村木厚子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本書は、元厚生労働事務次官である村木厚子氏が、局長時代に直面した冤罪事件の全貌を通じて、日本の刑事司法が抱える構造的な問題を明らかにした一冊である。
単なる事件の記録にとどまらず、誰もが過ちや組織の都合によって突如として被告人になり得るという冷酷な現実を示し、そうした事態にいかに備えるべきかを自身の凄絶な実体験と重ね合わせて提示している。さらに、再審法の不備をはじめとする司法制度の課題を投げかけ、実効性のある改革案を試案として展開するなど、極めて重厚な内容となっている。
通読して深く考えさせられるのは、検察官や裁判官が抱く「絶対に間違ってはならない」「国民の信頼を損なってはならない」という過度な無謬性の意識が、かえって事実の隠蔽や不全な組織運営を招いているという点だ。人間は誰しも判断を誤るという自明の前提に立った司法プロセスや組織構造の再設計が必要であり、エラーの存在を認めた上で正しく補正できる柔軟な組織風土と、それを許容する社会の寛容さが強く望まれる。
閉鎖的で独自の慣習に縛られた司法組織の改革は容易ではなく、その歩みが極めて遅緩であることは疑いようがない。だからこそ、多くの市民がこの問題に対する理解を深め、制度の監視者としてのリテラシーを高めていく必要性を痛感させられる良書である。 -
Posted by ブクログ
「冤罪」を「創られた」村木さんだからこその、説得力。良き一冊。裁判官も検事も、超がつくほどのエリートでないとなれない職業だから、社会の信用も高い。自分だってそう思う。
本当に罪を侵していないことを知っているのは自分だけ。しかし、それを説明させてもらえない、有罪ありきの調書作成。さらに、身体拘束が続けられることの恐ろしさがわかった。
自由なんて空気みたいなもの、そんな考えはよくないね。
法務省の審議会のあり方も。
行政出身の村木さんが、同じ行政庁である法務省、検察庁の体質をここまで書くのは、ただ単に恨みを晴らすべくではなく、そんな冤罪を今後は作らせたくない、そんな思いだけだと思う。
いち国民がどこまで関与できるかわからないけど、多くの方に手にとってもらいたい一冊でした。 -
Posted by ブクログ
細野 祐二氏の公認会計士 VS 特捜検察 を読んで以来、
検察、刑事司法に注目している私としては、
この本の第一部、第二部は既知の内容。
村木さん自身のお話や、ニュースから情報を得ていた。
第三部法制審特別部会の生々しい議論については、
初めて知ったことも多かった。
この本を通じて改めて思うのは、日本(人)のよくないところ。
無謬性
個より国
御用学者
だ。
無謬性はもはや日本のビョーキ。
間違えたらアウト。間違えないものだけが偉い。
間違っても正せばいい、やり直せばいい、
という環境にない。
日本の特性なのか?
米中心の農耕社会がそうさせたのか?
