鈴木主税のレビュー一覧
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冷戦後に発表された、「文明の衝突」はかなりの大作だが、そのエッセンスと日本とアメリカについての論文をまとめた、ダイジェスト版。
内容は、21世紀の日本の選択、孤独な超大国(アメリカ)、文明の衝突(ダイジェスト版)と3本立てで、著者ハンチントンの考えが新書で手軽に理解することができる。
特に文明の衝突は、これまで冷戦のイデオロギーの対立軸1つの2大勢力(と非同盟の3つ)の戦いであったものが、8大文明(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、アフリカ文明)にわけて、その文明同士の相互理解不足や、文化(と文明)の歴史や違いなどによっての戦争などが起こることを予見している。すごいのは中国の台頭などを予言していることなどでもある。
冷戦後の中で早くもこのような理論をまとめているのはすごいと思う。できれば、元の本も読んでみたい。 -
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国際政治や外交の基本姿勢、世界を理解するのに必須な本。この手のことを学ぼうとすると必読の一冊に必ず挙げられるものだが、恥ずかしながら今まで読んだことがなかった。約30年前に書かれたものだが、主張されている原理原則は今も全く色褪せないし、むしろ現下の紛争や勢力図を理解することに十分役立つ。世界で起こっている対立や合従連衡は、国単位ではなく文明単位で起こっている。同じ文明に属する場合は助け、文明が異なれば無視、あるいは忌避、拒否する。だから、西洋キリスト教文明から見て、スラブ東方教会文明であるロシアの蛮行は許せないが、イスラエルには融和的というダブルスタンダードになる。ロシアからすると、同じ文明に属する(と彼らは思っているし、実際に東部にはすいう人が多い)ウクライナが、別の文明の仕組み(EUやNATO)に近づくことは、起こってはいけないこと。この仕組みで考えると、EU諸国がトルコを警戒する理由は理解できるが、米国がトルコに近づくのは想定外なのだろう。また、日本は中華文明に近く、ハンチントンはいずれ日本と中国が近づくだろうと予想しているが、30年たってもその兆しは見られない。日本文明は独立したものとされており、対米追随は理解し難いとされているが、米国がおかしくなっている今、もう少し長いスパンで見るとゆっくりと変化が起こるのかもしれない。しかし、米国から離れる理由が暴力だとすると、同じ理由で中華文明にも与しないかも。あと、ハンチントンは8〜9のグループに分けて考えているが、ネット社会が進んだ今、もっと細かく見ていく必要もあるのでは。
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発刊当時(1998年)、大きな話題を呼んだ国際政治学者のサミュエル・ハンティントン氏の民族や宗教や地政学に基づく未来予測書。
文明は7つ乃至は8つに分けることができ、さらに文明を西洋対非西洋という構図に整理することができ、将来的には非西洋文明にパワーシフトが進み、文明間の衝突が加速する分析をしている。
「リベラルな民主主義」が勢力を伸ばすと予想した「歴史の終わり」に対し、本書は文明間の分断を指摘し、ふたつとも多岐に渡る深い造形に基づいた論理展開で、どちらが正否ということではなく双極に大きく揺れ動き混沌としながら人類は進んでいるという印象を受ける。
30年近く前の本で特定の時点の話なので読みが外れている部分もあるが(ウクライナ、台湾、朝鮮半島など)、西洋と非西洋との文明の衝突はまさに今起こっている事であり、歴史の大局観を掴める本である。 -
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面白かった。多文化していく世界の中で、文明間に発生する衝突について説明している。それがとても納得できるものであり、もっと早く読んでおきたかったと思う。中でも日本は一つの文明であり、且つそれを他のいずれの国とも共有していないという特殊性があるとの説明は説得力がある。
現時点でも紛争、戦争は絶え間なく起こり、破壊・殺戮活動が続いている。これを見て多くの日本人はどうしてそんな無駄なことしているのか、という疑問を持つんじゃないかと思う。でもそれは歴史やアイデンティティの感情に訴える地域や場所を侵された経験が日本には無いためなのだろうと思う。そういう勉強をして理解を示し、日本としての考え方を堂々と述べていくべきだと思う。
