鈴木主税のレビュー一覧
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文明と文化は、いずれも人々の生活様式全般を言い、文明は文化を拡大したものである。
19世紀のドイツでは文明を機械や技術、物質的要素にかかわるもの、文化は価値観や理想、
高度に知的・芸術的・道徳的な社会の質にかかわるものとし、
文明と文化をはっきり区別していた。
一極・多極世界は四つのパワーレベルからなる。
超大国→地域大国→ナンバー2の地域大国→その他の国。
冷戦後、世界は七つあるいは八つの主要文明に属している。
西欧文明・東方正教会文明・中華文明・日本文明・イスラム文明・ヒンドゥ文明・ラテンアメリカ文明そしてアフリカ文明。
この異なる文明が衝突することになる。
日本は文化と文明の観点からする -
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長い(厚い)本だった。中身も重量級の重い内容であり、読むのに二週間ほどかかってしまいました。
さて、トランプさんがアメリカ大統領になって一月ほど経ちました。選挙戦の最中からアメリカを分断するような言動が垣間見られましたが、大統領になってからもそれは変わりません。大統領と言う立場がついてしまったので、より一層分断を加速するような気もします。
ただ、これを読んでわかったのは、アメリカ社会の変質、分断は昨日今日に始まったわけではなく、ずっと以前から始まっていたと言う事。トランプさんが4年の任期を全う出来るか分かりませんが、いづれにしてもアメリカは、もう元には戻れないのではないかと思います。 -
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国際政治学者サミュエル・ハンチントンによる本書には、1993年発表の『文明の衝突』(抜粋)のほか、1998年に東京で行った「二十一世紀における日本の選択~国際政治の再編成」と、1999年に『フォーリン・アフェアーズ』誌に連載された「孤独な超大国」が収められている。
『文明の衝突』は、冷戦の終結した21世紀の世界を予測した論文として、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』において「グローバルに民主主義と市場経済秩序が定着し、もはやイデオロギーなどの大きな歴史的対立がなくなる」という典型的な“アメリカ的世界観”を示したのに対して、「民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明間の違 -
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かの有名な国際政治に関する論文である「文明の衝突」の抜粋の他、2論文を収録した論文集。
◯「二十一世紀における日本の選択ー世界政治の再編成」
「文明の衝突」理論によれば、今日の世界の在り方を規定するものはイデオロギーではなく、文化や文明の類であり、事実、イデオロギーで分裂していた東西ドイツは結合を遂げ、逆に文明の相違があるにもかかわらず結合していた旧ユーゴは分裂への道を辿った。そして同じ文明を共有する国同士は、ユーゴ紛争での旧ユーゴ各国への各々の支援勢力を見ればわかるように、理解し合い、助け合う傾向にある。
一極・多極世界から、多極世界へと移り行くなかで、特に東アジアでは、異なる文明に属す -
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【読んだきっかけ】本屋で見つけて内容が面白そうだったので。
【内容】世界最大・最高の辞書『オックスフォード英語大辞典』編纂事業にまつわるノンフィクション。
【感想】主人公のひとりは独学で言語学界の第一人者になったマレー博士、もうひとりは精神異常者マイナー博士。もうこの設定だけで面白い。
マレー博士は何度も挫折しながら苦学を続け、ついに辞典編纂に携わることになる。マイナー博士は南北戦争に従軍した際精神を病み、事件を起こして以後精神病院に入る。マレー博士は広く文献閲読者を募ったが、その中に極めて優れた仕事を迅速に送り続けてくる人物がいることに気づく。だがそれがどんな人物なのかわからない…。
辞典 -
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ネタバレOEDが出来上がるまでの秘話。特に統合失調症で殺人を犯し、精神病院に収容されていたマイナー博士の人生にはいろいろ考えさせられた。
もし彼が人を殺さなければ、もし病院で過ごさなければ、OEDにここまで深くかかわることはなかっただろう。
発病しなければ優秀な医者として働き、OEDにかかわる暇はなく、無名のまま(しかし幸せに)死んでいったかもしれない。
こういう運命の皮肉はたくさんあるのだ。多分私たちの人生においても。
辞書というものがそもそも「ない」状態からどうやって作るか、辞書と植民地支配の関係、南北戦争の実態など初めて知ることも多かった。
ドラマチックな内容だが、決して筆を走らせず、資料から分 -
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ハンチントンの文明の衝突を買いに、地域の大型書店を訪ねたが、在庫がなく、この本を代わりに手に取った。
あとがきで引用されている、”不死の幻影”、自分たちの社会は人間社会の最終型だと思い込む。だが、そのように自分たちの歴史は終わったと思い込む社会は、衰退に向かって行っていることに気づいていない、という表現は非常にスリリングである。
国家論、文明論に関する興味は満たしてくれる著作だった。ただし2000年に記されており、12年後の現在と照らし合わせながら読む姿勢が必要だ。逆に言うとハンチントンの予想が、現在進行形の中でも意識されるのは面白い。
中でも興味を惹いたのは日中関係。ドイツとフランスが -
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世界最大の辞書、オックスフォード英語大事典(OED)の編纂作業にまつわる嘘のような逸話。編纂主任を務めるジェームズ・マレーと、彼に膨大な量の用例を送り続け、辞典完成に大きく貢献した篤志協力者W・C・マイナーの2人をめぐる物語である。ジェームズ・マレーはイギリスの貧しい家に生まれながら独学で数多くの言語を習得し、OEDの編纂に関わることで、歴史上最高の言語学者といわれるまで上り詰めた。その一方でマイナーはアメリカの裕福な家に生まれながら、戦争のトラウマからか精神を病み、若年性痴呆にかかる。戦中に命令で焼印を押させられたアイルランド人を極度に恐れ、自分が常にアイルランド人に命を狙われているという妄
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1998年に現在の「文明の衝突」の到来を予見した書籍。一方で、その文明の理解や予測の具合には極めて強い「西欧的支援」と感じる。
上巻では7つ乃至は8つの文明のアイデンティティの衝突を西欧社会対非西欧社会という構図で捉え、下巻になると西欧的視点から捉える「非西欧社会」が中心となる。中盤の多くを旧ソ連時代の東欧圏・中央アジア圏・中東圏におけるイスラム文明に割いているが、これらの思想が2000年代の米国の対外政策の根底に流れている、つまり一部の偏ったシンクタンクの戦略に基づいていたと感じてしまう。
衝突のフォルト・ラインを中核国のバンドワゴニングと文明間のバランシングで分析しているものの、日本が中国 -
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下巻は、冷戦後期以降の具体的な国際関係の展開について述べられている。
その内容は、日米の経済上の反目、中国の台頭、イスラムの国境紛争、ソ連・ロシアとイスラムとの戦い、およびバルカン戦争である。
ユーゴスラヴィア弱体化に伴う90年代のバルカン情勢、つまり、
イスラムのボスニア、正教のセルビア、カトリックのクロアチア、という三勢力の争いは、まさに「文明の衝突」の代表事例と言えるだろう。
オスマントルコの侵攻したボスニアはイスラムが、オーストリア・ハンガリー支配下だったクロアチアはカトリックが優勢となっている。
個人的な経験だが、人間性を決定づけるのは宗教だという考えに自分が至ったのも、かつて