アゴタ・クリストフのレビュー一覧

  • 悪童日記

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    凄いものを読んだ。文句のつけようがない大傑作である。これは本当に面白い!
    戦時下に祖母のいる小さな町へ疎開した双子の「ぼくら」の物語で、舞台は第二次大戦中のハンガリーが念頭に置かれているようだが、具体的な場所は言及されていないので架空の国という読み方もできる。
    本作の体裁としては双子が秘密のノートに書き綴った、1章あたり3~5ページほどの日記を読者が読んでいくという形。恐らく二人それぞれが書いている体なので、章によって微妙にトーンが異なるのだが、それが一筋縄ではいかない兄弟の造詣に深みを与えている。
    疎開先で次々と起こる倫理もへったくれも無い酷い出来事が、純粋な子ども視点で言葉に一切の装飾が無

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    2025年12月07日
  • 悪童日記

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    第二次大戦末期のハンガリーと思われる街を舞台に、おばあちゃんの家に疎開させられた双子の男の子が、残酷な世界を持ち前の才能を持ってサバイブする。目を向け難い戦争の現実が背景にあるが、その中に生活する人々の人間らしさをダイナミックに描いた傑作。

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    2025年11月24日
  • 悪童日記

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    読書で感情が揺さぶられた時の、「すごい本を読んだ」ではなく、「すごい本を読んでしまった…」という感覚がとても好きです。
    これまで「好みと合わなそう」と避けてたのですが、「すごい本を読んでしまった…」以上の感想が出てこなかったです。

    とにかくストイックな双子たちの言動と、戦時下にして占領下という特殊すぎる環境、綺麗事が通用しない時代の中で、彼らは本当に「悪童」なのだろうか…??と、読んでいて混乱してしまいました。

    自分達の感情はもちろん、双子の固有名詞すら登場しない文体だから、読者からするととんでもないエピソードや事件が、全く特筆すべき出来事でないかのように投下されていくスピード感が癖になり

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    2025年11月16日
  • 悪童日記

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    なんかすごかったなと思った。
    まずこの小説は事実のみ語られるので、なぜそのような行為をしたのかこちら側が考える必要があり、それが普通の小説とは違うなと感じ面白さを感じた。
    また戦時中のことを描かれているということもあり、たとえフィクションではあるが、今の時代とかけ離れており、本当にそういったことがあったんだと思わせる描写も少なくなかったと感じる。
    ぜひ第二章も読みたいと思わせる本でした。

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    2025年10月13日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ

    正直さとは、いざという時に嘘が通るための下準備だ。
    『悪童日記』では、双子の作文が日記として描かれている。
    「作文の内容は真実でなければならない、というルールだ。ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見たこと、ぼくらが聞いたこと、ぼくらが実行したことでなければならない。」
    子どもの限られた語彙のなかで、極限までシンプルに表現された人の残酷さを垣間見ることができる。

    ただ、これは壮大なフリなのだ。
    この作品を読み進めていくと、前二部作が全て嘘だったことがわかる。
    人は、真実を守るために嘘をまといながら生きている。そして、その嘘には真実が含まれる。その境目は、本人でさえわからない。

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    2025年10月10日
  • 悪童日記

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    「牝犬の子め!おまえたち、わしに同情したって言いたいのかい?」
    「違うよ、おばあちゃん。ぼくらはただ、ぼくら自身のことを恥ずかしいと思ったんだ」
    という割と始めの文章を読んでこの小説絶対面白いなと思った。そして、あっという間に読み終えた。主人公の双子の子は自分達の考えや価値観があって周りの人に左右されない。自分達で考えて行動する。生々しい出来事も淡々とした文章でサラッと読めた。2部、3部も読みたいと思い購入した。

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    2025年10月05日
  • 悪童日記

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    『悪童日記』は、不条理文学と呼ぶにふさわしい作品だと思います。決して心が明るくなる物語ではありませんが、感情を排した無機質な文体が、かえって戦争の悲惨さや人間の虚無を鋭く突きつけてきます。

    戦争下で「強くならなければならない」「非情でなければならない」という状況は、人生の儚さや生きることの無意味さを一層際立たせます。読み終えた後には重苦しく、後味の悪さが残ります。

    それでも、この奥行きのある文章は、戦争の現実や人間の生き方について深く考えさせてくれました。

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    2025年10月03日
  • 悪童日記

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    戦時中から戦後にかけてのナチスドイツとソ連の狭間であるハンガリー国境付近の祖母のもとに疎開した双子の男の子の日記形式で進む話。

    固有名詞が出てこなくて、双子も個性はなく「ぼくら」としか書かれていません。お互い会話もしません。

    過酷な戦時を生き延びるために二人は痛みに耐える練習、断食の練習などをして日々過ごします。生き延びるためにいろんな悪事もします。

    周りに流されることのない二人だけの判断基準。感情を抑えた客観的事実だけを連ねる日記。徹底した無感情な日記が不気味でもあり、逆にその裏の感情を想像してしまう。心まで武装してるの?と思ってしまう。

