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本書は、科学と非科学のはざま、言うならば「光」と「闇」の間にある、様々な「薄闇」に焦点を当てた本である。「科学的」なものと「非科学的」なものは、そんなに簡単に区別できて、一方を容赦なく「断罪」できるのか? 「科学的な正しさ」があれば、現実の問題はなんでも解決できるのか? 何が「真実」で「異端」なのか? 分子生物学者が科学の可能性と限界を見つめ、私たちが生きる意味をも捉えなおしたサイエンスエッセイ
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Posted by ブクログ
科学と非科学 その正体を探る 著:中屋敷 均 講談社現代新書 おもしろかった。 科学とは、確定しているものではなく、生命とおなじように生きているという考えには納得でした。 ノーベル生理学賞を受賞したバーバラ・マクリントックの動く遺伝子の話がでてくる 「科学的に正しければ、理解され受け入れられる」...続きを読む という科学の基盤をなす了承事項は、そんなに単純なものではないことを告げている 彼女は何十年も時代を先取りをしていたが故に、その内容をだれもが理解できずに、無視をされることとなる 本書は、このエピソードが告げる、科学的真実とは何か、という問いを投げかけているのである 気になったのは、以下です ■神託を担う科学 現代社会では、理性で世界を理解することができる、信じられており、科学がその世界の姿を説き明かす役割を果たすことになっている 科学的とは一体、何なのか科学が立っている基盤とは一体どのようなものなのか 社会が科学に求めている最も重要なことの1つは、この世界にあることを分かりやすく「説明すること」である 科学には2つの顔がある 社会に神託を下す装置としての科学と この世の法則や真理を追究する科学である 正しいということは何か 1つは繰り返し起こることは法則化ができること もう1つは法則化できたことは、他の現象にも応用ができること 帰納法と演繹法が世界を説明する論理として成り立つための重要な前提があるそれは、この世界が、同じことをすれば、同じ結果が返ってくるようにできている、という仮定である 科学には、性格がことなった2つのものが混在している 1つは、この世の真理をもとめ、単純化された条件下で100%正しいような法則を追い求めるもの もう1つは、100%の正しさなどなく、不安定なより現実的なものである 絶対に安全なものなどない、科学は常にある条件下では、安全ですと言わざるをえない 科学の外に広がる、未知の世界、現在の科学で認識できなことが、この世に存在しないことを意味しないのならば、では一体、何が、科学的で、何が、非科学なものであろうか また、どこまでが科学的で、どこからが、非科学的なのか、その境界線を引くことができるのなら何をもって、見分けることができるのか 科学と生命は似ていて、共に生きている 科学が教えることは、すべて修正される可能性がある また、仮説がどのくらい確からしいのかという確度の問題が存在するだけである 権威主義は、科学の発展と、真実にとって、最大の敵である 生命の営みはカオスの縁に潜んでいる 分かってしまった、世界に人の選択の余地はない 人はただその正しさに従うだけである 逆にまったくの混沌の中で、何かを選択してみてもそれはギャンブルだ ■不確かな科学とともに 科学という真実をえるためには、犠牲を払わなければならない 科学がいきつくところは、厳密に考えると結局何も確かなことは分からないというところだ、そしてそれは、意味のない情報だ 自分の見えない闇には、時にリスクがひそんでいる リスクはゼロにできない、ということだ 我々の目の前にあるのは、強欲資本主義や、傲慢合理主義であり、それらが生んだ、制御できない巨大で破壊的な問題の数々である 過度な選択と集中、それがもたらすのは、淘汰である 生物の持つジレンマ、それは、変わるべきか、それとも、変わらないべきか ランダムに起こる遺伝子の変異は、現環境下では無駄である それを許容して生み出し続けることが、現状とは違う環境で生存できる新しい生き物を生み出し、簡単には、絶滅しない強靭性を生命に与える 閉じられたこと、たとえば、日本人は、島国で鎖国までをしていた、そこでは、全く違った形の文化を生む母体となっている閉じられたことは、そういう力をもっている 存在の在り方を限定することは、形を作ることに必須の要素であることであり、それはあるべき場所にあるべきものを配置することを意味する 意志ある選択、重大が場面にであったときに、科学は、意志ある選択をするために存在する 