吉田伸夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
138億年前の宇宙の始まりから「10の100乗年」後にやってくるかもしれない終焉までを最新科学に基づいて見渡す壮大な科学読物。「宇宙の始まり」を中心とした宇宙論の本は何冊か読んだことはありますが、「終焉」を記した本は初めて。なんと言っても1無量大数(10の68乗)という数詞を超えた世界に魅力を感じました。
著者の吉田伸夫さんの専攻は量子論。宇宙の一生の後半以降は天体の歴史よりも物質の歴史となり、量子論から宇宙の終焉を描きます。
宇宙の一生を概観すると
数百億年後、銀河は老化(星形成率の減少)
1兆年後、長寿命の恒星の死
100兆年後、宇宙の第2の暗黒時代(第1の暗黒時代はビッグバンから100万年後の最初の星の誕生時に終了)
10の20乗年後、ブラックホールが銀河を飲み込む
10の40乗年後、物質の消滅。陽子や中性子は宇宙空間から完全に姿を消し、電子、陽電子、ニュートリノ、光子が薄く漂うだけとなる
10の100乗年後、宇宙の終焉。最も大質量のブラックホールがホーキング放射により消滅。新たな構造の形成が失われる。
本書は難解な数式は登場しませんが、後半以降はフェルミオン素粒子、W粒子、反クォーク、反粒子、ホーキング放射等の難解な概念が説明されていて、かなり歯応えのある本です。
それでも、宇宙論の基本的なポイントを見直すことができました。
-ビッグバンは、巨大な爆発などではない。異常な高温状態にある一様な空間が整然と膨張を始めたものである。整然とした膨張だからこそ、その後に続く宇宙の進化が可能になったのである。
-E=mc2という式についていろいろな説明がなされるが、ここでは、「ある領域に閉じ込められた内部エネルギーは、外から見ると、その領域の質量として観測される」と言っておこう。
-素粒子、複合粒子、原子核、原子、分子の「物質の構成図」
-温度が4000度以上で電子が自由に動き回っているときには、光は電子に散乱されてまっすぐには進めない(電子の2000倍近く重い陽子は光の振動に追随できないため、影響は小さい)。ところが、宇宙空間が膨張して温度が下がり、電子と陽子が結合して電気的に中性な水素原子に変化し始めると、光はしだいに散乱されにくくなる。宇宙暦338万年頃、温度が3000度付近まで低下すると、宇宙空間はほぼ透明になって、光はまっすぐ進むようになる。
-最も重要な知見は、背景放射が、全天のどの方位でも絶対温度2・73度の熱放射とほぼ完全に一致する点だろう。
-暗黒物質は、まず複雑に絡み合ったフィラメント状に凝集し、フィラメントが交差する地点に、特に密度の高いハローが形成される。こうしてできた太陽質量の10万倍から100万倍の暗黒物質ハローが、恒星や銀河などの種”となる。
-本書で扱ってきた宇宙史は、かなり信憑性の高い理論に基づいてはいるものの、確実というわけではない。これ以外の可能性を主張する研究者も少なくない。現代宇宙論における最大の謎は、暗黒エネルギーの正体である。
本書が扱うテーマは難解ですが、壮大なテーマであり、好奇心を刺激するという点では、ブルーバックスの中でも最強の1冊です。巻末にある「宇宙を統べる法」を読んでから、本書を読むことをおすすめします。 -
Posted by ブクログ
前書きで「2ページで語る宇宙全史」、付録で年表と概観しやすい構成。
宇宙の終焉(ビッグバンから10の100乗年後、ビッグウィンパー)の時間スケールから見れば、138億年前のビッグバンは「ついさっきのこと」
以下、宇宙暦(ビッグバン以後の時間経過)を基準に
10分後、100万年まで、10億年まで、138億年まで(現在)、数百億年まで、1兆年まで、…10の100乗年以降と段階別に解説
■4章 宇宙歴10億年まで
近年の研究によると、第1世代の恒星は種族IとIIのいずれとも異なる性質を示し、種族IIIと呼ぶべきものべあることがわかってきた。種族IIの古い恒星にも微量ながらヘリウムより重い元素が含まれているが、最初の恒星が誕生する前に重い元素を合成するメカニズムは存在しないので、種族IIIの恒星には、重い元素は全く含まれない。この組成の違いによって、種族IIIの一生は、種族IやIIとはかなり異なったものになる。93
