アゴタ・クリストフのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ正直さとは、いざという時に嘘が通るための下準備だ。
『悪童日記』では、双子の作文が日記として描かれている。
「作文の内容は真実でなければならない、というルールだ。ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見たこと、ぼくらが聞いたこと、ぼくらが実行したことでなければならない。」
子どもの限られた語彙のなかで、極限までシンプルに表現された人の残酷さを垣間見ることができる。
ただ、これは壮大なフリなのだ。
この作品を読み進めていくと、前二部作が全て嘘だったことがわかる。
人は、真実を守るために嘘をまといながら生きている。そして、その嘘には真実が含まれる。その境目は、本人でさえわからない。
双子がどんなに虚構を重ねても、本質的に追い求めていた「失われた家族」「故郷」「愛」といった喪失感や孤独、それに対する切実な願いが痛烈に描かれていた。
亡命というのは、命を亡くすと書くように、自分にあったはずの何かを故郷に置き忘れることなんだろう。この双子のように、半身を引き離されたような、それでいてその場所に戻っても、そこにあったはずの何かは戻ってこないような、行き場のない痛みなんだろう。
あるはずのない何かを求めて、届かなくて、そういった痛みを抱えながら生き続けることもできなくて。
そんな時に人は、きっと嘘を本当と信じるんだろうと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦争というものは、かくも人の心を傷つけ続けるものなのかとあらためて思う。リュカは激しい悲しみと孤独の人だけれど、他の人々もそれぞれひとりひとりが喪失の物語を持つ。ヴィクトールの「すべての人間は一冊の本を書くために生まれた」という言葉にあるように。
それにしても謎が回収されないままに終わってしまい、読者であるわたしは置いてけぼりだ。最大の謎は「兄弟」の存在だけれど、それ以外にもある。なぜリュカはこれほどまでにマティアスに執着したのか、なぜヤスミーヌを殺したのか、なぜ彼は神に祈らないのか...。3体の骸骨の下にある藁布団が「生温か」かったのはどういう意味なのかもよくわからなかった。アゴタ・クリストフは、読者に謎解きをさせて楽しませようとしているわけではないことだけはわかった。彼女はだれかにわかってもらいたくてこの本を書いたのではなくて、自分のために書いたんだなと思った。ということは、解釈も逆に自由なのではないかな。で、その解釈のためのテキストとして『第三の嘘』まで読み終えたら彼女の自伝『文盲』を読もうと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの人生が対比で語られるのかと思いきや、終盤まで出てこないばかりか、イマジナリーフレンドだったのではないかという疑念が湧いて、そう言えば「悪童日記」での靴屋のおじさんの受け答えは不自然だったかもしれないなと思い至る。
著者は、物事が人間の成長や変化に与える影響を、すごくよくわかっている人だと思う。
原理原則を自ら決めて誰にも従わないで成長したリュカと、受け止めて戦う事で成長しているマティアス。リュカとマティアスの、子どもとしての性格の違いが興味深く、マティアスの自我がリュカをどう変えていくのかが楽しみだったのに…
ヤスミーヌを殺したのはリュカなのか?リュカがなんとかして手に入れた愛がこぼれ落ちていく場面はこの上なく悲しい。
実在を確認できたのはおばあちゃんだけ??
大きなノートは6ヶ月で書き上げた??
これでさらに続編があることに驚くとともに楽しみでならない。
くわばらあきらさんの朗読、素晴らしいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
(※ネタバレ)
⚫︎受け取ったメッセージ
実際には離れ離れだった双子。
二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。
(あらすじネタバレ)
クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2人の母は精神の病にかかり、またリュカはリハビリが必要となり、一家はバラバラになる。クラウスは4歳から愛人に育てられることとなる。腹違いの妹とともに。クラウスは本当の家族は母とリュカだけと思い続ける。8歳のとき、自分は愛人に育てられていたのだと知り、愛人を責める。腹違いの妹と近親愛に陥る前に愛人の元を去り、精神の病を患ったままの母と暮らし始める。ことあるごとに「リュカなら…」と妄想のリュカを褒め続け、クラウスには愛情を一切示さない母に、クラウスは何も言えない。そのまま55歳になっている。そこへ、リュカが現れるが、人違いだと告げるクラウス。2日後リュカは電車に飛び込み自殺。クラウスは父の墓の横にリュカを埋葬することに決める。この先母が他界したら、生きている意味もなく、4人一緒になれる日も近い、将来電車に自分も飛び込むかもしれないという余韻をのこして、完。
⚫︎感想
「第三の嘘」によって、二人が会えるチャンスがあったのにタイミングが悪く、悲しい。ついに会えても、双子の気持ちは引き裂かれたまま。クラウスは55歳になってからでなく、もっともっと早くリュカに会いたかった。なぜ今になってしまったんだと思う気持ちで、リュカを追い返してしまう。しかし互いを求め、思う気持ちは「悪童日記」で描かれる二人で一人のまま。双子を引き裂く悲劇的な出来事に加えて戦争が落とす混乱。
いつの時代も、大人が引き起こしたことに巻き込まれ、犠牲になるのは子どもをはじめとした弱者である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
双子のひとり、リュカの暮らし
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。
(ネタバレ)
祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌという女性。その子は不具であったが非常に聡明であった。ヤスミーヌは街へ出ていき、残された子であるマティアスを我が子のように可愛がるリュカ。マティアスはリュカの愛を信じられず自殺。都会へ出ていったとリュカが説明していたヤスミーヌの遺体が見つかり、その次の日からリュカは30歳でいなくなった。
最後の章では双子のもう一人であるクラウス(CLAUS)が50歳で村へ戻ってくる。
⚫︎感想
「悪童日記」の続編。村に残った方のリュカ(LUCAS)の15〜22.3歳までの話。こちらは第三者視点で描かれる。
マティアスとのやりとりが中心だが、それでもリュカのクラウスに対する思いは唯一無二である。
本当にリュカ、クラウスという双子の兄弟が居たのか?同一人物なのか?55歳になって戻ってきたクラウスは、リュカではないのか?
