山田克哉のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ロシア・ウクライナ戦争、イランの核施設への攻撃など、核兵器を巡るきな臭い報道が増加しています。”核兵器廃絶”を主張するとしても、まずはその”しくみ”を理解することで”なぜあのような凄まじい威力が発生するのか”、”通常の爆弾とは異なりなぜ放射線の被害が出るのか”を知ることができるように、本書は丁寧に執筆されています。
本書前半は核兵器の威力の根源となる”核分裂”について、科学者がどのように理解を進めて行ったのかを辿ります。原子核の構造(陽子、電子、中性子の発見など)、そして核分裂現象の発見などを数式などを全く使わず、出来るだけ平易に、かつ簡略化しすぎないように解説しています。
本書は新書で500ページを超える分厚さですが、この前半部分がほぼ300ページ超もあって、「核分裂の仕組みを理解して欲しい」という著者の気持ちが伝わって来ます。
そして本書後半部分は、それら科学的知見をもとに原子爆弾を開発する過程、技術的なハードルについて解説しています。
本書前半部については高校で物理を履修した人にとっては懐かしい内容に感じられるのでは。登場する科学者の名前(ボーア、ハイゼンベルク、コンプトン、フェルミ、ラザフォード等々)は聞き覚えがあるのではと思います。”平易に”とはいえ、そこはブルーバックスだけにかなり踏み込んだ内容に思いました。
原子力発電も原爆も核分裂を利用しているのは共通でも、その反応が”ゆっくり持続的”なのか、”一瞬で爆発的に”なのかで全く異なる設計が必要であること、なぜアメリカは広島と長崎に異なるタイプの原爆を開発したのか(広島に落とされた原爆の材料はウラン、長崎に落とされた原爆の材料はプルトニウム)等々、私自身が疑問に思っていたことについて、腑に落ちる解説がされていて非常に参考になりました。
本書は核兵器保有に関する政治的な問題には力点をおいていません。それらを考える際に、核分裂=原子力エネルギーに関する知識をより多くの人に知っておいてもらいたい、という願いの元に執筆されている本だという事を承知の上で読まれる事をお勧めします。
2025年6月にアメリカはイランのウラン濃縮施設への空爆を実施しましたが、ウラン濃縮が原爆の製造の工程でどういう位置づけなのかが理解できると、なぜアメリカがそこまでしたのか、ということも容易に理解できます。原発に関するニュースにしても、核兵器に関するニュースにしても、技術的な知識があればより深く理解できるように思います。 -
Posted by ブクログ
世界史上唯一の原爆投下国である日本。
「妥当な判断だった」
「過剰な攻撃だった」
アメリカでも二分する原爆被害は、人道的な攻撃手段ではなかったと、少なくとも疑問視するだけの大量殺戮破壊兵器であることには、世界中が同意すると思います。
それゆえに、『抑止力』などという口実で、核を保有する国もある。そう言う国では、電気の供給が当然止まった時、勝手に爆発しない、発射しない制御を考えていない。ミサイルに搭載していない物については安全だろうけれども、原子力発電や発射台に入った物については、対処を考えていないとのこと。
小松左京の「復活の日」のように、核弾頭が勝手に発射する、メルトダウンを起こして臨界反応中の放射性物質が漏れ出すなど、実は明日は我が身だったりします。
「原子は中性子の衝突で崩壊する。」
「崩壊後の原子は同質量の原子とは異なる性質を持つ」
この二つだけで、臨界の恐ろしさが分かる。
火力発電に頼った発電には限界がある。それは分かる。ただ、原子力を人類はまだ制御できているとは言えないのではないだろうか。なんなら、制御なんて不可能なのではないだろうか、と思います。
マリーキュリーが白血病の病床で言った言葉、
「神の力に触れてしまった罰なのかしら」
彼女の病の原因は、約8トンものウラン鉱石からラジウムやポロニウムを検出した時に、加重被曝によって罹患したものです。
最後に、マンハッタン計画で、ロシア(共産主義)へのスパイ容疑を掛けられたオッペンハイマーは、日本に落とした核分裂方式の核爆弾を作った人だが、アメリカ軍が水素爆弾(核融合方式)に着手しようとした際、猛反発したことで、セキュリティクリアランスを剥奪されました。事実上の更迭です。
核の利権。人類がもっとも金を掛ける神の炎。
