鈴木主税のレビュー一覧
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発刊当時(1998年)、大きな話題を呼んだ国際政治学者のサミュエル・ハンティントン氏の民族や宗教や地政学に基づく未来予測書。
文明は7つ乃至は8つに分けることができ、さらに文明を西洋対非西洋という構図に整理することができ、将来的には非西洋文明にパワーシフトが進み、文明間の衝突が加速する分析をしている。
「リベラルな民主主義」が勢力を伸ばすと予想した「歴史の終わり」に対し、本書は文明間の分断を指摘し、ふたつとも多岐に渡る深い造形に基づいた論理展開で、どちらが正否ということではなく双極に大きく揺れ動き混沌としながら人類は進んでいるという印象を受ける。
30年近く前の本で特定の時点の話なので読みが外 -
Posted by ブクログ
面白かった。多文化していく世界の中で、文明間に発生する衝突について説明している。それがとても納得できるものであり、もっと早く読んでおきたかったと思う。中でも日本は一つの文明であり、且つそれを他のいずれの国とも共有していないという特殊性があるとの説明は説得力がある。
現時点でも紛争、戦争は絶え間なく起こり、破壊・殺戮活動が続いている。これを見て多くの日本人はどうしてそんな無駄なことしているのか、という疑問を持つんじゃないかと思う。でもそれは歴史やアイデンティティの感情に訴える地域や場所を侵された経験が日本には無いためなのだろうと思う。そういう勉強をして理解を示し、日本としての考え方を堂々と述べて -
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Posted by ブクログ
英語の辞書をめぐる物語。
映画を観て原作を知り、読みました。
映画とはまた違ったところから始まるので、違う物語を読んでいるようでもありました。
映画の時も『舟を編む』の時も思いましたが、小説が一から作っていくものだとしたら、辞書の編集はあるべき場所に収めるような感じでした。
正確さが大事。
それにしても当時の辞書の膨大なこと。
何冊にも及ぶ辞書だそうなので持ち歩くなんて考えもしなかったのだろうな。
そして映画でも挙げられてたけれど、マレー博士とマイナー博士の相対する感じが面白かったです。
彼らの天才的な言語センスはどうやって生み出されるものなのか。母国語にすら、英語ひとつにすら苦労する -
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今は、当たり前にあってその存在を疑うこともないものの一つに辞書、辞典があります。わからない言葉があれば、辞書や辞典を引くが当たり前に育てられてきました。少しの想像力があれば辞典を無から作ることが、とんでもない労力と時間がかかりそうで、一人で作りなさいと命じられたら、できっこないことを必死で泣きながら訴えるくせに、当たり前のように使っていました。ごめんなさい。
本書は、英語辞典「オックスフォード英語辞典(OED)」が完成するまでの物語です。
英語以外の辞書は、1225年にラテン語の辞書が出版、1612年にイタリア語の辞書が出版されていたようですが、英語のモノはなく、1692年に辞書や百科事典 -
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もう20年以上の前の本なのに、歴史を踏まえて、見事に今を予見している名著。細かな数字の予想は違っているにしても、方向性はピタリと合っている。
かつて、日本語は母国語で高等教育が受けられる稀有な言語などと言われていたが、本書で記されているように、イスラム圏ほか各地の文化圏で母国語での高等教育がなされるようになれば、文化の多様性が世界に大きな影響を与えてくるに違いない。
2050年にはアジアのGDPが世界の50%に達するという見方もある。その時、「他国にたいして率直に批判したり評価を下しったりすることをあまりしない」というアジアの文化と「何をするべきで、何をしてはならないとか、何が正しくて何が -
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貧困を終わらせるなんて言葉、よほど頭がお花畑な夢想家しか使わないだろうと思っていた。
国際政治の最前線で貧困国の課題に尽力する人たちの成果も見ないまま、一体何を知った気になっていたのだろう。
2000年に国連総会で宣言されたミレニアム開発目標から15年。世界は大きく前進した。
・1.25ドル未満で暮らす人々の割合は世界全体で36%→12%。開発途上地域では47%→14%
・世界の識字率は83%→91%
・幼児死亡率は1270万人→600万人
・妊婦死亡率は45%減少
・HIVの新たな感染は40%減少
・オゾン層破壊物質は98%が除去
・安全な飲料水にアクセスできない人の割合は9%に減少
・開 -
Posted by ブクログ
最初にでてから20年近く経ってるから、読者はここで提示された問いの幾つかについて、既に答えが出たことを知っているわけですが、そもそも論として、欧州とアメリカ合衆国は別の文明とするべきなのではないだろうか?より正確には、カナダとアメリカ合衆国と英国で一つの文明。大陸欧州で一つの文明。こうすることにより、近年(この書がでてから)起きた幾つかの出来事についての説明がより容易になるように思われる。
本書で提示されたように、ウクライナは分断国家であり、トルコはイスラム国家として再定義を推進し、そして、本書の提示とは逆に、メキシコの北米文明研への再定義はアメリカによって拒絶された。英国のEU離脱は、英国 -