あらすじ
今から138億年前、宇宙はビッグバンで生まれた。実は「138億年」の時の流れは、宇宙にとってはほんの一瞬だ。宇宙は、人類誕生までの138億年を序盤のごく一部として含み、この先少なくとも「10の100乗年」に及ぶ、想像を絶する未来を有する。そんな遠大な未来に、宇宙は「終わり」を迎えるのか? 答えは本書にある。宇宙に流れる「10の100乗年」の時間を眺め、人類の時間感覚とは全く異なる壮大な視点に立つ。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
やや高度な思考をいとわなければ、宇宙の始まりから終わりまで統一的な見方が得られる。天文学的スケールという言葉すら、陳腐に思えてしまうほど、大きな数を想定することを恐れなければ、物理学はこの宇宙ですら最初と最後まで推定してしまう。いかに人間中心の尺度が陳腐か。ワクワクを打ち消す科学の威力を思い知った。
Posted by ブクログ
宇宙の始まりから終焉予想までを非常に分かりやすく説明した本。インフレーションの前の状態といのうが今まで良くわからなかったが、はじめてスッキリと分かった。以前、NHKスペシャルで宇宙の始まりのようなことをやっていたが、やはりブルーバックスの方が断然分かりやすい。場のエネルギーのちょっとした偏りから宇宙が始まり、その膨大なエネルギーが物質に変わっていくなど、想像もできない現象だが138億年という途方もない時間と、それよりはるかに広大な宇宙空間が存在していることを考えると人間の想像などは及ばないようなことが起きているのだろう。宇宙背景放射、対称性の破れ、宇宙の晴れ上がり、ダークエネルギー、ダークマターなど、科学番組でよく聞くことが時系列的に書かれているのでとても分かりやすい。宇宙の終焉がビッグウィンパーと呼ばれていることは初めて知った。いずれは全てのエネルギー=物質がエントロピーが増大する方向に向かい熱力学的な死を迎えることになる。う~ん。こんな話を読んでいると所詮80年くらいの人生なんて取るに足らないものに思えてくる。。。
Posted by ブクログ
悠久の宇宙の流れを感じさせる良書。現在分かっていること、分かってないことを明確にして、どの仮説を前提として話を進めているか分かりやすい。難しいことは読み飛ばしても雰囲気でなんとなく分かる。高校卒業程度の物理学が分かってるなら読み飛ばさずに理解できるだろう。X粒子のくだりは再読を要したが、おそらく冗長な文書がうまく頭に入らなかったためと思われる。その辺りを差し引いても、内容の背景である研究者たちの温度感まで伝わってくる正直感は評価できる。""
Posted by ブクログ
わかりやすい宇宙の歴史10の100乗年。
ビッグバンで、エネルギーの場から素粒子が誕生し、結合し元素が生まれる。
宇宙が膨張していく中で温度が下がり38万年後くらいに3000度隣、電子と陽子が結合し、水素原子になる(宇宙の晴れ上がり)。その後最初の恒星が形成され、超新星により、恒星内部の核融合により形成された水素やヘリウムより重い原子が宇宙空間に拡散され、第二世代の恒星の材料となり、現在の太陽系のようなものと人類が138億年後に誕生することとなる。これ以降は、140億年後には太陽の膨張で地球がハビタブルゾーンから外れ、数百億年後には銀河系がアンドロメダ銀河と合体し、星形成率もだいぶ落ちてくる。1000億年後には宇宙の膨張が進むことで他の銀河が観測できなくなり、それ以降は通常の理論であれば(ダークマター、ダークエネルギーについてはほぼ分かっていないので)、新たな星や銀河などの構造は生まれず恒星は徐々に力尽き、原子でさえも1兆年単位では半減期を迎え、ブラックホールと残存物だけが残る世界となり、それすらもいつかは無くなる。
Posted by ブクログ
宇宙の始まりに関する本は読んだことはあるがこれだけ未来に紙幅を割いた本は初めて。人や生命が滅びても宇宙は何となく続いているのだろうと思っていたが、遂には物質ひいては素粒子まで消滅するとは想像だにしていなかった。
主論ではないが常々疑問に思っていた水がないと生命が存在しないという説も、生命維持の観点からではなく複雑な構成をもつ原子が自然に生成される(化学進化する)可能性が低いということがわかりようやく得心がいった。
その他、地球が灼熱地獄と化すには10数億年しかないんじゃ弥勒菩薩も間に合わないじゃんとか、この宇宙の外は2次元世界にとっての3次元世界のようにわかりようがないなら、突然この宇宙が外的要因で消し去られたりするんじゃとかいう子どもの頃からの想像を思い出したりと、色々なことに想いを馳せながら面白く読めた。
Posted by ブクログ
