【感想・ネタバレ】文明の衝突と21世紀の日本のレビュー

あらすじ

93年に発表された「文明の衝突」理論は、その後のコソボ紛争、さらに東ティモール紛争でその予見性の確かさを証明した。アメリカ合衆国の「21世紀外交政策の本音」を示して世界的ベストセラーとなった「原著」の後継版として、本書は理論の真髄を豊富なCG図版、概念図で表現。難解だったハンチントン理論の本質が、一目のもとに理解できる構成とした。その後99年に発表された二論文を収録、とくに日本版読者向けに加えた「21世紀日本の選択」は必読の論文。2000年に刊行された名著を電子版で復刻! 解題・中西輝政。

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Posted by ブクログ

かなり前の本なのに、現在の中国と日本の関係、イスラム国のような集団の出現を見抜いていた洞察力の鋭さ。

さらには、今後数100年の世界情勢をも、おそらく言い当てているであろう射程の長い内容の本。オススメ。

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2024年08月27日

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文明衝突論を展開したハーバード大学のサミュエル・ハンチントンが日本にフォーカスを向けた名著。

政治経済の利益、イデオロギーによる分裂が顕著だった20世紀と比べて、21世紀は文化によって分裂している、これからもその分裂は続くと分析している。2000年に出版された本だが、この内容は2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発を予言していたとも言える。

宗教もなく、文化的にも完全に独立した日本だからこそ、先入観を持つことなく他宗教や他文明の理解・教育を進めて、国際平和を促進させることに一役買うことができるのではないかという希望を感じた。この本のように多様化する社会を深く理解しようとする価値観が広まり、平和な世界へ向かってくれることを願う。

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2022年12月07日

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2000年の作品。当時はアメリカ一極支配の時代であったが、その後の地域での紛争、イスラムの団結、中国の台頭による新たなパワーバランスを、基本的には全て予見しているのが凄い。
イデオロギーによる対立が終わり、世界は国を超えた文明ごとに分断され、文明間の衝突が始まる。
西欧文明(欧米等)、東方正教会文明(ロシア等)、中華文明(中国等)、日本文明、イスラム文明、ヒンドゥー文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明。当時はこのうち、西欧文明が突出したパワーを持っており、中国は地域での大国に留まっていた。ハンチントン理論によると、超大国と地域大国は直接対峙せず、むしろ、地域の準大国と超大国が組んで、地域大国と相対するという。まさに、日米と中国の関係をあらわしている。現在、中国が超大国のカテゴリーに入るようになり、このバランスに変化が生じる。

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2021年10月04日

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日本も世界も、米中対立に翻弄されながらも何気に均衡を保てているのはある意味奇跡。それは互いの、各国間の文明に不可侵だからか?そういう意味では北朝鮮やイラン問題もそうか。政治的、軍事的な非難の応報はありながらも、文化、文明を否定することはないもんなぁ。

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2020年03月29日

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"地球上の各地域で育まれてきた文明を定義づけ、現代社会の関係性をアカデミックに論述した本。これも世界を見つめる視点ひとつである。
人間は多様性ある生き物故、この時代まで進化を遂げてきたのだと思う。
しかし、その多様性を受け入れつつも、排他的な争いも続けている。
すべての人類が共存するには、共通の敵が生まれない限り実現は難しいのかもしれないと感じた。"

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2018年11月23日

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ネタバレ

前半が終わると、文明の衝突のサマリ的紹介になり、わかりやすく「文明の衝突」で唱える文明論が抑えられるかと思います。

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2015年09月16日

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冷戦後に発表された、「文明の衝突」はかなりの大作だが、そのエッセンスと日本とアメリカについての論文をまとめた、ダイジェスト版。

内容は、21世紀の日本の選択、孤独な超大国(アメリカ)、文明の衝突(ダイジェスト版)と3本立てで、著者ハンチントンの考えが新書で手軽に理解することができる。

特に文明の衝突は、これまで冷戦のイデオロギーの対立軸1つの2大勢力(と非同盟の3つ)の戦いであったものが、8大文明(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ、アフリカ文明)にわけて、その文明同士の相互理解不足や、文化(と文明)の歴史や違いなどによっての戦争などが起こることを予見している。すごいのは中国の台頭などを予言していることなどでもある。