「解題」を中西輝政氏が書いている。これがまた大変いい。 -
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英語の辞書をめぐる物語。
映画を観て原作を知り、読みました。
映画とはまた違ったところから始まるので、違う物語を読んでいるようでもありました。
映画の時も『舟を編む』の時も思いましたが、小説が一から作っていくものだとしたら、辞書の編集はあるべき場所に収めるような感じでした。
正確さが大事。
それにしても当時の辞書の膨大なこと。
何冊にも及ぶ辞書だそうなので持ち歩くなんて考えもしなかったのだろうな。
そして映画でも挙げられてたけれど、マレー博士とマイナー博士の相対する感じが面白かったです。
彼らの天才的な言語センスはどうやって生み出されるものなのか。母国語にすら、英語ひとつにすら苦労する私に教えて欲しいです。 -
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今は、当たり前にあってその存在を疑うこともないものの一つに辞書、辞典があります。わからない言葉があれば、辞書や辞典を引くが当たり前に育てられてきました。少しの想像力があれば辞典を無から作ることが、とんでもない労力と時間がかかりそうで、一人で作りなさいと命じられたら、できっこないことを必死で泣きながら訴えるくせに、当たり前のように使っていました。ごめんなさい。
本書は、英語辞典「オックスフォード英語辞典(OED)」が完成するまでの物語です。
英語以外の辞書は、1225年にラテン語の辞書が出版、1612年にイタリア語の辞書が出版されていたようですが、英語のモノはなく、1692年に辞書や百科事典を引いて調べるという言い方が英語で使われるようになったそうです。ウィリアム・シェークスピアさんは1564年に生まれて1616年に亡くなっています。(徳川家康さんが亡くなった年と同じです。)シェークスピアさんは辞典が無い世界で、すべての作品を生み出したことになります。(すげぇ〜)
18世紀前半、辞典とは、英語の難解な言葉だけをまとめたものという常識から、一般の言葉を含める辞典へと徐々に変わっていきます。ナサニエル・ベリーさんが編纂した辞典が1721年〜1782年の間で25版を重ねベストセラーになります。その後、サミュエル・ジョンソンさんが、貴族の援助を得て1746年から新たな辞典の編纂に取り掛かかります。1750年までに単語収集を終え、1754年までに引用文の編集をし、11万8千の用例を選ばれました。言葉の定義を完成し4万3千5百の見出し語が決まり1755年に出版されました。
「この英語辞典は、単語の由来を起源までたどり、さまざまな語義を一流作家の作品から引用した例文によって説明している。これによって、英語の変遷と文法が定められる。文学修士サミュエル・ジョンソン編、全2巻」
出版から100年、英語の規範であり続けました。
1857年に新しい辞典の編纂が決まります。ジョンソンさんの「英語辞典」は一定の言葉を選んで収録したものでしたが、すべての言葉を収録することを目的とした辞典の作成プロジェクトが動き出します。最初の完本である第一巻A-Bが完成したのが1888年、「オックスフォード英語大辞典(OED)」は1927年の大晦日に完成します。全12巻、41万4825語の見出し語が収録、182万7306の用例が引用された辞典がついに完成したのです。このOED制作秘話を知ることができるのが本書になります。
日本語最初の国語辞典『言海』は10年かけて制作され、1889年〜91年にかけて出版されていますが、4万語ほどと言われていますし、現在書店に並ぶ『広辞苑』の見出し語は第7版で約25万語です。OEDの見出し語は41万語を超えていますので、完成までに70年かかるのもうなずけます。
辞典編纂に人生ほとんどの時間と情熱をかけた二人の天才の物語が本書で描かれています。映画化もされているようです。
日本語の辞典づくりは、三浦しをんさんの作品『舟を編む』でお楽しみいただけます。こちらも映画化されていますね。言葉の使い方や、言葉の定義を端的かつ的確に伝えることについて、深く考えるきっかけを与えてくれました。こちらもお勧めです。 -
