吉田伸夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本署の謳い文句は、「量子論の具体的なイメージが描けず、くじけがちな初学者へ向け、リアルなモデルを使ってていねいに解説する、今度こそわかりたいあなたのための量子論入門」である。これは出版社の売らんがためのウソ、詐欺トーク、いや違う、キャッチコピーだと思う。残念ながら、吉田伸夫先生の著書全般に言えることだが、やはり、私のような物理初級者には難しい。
上記の話と矛盾するようだが、本署を難しいと感じる向きにおかれては、吉田先生の『量子で読み解く生命・宇宙・時間』(幻冬舎新書、2022)を読むのも、あるいは一法かもしれない。その著書の結末部で、吉田先生は、ややこしいコペンハーゲン派解釈、超難解な超弦理論などに対する痛快な裁断を下している。あのにっくきクソ・ボーアめが。私は溜飲が下がる思いがした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ量子論とは何か、というのを平易に解説してくれる本。
実験で計測しようとすると結果に影響が出てしまう、という有名なロジックや、シュレーディンガーの猫、量子が離れた場所にあってもお互い影響する(ように見える)など本当はこうなんです、とすいすいと解説してくれる。
物理学の各理論の関係や研究者の力関係、ノーベル賞の受賞順まで、「そうなのか」と腹落ちしていく。物理は高校の時にひどい目にあったが、人生の後半に差し掛かってきて、このような解説本、入門本をよく読むようになった。
このような層のニーズがある(科学そのものは不案内だが、どんなものか知りたい)のは30-40年前には思いもよらなかったことではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
吉田伸夫氏の『光の場、電子の海』を読んで、よくわからないながらも、吉田氏が言うことを信用する気になった。
本書は小冊子であるが、『光の場、電子の海』と同様に難しそうだ。
先ず、「帯」や「カバー」に書いてある、出版社の宣伝文句宣伝を読んでみる。
<たった一つの事実で全て解決する。
量子の世界の4大謎
1.歴史は分岐し、パラレルワールドが存在するのではないか?――多世界解釈
2.「人が見る」という行為は、現実世界に物理的作用を与えるのではないか?――観測問題
3.量子には一瞬で空間を超えて情報が伝わるテレパシーのような力があるのではないか?――量子もつれ
4.生と死、二つの状態が重なった猫を作ることができるのではないか?――シュレディンガーの猫>
<生命、宇宙、時間。物質や光の最小単位・量子は、これらのあらゆる現象と関わりを持つ。だが量子には謎が多く、その正体さえ判別できず、《粒子であり波である》と矛盾した説明がされている。本書は《粒子ではなく波である》という結論から出発し、事象の解明に挑む。>
「《粒子ではなく波である》という結論から出発し、事象の解明に挑む」ところがポイントのようである。
さらに、途中を飛ばし読みして終りに近い部分に来ると、こう書いてあるではないか!
<アニーリングマシンは組み合わせ問題しか解けず、しかも、必ずしも最適解は得られない。計算速度も、ゲートマシンのように圧倒的に速いわけではない。ただし、すでに実用段階にある点で優位にある。
一方、ゲートマシンは、論理演算で解けるすべての問題に対応でき、うまく動けば、スピードはアニーリングマシンとは比べものにならないほど速い。しかし、実用化までの障害は大きい。現在は、いくつかのグループが開発した小型マシンを使って、役に立つかどうかの実証実験が進められている。
組み合わせ問題に相当する課題は実社会に数多くあり、アニーリングマシンの有用性は揺るがない。ゲートマシンは、しばらくの間、研究者のオモチャ以上のものではないだろう。>
<初期の量子論が、物理学者のみならず哲学者の関心を引いたのは、物理現象を論じるのに人の役割が無視できないという形で理論が構築されていたからである。人間がどのような観測を行うかによって、物理的な状態が左右されるという見方であり、人間から独立した客観的な物理的実在が厳然と存在するという自然観を否定するかのようだった。かつては、ボーアやハイゼンベルグらが行ったこうした哲学的な議論がもてはやされたが、現在ではあまり重視されない。>
<ハイゼンベルグらの議論では、人間による観測が物理現象の帰趨を左右する。しかし、想像を絶するほど広大な宇宙の中で、塵のような惑星にへばりついて生きる人間がそれほど重要な役割を演じるとは、ちょっと考えにくい。干渉の有無によって量子論的な過程を区別する立場は、私が知る限り、量子論の最も合理的な解釈である。>
<超ひも理論は、厳格に定めらた数学的枠組みを出発点とし、そこからひたすら数式をいじくるような研究しかできない。実際の物理現象から多くの知見を得る道を断ったことで、超ひも理論は行き詰まり、次第に顧みられなくなった。>
「ゲートマシンはまだ研究者のオモチャ以上のものではない」
「ボーアやハイゼンベルグの哲学的な議論は現在あまり重視されない」
「広大な宇宙の中の塵のような惑星にへばりつく人間が物理現象の帰趨を左右するとは考えにくい」
「超ひも理論は行き詰まり顧みられなくなった」
という著者の言葉は痛快であり、頭が良くない私を励ましてくれる。
「コペンハーゲン解釈」は好かないので、これでボーアやハイゼンベルグに「ざまあ見ろ」と言えそうだ。 -
Posted by ブクログ
これまで、分かったつもりであった点が、この本でより深く理解できた。
例えば、時間軸を含む4次元世界では、時間も空間の如く広がりを持つと言う点は見聞きしてはいた。しかし、本書の「物体は時間方向に伸びた存在」という指摘や、ミンコフスキー幾何学の説明等々で、「時空」のイメージの解像度が増した。
(光速度不変より、ローレンツ普遍性の方が重要視されるのも、分かった気がするぞ!)
