大城立裕のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
沖縄への米軍の上陸が現実化しつつあった太平洋戦争末期の昭和19年8月、非戦闘員の九州への疎開を進めるために対馬丸は学童800人超を乗せて出航し、その航路の途中でアメリカ潜水艦の魚雷を受けて沈没しました。生き残った学童は50名余り。地上戦が予想される沖縄に「残るも地獄」、潜水艦による撃沈が予想される疎開船に乗り込む「行くも地獄」という究極の状況下で、わが子、教え子を疎開船に乗船させるのか、させないのかの判断に迷う親と教師。対馬丸出港までの状況から、魚雷を受けて沈没後、生存者が救出されるまでを辿ります。戦後70年となる今年、様々な戦争体験記が公になっていますが、本書も「戦争完遂」という大義名分の下
-
Posted by ブクログ
毎年夏休みに沖縄に家族で休暇をすごしていますが
今年たまたま、現地の博物館に行って沖縄の歴史の常設展
を見に行きました。そこで少しだけのコーナーでしたが琉球処分
についての展示が展示されていました。
薩摩の圧政・第2次世界大戦での沖縄戦。普天間基地を含めた
基地の問題。といろいろありますが、日本に力ずくで国家を
解体されたのが琉球処分であることがよくわかりました。
このことはもっと一般的に知られるべき内容だと思います。
また、この琉球処分が本当に日本政府が力ずくでやったものでは
なく。琉球の力ではない抵抗に屈してしまった結果であることを認識
すべきだと思います。
また、今の沖縄県と政府と米軍と -
Posted by ブクログ
後半は日本政府に対する反感が増す琉球と、同じことを繰り返し一向に進展しない交渉にいらだつ日本政府、琉球は時間をかせいで清からの援軍を期待するがその清は西洋の侵略を受けそれどころではなくなっている。悲しいのは琉球側も王朝とそれを支える士族が自分たちの立場の安泰を願うだけで百姓の見方になっていないこと。時勢が見えるものも見えないものも同じように流されていく。上巻のはじめの頃には希望に満ちていた主人公の一人与那原良朝も後半に行くにつれ諦観し、もう一人の主人公亀川盛棟は日本への帰属にやみくもに反対する頑固党を嫌悪しつつもまきこまれてしまう。
清、西洋列強に対抗するために琉球を併合し軍を進駐させる明治政 -
Posted by ブクログ
琉球処分とは、明治初期に日本が琉球国を軍事的に統合する過程を言う。本書はそれに関する小説である。
読後感であるが、第一に歴史は繰り返すと言うことを改めて認識したと言うことである。普天間基地の時は守屋武昌氏をはじめとする防衛官僚が普天間移設に取り組んでいたが、この時も沖縄側は徹底した遅延戦略をとっていた。琉球処分の時も普天間の時と同じように遅延戦略をとり対応していた。結果的に琉球処分の時は力によって統合が達成されることとなった。
第二には琉球国は完全に世界の情勢に疎く、自らの行動の論理で動いていたため、日本側の意図を掴みきれていないと言うことである。日本側は当時の国際社会のシステムであった帝国 -
Posted by ブクログ
1959年の小説とは思えない新鮮さ。沖縄に様々な課題がある現代だからこそ読みたい小説だ。
「テンペスト」を読んだ数年前。すごい小説だと思った。そしてその後の沖縄の歴史に興味を持った。
本書は事実を小説化したものだが、まさに「その後」だ。
日本に不信感を持ちながら、すでに傾いている清に期待をもち、結局近代化の波に飲まれて行く。
もし、琉球が独立を保っていたら?領土問題は空恐ろしい事態になっていたかもしれない。
「その後」のその後、沖縄はアメリカに支配される。自主独立を保てず、この百数十年が流れた。
しかし僕たちは沖縄が好きだ。憧れだ。1ヶ月沖縄で過ごせたら夢のようだ。とても良い人たちに囲まれ、 -
Posted by ブクログ
読むの時間かかったー。
面白くないわけじゃないけど、少しダラダラ感があってもどかしかった。
維新で廃藩置県になり、沖縄も日本の一つの県になるまでにこんなに時間がかかっていたのか…。
日本からのお達しに対して、延長の嘆願をする琉球士族たち。
延長、延長、延長、嘆願、嘆願、嘆願…逆にすごい。
本人達はのらりくらりというつもりはないのだけど、ヤマト側からしたらかなりイライラさせられたと思う。読んでる方もちょっとイライラした。笑
でも清国と日本との板挟みでどうすればいいのかと琉球も苦しかったんだろうな。
沖縄についての勉強をまたひとつできて良かった。 -
Posted by ブクログ
沖縄の文化や習慣が好きで今沖縄に住んでいる身として、沖縄の歴史を学んでおこうと読んでみた本。
歴史苦手だから読みにくいかなと不安だったけど割と読みやすかった。
何となくしか知らない琉球の歴史。
史実を元にしてあって、ページを次々めくりたくなるようなストーリー性があるわけじゃないんだけど勉強になる。
今の沖縄にも根強く残る内地の人間に対する差別感は、なるほどここからもきていたのか。
ナイチャーと言われると少し悲しいんだけど、仕方ないのかもなぁと。
琉球は武器を持つことを禁止し、武器を捨てた国と書いてあって、モンパチの曲で武力使わずみたいな歌詞があったなと思い出してこれのことだったのかと納得。
-
Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
芥川賞を取ったし、短いし、ということで選びました。
蓋を開けると、カクテルパーティーという題名とは裏腹に、沖縄返還前、米兵に娘がレイプされ、父は訴えようとするが様々な障壁があり苦悩するという、重い内容でした。
軽い気持ちで聴き始めたので、内容の重さに気持ちも知識もついていけなかった。負けるだろうと分かっているが、それでも裁判に挑もうとする父親の葛藤を、さらっと聞いても理解したとは思えず、中途半端な気持ちで終わりました。
令和の今も沖縄での性的暴行事件は頻繁に起きており、平和外交のために隠ぺいしてしまおうという気質はずっと変わっていない。いつか変わる日が来るのだろ -
Posted by ブクログ
「琉球処分」と聞くと、沖縄戦の悲劇や基地問題と結びつけたくなる処だが、ここで描かれている事件は、未開の封建士族たちが自分達の既得権益を守るために起こした子供じみた反抗に過ぎず、琉球住民のほとんどを占める百姓階級にとっては別世界のローカルな話である。沖縄に対するヤマトの態度に共通性を見いだすことは可能だが、この事件と現代を直接結びつけるのは短絡であろう。維新で会津の受けた悲惨な仕打ちを思えば沖縄だけ特別視すべき事情はなく、特段の同情も共感も持ちえなかった。
それとは別に明治維新の本質は斯くの如しかということもよくわかった。それは薩長士族による単なる軍事クーデターなのであって、盲目的に信奉すべきも