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もう20年以上の前の本なのに、歴史を踏まえて、見事に今を予見している名著。細かな数字の予想は違っているにしても、方向性はピタリと合っている。
かつて、日本語は母国語で高等教育が受けられる稀有な言語などと言われていたが、本書で記されているように、イスラム圏ほか各地の文化圏で母国語での高等教育がなされるようになれば、文化の多様性が世界に大きな影響を与えてくるに違いない。
2050年にはアジアのGDPが世界の50%に達するという見方もある。その時、「他国にたいして率直に批判したり評価を下しったりすることをあまりしない」というアジアの文化と「何をするべきで、何をしてはならないとか、何が正しくて何が間違っているかといったことを、相手に向かって言う権利があると思っている」西欧文化、それとはまた異なるイスラム文化はどう共存していくのだろうか。
下巻も楽しみ。 -
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貧困を終わらせるなんて言葉、よほど頭がお花畑な夢想家しか使わないだろうと思っていた。
国際政治の最前線で貧困国の課題に尽力する人たちの成果も見ないまま、一体何を知った気になっていたのだろう。
2000年に国連総会で宣言されたミレニアム開発目標から15年。世界は大きく前進した。
・1.25ドル未満で暮らす人々の割合は世界全体で36%→12%。開発途上地域では47%→14%
・世界の識字率は83%→91%
・幼児死亡率は1270万人→600万人
・妊婦死亡率は45%減少
・HIVの新たな感染は40%減少
・オゾン層破壊物質は98%が除去
・安全な飲料水にアクセスできない人の割合は9%に減少
・開発途上地域の栄養不良人口の割合は23.3%→12.9%
・マラリアの死亡者数は3分の1
もちろん、悪化した事実もある。
・スラム居住者は7.9億人から8.8億人に拡大
・サブサハラ・アフリカ人口の41%は極度の貧困層
・今なお約8億人が栄養不良状態。
さらに、統計にはあらわれない不幸も尽きるはずもなく、日本でさえ餓死するような窮乏した生活に見舞われている人も存在する。
本書では、困窮とした人々の生活をただ憂い嘆くだけでなく、問題提起以上の具体的な解決方策が示される。
ハイパーインフレーションの終息、安定した新通貨の導入、返済不可能な債務の帳消し、瀕死の共産主義経済からダイナミックな市場経済への移行、エイズ・肺結核・マラリア撲滅のためのグローバル基金の設立、貧困層のHIV感染者に対する現代的な薬物治療。
これらに直接関与できない人であっても、資金を提供することは誰にでも出来る。
遠くの見知らぬ多くの生活困窮者よりも、近くの少ない困っている人に手を差し伸べようとする人間の感覚は当然だ。
ただ、技術革新により全世界の距離が縮みつつある中で、誰を助けるのかを選ぶということは、誰を助けないのかを選ぶことだという事実の適用範囲は広がっている。
人類文化の繁栄は、人の、団体の、地域の分業により加速してきた。これからの未来、貧困を脱した国々が新たな分業の輪に加われば、想像を超えた新たな世界が見られるかもしれない。 -
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最初にでてから20年近く経ってるから、読者はここで提示された問いの幾つかについて、既に答えが出たことを知っているわけですが、そもそも論として、欧州とアメリカ合衆国は別の文明とするべきなのではないだろうか?より正確には、カナダとアメリカ合衆国と英国で一つの文明。大陸欧州で一つの文明。こうすることにより、近年(この書がでてから)起きた幾つかの出来事についての説明がより容易になるように思われる。
本書で提示されたように、ウクライナは分断国家であり、トルコはイスラム国家として再定義を推進し、そして、本書の提示とは逆に、メキシコの北米文明研への再定義はアメリカによって拒絶された。英国のEU離脱は、英国が北米=英国文明圏と大陸欧州文明圏により分断されているとした方が説明がつきやすい。
「西欧文明の東の境界線」をハプスブルク帝国と、オーストリア・ハンガリー、チェコスロバキア、ポーランド、ドイツ東部の国境地帯とする(要は、ローマカトリック&プロテスタントと東方正教会の境界)のはとても納得がいった。
あと、しょせん欧米の人から見ると、日本はそんな扱いかぁ。とか。