不確かなものを含めて、科学的知見は常に、考える素材である それが科学の存在意義であり、その選択こそが、私たちに与えられた世界を拓く力、生きる意味なのではないでしょうか 目次 プロローグ 序 バーバラの見た夢 第1部 神託を担う科学 第1話 デルフォイの神託 第2話 分からないこと 第3話 消える魔球 第4話 無限と有限 第5話 科学と似非科学 第6話 科学は生きている 第7話 科学と非科学のはざまで 第2部 不確かな科学とともに 第8話 ドイツの滑空王 第9話 リスクとともに 第10話 アフリカ象と大学人 第11話 「無駄」と科学 第12話 閉じられたこと 第13話 この世に「形」を生み出すこと 第14話 確率の話 エピローグ あとがき ISBN:9784065150948 出版社:講談社 判型:新書 ページ数:192ページ 定価:800円(本体) 発行年月日:2019年02月 発売日:2019年03月01日発行
エピローグが響く。 科学的とか非科学的とかそんな簡単な話ではないようだ。 自分は非科学は信じない非合理だ!って決めつけてる節はあった。 非科学的な言動が嫌いなのは揺るがないが、非科学的なものを大事にしても良いとも思った。 科学者のエッセイもっと読んでみた
日本の高等教育が危機に瀕しているということを、行政はどれほど実感しているのだろうか。筆者が繰り返し訴えていることは、このままでは日本の高等教育は死に絶えてしまうということである。高等教育が研究の自由選択と多様性を維持できるよう担保することこそ、行政がやらねばならぬことなのに。 本の題名についての最も...続きを読む端的な「物語」は、エピローグに集約されている。まだまだ「闇」は残されているのだ。
▼新しい概念とは ■一人の夢から生まれたものが、社会に認められて、科学理論の体系の一部となったもの ■新しい概念は、今の常識という前提では想定しないものが多い だからこそ、正しさだけでなく分かりやすさが重要
世界は科学的に説明できる部分もあるし、科学ではまだ説明できない部分もある。科学で説明できる範囲は限定されるし、それまで非科学的とみなされていた事象を科学的に説明できるようになった部分もある。 分子生物学者である著者は、科学と非科学の境界は絶えず、行きつ戻りつするのだと言う。それは、科学的知見は常に...続きを読む検証、修正が行われ、より確からしい理論へと改善されていくと言うことだ。しかし、それが即ち、科学は日々アップデートされ、世界をより正確に説明するようになってきているかと言うと、そう単純でもない。 「科学的」だとか「非科学的」だという表現は一般的に使われている。いわゆる「科学的」とされるものは客観的に再現性が確認されていることだとされるが、「科学的」な厳密さを求めると、その再現は簡単ではない。木から落ちるリンゴで有名な万有引力の法則ですら、厳密には真空状態という非日常的な条件が必要になる。 「科学的」とされるものごとには再現性が求められるが、「科学的」であろうとするほど、様々な制約条件が必要になり、その再現は困難になる。「科学的」確からしさの限界に直面し、やがて確率論(数多の実験を繰り返した結果、「科学的」に再現した確率)に落ち着くことになる。 著者はこの「科学的」な確率論への違和感を訴える。 本書での例はこうだ。大病の宣告を受けた患者が手術の選択を医師から求められたとする。その際、手術成功の確率が伝えられたとしよう。しかし、その確率はその宣告を受けた本人の手術自体が成功する確率ではなく、これまで様々な条件下でその手術を受けてきた様々な特性(性別、年齢、身長、体重、病歴などの差異)を持った人たちの成功件数と失敗件数とから算出された確率でしかないのだ。その確率を「科学的」だと言われても、自身の手術という一回性の前では空々しさすら覚えるのではないか。 だからと言って、「非科学」の側に振れる訳にもいかない。「科学的」とされることに対して、安易に「正しい」というレッテルを張るのではなく、下記の引用のように、目の前の現象が自身にとってどのような意味を持つのか、「科学」と「非科学」のグラデーション上で根気よく考え続ける態度が重要になってくる。 「「科学こそが最も新しく、最も攻撃的で、最も教条的な宗教制度」というポール・カール・ファイヤアーベントの言は示唆に富んでいる。そして何より妄信的な権威主義と、自らの理性でこの世界の姿を明らかにしようとする科学は、その精神性において実はまったく正反対のものである。科学を支える理性主義の根底にあるのは、物事を先入観なくあるがままに見て、自らの理性でその意味や仕組みについて考えることである。それは何かに頼って安易に「正解」を得ることとは、根本的に真逆の行為だ。」 本書は2018年1-12月に講談社のPR誌「本」に連載されていたエッセイを再構成、加筆・修正されたものだけあって、日常の言葉で科学について語られていて門外漢でも読み進めることができる
