あらすじ
広大な地下工場で蛹に拘束され、羽化=自由を夢見る男。異様な労働、模造の蝶、監督官による殴打、地中の街。理不尽な状況から逃れるため、命懸けで道化を演じるが――。不条理な世界で人間に本当に必要なものは何か。そこで人はどう生き延びるのか。注目の新人作家が圧倒的力量で放つ、コロナ禍の現実と響き合う傑作長篇。
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Posted by ブクログ
極限状態から解放された時、通常では考えられない物事に喜びを感じ取り憑かれてしまう。
洗脳は、この様に行われるのだと分かった。
それにしても蛹の格好をした拘束から解放された時、蝶になる事を夢見るものなのだろうか。
人は理不尽な暴力すら肯定してしまう程、自分のしている事に意味があって、存在する事が許されなければ生きて行く事が出来ない。
自分に価値がなければ、他の生命を食らって生きていく事など出来ない。
姿形を似せても、造り物と生命ある物とは違う。
無機質だけに囲まれて生きるのは苦痛だ。
自分の生命に意味を見いだせなくなった主人公は、躍動する生命を感じながら死を迎える事を望んだ。
自分は全体から見れば無に等しい存在だけど、少しでも世の役に立っていると実感しながら生きて行きたい。
Posted by ブクログ
『自由のない檻の中で翔び方を忘れた揚羽蝶』
金属製の蛹から開放されたと思ったら、金属製の蝶を作らされ、意味もなく棒で叩かれる。そんな理不尽で異様な世界を描いた作品。蚕に変えられ工場で働く少女たちを描いたカレン・ラッセル「お国のために糸を繰り」を彷彿させる世界観。
Posted by ブクログ
不自由から少し解き放たれただけの不自由が本当に自由なのか?自分の生きる意味はどこにあるのか?それを考えるのもいいけど、まずは目の前の光景を現実だと受け入れ、その中で最善を尽くすのも一つの生き方なのではないか。
Posted by ブクログ
『発狂せずにはいられない』
古本屋で直感で購入し満足と後悔が同時に
やってきた本。
いわゆるディストピア小説というもので、
あらゆる方向から衝撃というかなんというかの
連続。
小説を読むとその中に入り込むような方は
多くの場合発狂しそう…。(私はそうでした)
全くもって現実とリンクしないような話だが、
隙間からなんとなしに入り込んでくる感覚が
絶妙に気持ち悪い。