アゴタ・クリストフのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ悪童シリーズ三部作、ラストのお話。今作は一人称。おそらくクラリス目線……なのかな。
冒頭で「私は自分の身の上話を書こうとするが、それは私自身を深く傷つける。だから私はすべてを美化し、こうあってほしかったという思いに従って描く」(p14)とあるので、どこまでが事実でどこまでが嘘なのかもうわからない。
これを事実だと仮定すると、シリーズすべてが崩れてしまうし、美化して書いたとすると、美化されたのはおそらく「悪童日記」の方だろうし、ということはここで描かれていることはリアルなのか?
もう、どういう気持ちで読めばいいのかわからなくて、ラストまで読めばわかるのかと思ってたんだけど、結局最後まで読んでもわ -
Posted by ブクログ
「悪童日記」「ふたりの証拠」の結末「第三の嘘」。100%ネタバレです。
物哀しい曖昧な色合いの夕暮れのような作品だった。
「悪童日記」の内容は「ふたりの証拠」で、「ふたりの証拠」の内容もろとも一旦否定された。が、本作では冒頭に「事実であるだけに耐えがたく(中略)話に変更を加えざるを得ない」と、過去の2作品の種明かしされる。そして過去の2作品の作者であると読み取れるリュカの身の上話が前半に綴られる。
これを読むと、まず「悪童日記」についてはかなりの部分で納得がいく。母に溺愛された。常に支え合う双子の片割れがいた。あらゆる能力を自発的に身に着けた。これらの事は「こうであれば救われたのに」とい -
Posted by ブクログ
長い間、著者の『悪童日誌』に続編があると知らなかった。三部作であり、その続編が本書であると知り、手に取った。
双子の一人が辿るストーリーにフォーカスされる。二部ではさらに歳を取り青年になるが聡明な雰囲気は変わらない。同時に、どんよりとした小説全体の雰囲気は登場人物の生き辛さと相俟って更に印象を強める。
愛情表現も、優しさの示し方も、何か偏っているように感じる。一人だからだろうか。それは、孤独だからだという事なのだろうか。「ふたりの証拠」という意味深なタイトルが最初から読者をその世界に誘っていく。
それと、双子の一人は既にだいぶ落ち着いてはいるのだが、前作での悪事を思い出し、読者を何か落ち