冷戦後の中で早くもこのような理論をまとめているのはすごいと思う。できれば、元の本も読んでみたい。

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2012年10月10日

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面白かった。多文化していく世界の中で、文明間に発生する衝突について説明している。それがとても納得できるものであり、もっと早く読んでおきたかったと思う。中でも日本は一つの文明であり、且つそれを他のいずれの国とも共有していないという特殊性があるとの説明は説得力がある。
現時点でも紛争、戦争は絶え間なく起こり、破壊・殺戮活動が続いている。これを見て多くの日本人はどうしてそんな無駄なことしているのか、という疑問を持つんじゃないかと思う。でもそれは歴史やアイデンティティの感情に訴える地域や場所を侵された経験が日本には無いためなのだろうと思う。そういう勉強をして理解を示し、日本としての考え方を堂々と述べていくべきだと思う。
「解題」を中西輝政氏が書いている。これがまた大変いい。

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2024年04月10日

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ハンチントンによる『文明の衝突』拡張版?
『文明の衝突』は次に読む。ものの、元の半分ほどのページ数で書かれている本書は読みやすく、内容も非常に筋の通った濃いものだった。

世界の国際関係はまさに変動している。米中の関係しかり、それらを踏まえた日本の立場しかり。
国際情勢を日本的視点だけでなく、グローバルな視点で捉えて将来を見据えるため、西欧から捉えたハンチントンの視点を知ることは有効な足がかりになると思う。

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2021年12月09日

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覇権的な地位を巡り、大国の衝突は避けられないのか。その時日本が取る戦略は、バランシングなのかバンドワゴニングなのか。世界情勢から来たるべき構図の揺らぎについて、サミュエル・ハンチントンが論ずる、時代の直感。やや常識の型からの論考の感を拭えないが、面白い。

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2018年09月08日

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文明と文化は、いずれも人々の生活様式全般を言い、文明は文化を拡大したものである。
19世紀のドイツでは文明を機械や技術、物質的要素にかかわるもの、文化は価値観や理想、
高度に知的・芸術的・道徳的な社会の質にかかわるものとし、
文明と文化をはっきり区別していた。
一極・多極世界は四つのパワーレベルからなる。
超大国→地域大国→ナンバー2の地域大国→その他の国。
冷戦後、世界は七つあるいは八つの主要文明に属している。
西欧文明・東方正教会文明・中華文明・日本文明・イスラム文明・ヒンドゥ文明・ラテンアメリカ文明そしてアフリカ文明。
この異なる文明が衝突することになる。
日本は文化と文明の観点からすると孤立した国家であるとハンチントンはいう。
日本文明は日本という国一国と一致し、国外離散者すら存在しないという。