日記をつける行為はリュカが続けていることがわかる。日記は創作物なのだが、虚偽と真実が入り混じっているのか?謎が残るまま、第三部「第三の嘘」へ。 -
Posted by ブクログ
ストーリーの整合性を予め確保した、一般的な小説を目指し書いたのではなく、自身の内側に漂い続けているものを小説という形をとって表現したのだと思う。
訳者の解説が巧みで素晴らしかった。
双子の、「でも、あなたは、今しがたおっしゃいましたね。〝苦しみは減少し、記憶は薄れる〟って」という言葉に対し、不眠症の男の「そう、確かに私は、減少する、薄れると言った。しかし、消え失せるとは言わなかったよ」という一言が印象的だった。
理不尽な力によって本来の自分から引き剥がされ、本来ならばそこに存在したはずの自分、家族、自然、国といった幻の中をさまよいながら、完治することのない傷と共に生き続ける人間の強さ、脆さ、悲しさが物語の随所に滲んでいた。
緑色の鎧戸の家を見つめながら涙を流す双子の描写が辛く、なかなか読み進めることができなかった。
忘れられない本になった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ悪童日記、ふたりの証拠で散々裏切られて慣れてるはずなのに、また新鮮に裏切られた〜
それまでの前提覆される展開大好きなので(ナウシカ、進撃の巨人、アメリカンサイコ、ユージュアルサスペクツetc)楽しかった
この本自体も嘘とも考察できるけど、この本は真実で、悪童日記とふたりの証拠はリュカの創作とするのが好きかな
4歳から別々なのに、もの書きとして成功、相手の名を名乗る、家族はいない、好きな人と体を重ねるも結ばれない、自殺(願望)と共通点多いのはさすが双子
悪童日記に登場する、一心同体で強い双子、子を迎えに来る母、子に会いに来る父、血のつながりがある祖母
ふたりの証拠に出てくる、父に愛される身体障害を持つ子、クララという女性、ペテールという男性
彼が欲しかったものなのかなぁ...
リュカ
首都で生まれる
4歳:被弾(母親が不倫した夫を銃殺)により脊髄付近損傷し、S市のリハビリ施設へ。施設が爆撃を受け、K市の農婦に引き取られる(畑仕事、ハーモニカ吹き、荷物持ちをする)
15歳:農婦が死亡し家を追われ、亡命→18歳と偽りクラウスと名乗り始める
後見人となったペテール(後に親友)の妻クララと寝る
色々な仕事をしながら本を出版
55歳:鬱病、クラウスと再会後、列車に飛び込み自殺
クラウス
首都で生まれる
4歳:母が父を銃殺し、精神病院へ入る。数ヶ月孤児院で過ごした後、親の友人アントニアに引き取られる。妹のサラが生まれる。
6歳:偶然生家を見つける
8歳:アントニアが父の愛人でサラがアントニアと父の子であること、その事が原因で母が父を銃殺したこと、リュカの体のことを知る。K市のアントニアの両親宅で過ごす。チェスを覚える。
11歳:サラと不適切な行為をする。母と暮らし始める。母はリュカしか愛していない
14歳:学校を辞め植字工見習いになる
17歳:植字工となる
サラは外科医と結婚、クラウスは適当な女たちと寝る
45歳:鉛中毒で不眠症。詩が社長の目にとまり出版。ペンネームはクラウス・リュカ。有名な詩人となる
55歳:会いに来たリュカから同居する母を隠し、母もリュカも死んだと嘘をつく。サラという妻と子、孫に囲まれて幸せだと嘘をつく