138億年前の宇宙の始まりから「10の100乗年」後にやってくるかもしれない終焉までを最新科学に基づいて見渡す壮大な科学読物。「宇宙の始まり」を中心とした宇宙論の本は何冊か読んだことはありますが、「終焉」を記した本は初めて。なんと言っても1無量大数(10の68乗)という数詞を超えた世界に魅力を感じました。
著者の吉田伸夫さんの専攻は量子論。宇宙の一生の後半以降は天体の歴史よりも物質の歴史となり、量子論から宇宙の終焉を描きます。
宇宙の一生を概観すると
数百億年後、銀河は老化(星形成率の減少)
1兆年後、長寿命の恒星の死
100兆年後、宇宙の第2の暗黒時代(第1の暗黒時代はビッグバンから100万年後の最初の星の誕生時に終了)
10の20乗年後、ブラックホールが銀河を飲み込む
10の40乗年後、物質の消滅。陽子や中性子は宇宙空間から完全に姿を消し、電子、陽電子、ニュートリノ、光子が薄く漂うだけとなる
10の100乗年後、宇宙の終焉。最も大質量のブラックホールがホーキング放射により消滅。新たな構造の形成が失われる。
本書は難解な数式は登場しませんが、後半以降はフェルミオン素粒子、W粒子、反クォーク、反粒子、ホーキング放射等の難解な概念が説明されていて、かなり歯応えのある本です。
それでも、宇宙論の基本的なポイントを見直すことができました。
-ビッグバンは、巨大な爆発などではない。異常な高温状態にある一様な空間が整然と膨張を始めたものである。整然とした膨張だからこそ、その後に続く宇宙の進化が可能になったのである。
-E=mc2という式についていろいろな説明がなされるが、ここでは、「ある領域に閉じ込められた内部エネルギーは、外から見ると、その領域の質量として観測される」と言っておこう。
-素粒子、複合粒子、原子核、原子、分子の「物質の構成図」
-温度が4000度以上で電子が自由に動き回っているときには、光は電子に散乱されてまっすぐには進めない(電子の2000倍近く重い陽子は光の振動に追随できないため、影響は小さい)。ところが、宇宙空間が膨張して温度が下がり、電子と陽子が結合して電気的に中性な水素原子に変化し始めると、光はしだいに散乱されにくくなる。宇宙暦338万年頃、温度が3000度付近まで低下すると、宇宙空間はほぼ透明になって、光はまっすぐ進むようになる。
-最も重要な知見は、背景放射が、全天のどの方位でも絶対温度2・73度の熱放射とほぼ完全に一致する点だろう。
-暗黒物質は、まず複雑に絡み合ったフィラメント状に凝集し、フィラメントが交差する地点に、特に密度の高いハローが形成される。こうしてできた太陽質量の10万倍から100万倍の暗黒物質ハローが、恒星や銀河などの種”となる。
-本書で扱ってきた宇宙史は、かなり信憑性の高い理論に基づいてはいるものの、確実というわけではない。これ以外の可能性を主張する研究者も少なくない。現代宇宙論における最大の謎は、暗黒エネルギーの正体である。
本書が扱うテーマは難解ですが、壮大なテーマであり、好奇心を刺激するという点では、ブルーバックスの中でも最強の1冊です。巻末にある「宇宙を統べる法」を読んでから、本書を読むことをおすすめします。
Posted by ブクログ
星の誕生から消滅、そして物質への理解を含めてから宇宙論全体を論じる構成により、非現実的かつ天文学的な範囲の仮説が現実味を帯びて理解できる1冊でした。
Posted by ブクログ
前書きで「2ページで語る宇宙全史」、付録で年表と概観しやすい構成。
宇宙の終焉(ビッグバンから10の100乗年後、ビッグウィンパー)の時間スケールから見れば、138億年前のビッグバンは「ついさっきのこと」
以下、宇宙暦(ビッグバン以後の時間経過)を基準に
10分後、100万年まで、10億年まで、138億年まで(現在)、数百億年まで、1兆年まで、…10の100乗年以降と段階別に解説
■4章 宇宙歴10億年まで
近年の研究によると、第1世代の恒星は種族IとIIのいずれとも異なる性質を示し、種族IIIと呼ぶべきものべあることがわかってきた。種族IIの古い恒星にも微量ながらヘリウムより重い元素が含まれているが、最初の恒星が誕生する前に重い元素を合成するメカニズムは存在しないので、種族IIIの恒星には、重い元素は全く含まれない。この組成の違いによって、種族IIIの一生は、種族IやIIとはかなり異なったものになる。93
Posted by ブクログ
雑誌プレジデントか何かで、「新社会人向けの本」で紹介されていた記憶。それを覚えつつ、何かのきっかけで書店購入。
宇宙の誕生から終焉まで、ダイナミックな宇宙論を学ぶことができる本。
この本の良い所は、「最新研究で確かに分かっている事」「イマイチ解明されていない事」をハッキリ書き分けていること。