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2017年09月17日

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンによる本書には、1993年発表の『文明の衝突』(抜粋)のほか、1998年に東京で行った「二十一世紀における日本の選択~国際政治の再編成」と、1999年に『フォーリン・アフェアーズ』誌に連載された「孤独な超大国」が収められている。
『文明の衝突』は、冷戦の終結した21世紀の世界を予測した論文として、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』において「グローバルに民主主義と市場経済秩序が定着し、もはやイデオロギーなどの大きな歴史的対立がなくなる」という典型的な“アメリカ的世界観”を示したのに対して、「民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明間の違いに起因する、分断された世界となろう」という、およそ“非アメリカ的世界観”を描き、欧米世界を驚かせたものである。
その主旨は、以下のようなものである。
◆冷戦後の世界の国家のグループ分けにおいて重要なのは、7つ(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ)或いは8つ(+アフリカ)の世界の主要文明である。地域の政治は民族中心の政治に、世界の政治は文明中心の政治になり、超大国同士の抗争に代わり、文明の衝突が起こる。
◆その世界では、各国は各文明に対して、構成国、中核国、孤立国、分裂国、引き裂かれた国家として関係する。
◆異文明間の紛争は、地域的なレベルでは文明の断層線での紛争が起こり、世界的なレベルでは異文明の中核国家間での紛争が起こる。
◆世界的なレベルの衝突としては二つが想定される。一つは、アメリカと儒教的特徴をもつアジアとの対立で、特に中国の発展はアメリカにとってぬきさしならぬ挑戦となる可能性がある。もう一つは、既にアフガン戦争、湾岸戦争として顕在化していた、イスラムと他文明との衝突である。
◆異文明間の戦争を避けるには、他文明内の衝突に中核国家が干渉しないこと、中核国家が互いに交渉して自分たちの文明に属する国家や集団の関わる地域レベルの紛争を調停すること、あらゆる文明の住民が他の文明の住民と共通して持っている価値観や制度や生活習慣を模索し、それを拡大しようと努めること、が必要である。
そして、「二十一世紀における日本の選択~国際政治の再編成」では、「東アジアの将来の平和と幸福は、日本と中国がともに生き、ともに進む道を見つけることにかかっている」、「孤独な超大国」では、「アメリカにとっては、多極体制の世界における大国の一つとなるほうが、唯一の超大国であったときよりも要求されるものは少なく、論争も減り、得るものは大きくなるだろう」と述べている。
昨今の世界情勢を見ると、ハンチントン氏の予測が如何に鋭かったかがわかるし、衝突を避けるためのルールも依然有効なものである。
今、読み返す価値のある著作と言える。
(2009年5月了)

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2016年01月11日

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かの有名な国際政治に関する論文である「文明の衝突」の抜粋の他、2論文を収録した論文集。

◯「二十一世紀における日本の選択ー世界政治の再編成」
「文明の衝突」理論によれば、今日の世界の在り方を規定するものはイデオロギーではなく、文化や文明の類であり、事実、イデオロギーで分裂していた東西ドイツは結合を遂げ、逆に文明の相違があるにもかかわらず結合していた旧ユーゴは分裂への道を辿った。そして同じ文明を共有する国同士は、ユーゴ紛争での旧ユーゴ各国への各々の支援勢力を見ればわかるように、理解し合い、助け合う傾向にある。
一極・多極世界から、多極世界へと移り行くなかで、特に東アジアでは、異なる文明に属するアメリカと中国との対立が決定的となり、そこでどちらの文明でもない日本は文明という枠にとらわれることなく純粋に損得の判断から行動することができる。また、日本の外交政策は、結果的にはどうあれ一貫してバンドワゴニング(日英同盟、三国同盟、日米同盟など、いわゆる、「勝ち馬(になりそうな方)に乗る」)である。そのため、アメリカが超大国としての地位を失ったあかつきには、日本は中国と結びついていくとする。

著者は、日本はバンドワゴンの行動原理に基づいていずれ中国と手を組むと指摘するが、現状安倍政権は、バンドワゴンかバランシングかということでいえば後者の戦略を採用しているようだ。まあ、こういう細かいところでは予測と違うことが起こっていても、超大国と地域No.2の大国は、地域大国の覇権を阻止するために手を結ぶ傾向にあるという、日本がバンドワゴン戦略を取りやすいということより大きな原則の部分では概ね妥当しているように見える。バンドワゴン戦略は、組む大国との信頼があるか、地理的な遠さなどで影響
が及ばない場合でないと不当な影響力の行使の下に置かれかねない点でリスクがあり、現状の日中間にそれほどの信頼関係がない以上、著者の言うとおりの未来が訪れることはないと思う。


