渡辺京二のレビュー一覧

  • 無名の人生

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    「来山は生まれた咎で死ぬる也 それでうらみも何もかもなし」小西来山の辞世の句が紹介されている。

    けれど、そう簡単に達観は出来ないだろう。



    自己愛がどんどん強まる現代のみなさん。極まった自己愛の裏側には、本当はもうそういうのはやめにしたい、ひっそりしていたい、という気持ちもあるのではないか。ところが社会はとにかく前に出ろ、顕示しろと急きたてる。



    著者は集団に対する二つの思いの兼ね合いがあってよいという。所属したい気持ちと離れたい気持ち。極端なナショナリズムを常時持っている必要もない。



    決して手を抜けとか逃げろとか、そういう話ではない。もちろん楽しみを放棄するわけではない。

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    2022年06月01日
  • 無名の人生

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    国家と個人との関係についてはいささか意見を異にしますが、あとはまったくその通りだと思いました。「無名の人生」、理想です。

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    2014年09月21日
  • 民衆という幻像 ──渡辺京二コレクション2 民衆論

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    『小さきものの死』の編における「願わくは、われわれがいかなる理不尽な抹殺の運命に襲われても、それの徹底的な否認、それとの休みのない戦いによってその理不尽さを超えたいものだ。」という決意や『現実と幻のはざまで』『石牟礼道子の世界』『石牟礼道子の時空』『石牟礼道子の自己形成』の編で示された氏の女史への想い、また『「サンクチュアリ」の構造』での解説にわたしは完全に魅了されてしまった。渡辺氏が強く薦める、石牟礼女史の『苦海浄土』はぜひ読んでみようと思う。

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    2014年05月24日
  • 近代の呪い

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    近代以降の世界において、われわれはインターステートの体系に所属せざるをえない。近代において人権や生活水準の向上が進んだことは事実であって、そのことは絶対的に良い方向なのだが、代わって個人は否応なしにインターステート・システムに取り込まれてしまい、ヒトどうしや自然との交感を喪失し、自分の身近な生活空間を意識することができずに経済成長ばかりを追い求めることとなってしまっている。
    講義録であって読みやすいが、内容は、煎じつめると歴史教養の紹介+上記の慨嘆というもの。瞠目する提言があるというのではないが、そういう賢しらげな態度で読むべき本ではないと思う。むしろ心の奥底で渡辺のいうことにいちいちうなずく

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    2018年10月14日
  • 維新の夢 ──渡辺京二コレクション1 史論

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    とても刺激に満ちていて知的好奇心を満足させてくれる評論集である。といいながら果たしてどれほど理解できたかは甚だあやしいかぎりだが。西南戦争における西郷隆盛の不可解な行動への渡辺氏の理解は、通俗的歴史観をばっさりと切り捨て、司馬遼太郎の『翔ぶがごとく』をも「小説として見れば、これまたスカスカである。」とこき下ろしている。私は歴史に疎いのだが、渡辺氏の説には妙に説得力を感じでしまう。それは、私に歴史の新たな面を知らしめてくれるからだろう。

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    2013年02月24日
  • 逝きし世の面影

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    江戸時代後期から明治時代にかけての日本を訪れた西洋人の日本に関しての著作をもとに、当時の日本がどういう国であったのかを解き明かそうという意図の本。
    まず、この本を書くのはほとんど信じられないくらいの労力が必要だったであろうことが分かる。当時の西洋人の日本に関する著作を読み解き、それをカテゴリー別に分類し(本書は14の章だてとなっている。1つは全体のまとめなので、13のカテゴリーに分けて書かれていると読める)、そこから当時の日本の様子を浮かび上がらせる、という構成の本になっている。書けば簡単に思えるかもしれないけれども、とんでもない力業だと思う。
    書名が秀逸だ。当時の日本というのは「1回かぎりの

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    2023年03月27日
  • 逝きし世の面影

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    7年前に買って、少し読んで長い眠りについていたのを発掘。通勤電車内で2週間かけて読んだ。
    タイトルが素晴らしい。外国人の目で見たいわゆる「夜明け前」の日本。現代の私と繋がっていて、しかし大きな断絶のある人々の息遣いを感じるようだった。
    忙しい人には、第1章と最終章読めば十分とも言えるかも。

