あらすじ
2003年にヒトゲノムの解読が完了したが、これで「遺伝子」がわかったのかというとそうではない。DNAにコードされている遺伝子の構成が判明したことで、ヒトゲノムの複雑さがかえって判明してきた。また、DNAに遺伝子はコードされているが、それらは非コード配列やそのコピーである多様なRNAなどによって、たくみに制御されていることがわかってきた。「遺伝子」とは、それらの制御機構を抜きにしては語れないし、「遺伝子」の概念は新たなステージで考える必要があるのではないだろうか?
本書では、メンデルの実験から、ワトソン、クリックによる二重らせんモデルの発表など、「遺伝子」をめぐる科学史を追いかけながら、「遺伝子」の正体を問い続ける。ゲノムの解読は終わりではなく、「遺伝子とは何か?」という、古くて新しい問いとその答えをめぐる研究の始まりであることを明らかにする野心的な一冊。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
遺伝学、分子生物学初心者なりに頑張ってついて行きました。
メンデルの三法則すらちゃんと理解していない自分でもなんとか読み進めたから好感触だったが、後半へ進むにつれ、基礎固めの甘さが露呈し理解三割。
遺伝子についての本はもっと読まないと。
Posted by ブクログ
遺伝学の歴史と、そのたびごとに遺伝子の理解がどのように更新されたのかが概観されてゆく。分子生物学の本でなんでこの記述スタイル?と訝って読んでいたが、DNA、mRNA、tRNA、タンパク質のセントラルドグマというお馴染みの図式が説明されたところからが本番。
セントラルドグマ以外にもほかのRNAやら酵素やらが形質遺伝に関わるだとか、ラマルキズムとして片付けられていたはずの獲得形質の遺伝もDNAメチル化によって説明づけられる可能性があるだとか、とにかく遺伝機構(つまりは遺伝子なるもの)の複雑な様相が明らかになっている、らしい。
シュレーディンガー『生命とは何か』をメルクマールに、物理法則をベースに演繹的な推論を(も)用いる物理学者や化学者が、かつて帰納的な実験・観察とその分析に終始しがちだった生物学分野に参入することで分子生物学が生まれるシーンは感動的ではある(pp.109-112)。
しかし最新の展開や著者の見通しを読むに、複製と多様性をなぜか両立させる遺伝(子)の制御構造の探究は、物理学・化学の知見を導入しながらも原理論に進む方向性は(少なくとも本書では)仄めかされておらず、今後の分子生物学の道のりの長さも感じさせる。
Posted by ブクログ
現今、最大重要な科学事項であり、しかし理解が非常に難しい「遺伝子」について比較的分かりやすく解説された内容。特に歴史的に「遺伝子」についての研究の詳細を説いてくれているので素人には理解に役に立つ。
生命科学が大きくに人間の生活、生命、歴史、思考そのものを変革しつつある時「遺伝子」という概念を自己の中にそれなりに明確に持つことが必須のものとして迫られている。
Posted by ブクログ
遺伝子研究の歴史から最新の研究までをまとめた一冊でした。とくに印象に残ったのは、研究初期の「遺伝子の捉え方」が現在と大きく違っていたことです。いまでは二重らせん構造のイメージが一般的ですが、昔は“マトリョーシカのような入れ子構造”だと考えられていたという話には衝撃を受けました。
Posted by ブクログ
遺伝の謎に向き合い続けてきた科学の歴史から現在研究が進められている領域までが概説されているブルーバックスらしい書籍。後半はまったくの専門外の自分には馴染みのない用語も多かったがそれでも面白く読み進められる。メンデルの実験から、ワトソン、クリックの二重らせんモデルぐらいまでは知っていることも多かったが、そこから最近のエピジェネティクスなどの研究に至る経緯や背景などは知らないことが多く勉強になった。今後の研究の発展も楽しみな分野。
Posted by ブクログ
もともと生物学の研究者だったけど、その分野を離れて15年が経つので、思い出すために読んでみた。
途中までは知っていたし、ヒポクラテスとかの哲学には興味がないので読まなかった。
RNAワールドやプリオンのところから読んだのだけど、これ素人が読んでわかるのかな?と思った。
大学の生物学を真剣にやっている人くらいしか分からないのではないかと思った。
著者は生物学に誠実な人だとは思った。
僕はまあまあ面白かった。
すごい学びができる
正直理解できないレベルの内容でしたが、80年代の生物学では想像できなかった常識が多く学べて、感動しました。RNA ワクチンや狂牛病、アルツハイマーなどにもつながるように思います。セントラルドグマのリセットができました。