鈴木主税のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
翻訳は2000年刊行。
話題になった本だったような記憶がかすかにある。
自分の年齢を考えたら、リアルタイムで読んでいてしかるべき本なんだけど。
…でも、今からでも読む!
だって、どのみち今も昔も、国際政治音痴だし。
喪うものはないはずだ。
と開き直って読んでみた。
現在の状況と合致する部分のみが強く印象に残りやすいのだろう、とは思うけれど、本書の内容は現在にも通用する部分が多いと感じる。
アメリカの覇権の弱体化。
一極集中ではなく、世界が多極化する。
1990年代から2000年代での見通しは、まさしくその通りになりつつあると感じられる。
そこでどのような新しい国際秩序ができるか。
本書 -
Posted by ブクログ
◯ 私たちの世代がなすべきことは、最低ラインにいる人びとが極度の貧困から抜け出して経済開発の梯子を自力で昇れるように手を貸すことである。(76p)
◯それ以来、私は何が必要かという点だけを明瞭にし、「政治的に可能」かどうかは気にしないようにした。(200p)
◯中国の中央集権機構(中略)は、つねに分散し変化してゆく市場経済のダイナミズムとは相容れない(294p)
★著者は学者として成功を収めただけでなく、政府顧問として南米、東欧、ロシア、中国、インドの経済開発でも成果をあげた。しかも冷戦が終結し、共産圏が市場経済へ移行する難しい時代に。そんな著者がアフリカの、そして世界の貧困をなくすため -
Posted by ブクログ
未来予想を行っている本を後の時代になってよむと、当たっている部分、外れている部分がある。
おひざ元のアメリカの洞察は的確で、結構予想が当たっている一方で、日本や台湾は本書に書かれているほど、中国にすり寄っていない。
だからといって本書の価値が落ちるわけではない。西欧人の視点でとらえたイスラムやロシア、アジアの分析は参考になる部分も多い(アジアの文化・文明はもう少し多様かつ複雑な気もするが…)。
経営学者(というかほとんど予言者(笑))のドラッカーのように、しっかりと本質を捉えていれば、当初の予想とは少し時間軸がずれて実現することもあるので、時折読み返す一冊としたい。
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Posted by ブクログ
本書は『文明の衝突』の著者サミュエル・ハチントンによる論文集だ。九九年に行われた日本講演、超大国アメリカに焦点を当てた論文、ハチントン理論の基盤となる国際論(著書抜粋)が含まれている。
冷戦時代の世界は主として「民主主義国家」「共産主義国家」「第三世界」の三勢力に分かれていた。しかし、21世紀における国家の行動基準はイデオロギーや政治体制でなく、諸国を文化的に類別する“文明”である。また、米ソという二極化したパワーバランスが崩壊した現在、グローバルな超大国は米国のみであり、他には各地域における主要な地域大国が存在するーーつまり、事実上の一極・多極世界だというのが各論文に共通したテーマである。
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Posted by ブクログ
ネタバレ上巻は『現状分析』がメインだったのでまだ良かったのだが、下巻は『対策』それも、『西欧文明の優越が失われてしまう。キー』の対策なので、まあ、引きながら読んだ。
ああ、そりゃあ、問題になったわけだなあと。
ただし、イスラム文明が他の文明と摩擦を生じている背景としての、『人口爆発』『若い世代が多い』という分析は、大事な視点だなと。
いずれ、イスラム圏が豊かになれば、人口爆発が収まって穏健になる日も来るのだろうか?(まあ、その答えを見るまで生きていることは無理だからわからないが)
あと、日本の扱いがあまりにもあれだよなあ。まあ、ちょうど細川政権の頃だろうからなあ。対米自立ダーみたいな乗りがあったの -
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Posted by ブクログ
世界に衝撃を与えた文明の衝突論について、初めて直に触れてみた。アメリカの一極支配で世界が推移するはずはなく、文明にも衰退や崩壊の過程が可能性として存在するワケだから、多極構造の世界において日本がどのような立場に立つべきかを考えなければならない。
日本が独立したひとつの文明圏であると指摘する著者の意見を大いに参考にすべきで、中西教授の言うところの「一極として立つ日本」として、最終的には世界の協調を促すリーダー的存在になる使命を負っているような気がする。
イスラムとアメリカの対立は現在も続いているが、戦争を以てして解決に導くことは不可能だろう。
なんにせよ、課題が山積みの世界情勢である。うかうかし