大城立裕のレビュー一覧
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私の故郷、沖縄の歴史。
王国から、属国へ。属国から、遵奉へ。
与那原良朝という青年が見た8年間。病床に沈む国王、ヤマトと琉球の板挟みに遭う父、些末に罵倒される恩師、報われぬ人生を嘆き絶命する友、戦を止めるために無駄死にした幼なじみ、信じる心を失った自分。
誰もが琉球のために奔走し、琉球を嘆き、恨み、愛して生き抜いた事変。
私は沖縄県民として、県外で暮らし、働いている。
「沖縄の人は優しい」
「沖縄の人は温かい」
とはよく言ったもので、断らず、なんでも引き受けてくれる県民性を、ナイチャー(沖縄県外の人)は悠々自適に扱っている。沖縄県民は優しいのではなく、幼い頃から教育されてきたのだ。
「ナ -
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ネタバレ著者は中国で20歳の時に敗戦を迎え、表題作で沖縄県出身で最初の芥川賞を受賞した作家。(1967年)
沖縄が本土へ復帰する直前に、沖縄人、日本人、中国人、米国人の4人の男性が親善という名の元欺瞞に満ちたパーティーを行う。そんな中、沖縄人の娘の米兵によるレイプ事件が起きる。 今年で沖縄が本土へ復帰して50年になるがいまだに同じような事件は後を経たない。しかし、そこでは被害者である日本人と加害者である米国人という関係性が成り立つが過去には同じようなことを日本人も中国で行っている。
本文中の「どちらも被害者であると同時に加害者だということを自覚することでしか新しい世紀は始まらない」(p298)という言 -
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< 19世紀は独立国だったと言う考え方>< 明治以前は中国の領土だったと言う考え方>とある通り
沖縄を語る上でははずせない4人の登場人物が出てくる。琉球人、N県民、中国人、アメリカ人。
この4人は今の沖縄で日本語と英語が混ざり合い中あえて中国語を話すと言う中国語サークルに属している。主人公である沖縄の住民の私もアメリカ人から中国語を習っている。
それぞれの国家は戦争で争い合う。
中国人も中共の兵士に子供2人殺されながらも残った子供と妻を置いて亡命してきている。
国民に残した戦争の傷跡は国家を超えて1個人の間でも相手の行動に影響及ぼしているのか。戦争の傷跡一人ひとりの間 -
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清国の冊封体制と、薩摩による支配の両属にあった琉球から、日本の1つの県となる過程における琉球の激動を描いた良作。作者は沖縄人で、ながらく沖縄で働いているのに、これだけ客観的に描けるのはすばらしい。ともすれば、当時の祖先たちを馬鹿にしているようにも読めるが、おそらくそれは真実に近いのだろう。
琉球処分以前の沖縄の立場は、たしかに薩摩の圧政よりも冊封によって信頼関係を築いていた(と、少なくとも琉球側は信じていた)清国のほうが信頼しており、武器を持たないかわりに信頼と貢物による外交によって平和を維持していたわけで、そこを日本が琉球処分を行い、その50年後には太平洋戦争の舞台としたことは、今日の沖縄の -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
国家間の争いは、個人的な感情や生き方に計り知れない大きな影を落とす。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
米国統治下の沖縄で日本人、沖縄人、中国人、米国人の四人が繰り広げる親善パーティー。そのとき米兵による高校生レイプ事件が起こり、国際親善の欺瞞が暴露されていく――。沖縄初の芥川賞受賞の表題作のほか、「亀甲墓」「棒兵隊」「ニライカナイの街」そして日本語版初公表の「戯曲 カクテル・パーティー」をふくむ傑作短編全5編を収録。
⚫︎感想
親善パーティーの最中、同じ時間に米兵にレイプ被害にあった娘。その親交の下に覆われた互いの悲哀と憎悪を一体、一個人としてどう向き合えば -
購入済み
沖縄問題の原点
今もずっと継続し、台湾危機とも相まってより課題.緊急性が大きくなっている「沖縄問題」の原点を詳細に記述してある作品である。小説 文学作品としては、平板な会話文や単調な記述など、決して上手いものとはいえない。退屈な部類に入ってしまう。しかし描かれている内容は、日清両国の間で巧みに泳いできた国の有り様を否定され、戸惑いうろたえる琉球の士身分の人々の言動を、大変丁寧に描いていて非常に勉強になる。
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廃藩置県で琉球王国が廃された時点からストーリーがはじまる歴史小説。清との外交禁止、琉球における鎮台の設置、尚泰の上京という3つの難題を、琉球側がいかに解決するかというところまで物語が進んだ。
本書がどこまで史実に沿っているのかは不明だが、いかんせん、琉球の役人が保身にはしりすぎている印象を受けた。表面的なことばかり気を取られて、周りの変化に全く対応できていないのがもどかしい。
しかし、琉球役人の教養の高さにも驚いた。副島が無風流である下りは笑ってしまった。今の政治家とそう変わらない。
本書を読みながら、沖縄がよく日本に同化できたなと、その教育の素晴らしさに驚嘆せずにいれない。同時に、現在の沖縄 -
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沖縄って自然と日本の一部と思ってしまうが、こういう歴史があった事は認識しないといけないと改めて思った。もちろん今の常識で当時の琉球処分を理解して良いという事ではなくて、当時は当時の空気で当時の時代背景があった中で、こういう事が起きたという事なので、それの善悪はとても判断は難しい。琉球は外交の国で武器を持たなかった中。でも支配階級は居て、何らかの原因があってそういう構造が成立し得たのだろうが、平和な時代が続いた中で、そういう身分の差というのはどう正当化されたんだろう。士分の人にとっては、まさに天地がひっくり返る出来事であるが、日本の他の諸藩の武士もそうだったんだろう。それが内紛に繋がってもいるが
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本土復帰前のアメリカ統治下の沖縄が舞台。役所勤めの「私」は、アメリカ人のミラー、中国人の弁護士の孫、そして本土出身の新聞記者の4人で中国語の研究会をやっていた。設定が沖縄らしい。
アメリカ人のミラーは、諜報部員で情報収集のために中国語研究会をやっていたのだった。ミラーの招待で、米軍基地の中の自宅のパーティに招かれた「私」は、米軍基地に招かれることが自分のステイタスがあがったように感じていた。アメリカ人の子供が行方不明となり、私と孫で基地内をその子供を探す。基地内のアメリカ人は、そのことに協力してくれた。子供が見つかった。ここまでは、「私」という主人公。
ところが、「お前」に主人公が変わる。私か