大城立裕のレビュー一覧
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他界した妻との日々を綴った「あなた」、普天間基地移設と建設会社を営む甥の立場をからめた「辺野古遠望」、同期会と若かりし頃の仲間を思う「B組会始末」「拈華微笑」「消息たち」、幼い頃のひなびた郷暮らしを描いた「御嶽の少年」の6短編が収まる。
1編目の「あなた」は妻を思う(たぶん本人には言えなかった)夫の思いや感謝、家族の悲喜こもごもの場面が訥々と綴られ、長い年月を共にした夫婦の絆に打たれる。「B組会始末」なども遠い学生時代の仲間たちとの思い出、その後の交歓やだんだんとその仲間が鬼籍に入っていくさまが感慨を呼ぶ。
「辺野古遠望」はちょっと煮え切らない筆致がもどかしい。沖縄初の芥川賞作家であり県職員と -
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「亀甲墓」
沖縄内陸への艦砲射撃が激化したことを受け
先祖代々の墓に避難してくる一家の話
亀甲墓と呼ばれる形態のそれは、一種のトーチカ状であり
胎内のようでもあった
砲弾の雨の降る中、先祖の霊から守られている気分にひたって
捨てることのできない日常感覚へのこだわりが
やがて彼らの首を絞めてゆく
「棒兵隊」
避難民の中からなんとか
動けそうな男ばかり集めて編成された「郷土防衛隊」
しかし武器も食料も無く
敵の銃弾をかいくぐってする水汲みぐらいしか仕事がない
やがて正規兵たちの不安が、スパイ探しの名を借りた内ゲバに発展する
心ある少尉の機転で防衛隊員たちは脱出するが
すでに戦線の崩壊した沖縄で行 -
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元々は、1972年に出版された作品。
菅総理が、「『琉球処分』と言う本を読んでいる」と言っていたので、読んでみました。1972年といえば、5月15日に沖縄返還がなされた年です。この作品は、それに関連して出版されたと理解できます。
琉球処分は、過酷な経験を琉球・沖縄に課したと言う事になるのだと思います。過酷な処分自体を否定する気は毛頭ありません。しかし、小説なので話を割り引く必要があると思いますが、その根底には、“コミュニケーション不足”と言う問題があったんだなぁと言う事が、物凄くよく判りました。いや、“コミュニケーション【不足】”等と言う生やさしいものではなく、“コミュニケーション【断絶】