Posted by ブクログ
文系にはかなりしんどかった。やはり理系の頭脳には素直に敬服する。
宇宙に終わりがあるのかというのは大問題だが、人間の寿命の方が恐らく短いのが悲しい。著者が最後に書かれたように、人間なんてほんと「ちっぽけな存在」だと思う。
Posted by ブクログ
高校生のころに天文学にあこがれて、宇宙関連の本を多く読んだが、20数年ぶりにこの手の本を読んでみたら、当然ながら科学の進歩に驚かされた。
本書は宇宙の始まりから終わりまでを、章毎に分けて分かり易い言葉で解説しているので、基礎知識がなくてもある程度理解することができる。
良い機会なので、これからは若いころを思い出して、この手の本も本棚に加えていきたいと思う。
Posted by ブクログ
宇宙に終わりはある、どうも人類以外に知的生命体はいなさそう
・仮に地球上での生命進化が典型的なものだとするならば、恒星が形成されてから文明を持つ知的生命が誕生するまでに、50億年ほどかかることになる。ビッグバンから100億年少々という現在は、星形成率がピークとなった時期(宇宙歴40~60億年)から生命進化に必要な期間を経た時期に当たり、宇宙における第1世代の生命が最も反映している頃だと推測される。だからこそ、そうした生命の一つである人類も、この瞬間を生きているのだろう。
しかしこの繁栄は、宇宙全史からすると、一瞬の出来事にすぎない。これからの100億年の間に、宇宙はどんどんと老いていき、生命の総数は減少していくだろう。宇宙に生命の煌めきがみられる期間は、実はかなり短いのである。
・陸地が存在しにくい、光量が不足するなど障害のせいで、赤色矮星が生命をはぐくむのは難しいかもしれない。あるいは、生命の発生は可能であっても、高度な文明も持ち得る知的生命にまで進化することは困難だとも考えられる。この見方が正しいとすると、数千億年後の宇宙には、ごくわずかなの原始的な生命しか存在できないだろう。H・G・ウェルズが描いた「すさまじいわびしさ」を感じさせる世界が、宇宙的な規模で現実のものとなるのである。
・われわれは、天文学的な観測によって、宇宙がビッグバンから始まることを知ることができたが、それ以前のマザーユニバースに関する情報は、ビッグバンの際に大半が失われており、マザーユニバースがどのようにして始まったか、あるいは、そもそもマザーユニバースなど存在したのかを確認することはきわめて難しい。
・われわれを含む複雑な構造の形成は、宇宙という途轍もなく巨大なシステムが、最初の均一な状態から急激に崩れていく束の間に実現された、一時的な出来事なのである。
Posted by ブクログ
【尺が違いすぎる】
宇宙の一生においては星や銀河、人類、生物が存在する時期は一瞬に過ぎないということです。
しかも宇宙が生まれてすぐの過渡期起きる過渡的現象ということです。われわれの人生が過渡的現象とは悲しいですね。
宇宙の寿命は10の100乗年です。
それに比べたら星や銀河が存在する時期は、一瞬もないくらいです。
この時間的スケールを考えてしまうと、人はなんて小さなことで日々悩んでいるのでしょう。
人の一生が一瞬の出来事とは。。。
Posted by ブクログ
宇宙ベースの経過年数で数えるの、ビックバンから始まりビッグウィンパーまでの行程は10の100乗年かかる。そう考えると我々の存在する現在はたかだかビッグバンから138億年しか経っていないという時間軸になる。
その中で人生100年と考えると、いかに小さな時間を過ごしていてるのかと考えさせられる。
Posted by ブクログ
宇宙は誕生して約140億年と言われています。140億年を1年に置き換え、宇宙誕生の瞬間を1月1日午前0時とすると、人類の誕生は12月31日午後11時52分ごろになるという喩えを耳にしたことがある方もおられるでしょう。それだけでも宇宙スケールの時間の大きさに驚きますが、現在の宇宙論では宇宙の寿命がある程度推定されており、それは10の100乗(”0”が100個並ぶほど大きな数)年と見積もることができ、これをまた1年に置き換えると、誕生後約140億年の今は1月1日午前0時0分0.000…4(”0”が77個並ぶほど小さい数)秒だというのです。
本書は宇宙誕生から寿命を終えるまで、宇宙がどのような姿を見せるのかを時間の経過を追って解説しています。それによると、銀河や星雲、恒星が煌びやかに彩る今の変化に富む宇宙は寿命を通じてほんの限られた一時期にしか存在せず、それ以外はもっと一様で変化に乏しい姿だという事です。
永い宇宙の寿命のなかで限られた瞬間に人間が生きているという事ですね。人間の存在の儚さを再認識できる本です。