中屋敷均のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
18ページにある Control your own destiny, or someone else will (自ら選ばない者は、他人に支配される)は至言だと感じた.Y染色体が男児から男児へ伝わること、日本では縄文人が住み着き、その後弥生人が来たことが染色体の解析で分かることは面白かった.現代社会が、異論に対して狭量になっているとの指摘はその通りだと思う.経済的合理性を錦の御旗にして、格差を作り、敗者を顧みない社会になってきたことへの警鐘も重要な視点だ.原生生物から進化が始まったという話、別の先生から仕入れた知識ではLUCA(Last Universal Common Ancestor)のことだろう.最後に出てきた 「人間を人間たらしめているのは、他人の悲しみを想像して共感する能力だ」 は非常に素晴らしい言葉だ.いろいろなことを再認識させれくれる至言が満載の本だ.
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Posted by ブクログ
私は生粋の文系人間で、理数系の書籍はことごとく避けてきたが、生命の起源とか原理に興味が湧いたので覚悟を決めて本書を手に取ってみた。
本書の趣旨はシンプルで、生命の設計図に当たるDNAは自己情報の保存と変革の相反する性質を内包しており、それゆえ弁証法的に生物が今日の姿まで発展してきたというものである。後半では人間の文明の発展も同様で、過去の偉人の知見を元に各時代の天才達が新しい1ページを書き足して来た歴史に触れている。
生命の起源については軽く触れられているのみだが、最新の有力な説としては、海底の熱水噴出孔から始まったのでは無いかということだ。なお、核戦争が起きて地上の生物が全滅しても、まだ海底には古細菌が脈々と生きているのでいずれ再生するだろうという、謎にポジティブな主張が面白かった笑
科学的な事例のみではなく、哲学や歴史など文系的な事象と絡めながら説明されているので、文系人間にも分かりやすいだけではなく、科学のロマンみたいなものまで感じられた。読みごたえのある文章展開がしっくりきたので、別の著書も読みたくなった。
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Posted by ブクログ
遺伝学の歴史と、そのたびごとに遺伝子の理解がどのように更新されたのかが概観されてゆく。分子生物学の本でなんでこの記述スタイル?と訝って読んでいたが、DNA、mRNA、tRNA、タンパク質のセントラルドグマというお馴染みの図式が説明されたところからが本番。
セントラルドグマ以外にもほかのRNAやら酵素やらが形質遺伝に関わるだとか、ラマルキズムとして片付けられていたはずの獲得形質の遺伝もDNAメチル化によって説明づけられる可能性があるだとか、とにかく遺伝機構(つまりは遺伝子なるもの)の複雑な様相が明らかになっている、らしい。
シュレーディンガー『生命とは何か』をメルクマールに、物理法則をベースに演繹的な推論を(も)用いる物理学者や化学者が、かつて帰納的な実験・観察とその分析に終始しがちだった生物学分野に参入することで分子生物学が生まれるシーンは感動的ではある(pp.109-112)。
しかし最新の展開や著者の見通しを読むに、複製と多様性をなぜか両立させる遺伝(子)の制御構造の探究は、物理学・化学の知見を導入しながらも原理論に進む方向性は(少なくとも本書では)仄めかされておらず、今後の分子生物学の道のりの長さも感じさせる。 -
Posted by ブクログ
専門的でありながら具体例が非常に分かりやすくて良い本。
自分が大学生の頃に読みたかった。
生物系の大学生、院生にぜひ読んで欲しい。
加えて話題のコロナウイルスについても
敵を知らず騒ぐのではなくまずは知ることも大切。
本書を読んで最も衝撃を受けたこと。
ウイルスは敵じゃないということ。
むしろ生物、そしてヒトの進化にも大きな影響を及ぼしている。
以下の具体例が特に素晴らしいと思った。
細胞は部屋、細胞膜が壁、タンパク質を作るリボソームは3Dプリンター、そして住人はDNA。
なんともわかりやすい。
守られた快適な部屋に住んで好きなもの作り放題の3Dプリンターを持ったDNAに対してウイルスはレインコートだけをまとった家なき子。
自己複製ができないから寄生して生きていくしかない。宿主を殺したら自分も死ぬ。
今回のコロナウイルスのように危険なウイルスというのは宿主との関係性がわからずに大暴れしている状態。
感染しても無症状の人がたくさんいるのはむしろウイルスとして正しい状態ということ。
むしろヘルペスウイルスなんかは人を守る働きまでしている。
また、インフルやコロナは手洗いの効果がある理由はエンベロープに包まれているからというのも初めて知った。脂質膜だから石鹸で溶ける。
つまり石鹸で洗わないと水でいくら洗っても意味がない。
ノロウイルスはエンベロープを持たないから手を洗っても意味がない。
へー!と思うことがたくさんで面白かった。
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Posted by ブクログ
細胞をもたない単純な姿のため非生物とされがちなウイルス。しかし「細胞」をもつとは言い難い共生細菌や遺伝子数が千を超える巨大ウイルスの発見で境界はぐらついてるとか。
ウイルスとは何か,生命とは何かを問いかけるために提出された極めて重要な概念を「丸刈りのパラドックス」と呼んだり,なかなか親しみやすく書かれてる。なぜ「禿頭のパラドックス」にしなかったのかがちょっとだけ気になるけど(笑)
“「ある中学生の髪がどこまで伸びたら丸刈りでなくなるのか」という問題を、本書では「丸刈りのパラドックス」と呼ぶことにする”p.56
タンパク質を作るリボソームを高性能3Dプリンターに喩えたり,導入部分での比喩も分かりやすくて親切。
そして部屋(細胞膜)の住人(DNA)は分身の術を会得していて,部屋にあるすべてのものの設計図も記憶している。この住人は分身の術を使うたびに部屋を2倍の大きさにして,二部屋に区切る。
ウイルスは部屋も家財も持たない家なき子。
不憫であるが実は逞しく,他人が住む部屋に侵入すると,自らの分身の術と設計図と,その部屋にある3Dプリンターを駆使してどんどん増えていき,あっという間に乗っ取ってしまう。
最終的には作ったレインコートを羽織って部屋を壊して出ていく。
スタンリーらによるTMVの結晶化の発見に絡めて問いかけられたテーマ,
“ウイルスは純化するとただのタンパク質と核酸という分子になってしまう。しかし一方、生きた宿主の細胞に入るとあたかも生命体のように増殖し、進化する存在となる。…どちらにウイルスの本当の顔があるのか…本書の底流となるテーマでもある”p.50
最後のあたりの力説で,著者なりの結論となってるんだけど,読んでて「ウイルスは生きてる,なるほど!」と感化されてしまった。いろんな境界生物がいるんだなあ。世界は奥が深い。 -
Posted by ブクログ
ありきたりな表現で恐縮ですが、非常に興味深いものでした。生命は美しい、今、起きている様々な苦難も、驚くべきことも、ノイズのように見えることも、すべては生命の大きなリズムと流れの中にある。そういうことを思い浮かべました。
核酸に内包された情報の保存と情報の変革のサイクルが機能し始めた時、「情報の蓄積システム」が地球上に現れ、それが「生命という現象」であり、最初の情報革命であった、そして、地球上の生物のうち、人類が文字情報を獲得し、保存と変革のサイクルを手中にしたとき、第2の情報革命が起きたとする本書は、人類の文明の歴史の中に、生命、DNAが刻むリズムに由来する何かを見てとります。本書が解き明かしていくDNAの二重らせん、陰と陽のリズム、「逸脱」「非調和」の織りなす生命のありようは、この宇宙の本質に想いを馳せさせてくれます。いい本でした。