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Posted by ブクログ
これは「境界」についての物語だと思う。
現実と夢、覚醒と眠り、現在と過去、小説と戯曲…。その間に確かにあるはずの境目は、とてもあいまいだ。その境目にはグレーゾーンが存在し、緩やかに一方から一方へと変化してゆく。あるいは、自分が覚醒していると思っていても、別の視点から眺めてみると、それは眠りの中なのかもしれない。一体どこから変わってしまったのか? 架空の町だと思っていたら、そこは「架空の町」という現実の町で、でも、現実だと思っていたら、リュトリュクという夢の中のような地域があり、それでは私は現実にいるのか? それとも夢の中にいるのか? ここは誰かの書いた小説の中なのか?
私が覚醒していることを証明することは出来ない。ここが小説の中ではないと断言することも出来ない。夢の体現であるような美しいアレパティロオオアゲハを守るために鳥を撃ち殺す鳥打ち達も、夜更けには夢の中だ。朝になれば目が覚めるかもしれないし、目が覚めないかもしれない。明日も鳥打ちは鳥打ちであるかどうかは分からない。
Posted by ブクログ
円城塔が帯の惹句を書いているというのもあって、なんだか「オブ・ザ・ベースボール」の続編みたいな気分で呼んでいた。
本当の名前もよくわからない架空の町で、威厳も意味も失われて久しい謎の職業に従事する男の話。理屈っぽく、かつ淡々とした語り口。
打ち返す「レスキュー・チーム」の仕事も、打ち落とす「鳥打ち」の仕事も、「空を見て狙いを定める」という時間がその大半を占めるという点ではよく似ている。仰向けか腹這いか、という違いはあるが。
「オブ・ザ・ベースボール」の最後はたしか、打ち返してチームをクビになった男が、「ファウルズ」と呼ばれる町を出るところで終わっている。
それからこの男が辿り着いたのが、この「架空の港町」なのかもしれない。
まあそうすると「沖山」が自ずとこの男ということになってしまって、それはそれで無粋な気もする。
ということは、この物語の最後で歩き出した二人のどちらかがやがて辿り着いた町、それが「ファウルズ」なのかもしれない。
いずれにせよ、この町とあの町は繋がっているような気がしてならない。
この小説はオマージュだったのか、とも思う。
「オブ・ザ・ベースボール」は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のオマージュでもあったわけで。
こうして文学の地図も、次々に繋がって世界を広げていくんだなあ。
Posted by ブクログ
タイトルがカッコいい。表紙の装丁が素敵だ。架空の港町で鳥打ちという職業に就いている3人の男たちの物語。観光資源の蝶を守るために、その幼虫を補食する鳥を打ち落とすという職業。同業である前に仲間である3人の男たち。三者三様の想いを胸に、今日も仕事として鳥を打ち殺す。物語のすべてが寓話的に語られ、後半に登場するリュトリュクの町はもうおとぎ話のよう。個人の想いとは裏腹になかなか思い通りにならない人生が求める自由への希求とその代償、みたいなものを勝手に思い浮かべてしまった。個性の見えない職務に忠実な4人の監督官がやけに象徴的に見えた。
僕がこの物語に登場するとしたら、打ち落とされて埋葬される鳥の役だろうな。
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