓舞する。スモールベースボール時代の選手兼監督代行、攻める三塁コーチが近代野球を制す!」という、本書カバーの紹介文に我が意を得て、一気読みしてしまった異色のプロ野球ノンフィクション。 -
Posted by ブクログ
打撃投手、バッティングピッチャーの話。しかし、本のタイトルはもっと他に適当なものがあるだろうと思うのだけれども。
日本のプロ野球で打撃投手を務める人たちなので、野球のキャリアは相当のものがあり、中にはドラフト1位で期待されながら入団したり、あるいは、実際に一軍で活躍した人たちもいる。元々打撃投手をキャリアの目標にして打撃投手になった人はいないわけで、ある程度の鬱屈を各自が抱えているのも分かる。しかし、本を読む限り、大部分の人は打撃投手を一種の職人芸として捉え、自分の技能に誇りを持って務めているように感じる。
「この腕がつきるまで」というような悲壮感を持って打撃投手をやっているわけではないように感じたのだけれども。