アゴタ・クリストフのレビュー一覧

  • 第三の嘘

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    凄まじい三部作だった。
    『悪童日記』『ふたりの証拠』そして本作『第三の嘘』と、それぞれの作品に異なる衝撃があり、そして二作目を読めば一作目の、三作目まで読むとシリーズ全ての、見方や印象がガラリと変わってしまう。
    「真実」がどうであるのか考察することにさほど意味はないだろう。重層的かつ撹乱するような複数の物語を貫く、強烈な孤独感と、無理矢理引き裂かれ揺らぐアイデンティティ。亡命者である著者が故国と移住国に抱く感情の、言葉にし難い生々しい領域の、わずかな一端に触れた思い。

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    2024年04月03日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ

    ・感想
    悪童日記シリーズの3作目
    2作目でも驚いたけど今作の展開にも驚愕。
    結局彼らはどれなんだろう?全部嘘で作り物なのかな。

    個人的には悪童日記のあの不気味さと閉塞感が好きだったから悪童日記のみで終わらせてもよかったかも。

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    2024年03月06日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ


    (※ネタバレ)

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    実際には離れ離れだった双子。
    二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
    二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。

    (あらすじネタバレ)
    クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2

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    2023年11月30日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    双子のひとり、リュカの暮らし

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

    (ネタバレ)
    祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌとい

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    2023年11月30日
  • ふたりの証拠

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    一作目の最後、国境を超えなかった「ぼく」の物語。「ぼく」は名前を持つことで、前作とは違った雰囲気を感じる。戦後下の厳しい環境で生きていく主人公は、他人に手を差し伸べながらも、常に孤独を抱えている。地の文に、主人公の感情は一切ない。それでも、彼の心情は、読者へ強く伝わってくる。予測できない展開に、はらはらさせられること必至。

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    2023年08月07日
  • 第三の嘘

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    二人の証拠のラストで、エエェ!
    てなった後の本作。
    悪童日記や二人の証拠であった若々しさ等はなく、
    老いたリュカとクラウスの話。
    全体を通じ、悲哀に満ちていて、なんとも言えない気分に。
    内容が悲哀に満ちているのもそうだが、一人称の私が、リュカとクラウスどっちがどっち?てなることもあったのでもう一度読みたいと思う。
    間違いなく名作。

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    2023年07月09日
  • 第三の嘘

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    「んっ?」ってなって、「あぁ。」ってなって、最後は「えぇぇぇっ?」ってwww
    もしかしたら、コレも嘘かもしれない。

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    2023年02月23日
  • ふたりの証拠

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    悪童日記の第二部。ここでようやく兄弟の名前が明かされ、村の人々の固有名詞が少しずつ出てくる。第三部の第三の嘘まで読んだが、これらは一気に読んだ方が良い。3冊に分かれているが、これら三つで一つの話が完結する。悪童日記の続きが二人の証拠であり連続性があるが第三の嘘になると様子が全く変わってくる

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    2022年11月12日
  • 第三の嘘

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    ストーリーの整合性を予め確保した、一般的な小説を目指し書いたのではなく、自身の内側に漂い続けているものを小説という形をとって表現したのだと思う。
    訳者の解説が巧みで素晴らしかった。


    双子の、「でも、あなたは、今しがたおっしゃいましたね。〝苦しみは減少し、記憶は薄れる〟って」という言葉に対し、不眠症の男の「そう、確かに私は、減少する、薄れると言った。しかし、消え失せるとは言わなかったよ」という一言が印象的だった。

    理不尽な力によって本来の自分から引き剥がされ、本来ならばそこに存在したはずの自分、家族、自然、国といった幻の中をさまよいながら、完治することのない傷と共に生き続ける人間の強さ、脆

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    2022年10月01日
  • 悪童日記

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    なんて読む手の止まらない文章だろうか。

    ぼくら、の目線で見る景色
    ぼくらが何とも斜に構えた感じで、起こったことに対する対応が読めない
    次はどんなクールを見せてくれるのかと手が止まらなくなる

    戦争下での悲惨さ、過酷な状況で生きる子どものたくましさ、適応した感情の起伏に心が打たれるとか言って人にオススメもしやすい。
    ただし本心では厨二心が揺さぶられまくっている。

    いやこれ続編ってどうなるのさ、ラストの鳥肌回収できるの?気になってしょうがない。

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    2025年07月24日
  • 悪童日記

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    著者が女性というのに気が付きませんでした。
    30年前に書かれた文章ですが、これが60年前だったら
    もっとすごいなと、感じながら読みました。

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    2025年11月19日
  • 悪童日記

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    タイトルどおり悪童日記です。
    第二次大戦中の欧州のとある国の出来事を、ある双子の子どもの視点で語っています。
    彼等は生きるために知恵を駆使して狡猾に振る舞います。