◯「孤独な超大国ーパワーの新たな展開」
アメリカは慈悲深い覇権国を自称し、国際社会の利益のためと称して自己の利益の増進を追求してきたが、かつての冷戦下の二極体制や、湾岸戦争時の一極体制の時とは異なり、アメリカが自己利益の代弁者だと考える国は一極・多極体制の下では減少し、むしろ地域大国からの反発を招き、超大国として覇権的に振る舞うことへのコストと利益のバランスが崩れてきている。そこで、アメリカは超大国であり続けるよりも多極体制の下で地域大国として振る舞う方が、世界へリソースを支出しなくてもよくなり、反発も買わず、地域大国と超大国との間では必然の対立も回避できることで役割やコストを低減し、利益を増進させることにつながるとする。

シリアとか、ウクライナ、南シナ海の問題とかみてると、まだアメリカにヘタレて引きこもってもらうには早いのかなーという気がする。シリアなんかではサウジとかの地域大国が積極的に役割を果たさない以上、世界に影響を与える同地域の安定化のためには、どうしてもアメリカが出てきてもらわなくては困るということがあるんじゃないかなぁ。ロシアとかイランだけに任せるという選択肢は無いだろうし。その点で、この論文が見通すような未来はまだ訪れているとはいえないのかな、と感じた。


◯「文明の衝突ー多極・多文明的な世界」
冷戦終結後の多極化してゆく世界では、文明が国家の行動を規定し、そのことにより文明の断層線におけるフォルト・ライン紛争が発生しやすくなり、しかもそれは、紛争当事国と文明を同じくする国々をも巻き込んで大規模化しやすく、きたる多極世界に対する最も深刻な危機が、この文明の衝突であるとする。その上で、文明の衝突を予防するためには、世界はいまや文明によって規定されていることを自覚し、文明に基づいた国際秩序の構築、すなわち不干渉、共同調停、そして例えば異文明間でも共通する最低限の道徳観など、共通点を模索、拡大するという、共通性のルールに基づいた国家の行動が求められるとする。

共通性のルールっていうのが、心に残った。つまり、異文明で、相手が何を考えてるのか全くよくわからなくても、根本は自分たちと同じ、人間なんだということを心に留めておこうということなんだな。


「解題」
京大教授中西輝政による解説。この論文をどう読めばいいのかという視点を指し示してくれてありがたい。


文明というものを通して世界を見るという体験は結構視野が広がるものだと思ったけど、やはり日本はいずれ中国の覇権に服することになるという著者の主張は飲み込めなかった。中西氏の言うように、中共の事実上の一党独裁が続く限り中国の覇権は、性急で未成熟なナショナリズムによる粗野な覇権にならざるをえないような気がするし、それよりは不満もあるが経験済みのアメリカの覇権の下にいるほうが良いというのがいまの日本の立場なんだろう。

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2016年03月16日

Posted by ブクログ

『文明の衝突』で有名な著者が、改めて世界の動向を分析する一冊。

著作年月日が2000年と若干古いが、逆に著者の慧眼に驚かされる。
そして、日本が中国と分断している独特の文明だというのが深く納得できた。

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2015年08月24日

Posted by ブクログ

世界を「文明」という区分で考えている点は梅棹忠夫の「文明の生態史観」と共通している。大風呂敷の割には論理的で納得できる内容。冷戦直後というまだアメリカの1極支配があった時代にこの理論が導出されたのには驚く。
最後にハンチントンは世界は多文明的であり最終的に収斂すべき単一の文明などないことを認めつつ、そのうえで自国文明の特徴を守り、他文明との違いを認めて争いを避けるべきであるとしている。

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2013年01月02日

Posted by ブクログ

ハンチントンの文明の衝突を買いに、地域の大型書店を訪ねたが、在庫がなく、この本を代わりに手に取った。

あとがきで引用されている、”不死の幻影”、自分たちの社会は人間社会の最終型だと思い込む。だが、そのように自分たちの歴史は終わったと思い込む社会は、衰退に向かって行っていることに気づいていない、という表現は非常にスリリングである。

国家論、文明論に関する興味は満たしてくれる著作だった。ただし2000年に記されており、12年後の現在と照らし合わせながら読む姿勢が必要だ。逆に言うとハンチントンの予想が、現在進行形の中でも意識されるのは面白い。