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Posted by ブクログ
“時間”について、物理的な概念や人が認知するものを解説している。本書を読むと、時間は宇宙で一様に流れていないことや、時間も空間のように拡がりを持つことなど、時間に対する認識が変わる。「時間が流れる」という認識があるのは、意識が影響しているようで、著者は脳の仕組みから時間の流れについて解説している。カバーする範囲は想像以上に広く、本当に理解するには、この1冊だけでは無理だが、考え直すきっかけくらいにはなると思う。一般に向けて解説しているので数式は一切出てこない。その分、図で感覚的に理解させようと努力されているのだが、まだ難しい。もっと図を入れてほしかった。著者の他の本を読んで、もっと理解を深めたいと思う。
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Posted by ブクログ
素粒子の専門家による時間の話。過去は過ぎ去ったもの、未来はまだ見ぬもの、現在だけが存在しその瞬間はすべての場所で同一時刻というのは、ニュートン力学の世界の話であって、現代物理学では、時間はすべての場所毎で異なるものと理解されている。Blue Backsらしく論理的にかつ明快に、時間について説明している。もちろんすべてが理解できたわけではないが、勉強になった。
「(5台の原子時計による実験)5台の時計のどれもが、標高が低いほどゆっくりと、高くなるにつれて早く進んだ。セシウム原子から放出される電磁波の振動回数で言うと、小金井本部に対する変化の割合は、おおたかどや山送信所で100兆分の8、はがね山送信所で100兆分の13だった」p22
「かつては太陽の動きを利用した日時計や、振り子の等時性を使った振り子時計を使っていた。だが、近代以降に利用される正確な時計の大半は、金属製バネの振動を利用した機械式時計も含めると、原子スケールで起きる周期的な振動現象を利用している」p38
「媒質中を伝わる光の速度は、真空中に比べてn分の1に低下する(電磁気学の法則によって、屈折率は必ず1より大きくなる)。例えば、水の屈折率は1.333であり、水中では、光は真空中の4分の3の速度で進む」p41
「「未来」はまだ実現されず「過去」はすでに過ぎ去ったのだから、どちらもリアルではなく、ただ「現在」だけがリアルだ。こうした常識的な見方を支持する物理学的な根拠はない。相対性原理が成り立つならば、「同じ時刻」を一つに決められず、したがって「現在」という「それだけがリアルな瞬間」が実在することはない。過去・現在・未来という区分は、物理的に無意味である。「ここ」以外にさまざまな場所が存在するのと同じように、「いま」以外にもさまざまな時刻がリアルに存在する」p50
「素粒子論によると、光以外にも、時間と空間の界面に沿って進み、速度が1(ないし1に極めて近い値)になる素粒子がいくつかある。ただし、その大部分は、原子スケールよりも遥かに短い距離しか進めないので、実際に観測するのは難しい。例外的に長距離を進むことができるのは、光以外には、ニュートリノだけである」p102
「大マゼラン雲は、地球から16万光年の距離にある。16万年前にここで生じた超新星爆発で、さまざまの放射や物質が放出されたが、そのうち地球に到達できたのは、光とニュートリノだけである。観測結果によれば、爆発によって放出された光とニュートリノは、宇宙空間を16万年にわたって飛び続けた後、どちらも1987年2月23日に地球に到達した。最初に観測に掛かった光とニュートリノの到達時間差は、わずか3時間しかない。ニュートリノは、16万年もの間、ほとんど光と並んできたことを意味する」p103
「互いに運動するアリスとボブが、手元に時計を持っていることを考えよう。このとき、アリスとボブの時間軸は互いに傾いているので、斜めになった2つの物差しと同じように、相手の時計の進み方が自分の時計と異なるように観測される。これが「動く時計は遅れる」という現象である。この遅れは、互いに斜めになった物差しのケースと同様に、あくまで見かけのものであり、現実に時間の尺度が変化したわけではない。アリスからするとボブの時計が遅れるのだが、ボブの目にはアリスの時計が遅れるように見える。実際には、どちらの時計も同じように時を刻んでおり、天体近くで重力作用を受ける時計のように、現実に遅れるわけではない」p106