そうは思えないのだが、、、
小学生から大学入試まで、
そして官僚がこの無謬性の罠に嵌っている。自分の頭で考えてない。組織がそうなら自分もそう、間違えちゃいけない。偏差値エリートのやりそうなことだ。地頭がいいホントのエリートは自分で考えて動くだろう。
個より国
は私が思いついただけでゴロが悪いが、
個人の尊重なんてない。
国を優先する。
治安が守れれば、多少誤認逮捕したってしったこっちゃない。
その「個」は運が悪かっただけ。
もっと言えばそれが財政支出にも反映していて、
生活弱者より箱ものに金を使う。
生活者ファーストじゃない。
・・・自民への対抗軸はこれだと思うけどねえ
そういえば人質司法の始まりは江戸時代、吉田松陰だそうな。彼が幕府の尋問に呆れて「それでよい」と言ったから死罪になってしまったとかまったく、、
そして
御用学者の存在
やれ何とか会議でもむ、とかいっても、
御用学者が政府案を応援して、
この本の例でいえば村木さんや是枝映画監督の意見なんて、
聞きやしない。
形だけ読んでるだけ。
魂売っちゃうのかねえ。
知っていることが多かったが、
読んでいてどんどんつらくなる新書だった。
第一部 99.9%は有罪 おどろきの刑事司法
第一章 突然「犯罪者」にされた私の場合
第二章 刑事裁判 歪んだ「ゲームのルール」
第三章 罪を認めよ! さもなくば、すべてを奪う
第四章 「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」
第五章 袴田事件がさらした再審制度の実態
第二部 明日はあなたも「犯罪者」
第六章 痴漢冤罪「それでもボクはやってない」その後
第七章 会社員を犯罪者に仕立て上げるケースが増えている
第三部 私たちの刑事司法改革
第八章 抜け穴だらけの刑事司法改革
第九章 「公平なルール」を作り直す -
Posted by ブクログ
まさに「おどろき」、そしてため息、の連続だった。
検察だけでなく警察、裁判所、学者も含め刑事司法の当局側全体が、治安維持を建前に、組織防衛が最優先で、冤罪や人質司法の問題を改善することにこんなにも後ろ向きだとは。トップクラスに優秀な人たちなのに、人権を軽視した旧態依然のやり方を変えられない、変えようとしないのがホントに不思議。
自分の冤罪事件から15年以上経ち、法制審の特別部会などで改善のため働きかけを熱心にしてきたにも関わらず、遅々として進まない状況に対する村木さんの失望と、国民にこの状況を理解して世論が後押ししてほしいという願いが伝わってくる。
とてもわかりやすく書かれているので、沢山の人に読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
「まさか自分が逮捕されるはずはない」という思い込みは、ある日突然崩れます。本書は冤罪当事者にして元厚生労働事務次官が、自らの体験と改革の挫折を経て書いた、刑事司法制度への怒りと提言の書です。被害者として制度の理不尽を知り、官僚として制度の論理を理解し、改革委員として変革を阻む力学を内側から見た。その三つの経験が、本書に類例の少ない説得力を与えています。
【目次】
第一部 99.9%は有罪 おどろきの刑事司法
第一章 突然「犯罪者」にされた私の場合
第二章 刑事裁判 歪んだ「ゲームのルール」
第三章 罪を認めよ! さもなくば、すべてを奪う
第四章 「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」
第五章 袴田事件がさらした再審制度の実態
第二部 明日はあなたも「犯罪者」
第六章 痴漢冤罪「それでもボクはやってない」その後
第七章 会社員を犯罪者に仕立て上げるケースが増えている
第三部 私たちの刑事司法改革
第八章 抜け穴だらけの刑事司法改革
第九章 「公平なルール」を作り直す -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本経済新聞の連載「私の履歴書」を読み、衝撃だった。その後すぐにこの本が出版され、読むことにした。
まず、日本の有罪率「99.9%」であることを肯定的に捉えていた自分にとって、世界的にみても高すぎであることや、村木さんのように冤罪を生んでしまう危険性があることを知った。いつだれが疑われ、犯罪者になってしまうか分からない恐ろしさを感じた。
