成田龍一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ教科書を使って普段授業をしているが、扱っている歴史像も「絶対」ではなく、相対的に捉える必要がある。その認識を踏まえたうえで、では、どのように歴史像が書き換えられたり、注目される歴史事象が変化してきたのかという点に関して、従来の研究史やさまざまな私たちが読む歴史出版物を整理し、状況分析を行った著作。著者の関心は特に近現代ということで、日本近現代がどのように描かれてきたかを述べている。
私たちが自明のように語ったり、「利用している」歴史の色々な人物イメージ・評価や事件のそれも実は絶対的なものではなく、社会情勢や政治情勢の影響を受けイメージ・評価が上下するものである。そのことを強く認識するきっかけ -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
多彩な言論や社会運動が花開き、政党内閣の成立へと結実した大正デモクラシーの時代。
それは、植民地支配が展開する時代でもあった。
帝国のもとでの「民衆」の動きは、どんな可能性と限界をはらんでいたか。
日比谷焼打ち事件から大正政変、米騒動、普通選挙の実施、そして満州事変前夜に至る二五年の歩みを、「社会」を主人公にして描く。
[ 目次 ]
第1章 民本主義と都市民衆
第2章 第一次世界大戦と社会の変容
第3章 米騒動・政党政治・改造の運動
第4章 植民地の光景
第5章 モダニズムの社会空間
第6章 恐慌下の既成政党と無産勢力
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ -
Posted by ブクログ
日比谷焼打ち事件に象徴される幾多の騒擾に始まり、満州事変、五・一五事件の中で終焉を遂げる「大正デモクラシー」の歴史像。
「主婦之友」1927年5月号の中で、すでに夫婦の性的生活がトピックになっているという話は面白かった。「セックス特集」なるものを編み、性生活を赤裸々に露わす風潮は、現代の女性誌特有の傾向なのかと思っていたら、80年前からやっとるんかい……。また、「太陽」1924年1月号ではすでに内地在住朝鮮人への参政権付与の是非を尋ねていて、韓国併合当時からこの問題が存在していたことが判る。そして、大正デモクラシーを終焉に導いた原因として、「東京朝日新聞」は「第一に腐敗、第二に無能である」と -
Posted by ブクログ
成田龍一『大正デモクラシー』(岩波書店)
「大正デモクラシー」が、第一次と第二次の世界大戦間の一時期を画する歴史事象であることは、よく知られている。
明治期の「殖産興業」「富国強兵」、戦前の「十五年戦争」にはさまれて、「自由」、「政党政治」、「穏健」のキーワードが思い浮かぶ。
1905年の「日比谷焼き討ち事件」。「雑業者」と「旦那衆」。日露戦後の講和をめぐる評価をめぐる意思表示。「雑業者」と「旦那衆」による「東京騒擾」が発生する。
大正デモクラシーといえば、民主主義の用語の前に「民本主義」。吉野作造の名が浮かぶ。民本主義には、国内で主張される「政権にもとめる自由、主権」と、政権と -
匿名
ネタバレ 無料版購入済み何度でも心の強さで立ち上がり前に進む
ド級のリトライ ドリトライだ!
ご愛読ありがとうございました。雲母坂盾先生の次回作にご期待下さい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ<目次>
はじめに~三つの「手」
第1部 「歴史叙述」と「歴史実践」
序章 歴史像を伝える
第1章 明治維新の「歴史像」
第2部 「歴史総合」の歴史像を伝える
第2章 「近代化」の歴史像
第3章 「大衆化」の歴史像
第4章 「グローバル化」の歴史像
むすびにかえて~「戦後歴史教育」の軌跡のなかで
<内容>
歴史学者が、日本の戦後歴史教育の問題点と現在の注意点を挙げているのだが、難しい。言いたいことはわかるが、この「歴史実践」をするために、まず「思想」を理解することと、何を題材にできるかの「思考力」、そしてそれを教材化するためにどれくらいの準備が必要なのか -
Posted by ブクログ
長らく歴史叙述のあり方をメタ的に考察してきた著者による近代日本を貫く通史。まさに「成田史学」の集大成で、国際関係と政治経済と庶民生活を(事実の羅列ではなく)同一のフレームで立体的に描くという離れ業を行っているが、立脚する理論が「国民国家論」や「総力戦体制論」であるため(いずれも歴史学界では必ずしも支持されていない)、専門家からは批判が予想される。近代世界の変容を「システム」の重層的変化として捉えているが、その「システム」に固有名詞を与えず(例えば「国民国家」システムとか「帝国」システムというような)、あえて「システムA」とか「システムB」という抽象的な概念規定を行っている点も問題となろう。
-
Posted by ブクログ
本書でわかることは、歴史学がイデオロギーの学問であることだ。
戦後しばらくは経済発展の理論に基づいて開国以降を論じ、何の出来事がどの段階にあるのか論争をするという不毛な議論があった。
やっと以上の議論が不毛であると気づいたのか2期と3期には民衆や女性からみた歴史に重点が置かれるなどしている。
これはそもそもの歴史学の枠組みの転換であろう。国史から日本史への意識の転換だといえる。例えるならこれまでの国語の教科内容が古文・漢文・現代文だったところに、生成文法が追加されたようなものではないか。
本書では以下の記述は無いが、このはっきりしたパラダイムの変更はマルクス主義がその滅亡において舵を切ってきた -
Posted by ブクログ
幕末〜敗戦後までの時期を扱った日本史史(歴史学の歴史学)。本書は1950年台〜2000年台の日本史学を3期に分けて、各テーマごとにどのような蓄積や発展を経てきたのかを解説するものです。
内容的にとくに印象的な部分だとか、面白い部分があるだとかいうことはなので、若干退屈なものになってしまうのですが、戦後日本史学界の歴史と各テーマとのマトリクスを淡々と解説していくという性質上、これはもうどうしようもないことだとは思います。
第1期〜第3期までの各時期には、それぞれの時代背景に起因する固有の問題意識や方法論の共有があり、それにより各時期の歴史学が近現代の「日本」について表象してみせた「歴史像」に