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    2025年09月11日
  • 夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺

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    渡辺京二氏による英国ファンタジーおよび関連文学の案内。渡辺氏がファンタジー文学を愛好していたとは知らなかった。トールキンの『指輪物語』以外は読んでいなかったのでなるほどという感じ。まあ、渡辺氏らしく結構難しい部分もあるけど(知識が追い付かない)。とはいえこれからこういう作品をじっくり読んでいく時間は私にはないだろう。そういう意味でも参考になった。まあ、いくつかは読んでみたいと思ってはいるが(とりあえず『ナルニア国』を古書で注文したりして)。

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    2025年08月08日
  • 維新の夢 ──渡辺京二コレクション1 史論

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    本書に含まれる「逆説としての明治十年戦争」についてだけコメントする。

    渡辺京二の深い思考と、熱い情熱とを感じさせる読み応えのある論文。
    そして、見事な文章。
    今時、こうした文章を書ける人はいない。
    タイトルにある「逆説」がキー•ワードだ。
    「明治十年戦争」とは、西南の役のことだ。
    歴史学では、それを、士族たちが自らの特権を守るために起こした「反動的反乱」と断定して怪しまない。
    そこには、「逆説」も何もない。
    明治十年戦争の「逆説」とは、「反動的反乱」という装いを纏いながらも、維新の「第二革命」であった、という認識を言う。
    どう言うことかは、本論をじっくりと読む必要がある。
    この見事な、示唆と

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    2025年10月02日
  • 逝きし世の面影

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    幕末から明治初期に来日した外国人の視線を通して、江戸時代後期に存在し、失われつつあった文明の姿を描こうという一冊。
    欧米由来の「近代化」によって日本の精神世界が変質したこと、特に「ヒューマニズム=人間中心主義」の導入による変化を描く終盤はとりわけ興味深い。たとえば「東海道中膝栗毛」を例にとって、現代社会から見て江戸時代の人々の精神性が異質であることを示す部分など。

    そこまで読み進めればかなり興味深いのだが、前半は「外国人が日本で驚いたこと」のまとめサイトみたいな記述が多くて退屈である。
    著者は「失われた文明」と、ベースにある文化を区別して論じているというのだが、その区別は私には不分明に見える

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    2024年06月15日
  • 逝きし世の面影

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    膨大な外国人から見た幕末から明治の変革期の日本人のありようの資料から、現代の日本人が失った子供のような無邪気な好奇心、他者との垣根の低さ、情熱、身体の逞しさなどが伝わり、文明とは時代と共に移り変わる部分もあることが生き生きと伝わってきた。個を大事にする文化が明治以降に入ってきて、良い面もたくさんある反面、失われた生命力とでもいうか、素朴な生きる力があったのだと気付かされ、現代を振り返って見ると若者の自死の増加など複雑な想いが湧く。

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    2023年08月28日
  • 逝きし世の面影

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    江戸時代の日本の文明について書かれた本。前近代が近代に移行する直前の爛熟した文明について、当時の外国人の記述など資料を紐解きつつ解説している。現代の我々とは地続きでありつつも異質であり、当時の異邦人のように江戸文化を楽しめる本である。現代人の忘れてしまった人間らしい生き方を教えてくれるところもあり、示唆に富んだ本である。

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    2023年05月03日
  • 逝きし世の面影

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    日本の原風景が日本に滞在していた外国人の記録を通して明らかにしている貴重な本。
    現代日本の姿と対比すると有意義。特に仕事に誇りを持って個別に役割分担が細分化されていた個人事業の集積のような経済社会であった事が推測できるのが興味深い。

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    2023年03月13日
  • 逝きし世の面影

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    読みごたえあり。
    全部で600ページ近くあるし、理解するため砕きながら読むには少し難しい。
    ただそういう吟味とは別に、江戸時代中後期から明治始めにかけて、日本人の生活や風俗,習俗はどうだったのか、またそれを当時日本に来ていた外国人にはどのように映っていたのかを知るところに焦点を当てれば、理解しやすいし、またとても面白い。
    もちろん彼らにとって、長短どちらの面もあるようだが、概して非常に賛美していると感じた。
    ただ、どちらかと言えば精神的にナイーブで、西洋人には少し劣った民族と映っていたように感じた。逆にそれが彼らにはとても新鮮で、忘れられた精神上の桃源郷のように思えたのかも知れない。