また検察や裁判官がまるで己の利を考え、本来の仕事を忘れてしまっているのではないかとも思えた。台湾の検察総長の言葉として「裁判は、人間が行うものである以上、必ず誤りが生じます。誤りがあるなら、我々はそれを正す義務があり、正す機会を与えるべきです。私自身は、冤罪が存在していることを正面から受け止めます。そのように考えるほうが、むしろ健全だと思うからです。」を挙げ、日本の検察や裁判所にも、少なくともこの発想に学び、冤罪と向き合う姿勢を持ってほしいと書かれている。再審制度は検察官や裁判官を救うものであり、決して否定されるものではないはずだ。
政府は2026年5月、再審制度見直しを盛り込んだ刑事訴訟法改正案を閣議決定した。
しかしながら、検察は例外的に抗告が認められており、当事者の生活は長期間拘束されてしまう可能性が残されている。今後も自分事として注目していきたい。 -
Posted by ブクログ
非常に有益な本。また非常によくまとまった本。一度は読んだほうがいい本である。日本の取り調べのあり方に問題提議を行う一冊であった。日本の検察の取り調べが世界的に旧態依然で、法務省のやる気の無さ、そのあり方が後退している実態がよく分かった。一体検察は人権というものをどう考えているのだろうか?疑わしきは検察の利益では、遵法精神に反するのではないか。こうなっている現状は国民の無関心にも由来するところもある。いつ自分が被疑者被告人になるか分からない。人質司法は社会の大きな害悪であり大問題である。検察や裁判所の組織的な問題でもあり、大鉈を振るう必要がある。100年以上前の自白に基づく証拠によって裁判が行われてること自体、おかしなこと。他国の事例を参考に一刻も早く改革するべき。本書が多くの人の目に触れること祈るばかりである。
-
Posted by ブクログ
公務員という仕事は、なってみないとなかなかわからない。身近にいれば、もう少し分かるかもしれない。(それは、どんな仕事でもそうなのだけど)
全てがそうではないにせよ、公務員は人を動かす仕事だ。動かし方の中に、法令規則通達といった言葉が入るのは少し特徴的かもしれない。言葉を生み、操る仕事だ。だから、前面に出てくるのはその文書達だし、文書がある限り運用する人々が異動したとて一見何も変わらない。
何に基づいて、どんな文言を生み出すか。生み出された文言をどのように解釈し、本質を損なわないように伸縮させつつ、どこかずっと先にあるかもしれない望んだ風景を手繰り寄せるか。その営みにはたくさんの人がいる。立場も違うし、何を言えるかも違う人々と折り合いをつけたりつけきれなかったりする。
そういう企画と調整について、ていねいに記された本だった。この本を読んだなら、公務員もまた、一筋縄ではいかない問題に取り組んでいることがわかるだろうし、そういうことに少しやりがいを予感する人がいればなってほしい。 -
Posted by ブクログ
印象に残った箇所については、以下のとおり。
【P27】「考えるより、やってみる」。それは、取り立てて取り柄のなかった私の、生きる術の一つになっていると思います。
【P44】自分一人ですべてを背負わなくてもいい、チームの中での自分なりの役割を果たせばいいという安心が、仕事に対する気持ちのゆとりを持たせてくれました。
【P88】頑張ってみて、だめなら辞めよう。そう決心した途端に、面白いほど気持ちが楽になりました。
【P94】1日とか1週間のうちに、短くてもいいから自分が好きなことをできる時間、ご褒美になる時間があると、溜まっていく疲労やストレスの量も、違うように思います。
【P102】子どもを授かったときが「産みどき」、そのくらいの気持ちでいいのではないでしょうか。私はあまり人生に関して計算しないようにしています。
【P106】力がついたから昇進するのではなく、昇進したから力がつく、ということなのかもしれません。下の段から背伸びしても見えなかったことが、階段を上がれば簡単に見えるようになる。
【P134】多くの世界を見て、さまざまな業務に携わるほど、自分の持っている経験や知識が有機的につながって、新しい分野がちゃんと自分の射程距離に入る。まさに、点が面になっていきます。
【P185】異動も昇進も恐れずにチャレンジして、行った先でのつながりを一つひとつ大事にしていけば、それが自分の財産になっていくように思います。
【P207】そんな時ほど、私はやるべきことを書き出し、「今、できること」をリストアップしていました。今できること、その次の段階で手が打てること、もっと後でしか出来ないことに分けると、実は、今この瞬間にできることはそんなに多くないことが分かるんです。
【P254】今回の事件を私が乗り越えられたのは、仕事で苦労したこと、失敗したことが全部生きたから。大変な目に遭えば遭うほど、その苦労や失敗は必ず後から役に立つ。