アゴタ・クリストフのレビュー一覧
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ネタバレ戦争というものは、かくも人の心を傷つけ続けるものなのかとあらためて思う。リュカは激しい悲しみと孤独の人だけれど、他の人々もそれぞれひとりひとりが喪失の物語を持つ。ヴィクトールの「すべての人間は一冊の本を書くために生まれた」という言葉にあるように。
それにしても謎が回収されないままに終わってしまい、読者であるわたしは置いてけぼりだ。最大の謎は「兄弟」の存在だけれど、それ以外にもある。なぜリュカはこれほどまでにマティアスに執着したのか、なぜヤスミーヌを殺したのか、なぜ彼は神に祈らないのか...。3体の骸骨の下にある藁布団が「生温か」かったのはどういう意味なのかもよくわからなかった。アゴタ・クリスト -
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ネタバレ「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの人生が対比で語られるのかと思いきや、終盤まで出てこないばかりか、イマジナリーフレンドだったのではないかという疑念が湧いて、そう言えば「悪童日記」での靴屋のおじさんの受け答えは不自然だったかもしれないなと思い至る。
著者は、物事が人間の成長や変化に与える影響を、すごくよくわかっている人だと思う。
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ネタバレ
(※ネタバレ)
⚫︎受け取ったメッセージ
実際には離れ離れだった双子。
二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。
(あらすじネタバレ)
クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2 -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
双子のひとり、リュカの暮らし
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。
(ネタバレ)
祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌとい -
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ストーリーの整合性を予め確保した、一般的な小説を目指し書いたのではなく、自身の内側に漂い続けているものを小説という形をとって表現したのだと思う。
訳者の解説が巧みで素晴らしかった。
双子の、「でも、あなたは、今しがたおっしゃいましたね。〝苦しみは減少し、記憶は薄れる〟って」という言葉に対し、不眠症の男の「そう、確かに私は、減少する、薄れると言った。しかし、消え失せるとは言わなかったよ」という一言が印象的だった。
理不尽な力によって本来の自分から引き剥がされ、本来ならばそこに存在したはずの自分、家族、自然、国といった幻の中をさまよいながら、完治することのない傷と共に生き続ける人間の強さ、脆 -
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読みながら「スクラップ・アンド・ビルド」という言葉が頭に浮かんできた。
『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く三部作の完結編ということになっているが、普通の小説の三部作とは全く違う。何が違うのかは実際に読んで確かめて欲しいし、そもそも感想を綴るのが非常に難しい作品ではあるのだが、あえて書くとすれば、本作のタイトルにもなっている「嘘」とは何か?という点が物語全体を通した鍵であるということと、大ヒットした作品の続編でこの仕掛けをやったのは凄い、という点に尽きるかな。
まさにこれこそ「スクラップ・アンド・ビルド」。
それにしても『悪童日記』は大抵の書店に置いてあるのに、『ふたりの証拠』『第三の嘘』が全 -
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『悪童日記』の続編で、前作のラストで生き別れとなった双子の片割れのその後が描かれている。
戦争を背景にした悲劇の物語というベースの設定は変わらないものの、前作とは打って変わり、5ページ前後だった一章あたりの長さがどんと増えたことが特徴的で、ともなって主人公を含めた登場人物の造詣に厚みが加わったように思う。語り手も双子から三人称のものへと変わり、客観的な描写が主になったので読んでいてずいぶん印象が異なる。
またよく読むと、特に主役が変わる最終章で顕著なのだが、前作と辻褄が合わない箇所が出てくる。これは次作に繋がる意図的な仕掛けなのだが、読者は面食らうかもしれない。
総じて『悪童日記』の衝撃度には