    しかし

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    2023年03月03日
  • 近代の呪い

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    平凡社新書
    渡辺京二 「近代の呪い」


    近代を批判的に捉えた講演集。とても面白い見方だった。学校教育では こういう歴史の見方を伝えれば、歴史好きが増えるのに。


    近代化=西洋化というシンプルな定義づけにはじまり、近代化により民衆社会の自主性が解体され、知識人が民衆を国民に改造したという論調。明治維新を見ると、その通りだと思う


    近代化により、国民国家単位で争うシステム(インターステイトメントシステム)と 世界の人工化(地球は人間の便益のために存在)の呪いが 国民にかけられているとのこと


    近代の呪いを解くための、著者の主張は、国家との関係より 他者との生活上の関係を重要とし、経済

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    2023年02月08日
  • 逝きし世の面影

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    ネタバレ

    江戸時代後期に日本を訪れた外国人による、日本の庶民生活の見聞録。
    長くて読みにくいけれど、拾い読みだけでも十分に楽しめた。 

    決して豊かとは言えないけど、最低限の衣食住に満ち足りた表情をしていた庶民。勤勉さ礼節は浸透しているが、仕事はほどほどに子どもから老人まで楽しんで生活をしている。またよく手入れされた自然と共存している生活の景色は美しい。

    この本の中での証言を繋ぎ合わせると、この上ないユートピアに感じる。タイムスリップできるならこの時代に行って見てみたい。

    確かに日本の庶民にも格差はあり、決してこのように満ち足りた生活を送れている集落だけではなかったと思う。それに、比較対象としての海

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    2022年02月24日
  • 逝きし世の面影

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    文庫本なのに600ページぐらいあります。買うとき背表紙の説明文とかもはや見てません。表紙に風情があったのと、この分厚くてごつい本を読んだという事実が欲しいがために手に取りました。


    内容はふつうに良かったです。現代において「幸せとは何か?」を考えるときの参考になる気がします。

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    2022年02月17日
  • 逝きし世の面影

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    あるレビューが頭から離れずにいた。
    「長い上に読みにくい。訪日外国人の手記を集めて粉々に砕いて部分部分に埋め込んでしまっている」
    それでも何とか読み切れたのは他でもない、外国人によるきめ細やかな記録のおかげだ。

    彼らの観察眼はとにかく鋭い。着物の色から庶民が発した言葉まで、日本各地を旅した彼らの成果をまとめたら一冊見事なガイドブックが出来上がるのではないか。
    当時の物・事を詳しく知りたいのなら第三者の記録をあたるのがやっぱり一番。お辞儀の仕方ですら、時代劇で見るのとは違うことが分かる。

    レビューさんの仰る通り、確かに外国人の手記を集めただけのように見えて読みづらい。
    ただ彼らの声を追うごと

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    2022年02月09日
  • バテレンの世紀

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    大航海時代と日本

    この本の目線は当時の日本人ではなくあくまでも来日した西欧人で、まさに渡辺史学!
    その意味では名著「逝きし世の面影」と同じだ

    幕末日本に文化的優越性を持って現れた欧米とは異なり、対等性を示した日本

    この当時もまた、逝きし世である

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    2021年11月07日
  • バテレンの世紀

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    グローバル・ヒストリーが密やかなブームらしいですが、これはその観点から書かれたもの(NHK スペシャル「戦国」でまさにこの時代が放映されました)。

    1494年にスペインとポルトガルで結ばれた「トルデシリャス条約」はあまり知られていないのではないでしょうか。大航海時代、勢力を競い合っていた両国が、世界を2分して新領土の分割を取り決めたもの。これによって、日本はポルトガルの対象地域となりました。ローマ教皇は、布教することを前提にこれにお墨付きを与え、(ザビエルはスペイン人ですが)ポルトガル系のイエズス会が日本でも布教を開始。その後、宣教師から「布教をまず進めてから、その国を侵略する」ということを

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    2021年07月11日