    最終ページが衝撃的だと聞いてはいたのですが、

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    2025年09月23日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    この物語の主人公たち(ぼくら)はとても異質な双子、自分たちが生き残るために必要であると感じたことは善悪という感性はなく、ただ必要であるからという理由で淡々とこなす。しかし意外と人情深いところもあったり(おそらくこの少年たちにとって有益、若しくは恩義を感じた人に対して。例えば将校、おばあちゃん、神父などがそれに該当すると考える。)、逆に自分たちにとって取るに足るものではないと判断した人に対しては容赦なく切り捨てていく。
    彼らに感情が無かった訳じゃない。ただそこでの生活は感情を殺して生きることがベターだったから。だから機械のフリをした人間と感じた。とにかく本人たちの価値観と信念が明確で、そこから外

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    2025年07月12日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    ドライな文章で、客観的に見たら悲惨な兄弟の人生を描く。
    怖くて悲惨なんだけど、かわいそうと思うのは許されないような生き方。
    でもふたりはちゃんと家族愛を知っている。
    それが一般的なものからかけ離れていたとしても。
    こういう価値観もある、そうしないと生きていけなかった。
    …と衝撃を受ける作品。

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    2025年06月22日
  • 悪童日記

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    淡々とした客観的描写から、人々を翻弄する戦争の過酷さ、双子の倫理観、彼らの変化や成長、おばあちゃんとの関係の深まりなどが伝わってくる。
    目的のためには手段を選ばず、冷酷に、感情を捨てて行動する双子。どうやってピンチを切り抜けるかとハラハラする場面もある。最後も意外な展開だった。
    他の人も書いているが、漫画の『ミギとダリ』を思い出すのは、双子だからというだけでなく、作者のユーモアに通底するところがあるからかも。
    続編も読みたい。

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    2025年05月31日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    「いたずらっ子の双子の話」とだけ前情報を仕入れて読み始めた。
    戦争の影響で、都会から田舎の祖母のもとに預けられた双子が書いた日記という体の小説。
    双子は日記を記すにあたってルールを決めている。
    客観的な事実のみを記入し、感情などという曖昧なものは排除する。
    「母親が大好き」はどれくらい好きなのかわからないから不可。
    「夜、母親を思い出す」は事実であれば可能、といった感じ。
    したがって、双子の日記には母親がどれだけ恋しいかという表現は全く無い。
    しかし、「日記には書かれない」だけで、双子は恋しいと思っていたのかもしれない。本当の所は誰にもわからないが、母親に対して何も思っていないわけではない、と

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    2025年04月04日
  • ふたりの証拠

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    冒頭部分では、悪童日記ほどの面白さはないだろうと思われたが
    ヤスミーヌが出てきた辺りから、面白くなってくる。
    そこから『あの時』までは一気に読みたくなるぐらい引き込まれた。

    けれどその後の話は肝心な所が「え?どういうこと?」と思うままに終わってしまうので、早く続編が読みたくなる。

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    2025年03月24日
  • 悪童日記

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    ネタバレ

    独特の文体と設定が面白く、一気に読んでしまった。
    強くなるためにお互いに罵り合い、傷つけ合う双子。
    ラスト一行は驚き。三作品の中でもこれが一番。

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    2025年03月16日
  • 悪童日記

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    久々にここまで刺さる小説を読んだ。
    海外作家の文章だけれど癖がなく、するする読めてしまうが、「え?えええ?ちょっと待て」みたいな場面や描写が何度も出てくる。
    完全なる善人などいなくて、人間はどこまでいっても人間、愚かだと感じる。登場人物みながある面では優しく、ある面では残酷であることがそれを物語っている。

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    2025年01月24日
  • 悪童日記

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    あまりにもおもしろくてほとんど一気読みした。
    「衝撃のラスト」という言葉は多用されるが、最後の一文で自分の呼吸が止まった。
    まさに傑作。

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    2025年01月15日
  • 第三の嘘

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    敢えて辻褄の合わなさを逆手に取ったようなこの第三部。悲劇に違いないのに、何だろううこのクールな終わり方は。静かな衝撃が持続している。

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    2024年12月01日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    ふたりの証拠

    ある
    けれど
    ない

    確かに町で有名な双子がかたわれだけになったのに、町のみんなは誰ひとりそのことに触れていなくて違和感があった。

    アゴタ・クリストフも翻訳者様も天才では?

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    2024年11月25日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    戦争というものは、かくも人の心を傷つけ続けるものなのかとあらためて思う。リュカは激しい悲しみと孤独の人だけれど、他の人々もそれぞれひとりひとりが喪失の物語を持つ。ヴィクトールの「すべての人間は一冊の本を書くために生まれた」という言葉にあるように。
    それにしても謎が回収されないままに終わってしまい、読者であるわたしは置いてけぼりだ。最大の謎は「兄弟」の存在だけれど、それ以外にもある。なぜリュカはこれほどまでにマティアスに執着したのか、なぜヤスミーヌを殺したのか、なぜ彼は神に祈らないのか...。3体の骸骨の下にある藁布団が「生温か」かったのはどういう意味なのかもよくわからなかった。アゴタ・クリスト

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    2024年10月16日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの人生が対比で語られるのかと思いきや、終盤まで出てこないばかりか、イマジナリーフレンドだったのではないかという疑念が湧いて、そう言えば「悪童日記」での靴屋のおじさんの受け答えは不自然だったかもしれないなと思い至る。

    著者は、物事が人間の成長や変化に与える影響を、すごくよくわかっている人だと思う。

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    2024年04月10日