金子薫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
献本企画にていただきました。
突拍子のない始まりから続くリアルの物語。正直あらすじを読んだ時からこれはどういう意味だろうと思っていたのだけれど、本当にそのままの意味だった。作中で死ぬはずのなかった人物が死ぬという不可思議な事態に陥るのは面白い。現実にはありえない非現実性が逆に魅力に思えた。
固有名詞に少し引っ掛かりは覚えたが、文章は読みやすい。アルタッドに対する思いが溢れていて、思わずトカゲ飼いたくなった。
しかして現実にはありえない現象である。不意の出来事で筆は止まり、書くことは頓挫した。その代わりにアルタッドの世話を焼くがそれでは前に進まない。やる気がうすく、現実を直視したくなくて逃げる言 -
Posted by ブクログ
第51回文藝賞受賞作 刊行前サンプル版レビュー。
理屈をこねるような文体なのだが、言葉選びは適確のようで、物語の終結点までの流れは淀みなく体に浸み透った。本質的にとまでは言わないまでも、作者の言わんとする恍惚や高揚が生に対して持つ意味、あるいは死に向かい合う緊密な距離のようなものを享受できた。そんな気がする。
本間は人間の本性をある程度バランスよく備えた人格を持っていて、だからこそ生きているということが死んでいくことと同義であることも心から理解している。
モイパラシアの生を受け継ぐかのような始まりだったが、本間の生を彼のものに戻し、彼の死をあるべき位置にまで遠ざける契機を与えたのが、亜紀 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作家を目指す23歳の主人公。大学を卒業して、大学院の試験を再受験しようというところだけれども、傍ら小説を書いていたみたいです。アルタッド、は、その小説に出てくるトカゲ君。
本書を書かれた当時の著者の年齢と重なるところもあり、小説を書く過程での葛藤みたいなものが刻まれているような気もしてきます。
先日『生=創x稼x暮』を読んだところだったので、その中の一人のお話みたいだなー、と、創ることをどう続けていくか、稼ぐや暮らすこととどうバランスをとっていくか、という視点も持ちながら読んでいました。
お金は底をつきそうだけれども、どうしてもそのお話を殺してしまってはいけない、自分にある使命感をどう保 -
Posted by ブクログ
ネタバレ岡上淑子さんの装画に惹かれた完全なジャケ借りで手にした初めての作家さんでした。
面白かったです。不条理過ぎて内容が無い気がするお話だったのですが最後まで惹き付けられました。
記憶も自らの名前も失い、理由もわからず監禁されている「君子危うきに近寄らず」と「君子」の親子と、彼らを救出するために驢馬と旅に出た双子のそれぞれの日々が綴られていきます。
双子のみつるとことみも旅の中で記憶を失っていき、その事の恍惚も描かれていました。心身ともに軽くなっていくことの心地好さ、陶酔はわかる気がします。
驢馬の名前がナカタニ、途中暫し旅を共にする駱駝の名前がフルカワなのも可愛い。旅で出会う大人はアルファベット1