中でも興味を惹いたのは日中関係。ドイツとフランスが達成した相互関係を、日中が確立するには、相互信認という点で非常に大きなハードルがある。中国は、東アジアの覇権を求める方向に向かうだろう。中国は、日米同盟が弱まり、日本が軍事増強、核武装の方向に向かうことを恐れている、と著者は指摘していた。これは2000年当時には真実だったのかもしれない。そのターニングポイントを逃してしまった現在、中国はもはや日本を恐れてはいないのだろう。尖閣問題をどうとらえるか。経済的観点から収束に向かうだろうという見通しや、自主独立などこれまではタブーと目されてきた問題へと回帰する国家意識など、様々な立場が意識されるようになってきている。

バランシングとバンドワゴニングという国際関係の力学において、著者はこれからの日中関係は、日本が中国の覇権に入る、バンドワゴニングの方向に向かうと予測している。これはこれまでの日本の国際関係というのが、英国、ドイツ、米国と時の世界の覇権国と手を結ぶことで成立してきたことを取り上げ、日本の階層的な外交構造からこれまでと同様のstrategyをとると考えたからだ。

著者曰く、文明というのは、家族のようなものだ、と。その意味で日本は、家族を持たない文明である。東アジア情勢がtensiveになっている昨今、少なくとも日本は自己のアイデンティティの確立の大切さを漸く気づきはじめた。戦後史をまとめた著作、これからの採るべき方針を論じた著作が売れているのは良い傾向だろう。

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2012年09月30日

Posted by ブクログ

世界の国家は常にパワーゲームをしているということ、そしてそこには文明と文化が密接に結びついているということを知る。島国である日本は独特な文明・文化を持っているが故に孤立しがちであり、理解されにくいという現実。翻訳本なので若干読みにくいが、的を射た内容となっている。

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2012年05月05日

Posted by ブクログ

単なる進歩史観を超えた歴史の大局的な見方、現代の諸問題を20世紀の終わりにすでに見通していた眼力、文明を分類して日本文明をそのひとつに数えかつ、それを体現しているのは日本ただ一国というその独自性を指摘する炯眼など学ぶべきところは多い。
ただ細部においては認識の不確かさも少なくなく、全体として粗雑な議論が目立つのが難点。

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2025年03月15日

Posted by ブクログ

翻訳は2000年刊行。
話題になった本だったような記憶がかすかにある。
自分の年齢を考えたら、リアルタイムで読んでいてしかるべき本なんだけど。

…でも、今からでも読む!
だって、どのみち今も昔も、国際政治音痴だし。
喪うものはないはずだ。
と開き直って読んでみた。

現在の状況と合致する部分のみが強く印象に残りやすいのだろう、とは思うけれど、本書の内容は現在にも通用する部分が多いと感じる。

アメリカの覇権の弱体化。
一極集中ではなく、世界が多極化する。
1990年代から2000年代での見通しは、まさしくその通りになりつつあると感じられる。

そこでどのような新しい国際秩序ができるか。
本書では採られる方策を二つに類型化した。
ひとつは「バランス化」(バランシング)。
もう一つは「相乗り」(バンドワゴニング)。
覇権国(アメリカ)と地域の中核国の関係、あるいは中核国と地域の二番手の国との関係にそうした方策が採られ、関係が出来上がる。

さらに、その関係形成に、文明の違いや近さが影響を与えるというところが、この本の眼目。
共通する文化を持つ二つの国や集団の間では緊張関係があっても比較的協調関係が生まれやすく、異なる文化の間では紛争が激化しやすいということらしい。
国民国家と文化のまとまりが一致していないところで民族紛争が起きるという話もある。

そういう眼で米中関係、現在のロシアとウクライナの関係を見ていくと、ああ、なるほど、と頷けるところはたしかにある。

ところで、本書にはアメリカの多文化社会化に否定的な見方が示されている。
歴史的に見て、多文化を追求する国が永続したためしがないからだということだ。
トランプ政権が誕生したり、その後のバイデン政権も、白人の、中産階級のアメリカを再生させようとしていることを見ると、今揺り戻しが起きているようだ。
筆者がいうように連合国家になる、という選択肢もアメリカにはあり、そういう未来を選択することもできるのではないかと思うけれど、ダメなのかな?