本自体はめちゃくちゃ大味ですし、文量も半端じゃないですが、面白いブルーバックスでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近、YouTubeでジェームスウェブの天体望遠鏡の写真や量子論の解説などを見て、天文学・物理学が凄いことになっているらしいな、と。でも全体像が今一つ見えてこない。そこで、評判のよいこの本を手に取った。
物理音痴の私にも想像以上に面白く読めたのは、著者が数式の意味するところを、日常的な表現やメタファーへと落とし込む、職人技とも言っていいような語り口を持っているからだ。物理学者がどうやって物を考えているのかという道筋がよく分かった。
ほうほう、なるほどなるほど、あー、それはすごい、なんと、そんな解釈もあるのか、などと感嘆しながら読み進めたのだが、自分の覚書を見直したら、単に分かったような気になっていただけだったということが分かった。
それでも現代物理学や宇宙理論がどの辺までのことを解き明かしているのか、一読の価値はある。知的エンターテインメントとしても十分面白い。著者の他の本も読んでみたい。
【覚書】
量子 粒子と波動の二重性を持っており、離散的であると同時に連続的
電磁波は周波数は連続的に変化(波動)するのにも関わらず、個々の電磁波のエネルギーは離散的(粒子的)→電磁波のエネルギーは量子化されている
電磁波が粒子化したものが光子で、電磁波がエネルギーに変換されるときには光子になるために離散的なのである
宇宙空間の真空にはこうした様々な波長の電磁波が充満しており、したがって真空はエネルギーに満ちている。
宇宙が加速度的に膨張しているのは、この真空の中に満ちている観察できないダークエネルギーのためである。
しかしこの斥力は通常の重力に比べ遥かに弱いので、銀河系や太陽系が崩れてしまうことはない。それぞれの銀河系が互いに離れていくのである。
私たちの知っている物質とは全宇宙の5パーセントにすぎず、70パーセントがダークエネルギー、四分の一が謎の物質(ダークマター)である。この場合のダークとは「観察できない」を意味し、そうした見えないエネルギーや物質があると考えると、宇宙空間のバランスが保たれていることの説明がつく。
宇宙が膨張しても、それを満たしているダークエネルギーの密度は一定である。ということはダークエネルギーが増えているということ。ダークマターには質量があるので、光学的にみることはできないが、重力レンズ効果を通じてその存在を推定することができる。ダークマターがなぜできたのかは、全くわかっていない。
重力場は重力が時空を力学変数にしているという点で独特。それは滑らかで連続的。従って重力場は量子の二重性を持っておらず、量子力学と一般相対性理論は相いれない。両者を統一的に扱う理論の登場が待たれる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレニュートン力学、電磁気学、場の理論、エネルギーと続いて相対性理論、量子力学と流れていく物理学の解説書。アインシュタインの「物理学はいかに創られたか?」と同じようなコンセプトとストーリーの本だが、こちらのほうが断然分かりやすい。まあアインシュタインの本が書かれてから100年くらい経っているので、理論もこなれてきているだろうし、先達の解説書などもあるのだろうから、完成度が高くなっても当然か。それにしても、E=mc^2を軸に、この方程式の意味するところを持って現代物理学を読み解かせる著者の力量には感心した。理屈と理屈ではないところ(所謂、公理)を明確にしているところがよい。物理学というのは所詮頭の中の創造の産物だということがよくわかった(これについては、アインシュタインの書にも書かれていたが)。
-
Posted by ブクログ
ヒッグス機構とヒッグス場、ヒッグス粒子の違い、質量の起源などを真空を切り口に段階を追って丁寧に説明した本。量子力学を学んでいると本書の記述はより正確に理解できるだろうが、分からないとなんとなく煙に巻かれた感じになるかもしれない。
・場と仮想粒子
・場の振動と実粒子の発生
・現在の宇宙ではヒッグス粒子は存在しないが、ヒッグス場は存在する
・パートンと電子の衝突によって、1968年、クォークとグルーオンの実在が証明された。
・物質の割合
・電荷、色荷、弱荷、質量
・不確定性原理と仮想粒子。ゲージ場
・反粒子はマイナスエネルギー。相対性理論から。
・ゲージ粒子が質量をもつと対称性が破れる。
・アイソスピン。陽子と中性子
・スピン角運動量はエイチバーの整数倍がボーズ粒子、2で割った値はフェルミ粒子
・弱アイソスピンのZ成分が弱荷。クォークもレプトンも持っている。
・温度と相転移
・ヒッグス場はスカラー場で、発生源のない場
・ヒッグス粒子は4種類?
