アゴタ・クリストフのレビュー一覧

  • ふたりの証拠
    「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの...続きを読む
  • 第三の嘘
    凄まじい三部作だった。
    『悪童日記』『ふたりの証拠』そして本作『第三の嘘』と、それぞれの作品に異なる衝撃があり、そして二作目を読めば一作目の、三作目まで読むとシリーズ全ての、見方や印象がガラリと変わってしまう。
    「真実」がどうであるのか考察することにさほど意味はないだろう。重層的かつ撹乱するような複...続きを読む
  • 悪童日記
    2人の少年による作文の形式をとった日記です。
    本文中にも書かれている通り、徹底して客観的な視点、事実が羅列されています。だからこそ感じる無機質感の中に、強制されない感情を抱かせてくれます。

    ただただ戦争を代表とした外的要因に振り回されるだけと思いきや、その中で強く健気に生き延びる「ぼくら」の姿。甘...続きを読む
  • 第三の嘘
    ・感想
    悪童日記シリーズの3作目
    2作目でも驚いたけど今作の展開にも驚愕。
    結局彼らはどれなんだろう?全部嘘で作り物なのかな。

    個人的には悪童日記のあの不気味さと閉塞感が好きだったから悪童日記のみで終わらせてもよかったかも。
  • 悪童日記
    「主観を一切まじえずに書かれた本がある」と勧めてもらったのがこの本だ。

    僕らは悲しい気持ちになった。とは言わず
    僕らは涙を流した。と客観的事実のみで構成される。
    不思議な本だった。
    双子の主観から捉えた世界なのに、主観的な表現がひとつもない。
    双子の目に映る世界の追体験ができるが、感情は全て委ねら...続きを読む
  • 悪童日記
    ・あらすじ
    戦時下のある国、厳しい環境下で生き残る双子の少年。
    彼らの作文形式で綴られる物語。

    ・感想
    日記調だけど書いてるのが普通じゃない倫理観の持ち主で、出てくる大人達もやばい奴しかいないから大体ヒキながら読んでた。
    でもなんだかすごくクセになる文章と作風で面白かった、

    あの子達は生来そうい...続きを読む
  • 悪童日記
    双子の不条理な現実の受け止め方が興味深かった。一つ一つ徹底的に練習して自分のものにしていく彼らには悲壮感がない。過酷な生活に押し潰されることなく、冷静に、時に冷酷に生きていく。

    双子の『紙と鉛筆とノートを買う』の交渉、『恐喝』のゆすりは秀逸だった。

    最後は、え?という驚愕とその余韻の中で、続きの...続きを読む
  • 第三の嘘

    (※ネタバレ)

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    実際には離れ離れだった双子。
    二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
    二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三...続きを読む
  • ふたりの証拠
    ⚫︎受け取ったメッセージ
    双子のひとり、リュカの暮らし

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生...続きを読む
  • 悪童日記
    ⚫︎受け取ったメッセージ 
    狂気。毒。

    過酷な戦中、終戦時
    早熟で双子が感情抜きで
    事実のみを語る形をとった
    サバイバル日記

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ハンガリー生まれのアゴタ・クリストフは幼少期を第二次大戦の戦禍の中で過ごし、1956年には社会主義国家となった母国を捨てて西側に亡命してい...続きを読む
  • 悪童日記
    貧しい中でたくましく暮らす双子。東ヨーロッパ特有?の殺伐とした雰囲気。
    最後がまたすごいエピソード。あの後どうなったんだろう?
  • 悪童日記
    重いテーマを扱った内容なのに、なぜか心に食い込んでくる面白さ。シリアスさとユーモラスが混ざり合った不思議な感動がある。
    続編もすぐに読みたくなってしまう。
  • 悪童日記
    抑揚のない簡素で淡々とした著述がより現実的な凄味を感じさせる。
    様々な立場の人々が、戦争中の市井でそれぞれ辛酸を舐めるエピソードに満ちている。二人の少年による、諦観にも似た冷徹で感情を押し殺したような視点が恐ろしくもある。楽しい瞬間は皆無で、読む程にシビアに心が削られていく感覚。
    しかし、傑作と言っ...続きを読む
  • 悪童日記
    訳者の素晴らしい訳ですごく読みやすい。巻末の訳者による解説もわかりやすい。
    1日5ページ程の少年の日記という体裁をとっている。文体は優しいが、内容は苛酷で様々な事柄が淡々と書かれている。

    特徴的なのは、名前及び地名が一度も書かれてない。主人公達の心理描写も一切無く、事実のみ(小説中の虚構であるが)...続きを読む
  • ふたりの証拠
    一作目の最後、国境を超えなかった「ぼく」の物語。「ぼく」は名前を持つことで、前作とは違った雰囲気を感じる。戦後下の厳しい環境で生きていく主人公は、他人に手を差し伸べながらも、常に孤独を抱えている。地の文に、主人公の感情は一切ない。それでも、彼の心情は、読者へ強く伝わってくる。予測できない展開に、はら...続きを読む
  • 悪童日記
    激しい戦争のため、小さな町のおばあちゃんの元へ預けられることとなった双子の話。
    淡々と綴られる短い文がなによりも印象的。それなのに、物語はとても色鮮やかに感じられた。戦時下という時代背景が「ぼくら」に様々な感情を与えていく。周りからは忌み嫌われる主人公たちだが、真っ直ぐな生き様が、読んでいて眩しい。...続きを読む
  • 第三の嘘
    二人の証拠のラストで、エエェ!
    てなった後の本作。
    悪童日記や二人の証拠であった若々しさ等はなく、
    老いたリュカとクラウスの話。
    全体を通じ、悲哀に満ちていて、なんとも言えない気分に。
    内容が悲哀に満ちているのもそうだが、一人称の私が、リュカとクラウスどっちがどっち?てなることもあったのでもう一度読...続きを読む
  • ふたりの証拠
    悪童日記がおもしろくて2作品めのふたりの証拠を完読しました。

    やっぱり純粋にリュカという人物を好きにはなれなかった…。いくら戦争を体験している可哀想な生い立ちだったとしても、大人として自分勝手でサイコパスなのは前作と変わらず、恐怖でした。マティアスを大事にし愛しているように見えて結局自分のことばか...続きを読む
  • 悪童日記
    初めは戦時中の双子の少年の生き方を描いた作品なのかな?と思いましたがそんな悠長なものではなく、生と死の狭間で強くそして残酷に自分たちの思考を貫き生き抜くいていく双子のお話でした。想像を覆された作品でした。固有名詞もなく、淡白な感情として淡々と描かれる双子の気持ちや描写などに恐怖を覚えました。今風に言...続きを読む
  • 悪童日記
    幼い双子兄弟から見た戦時下の生活。あまりにも劣悪な環境に吐き気を催しそうだった。しかし、これが戦争の実態なのだろう。人が獣以下になる、身の毛がよだつ地獄そのものだ。
    兄弟は生きるために自分達を鬼のように鍛える。彼等にとって感情は意味がなく事実あるのみ。鉄のような精神でしたたかに生きる。彼らは果たして...続きを読む