岩瀬博太郎のレビュー一覧
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ネタバレ不法移民の船が地中海へ相次ぎ沈んでいると、度々ニュースで目にしていた。ぼんやりと、遺体は母国に送り届けられるんだろうなあ、などと考えていた。本書を読み、それがあまりに甘い見通しであることを痛感させられた。
遺体の氏名を同定し、然るべき遺族へと繋げること。言うは易しだ。実際にそれをなすには、生前データと死後(検死)データのマッチングが必要でる。国内の身元不明死体でも、それをしっかりこなすのは簡単では無い。増してや、移民ともなれば尚更だ。
生前データの収集を巡る困難について。例えばリビアでは、家族が移民船に乗ったことが当局にバレれば、残された家族はムショ送りなのだという。そんななかで、母国に「この -
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数ではなく名を。憐れみではなく尊厳を。
「遠く」の死者の無関心さ、無意識での無関心について考えた。数字だけで終わる、処理されてしまう大多数の個人の歴史・家族。想像がつかない過酷な世界から安心して暮らせる世界へと死を覚悟して出航して亡くなっていった人々が、死してなお軽んじられる。
自分の大事な人、家族、友人がもしかしたら亡くなったのかもしれない。おそらく亡くなったのだろう。けれど確証がない。事実がない。証拠がない。事実を得るための力も自分にはない。書いているだけでも底のない真っ暗な沼の中に入ってしまいそうな絶望。
今現在(2023年11月)に起こっているイスラエル・パレスチナ問題にも通づる。ニ -
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アフリカの国々から、地中海を渡りヨーロッパに迫害を逃れる人々がいる。
その粗末で小さな避難船に、許容を遥かに超える人々が乗船しているため、一度転覆でもしようものなら、被害は甚大だ。
『顔のない遭難者たら』の著者であるクリスティーナ・カッターネオは、地中海に沈んだ移民の遺体に「名前」を与え、「曖昧な喪失」に苦しむ人びとを助けるために奔走しているイタリアの法医学者。
法医学者は「名もなき死者」の身元を、指紋鑑定、遺伝学、歯科医学の3つを主たる手段として探っていく。
また著者が勤務する「ラバノフ」には、人類学者や考古学者も籍を置き、それを遺体の同定に役立てている。
本書では、犠牲者が多かった20 -
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日本は医療先進国だけど、変死体解剖に至っては先進国の中で最低レベルだと。ある年、17万体に対してわずか14%。
日本では死が犯罪に起因するものであるかを判断する為に検視が行われる。
そして、この場合の検視は五官(外見観察)により行われる。
外見的異変が無い、明確に事件性がなければ司法解剖される事は極少数。
著者曰く、20体のうち4体が警察官や検案医の検視結果と異なっていた。
これにより見逃された犯罪、誤った死因判定、冤罪、犯罪者の野放しに警鐘を鳴らす。
また適切な予算が下りないという実情がある。
その中であるエピソード。
予算がないので、検査が出来ず死因不詳で医師が検案書を警察に提出すると