さて、本書は「21世紀の日本」ももう一つのテーマとしている。
日本は中華文明から派生してはいるけれど、孤立した文明であるため、例の文明の衝突理論から考えると、なかなか他国と緊密な協調関係を結べないらしい。
力をつけていく中国とどう渡り合うか。
過去と同じように、その時々の覇権国家、別の地域の中核国家の力を借りながら牽制するしかない、ということのようだ。
割と、まあそうなんだろうな、と思っていたことだった。

正月に読む本の選択を誤ったといえばその通りだが、何というか世界の弱肉強食の現実をつきつけられ、暗い気持ちになってしまった。

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

本書は『文明の衝突』の著者サミュエル・ハチントンによる論文集だ。九九年に行われた日本講演、超大国アメリカに焦点を当てた論文、ハチントン理論の基盤となる国際論(著書抜粋)が含まれている。
冷戦時代の世界は主として「民主主義国家」「共産主義国家」「第三世界」の三勢力に分かれていた。しかし、21世紀における国家の行動基準はイデオロギーや政治体制でなく、諸国を文化的に類別する“文明”である。また、米ソという二極化したパワーバランスが崩壊した現在、グローバルな超大国は米国のみであり、他には各地域における主要な地域大国が存在するーーつまり、事実上の一極・多極世界だというのが各論文に共通したテーマである。

ハチントンによれば、文明とは数世代にわたる人々の生活様式全般であり、文化的な特徴と現象の集合を指している。現在、世界には①日本文明②中国文明③インド文明④イスラム文明⑤西欧文明⑥東方正教会文明⑦ラテンアメリカ文明(⑧アフリカ文明)が存在しており、各地域の諸国は中核国・構成国・孤立国・分裂国・引き裂かれた国のいずれかに該当する。通常、文明を異にする国家は冷淡で敵対的な関係となり、信頼と友好はあまり見られない。異文明間では断層線の戦争(フォルト・ライン戦争)が激化していくが、平和実現のためには中核国が他文明の紛争に介入せず、構成諸国はフォルト・ライン戦争を回避するよう努めなければならない。

最後に、世界をアメリカ化する多文化主義への警鐘が鳴らされる。10年代を通じてポリティカル・コレクトネスはグローバル社会に蔓延し、共同体の文明的差異が取り払われる傾向ーー例えば米国のユダヤ教徒やイスラム教徒に配慮して“Merry Christmas”の代わりに“Happy Holiday”を用いるといった、多文化主義的傾向がより顕著になった。しかし、著者は「世界帝国がありえない以上、世界が多文化からなることは避けられない」とし、むしろ人々は差異を認め合った上で「他の文明の住民と共通してもっている価値観や制度、生活様式を模索し、それらを拡大」することが共存への道だと説いている。
加熱する多文化社会への反動が保守主義の台頭という形で帰結したと考えれば、西欧文明から引き裂かれることを拒んだ国民がトランプ大統領を誕生させたことにも納得がいく。近年では英国のEU脱退など、同一文明の国家は強固な関係を築き上げると論じる著者の予見に逆行する情勢も見られ、世界はより複雑化の一途を辿っているように感じられる。現在の日本は中国とのバンドワゴニングでなくバランシング戦略を採用し、一方で米国は着実に超大国の座を降りながらも断固とした対中姿勢を表明している状況だ。今の世界は一極・多極体制から、細分化した多極主義体制への過渡期だと見るべきだろう。

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2019年09月30日

Posted by ブクログ

異なる文明どうしは本当に融合できないのだろうか?現在の状況を理解するには分かり易い理論だったが、そうは思いたくない。日本のバンドワゴニングの立ち位置は、文明どうしの融合のロールモデルになれないだろうか?