「空間内部での回り道は、直線ルートに比べて必ず道のりが長くなるのに対して、時間と空間を併せた世界では、回り道をした方が経過時間が短くなる。これは、ミンコフスキーの幾何学では、長さを定義するのに時間部分と空間部分の差を取るせいである。空間で遠回りをすると、道のりはかえって短くなる」p109
「宇宙背景放射は、1964年に衛星通信用に地上に設置されたアンテナで初めて観測された。宇宙からの背景放射は、温度がほぼ零下270℃(零下273.15℃を零度とする絶対温度で表すと、2.725度)の物体の放射と等しい。この温度が場所によってわずかに異なっており、その揺らぎが10万分の1程度であることを明らかにした(2006年ノーベル物理学賞受賞)」p124
「揺らぎがわずか10万分の1しかなかった点こそが重大である。10万分の1の揺らぎとは、どんなものなのか。容器に、小麦粉を10㎝の厚さに敷き詰める場合を考えよう。小麦粉粒子の大きさは数十分の1㎜なので、場所による厚さの違いが10万分の1とは、小麦粉1粒の何十分の1かのデコボコしかないことを意味し、見た目には完璧なまでに平坦な状態である。同じ厚さの金属ならば、表面に髪の毛一筋(0.05~0.08㎜)ほどの傷もなく、鏡のように光を反射するだろう」p125
「(時間の方向性)「なぜ過去から未来へという方向性があるのか」という謎に対しては、「宇宙の始まりが整然としたビッグバンだったため、この完璧な状態が崩れていくという形で、時間の方向性が生まれた」と答えることができる」p126
「ビッグバンが整然としておらず、エネルギーの揺らぎが大きいと、宇宙空間のあちこちに巨大なブラックホールが形成されてしまう」p129
「気体では分子同士の接触が稀となり、固体では動けないため、いずれも化学反応が進まない。熱の流入に応じて化学反応が進行するためには、分子が液体の中を動き回れなければならない」p138
「地球は、太陽光線を浴びる地表でエントロピーの減少を実現し、生命にあふれた惑星になれたのである」p140
「惑星上で活動する生物の姿だけを見ると、宇宙とは無縁の時を刻んでいるように感じられよう。しかし、実際には、生化学反応は太陽からの光の流れに駆動されて進行する。あらゆる出来事が、ビッグバンの整然とした状態が崩れていく過程の一部であり、「ビッグバンから遠ざかる向き」に進行する不可逆変化なのである」p141
「ヒットを打った後のインタビューでは、球種を見極めてからバットを振る決断をしたと答えることがあるが、これは、生理学的にありえない。目で見てから体を動かすまでの反応時間を考慮すると、球種がわかるほどボールが進んでからでは、バットをボールに当てることは不可能である。バットを振る意思決定が行われるのは、投手の手からボールが離れた直後(あるいは直前)のはずである」p203
「人間の頭の回転は、多くの基礎物理過程に比べて、極めて遅いと考えた方がよい」p208 -
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もう一度読みたい本
最初の5章は時間をテーマした本なら絶対カバーされるテーマ。他の本でも知ることが出来る。面白かったのは第6章の「タイムパラドックスはおきるか」。もう一度読んで深く考え、そして理解したい。第7章の内容(時間は何故流れるように感じられるのか)が取り上げられたのは意外だった。時間に関する本を色々読んでいるが、このテーマをカバーした本は初めて。新鮮だった。
時間をテーマにしている他のブルーバックスを読んでからもう一度読みたい本。 -
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面白いが・・・
面白いのですが、私の物理学の知識が低いのか、ところどころで付いてい行けない処がありました。ただ、その為に、内容が面白くないことはありません。少ない知識でも、これまでの常識的な時間の概念が誤っていたことは理解できます。良い本と思います。