中屋敷均のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これまでウイルスと生物の間には様々な二項対立的境界が引かれてきた。エネルギー代謝を行うか否か、独立した自己複製能や進化能を有するか否か…。本書は様々な事例を挙げながら、これらの分類の科学的根拠が極めて怪しいことを指摘してゆく。紹介されているウイルスや他の生物の振る舞いは意外性に満ち、これまで一般的とされてきた生物観がいかに特定の価値観に縛られていたかを驚きを持って知らしめてくれる。またそれにも増して、生物学的な意味での「自己」と「外部環境=他者」の境界のあやふやさについても興味深い示唆が得られるのが本書の醍醐味。ウイルスについて考えることは、「自分とは何か」について考えることでもあるのだ。なお
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Posted by ブクログ
一定の専門性を確保しつつ、明確なモチーフ(有用情報の漸進的蓄積。保存と変化)を下敷きに、一書がものされている。とりわけ最後のDNAから文明論にいたる考察は深い。
生命の起源に関する記述はよくあるもので、かつ少なめ。
・単純な競争で考えると無性生殖のほうが有利である場合が圧倒的に多い。
・有性生殖による全ゲノムのシャッフリングは、組み合わせによる多様性の創出であり、それ自体には遺伝子の突然変異を必要としないため、例外的なものを除けば、致死性は生じない。
・より広く考えれば、「生命」という現象にとっては、個体とは何か、個体の独立とは何か、あるいは種とは何か、もっと言えば種が絶滅したのか存続して -
Posted by ブクログ
「生命」の持つ根源的なシステムについて、分子生物学の最先端の知見を踏まえて考察している。
著者はまず、生命と非生命の境界について、細胞内小器官(葉緑体、ミトコンドリア等)、細胞内共生細菌、巨大ウイルス等を例に、細胞膜の有無、他の生物への依存関係の有無、ゲノムサイズ・遺伝子数等の観点から考察し、「そこになんらかの明確な区切りを引くことはきわめて困難である」が、これらの例の「「生き様」は、所謂、ある「一つの現象」が多様な環境に適応して姿を変えているだけに過ぎない」と述べる。
そして、「一つの現象」の本質とは、「自分と同じものを作ること(=情報の保存)」と「自分と違うものを作ること(=情報の変革)」 -
Posted by ブクログ
無謀じゃダメだし、臆病でもいけない!
消えない不安の中で、自分を見失わないために、大切なことを届けたい。(紹介文より)
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農学博士である筆者が、科学/非科学の二項対立に陥ることなく人生や社会について書いているエッセイ。
文学の引用があったり、遺伝子の話があったり、ご自身の想い出があったり、エッセイと言いつつも随所に知識が詰め込まれた不思議な読後感。
すぐに正解を求めたり、効率重視を良しとする世の中に、やんわり警鐘を鳴らしている。バランスと余裕を持って世の中を見つめている内容。
・「自分で選ぶ」大切さ
・世界は本当はとても複雑、効率がすべてではない
・「他人の