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2019年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「尖鋭化する文明・宗教の対立」と本書の帯にありますが、15年も前に、2016年現在の状況をここまで見通していたのかと唸らされる、そういう一冊でした。

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2016年03月07日

Posted by ブクログ

文明の衝突を読むか迷い、まずは事始めにこちらを読んだ。非常に明確に、現在の世界情勢を現してあるし、初版発行から15年経って、その情勢は複雑に悪化しているように思える。一方で、不干渉、共同調停、共通性という3つのルールは、暗礁に乗り上げる感覚に対して、目指すべき方向性の示唆を与えてくれる。また、日本のポジションも再考できた。

ただ、やけに読みにくい構成と文章体…。雑に作られているように感じてしまった。

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2015年12月13日

Posted by ブクログ

国際政治学について勉強したくなった。今後はイデオロギーの対立ではなく、文明の対立になる。さらに、その中心をなす、宗教が大きなポイントになる、という論調。

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2015年05月23日

Posted by ブクログ

文明の衝突の内容を頭の中で整理するのに役立つ。特別に日本に向けられた示唆はそこまで多くない。
グローバリズム論VS文明の衝突論
多元主義ではなく、西欧のアイデンティティーを意識することが重要。リーダーであり続けるためには普遍主義の押し付けをやめなければならない。
日本は中国と米国のどちらにつくかの決断を迫られる。バンドワゴン。

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2015年03月30日

Posted by ブクログ

世界に衝撃を与えた文明の衝突論について、初めて直に触れてみた。アメリカの一極支配で世界が推移するはずはなく、文明にも衰退や崩壊の過程が可能性として存在するワケだから、多極構造の世界において日本がどのような立場に立つべきかを考えなければならない。
日本が独立したひとつの文明圏であると指摘する著者の意見を大いに参考にすべきで、中西教授の言うところの「一極として立つ日本」として、最終的には世界の協調を促すリーダー的存在になる使命を負っているような気がする。
イスラムとアメリカの対立は現在も続いているが、戦争を以てして解決に導くことは不可能だろう。
なんにせよ、課題が山積みの世界情勢である。うかうかしてはいられない。

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2013年10月15日

Posted by ブクログ

サミュエル・ハンチントン著「文明の衝突と21世紀の日本」集英社新書(2000)

*人間が共通してもっているのは「共通の文化への傾倒よりも、むしろ共通の的【もしくは悪】の自覚である。人間社会は、人間のものであるがゆえの普遍的であり、社会であるから特殊なのである」

*現代のアメリカのどんな自称を観察するときも、「文化多元主義」VS「西欧アイデンティティ論」という対立軸を常に意識してみていく必要がある。この軸がアメリカ人の意識を強く拘束している。

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2013年10月03日

Posted by ブクログ

某ブログで見かけて。かなり鋭い。
●面白かった点
文明の衝突という切り口が説得力がある。
文明とはなんぞやという定義についても触れられているのは素晴らしい。
●気になった点
特になし。

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2013年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<新たなファクターとしての文明>
 93年に世界的ベストセラーになった『文明の衝突』の後継版として位置づけられる本書は、衰退する西欧文明がもたらす世界認識を知る事が出来る。筆者によると、冷戦後の世界は(7〜8の文明で分けられた)多極化へ向かい、従来のパワーという概念に加え、文化•文明が民族(国家)の行動を動機付けるものとなりうるという。そして文化文明の差異が分裂を招く危険性を指摘しており、もっとも紛争をもたらしそうな分裂線を西欧文明と中国及びイスラームの間に引いている。本書から、相対的に衰退する西欧文明の代表者たるアメリカの、多文明化した世界における一つの提言を見ることが出きよう。

