【感想・ネタバレ】壺中に天あり獣ありのレビュー

あらすじ

無限の迷宮を彷徨い続ける青年・光は、有限のホテルが建っているのを発見する。光は支配人として従業員を雇い、客を呼び込むポスターを貼りに行く。迷宮の中でブリキの動物を磨き、修理しながら玩具屋で働く女性・言海は、ポスターを見て、ひとりホテルを目指すことを決意する――。人は生まれ落ちた迷宮から、外に出ることができるのか。小説の根源を問う、若き才能による大胆で緻密な野間文芸新人賞受賞後第一作。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

自由という名の牢獄。
不自由な世界に自由を描く行為。
輪郭がはっきりするほどに不自由さが牙を剥く。
そうするしかないという帰結に物語は向かう。
それを普遍的であると捉えるか陳腐と捉えるか。
私は前者だ。

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2022年05月08日

Posted by ブクログ

面白かったです。
誰が作ったのか解らない迷宮をさ迷う光の章と、螺巻きの玩具を修理しながら何時からか架空の動物たちを生み出している言海の章が描かれています。
迷宮をさ迷う光は迷宮内の開けた空間に聳え立つホテルを見付けてそこの主人となり、ホテルのポスターを見た言海は動物たちを持ってホテルを目指す(ここで、言海のお店も迷宮にあったのだと気付きました)
迷宮内部にホテルを作っても、留まるのがホテルになったというだけで迷宮を脱出することは出来ていなくて、従業員たちがイキイキしてるのがかえって虚無感をとても感じさせました。
老若男女、迷宮に居るようですし、でも年を取ってないようで、この迷宮はなにか寓意があるのかな?
従業員たちの名前が八大人覚という、これが出来たら涅槃に入れるというものらしくて、それではここは浄土?とか思いました。
金子さんの世界は不条理ですが、不思議と好きです。入りたくはないけど、読むのは良いです。

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2020年02月09日

Posted by ブクログ

永遠に続くように見える迷宮を目的も理由もわからないまま彷徨う男。彷徨い歩くのは一人ではない。迷宮には少なからぬ人々の生活もある。ある日迷宮の中に小さな世界が生まれる。平穏で微温的な世界。その世界を作り上げた男が見るものは・・・。

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2019年08月31日

Posted by ブクログ

外界と遮断された果てのない巨大なホテルとおぼしき建物に、閉じ込められている人たち。その中で外を模して新たな世界を作り上げようとする若い男性と、ブリキで空想の動物たちを作る女性の視点から描く物語。

存在するかどうかもわからない出口を見つけようと、窓もないホテルを延々とさ迷い歩く閉塞感は、想像するだけで息が詰まる。SFのような設定だが、いつからなぜそんな空間に閉じ込められているのかは、最後まで明かされることはない。淡々と語られるシュールな世界には、そうした明確な説明や答えは不要だ。

突拍子もない設定の割には、現実的で地に足が着いているように感じるのは、私たちの世界も巨大な迷宮のようなものだからか。
その中で目標に向かってこつこつと努力をし、すべてを手に入れたかと思いきやまた新たなものを求める、そんな現実の人生と重ねても読める。自由に考える余地のある作品は、読後にもあれこれ想像できて二度楽しい。

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2019年05月16日

Posted by ブクログ

どこまで行っても同じ廊下、同じような部屋が続き、迷宮の如く広大で果てのないホテルという世界設定の中でさまよい、行動する主人公たち。舞台はホテルの中で完結しており、外界には出ない。
シュールレアリズムの絵画を彷彿とさせる不思議な世界設定と、作者のこだわりが見える言葉選びに浸ってファンタジーを感覚的に楽しむもよし、繰り広げられる物語と結末に何らかの寓意を読み取るもよし。
それほど長くもなく、読みやすい文体とレイアウトです。

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2019年05月07日

Posted by ブクログ

壺中という世界観,入れ子構造のホテルとかブリキの動物達など凝った舞台で漂う人々.出口のない迷宮は迷宮と言えるのか?登場人物も意味ありげな名前で,結局のところ創造主たるものの悲哀を感じさせながら,出口のないままで物語は閉じる.何を表現しようとしているのか、難解.言海の創る動物達を見てみたかった.

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2019年05月06日

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