・弱荷を持たない光子とグルーオンだけがヒッグス場とは作用せず、質量ゼロ。
・クォークの質量の内訳 -
Posted by ブクログ
やべー電気設計よく分からん、これは根本的な理解が不十分(そもそも電気って何だっけ状態)なせいだと思い手にとった一冊。
大事なことなので2回、と言わず3度4度繰り返すのでいらいらするかもしれないけれど馬鹿(僕)にはこれくらいでいいのかも。一番おぉぉぉと思ったのは相対論によるローレンツ力の説明。クーロン力なら根源的な力として受け入れられるけどローレンツ力って二次的な力のような気がして、「フレミングの左手の法則によりこの向きに力がはたらきます!」とか言われても納得できなかったので。まだ完全に納得できたわけではないけど、この本でかなりの部分がスッキリした。以下はメモ。
電気の源は電荷
電荷は電気力を説明できるように導入された物理量でこの世にもともと存在していたもの(電荷の本質はわかっていない)。
磁場の源は運動する電荷
(エルステッドの発見)
電線に電流が流れるとコンパスが反応(永久磁石にコンパスを近づけたときと同じ現象)。電流(動く電荷)が永久磁石の役目を果たす。電荷が運動するとその周りに磁場が発生する。
磁気の源は電子のスピン
自転(スピン)も電荷の運動となる。
電子はスピンしており、電子自身が永久磁石(磁気双極子)になっている。
電磁誘導作用
(一次コイル・二次コイル)
・時間的に強さが変化する磁場は時間的に強さが変化する電場を誘起する
・時間的に強さが変化する電場は時間的に強さが変化する磁場を誘起する。
(これが繰り返されて電磁波が形成される。電磁波を発生させるには電荷を連続的に振動させてやれば良い。)
電流は電荷の流れだから電荷に力が加わらない限り電流は流れない。電荷に力を及ぼすのは電場。電子は磁場の時間的変化によって誘起された"電場"によって動かされ、電流が流れる。
ローレンツ力の相対論的解釈
(電場も磁場も相対的なもの)
電流が流れている電線内に、電子(マイナス)と原子(プラス)がそれぞれ一列に、等間隔に並んでいる、また電子は一定速度で走っているとする。電線に対して静止している観測者にとっては、単位長さ当たりの電荷は0。観測者が電線に沿って電子の運動方向に一定速度(※電子の速さはカタツムリ並なので観測者は電子より速い前提になっていると思われる)で走ると、観測者に対しては、原子の速さ(=観測者の速さ)>電子の速さ(=観測者の速さ-電子の速さ)。すると特殊相対性理論による長さの歪みにより、観測者から見てより速く動いているプラス電荷どうしの距離の方が余計に縮み、単位長さ当たりの電荷は正味プラスとなる。観測者を電荷に置き換えると、走っている電荷はこの正味プラス電荷がもたらす電場によって電線から遠ざかる力を受ける。ローレンツ力は"運動する荷電粒子は、荷電粒子の運動方向に対し直角方向に、磁場から力(磁力)を受ける "とされているが力を及ぼすのは電荷に力を及ぼすのはあくまで電場。
【疑問】
この例ではローレンツ力を説明するために電流が流れている電線を持ち出したが、電線がなく、磁場だけがある空間を荷電粒子が動く場合はどう解釈すれば良いのか?その磁場を生み出している仮想の電線を想定する???
光の源は電荷
物体を熱すると電子が振動し電磁波を発する。温度が上がるほど電子も激しく振動し高周波数の電磁波が発生。物体がある温度以上になると可視光線の周波数に達し光が出る。
光電効果
真空中の金属板に光を当てると自由電子が飛び出す。光が粒子(光子)として振舞っている。粒子と粒子の衝突現象。光子は持っているエネルギーを全て電子に与え、衝突後に消滅(電子が光子を完全吸収)。
光のエネルギーはその色(波長)に関係し(E=hf)、光の明るさは光子の数で決まる(暖炉の側に何時間いても皮膚が焼けることはないが曇りの日でも日焼けする)。
光子はエネルギーは持っているが質量0。
光電効果を利用すると光の信号(光のエネルギー)を電気信号(電気エネルギー)に変えることができる。
光子は電荷の子であり親
電荷の振動から光子が発生し、光子は光電効果のように電荷と強く反応し、また光子自身から電子と陽電子が発生する。
電荷は光子を放出したり吸収したりするもの
原子がつぶれないのは角運動量の量子化によって電子が定められた軌道しかとれないため。電子は軌道上にある限り電磁波を発しないが、原子がエネルギーを吸収して励起され、高いエネルギー準位へ移った電子が低いエネルギー準位へジャンプするときにエネルギー(光子)を放出。一つのジャンプで一個の光子が発生。光に関する限り、光は無から発生している。また電荷が加速や減速されるときにも光子が発生する。
スピン-軌道相互作用
原子核(プラス電荷)がその周りに作り出した電場を電子が横切るため、電子は磁場を感じ、電子の持つ磁気双極子がその磁場と相互作用する結果、電子の持つエネルギーに変化をもたらす。
ただし基底状態では角運動量0(電子は陽子の周りを回っていない)。磁気双極子と磁場の相互作用がないのでエネルギーレベルは二つに分岐しない。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
不思議なことにニュートリノは左巻きスピンのものしか発見されない。
この世界と「鏡の中の世界」との対称性の破れに密接にからむ「弱い力」のなせるわざだ。
物理学者を悩ませ続けた「弱い相互作用」の複雑なしくみをわかりやすく解説する。
[ 目次 ]
第1章 神岡鉱山で何が起こったのか?
第2章 自然の力と放射能
第3章 ニュートリノは物理法則を救った
第4章 鏡の中の世界
第5章 素粒子の種類と保存則
第6章 はたして神は左利きか?
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ブルーバックスですが,量子力学をこれから学ぼうという人,学んでいる人にも読み応えのある一冊だと思います.ただ,エネルギーの概念などがさらっと出てくるので,まったく物理をさわったことのない人にはきついかもしれません.
量子力学に登場する式の意味するところやその解釈を,ほとんど式を使わずに丁寧に解説してくれています.特に不確定性原理のところはとてもわかりやすかったです.量子力学がつくりあげられてきた歴史についても随所で取り上げられていて,この式はどういう背景から生まれてきたのかということなどが知れて,頭の中で整理ができました.
純粋に量子力学をおもしろく感じさせてくれました.数式に立ち向かう勇気が出た気がします.