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    2025年10月12日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    面白かった。
    2人の少年の感情が書かれていないから、我々はこの2人の少年のことを知っているようで知らないということが起きて面白い。
    森の中で遺体を見つけたらしいと分かるあたりで、この話は全てを書いているわけじゃないんだと分かり(遅かったかも)、最後の最後にあれなのも納得だし手法が凄いと思った。

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    2025年10月10日
  • 悪童日記

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    戦時中の小さな町。主人公の双子は、疎開したその町で、自分たちなりの正義を貫いて生き抜いていく。清冽で苛烈な子どもたち。まだ乳歯が生えている年齢なのに。
    双子の周囲には、野卑で冷たい祖母や将校、貧しく孤独な隣人の女の子などさまざまな人々がいる。読み進むうちに善と悪、聖と俗が入り混じり混沌として、登場人物たちの印象がぐらぐら動いて変わっていった。主人公の正義すらも、正しいのかよくわからなくなった。そして人間はたしかにそういうグラデーションに満ちた存在なのだろう、と思った。
    戦時中の生活や雰囲気の描写は、少し前なら現実感なく古くさいと思っただろう。今は身近な感じがして想像しやすくなっていることが、恐

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    2025年10月02日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    両親の庇護のもと、幸せに暮らしていたはずの賢い双子の男の子。
    戦争の苦しみ悲惨さから自分たちを守るため、自ら労働し、勉強し、外国語を習得し、死に対して慣れたり、泥棒したり、傷つけられたりする訓練をする。
    私はどうしても、母親としての視点で彼らをみてしまう。

    心に残る場面が多くあった。
    母親が双子を心配して迎えに来たのに、祖母の元を離れず目の前で亡くなっても動揺せず埋めてしまう2人。
    自分のことでいっぱいいっぱいな父親を、利用する2人。
    人の死にたいという要望を、抵抗なく叶えてしまう2人。
    人の死が当たり前の世界に住んでいて、いちいち傷ついていたら生きていけないのだと思う。
    大人たちが始めた戦

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    2025年07月30日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

     第二次世界大戦が激化していく中、疎遠だった祖母の元へ疎開していく双子の日々の出来事を記した作文あるいは日記の体裁の物語。叙情的な表現を排し、即物的な文章で書かれており、戦争の厳しさすらやや寓意的に思える印象を与える文章だった。
     昔使っていた単語帳に、”cruel” の項目があった。その単語帳は意味と共に例文が載っている形式で、その時の例文は ”The children are cruel.” だった。この小説を読んでいて、なぜだかこの例文を思い出した。
     まだ社会的な価値観が形成されていない双子が、自分たちの目で見た戦時中の景色を自分たちの考えで判断し、世界を発見していく過程が記されており

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    2025年07月19日
  • 第三の嘘

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    今、語っているのはいったい誰なのか?
    虚構と現実が入り乱れ、文字列に振り回されるような読書体験が面白かった。

    いってしまえばフィクションは本来すべて“嘘”だが、私たちは物語の内側に入り込み、登場人物と一緒に一喜一憂したりする。
    ところがこの三部作には、没入したはずの自分自身をも俯瞰し、これは信じていいのか?と立ち止まらせる。 そんな、視点が二層にズレるような奇妙な感覚があった。

    1作目では、双子が「ぼくら」という1つの器官のように振る舞い、感情を排除した淡々とした文体で悲劇を記録する。 その無表情さがかえって不気味な、インパクトのある作品だと感じた。

    しかし三作を読み終えるころに

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    2025年07月08日
  • 悪童日記

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    これはいい。

    曖昧さを排除し、真実しか綴らない日記というだけあって淡々とした展開だけど、
    これが非感傷 無感情 効率中の双子の性質を引き立てている
    戦時中の混沌とした世界に適応して、誰も信用せず二人だけの世界で生きていく決意たるや


    アニメ「ミギとダリ」がイメージに重なった

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    2025年06月11日
  • ふたりの証拠

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    悪童日記では名前の分からなかった少年の名前がわかり双子のひとりの視線で物語が進んでいく
    人間の感情を持たないようなサイコパスな少年だった彼が人間らしい感情を持っていたので安心した
    嫉妬で自死する7歳の少年の感情が恐ろしかった
    とにかく続きが早く読みたい終わり方だった
    本当に彼ら双子は2人いたのだろうか

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    2025年06月04日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    第二次世界大戦期のヨーロッパの地獄を、少年たちの目線から描く傑作。少年たちの日記がそのまま作品になっており、とても読みやすい。
    少年たちの成長物語のような娯楽性を兼ね備えつつも、当時の価値観や世俗を批判的に描いている。
    母親が目の前で死んだり、祖母を自らの手で殺したりと、地獄の経験を乗り越えてひたむきに生きる姿に胸を打たれる。実の父親の死を利用し、ひとりが他国に逃げるラストの余韻がとんでもない。

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    2025年05月25日