<アメリカのアジアへの眼差し>
 本書の一番主要な主張は、国家の行動様式がパワーを巡るものから、伝統的に自らを基礎付ける文化文明に基づくものになり、そこから異文明間の断層部における紛争の可能性を指摘するものである。しかしより興味深い認識は、西欧文明の衰退というものであり、他の文明(中華、イスラーム)の台頭に直面しているという認識である。アメリカは、国内において多文化主義が「国民の団結よりも、むしろ多様性を熱心に奨励」(p179)する事で西欧文明の遺産を危機に曝し、アメリカを「引き裂かれた国」にしてしまう可能性を抱えており、事によると異文明間戦争よりアメリカにとって危機になりうると主張する。そのため対外関係において来るべき多文明化した世界に備え、アメリカが一極支配者たる振る舞いをやめ、自国の価値の普遍性を前提に行動するのではなく、自らが西欧文明の代表として他国の協調を促し自国の利益にかなうように振る舞うべきだという。そこから引き出される提言は、アメリカ外交は「一つの文明の中核国はその文明圏の国々の秩序を、文明圏外の国がするよりもうまく維持できる」(p89)という前提の下「その地域の大国が第一に責任を負うように」治安維持に努めるべきであるというものだ。
 筆者は来るべき多文明化した(多極化)世界で「潜在的に最も危険な紛争」がアメリカと中国の間で生じうるという。「異なった文明間の新興中核国と没落する中核国家の間の紛争に、勢力バランスという要因がどの程度まで影響するだろうか?」と問い、日中間の文明の差異とパワーシフトの相互作用に関心を向ける。筆者はアジアでは中国(中華文明)の台頭とアメリカ(西欧文明)の衰退、日本(日本文明)の停滞があり、文明の差異とパワーバランスの著しい変化があり、日米中の関係は文化文明の断層線に隣接する国家同士であることから協調は難しいという。アメリカの対アジア関与はこれまで、パワーの観点から中国の域内大国化を日米同盟で押さえ込む戦略がとられて来たが、今後もこの関係は続けられるのか?中国の台頭の前に、「揺れる国家」たる日本はいかなる戦略をとるのか?
 すべて明示的に答えられている訳ではないが、衰退し挑戦を受ける西欧文明という世界観を前提に、アジアにおけるアメリカがとりうる戦略を考えるにあたって、重要な土台となりうる議論が展開される。

<本書の功績と問題>
 この本及び「文明の衝突」議論の最大の功績は、従来の国家の行動要因であるパワーに加え文化文明という概念を新たに加え、両者の相互関係から紛争の要因を探っている点である。特に文明の盛衰からとりうる戦略を考えるという発想は、旧来の国際関係学にはない新しい視点である。
 もっとも「文明の衝突」の議論に問題は少なくない。筆者が「文明の衝突」として挙げる旧ユーゴ紛争においては民族別の経済格差の問題があり、さらにボスニア紛争やコソボ紛争ではイスラム文明を西欧が(直接間接の)援助をしている事実から、文明の親近性だけで国家の行動を説明出来ない。だが、筆者の主張では、その点の考慮が無い。しかし、より重要なのことはアメリカの価値を普遍だとの前提で行動をとらないことや、異文明への不干渉を主張する世界観がどのようにして生まれ、どこまでアメリカ国内で支持を受けるのかであろう。さらに私たちに関わるところでは、アメリカと日本の関係にその世界観がどのような影響を与えうるのかを本書で考えることが出来る。      

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2012年03月29日

Posted by ブクログ

世界を文明の違いによって分けて、そのなかでの日本の役割とかポジションとかを論じた本じゃなかったでしょうか。とはいえ、東北大震災から福島原発事故が収束しないという歴史を歩むことになった今の日本に当てはまるかどうかは、やっぱり当てはまらないんじゃないかと思えてしまいます。もはやこの本で論じられる日本は歴史のifの日本であるかもしれませんね。文明で分けることの、その文明の捉え方などの精妙さや分析のブレなさなんかはよく覚えていないので、よかったとか面白いとかは言えません。

(読んだ時のメモから)
書いてあることがよくわからなかった。難しいというか、言葉が抽象的というか。2000年に出た本なんだけど、その後の9.11テロ以降のことがあるから物足りなく感じられた。異文明間の衝突を予言してはいるんだけど、事実はもっと劇的なものだった。

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2025年05月05日

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