エントロピー減少の話も分かりやすかったし、量子論の「観測の有無に関係しない客観的量子論」と言う観点は、新鮮であり、腑に落ちるものでもあった。認知のフローから切り込む最終章も、得るものが大きかった。
落ち着いていながらも熱い文体も良かった。
著者の量子論の本も今後読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
ニュートン力学では時間も空間も研究対象ではなく(と言い切ると語弊があるか)、天与の目盛りとして背景にある。
ローレンツ対称性がマクスウェル方程式に見出されて相対論から時空の相対性が確立されると、時間も空間も観測系の運動状態に応じて相対的なものとなり、本書のテーマで言えば時間など物理的には存在しないこととなった。
時間が流れるように感じられるのは人間の知覚と脳内情報整理の結果でしかない。
というようなことを飄々と解説しているわけだが、類書よりも面白かった。学者としての防御姿勢を過剰には取らずに言い切る書き方のためだと思うが、これが本書の真骨頂。
また、ニュートン力学では過去も未来も計算できるが、量子論で粒子が揺らぐ結果として決定論的には計算できないとの指摘もあり、言われてみればなるほどその通りだが改めて蒙を啓いて頂いた。
類書にない踏み込みのある名著だと思う。 -
Posted by ブクログ
物理学的には時間の流れは存在しない。
前著の「宇宙に終わりはあるのか」がとても面白かったので読んでみたが、こちらも刺激的で好奇心をくすぐる一冊でした。
第Ⅰ部の相対論、ウラシマ効果などはある程度理解できたが、第Ⅱ部初めの「時間はなぜ向きを持つのか」については難しかった。秩序あるビッグバンとエントロピー増大の法則を元に説明されているがなんとなく腑に落ちず。
最終章も脳は無意識の行動を後から整理しているに過ぎないという話は聞いたことがあったが、構造的な処理速度の問題から時間が流れているように感じられているというのは興味深い。感じられない過去未来も現に存在していることを意識して生きてみるのも面白いかも。 -
Posted by ブクログ
時間とはなにか?を論じるためには宇宙の始まりについて考えなくてはいけないの、わくわくしません?
時間がないないと普段言っているけど結局なんなんだろう、と思って手にしたこの本。高校物理と医学を少しかじったくらいで、なんとかついて……いけ……はないですが振り落とされはせず、楽しく読めました。
わからないところも勿論ありますが、出来る限りやさしく書こうとしていただけてるのが伝わります。
物理から地学、数学、化学、はては脳神経学まで、学際的な本を読むとやっぱりわくわくがとまりません。
読み終わったら「今まで考えていた時間なんて存在しなかった…?」というような不思議な感覚に陥ります。
結局時間は私が今まで考えていたような絶対的なものではなく、物理変数のひとつであるということ、そしてフィルム映画のようにコマ切れに瞬間が積み重なっているのではなく、広がりのあるものであること(空間のように)。新しい概念をいっぱい手に取ることができました。ありがとうございます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ宇宙の始まりから終焉予想までを非常に分かりやすく説明した本。インフレーションの前の状態といのうが今まで良くわからなかったが、はじめてスッキリと分かった。以前、NHKスペシャルで宇宙の始まりのようなことをやっていたが、やはりブルーバックスの方が断然分かりやすい。場のエネルギーのちょっとした偏りから宇宙が始まり、その膨大なエネルギーが物質に変わっていくなど、想像もできない現象だが138億年という途方もない時間と、それよりはるかに広大な宇宙空間が存在していることを考えると人間の想像などは及ばないようなことが起きているのだろう。宇宙背景放射、対称性の破れ、宇宙の晴れ上がり、ダークエネルギー、ダークマターなど、科学番組でよく聞くことが時系列的に書かれているのでとても分かりやすい。宇宙の終焉がビッグウィンパーと呼ばれていることは初めて知った。いずれは全てのエネルギー=物質がエントロピーが増大する方向に向かい熱力学的な死を迎えることになる。う~ん。こんな話を読んでいると所詮80年くらいの人生なんて取るに足らないものに思えてくる。。。