鈴木主税のレビュー一覧
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ジェイムズ・マレー(1837-1915)はOED編纂の中心人物。ウィキペディアで彼の写真を見た時には驚いた。仙人のような風貌だったからだ……まるでことばの霞みを食って生きているかのような。
本書のもうひとりの主役はウィリアム・チェスター・マイナー(1834-1920)。軍医だったが、精神病を発症し、妄想から殺人をおかしてしまった。その後医療刑務所のなかにいて、16・17世紀の書物からOED用の例文をピックアップし続け、その完成に多大な貢献をした。ふたりは10年近くにわたって手紙のやりとりをしていたが、会ったことはなかった。本書のヤマ場は、1891年(俗説では1898年)、彼らが初めて対面する場 -
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アメリカの政治学者、サミュエル・ハンチントンの1993年の著書。
アメリカの主要大学数校で推薦図書に挙げられており、数ある歴史的名著と並んで比較的新しいこの本がどのように重要な意味を持つか興味深く、手に取った。
著者の主張は、「今後、国家間よりも文明間での争いが激化する」というもの。
そこには、西欧文明が優位であり普遍であるべきだという「傲慢さ」への戒めも込められている。
文明(Civilization)は様々なの意味を含む言葉だが、ここでは文化・宗教・価値観などを指しており、例えば「文明の利器」という言葉に含まれる技術的な意味合いはない。
『文明を定義するあらゆる客観的な要素のなかで最も -
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文明衝突論を展開したハーバード大学のサミュエル・ハンチントンが日本にフォーカスを向けた名著。
政治経済の利益、イデオロギーによる分裂が顕著だった20世紀と比べて、21世紀は文化によって分裂している、これからもその分裂は続くと分析している。2000年に出版された本だが、この内容は2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発を予言していたとも言える。
宗教もなく、文化的にも完全に独立した日本だからこそ、先入観を持つことなく他宗教や他文明の理解・教育を進めて、国際平和を促進させることに一役買うことができるのではないかという希望を感じた。この本のように多様化する社会を深く理解しようとする価値観が広まり -
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2000年の作品。当時はアメリカ一極支配の時代であったが、その後の地域での紛争、イスラムの団結、中国の台頭による新たなパワーバランスを、基本的には全て予見しているのが凄い。
イデオロギーによる対立が終わり、世界は国を超えた文明ごとに分断され、文明間の衝突が始まる。
西欧文明(欧米等)、東方正教会文明(ロシア等)、中華文明(中国等)、日本文明、イスラム文明、ヒンドゥー文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明。当時はこのうち、西欧文明が突出したパワーを持っており、中国は地域での大国に留まっていた。ハンチントン理論によると、超大国と地域大国は直接対峙せず、むしろ、地域の準大国と超大国が組んで、地域大国 -
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ネタバレ英国版「舟を編む」。でもぜんぜんほんわかしてない。ノッてくるまで時間かかったけど、OEDの構想が出てくる辺りからめちゃめちゃ面白かった!さすが英国、という気の長さとエキセントリックさ。
シェークスピアの時代には辞書がなく、その用法があっているのか綴りはあっているのかなどを確かめる方法はなかった、というのは目から鱗。言葉が変化していったり誤用といわれたものがそうでなくなったりしていくのは、当たり前のことなんだな。
OEDの、言葉は変わっていくものなのだから、辞書は言葉の間違いを正すものではなくあくまで言葉の歴史を記すものであるという姿勢はいいな。 -
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「文明の衝突」で冷戦後の世界を見通したハンティントン博士が、アメリカが抱える苦悩を分析。この本もまた、後のトランプ・ヒラリー大統領選の争点を予言していたといえる。
その原因はアメリカ国民にとっては周知の事実だと思われるが、国外の人とっては大変興味深い。特に移民を議論している日本にとっては特に示唆に富んでいる。
一例として、日本で手に入る情報では、「多元主義」を推し進める先進国と映るアメリカが、その成り立ちよりアングロサクソン系のキリスト教に根ざした「自由の国」であり、さらに今でも多くの国民がそれを信奉していると博士は丁寧に解説している。この価値観が非アングロサクソン系(特にヒスパニック系 -
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冷戦後に発表された、「文明の衝突」はかなりの大作だが、そのエッセンスと日本とアメリカについての論文をまとめた、ダイジェスト版。
内容は、21世紀の日本の選択、孤独な超大国(アメリカ)、文明の衝突(ダイジェスト版)と3本立てで、著者ハンチントンの考えが新書で手軽に理解することができる。
特に文明の衝突は、これまで冷戦のイデオロギーの対立軸1つの2大勢力(と非同盟の3つ)の戦いであったものが、8大文明(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、アフリカ文明)にわけて、その文明同士の相互理解不足や、文化(と文明)の歴史や違いなどによっての戦争などが起こることを予見している。