中屋敷均(1964年~)は、神戸大学大学院教授で、植物・菌類ウイルス研究を専門とする分子生物学者。 本書は、講談社のPR誌「本」に2018年1~12月に連載された「科学と非科学~その間にあるもの」をもとに、再構成・加筆修正されたもの。 内容は、著者によれば、学術書では書くことが難しい、「科学と非科学...続きを読むのはざま、言うならば、「光」と「闇」の間にある、様々な「薄闇」に焦点を当て」て、著書の思いをエッセイ風に綴ったものである。 第一部では、「科学的」とは何なのか? 「科学」が立っている基盤とはどういうものか? 現代社会において「科学」に求められていることは何なのか? 「科学」に100%の信頼性を求めることはできるのか? 「科学」に限界はないのか? 「科学的」であることと「非科学的」であることの境界線は何か? 等について、具体的な事象を挙げつつ語り、第二部では、不確かな「科学」とどのように向き合うべきなのかについて、昨今の問題を交えて綴っている。 その中で、私の印象に残ったのは以下のような記述である。 ◆「科学が教えるところは、すべて修正される可能性がある。・・・科学の知見が常に不完全であるということは、ある意味、科学という体系が持つ構造的な宿命であり、絶え間ない修正により、少しずつより強靭で真実の法則に近い仮説ができ上がってくるが、それでもそれらは100%の正しさを保証しない。より正確に言えば、もし100%正しいところまで修正されていたとしても、それを完全な100%、つまり科学として「それで終わり」と判定するようなプロセスが体系の中に用意されていない。」 ◆「「分ってしまった」世界に、人の選択の余地はない。・・・分かるとも分からないともつかない「薄闇」のような世界だからこそ、人間の知性や決断に意味が生まれ、・・・いろんな「形」、多様性が花開く世界となるのだ。それは神の摂理のような“真実の世界”と、混沌が支配する“無明の世界”とのはざまにある場所であり、また「科学」と、まだ科学が把握できていない「非科学」のはざま、と言い換えることができる空間でもある。」 ◆「「意志ある選択」。科学はそれを人から奪うためでなく、与えるために存在する。不確かさも含め、科学的知見は常に「考える素材」である。それが科学の存在意義であり、その「選択」こそが、私たちに与えられた、世界を拓く力、生きる意味、なのではないだろうか。」 科学とは何か、我々は科学とどのように向き合うべきなのか、を考える一助となる一冊と思う。 (2019年4月了)
面白い所もある。 本書を読んで、この読後感はなんだろうかと考えていたが、非常に似たモノを思いついた。ブログである。 それぞれの項はそれなりに興味のひく内容から、退屈で斜め読みした部分もあった。しかしそれらの内容はタイトルとは連携してはいるが、最終的に筆者の伝えたい事が全体として真を捉えているかという...続きを読むとそんな事はない。 冒頭の項ではある程度のまとまった形となっていたが、途中からは編集者も読んでいないのかもしれない。 より深い推敲を加えた筆者の本が読みたい。
filerの紹介で興味持ち購入。 後半、大学の研究に柔軟性が無くなることが、科学的な発想に影響を与えるという問題提起が一理あると思う一方、終盤の話など若干科学から外れるところもあり、何とも不思議な印象を残して読み終えた。あとがきでエッセイ的な本を書く…ということが書いてあり、ちょっと納得した。 本書...続きを読むの内容からはズレるかもしれないが、原発への考えの具体的なところをもう少し聞きたいと思った。
・科学は科学的でも、それを使う人間によって非科学となる。 ・人間は「有限」の試行回数で、世界を理解するために生み出した知恵が「科学的」と呼ばれている手法。その網からもれてしまうリスクが常に存在する。 ・自分の分野について何でも知っているという顔をする専門家は信用するに足らない。どこまでが分かっていて...続きを読む、どこからかは分かっていないことなのか、きちんと説明できるのが本当の専門家。
科学的な「姿勢」と現代科学の限界について。複雑性を扱う新たな学問を学ぶ人は読むといいかも。前半は得るものが多かったが、後半部分は著者の思想が多分に含まれているので、肩の力を抜いてエッセイとして読むのが良い。
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