あらすじ
清国と薩摩藩に両属していた琉球――日本が明治の世となったため、薩摩藩の圧制から逃れられる希望を抱いていた。ところが、明治政府の大久保利通卿が断行した台湾出兵など数々の施策は、琉球を完全に清から切り離し日本に組み入れるための布石であった。琉球と日本との不可思議な交渉が始まったのである。
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歴史において「たられば」が禁句なのは承知していても、もしこの時に琉球が清国の下に置かれていたらどうだったのかと思わずにいられない。もちろんその後の日清関係を知る身としては、琉球人の行く末はさほど変わらなかった、あるいは却って悪くなったかもしれないとも思う。日本にとって沖縄とは何なのか、本書を読んで改めて考える。「沖縄県は国防のためにある」自嘲か自棄か、良朝の言葉に唸ってしまう。
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沖縄旅行に先立って読んだ本。自分が琉球王国についていかに無知だったか、その事実に愕然としました。明治初期、琉球王国が日本に併合されるまでを描いた小説です。
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清国の冊封体制と、薩摩による支配の両属にあった琉球から、日本の1つの県となる過程における琉球の激動を描いた良作。作者は沖縄人で、ながらく沖縄で働いているのに、これだけ客観的に描けるのはすばらしい。ともすれば、当時の祖先たちを馬鹿にしているようにも読めるが、おそらくそれは真実に近いのだろう。
琉球処分以前の沖縄の立場は、たしかに薩摩の圧政よりも冊封によって信頼関係を築いていた(と、少なくとも琉球側は信じていた)清国のほうが信頼しており、武器を持たないかわりに信頼と貢物による外交によって平和を維持していたわけで、そこを日本が琉球処分を行い、その50年後には太平洋戦争の舞台としたことは、今日の沖縄の反日感情を理解するためのよい材料となろう。単に、地上戦が行われた、というだけではない、過去の歴史から見た沖縄人の感覚を、これを読むことで理解が深まった気がする。世界の潮流に抗い、反発しながらも、徐々に侵食されていく沖縄がよく描かれている。
本文ではないが、宮古郡島分割論などは初めて聞く話でちょっと驚いた。琉球史もしっかりと勉強しなければ。
元になった松田処分感の「琉球処分」についても是非読んでみたい。
沖縄問題の原点
今もずっと継続し、台湾危機とも相まってより課題.緊急性が大きくなっている「沖縄問題」の原点を詳細に記述してある作品である。小説 文学作品としては、平板な会話文や単調な記述など、決して上手いものとはいえない。退屈な部類に入ってしまう。しかし描かれている内容は、日清両国の間で巧みに泳いできた国の有り様を否定され、戸惑いうろたえる琉球の士身分の人々の言動を、大変丁寧に描いていて非常に勉強になる。
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廃藩置県で琉球王国が廃された時点からストーリーがはじまる歴史小説。清との外交禁止、琉球における鎮台の設置、尚泰の上京という3つの難題を、琉球側がいかに解決するかというところまで物語が進んだ。
本書がどこまで史実に沿っているのかは不明だが、いかんせん、琉球の役人が保身にはしりすぎている印象を受けた。表面的なことばかり気を取られて、周りの変化に全く対応できていないのがもどかしい。
しかし、琉球役人の教養の高さにも驚いた。副島が無風流である下りは笑ってしまった。今の政治家とそう変わらない。
本書を読みながら、沖縄がよく日本に同化できたなと、その教育の素晴らしさに驚嘆せずにいれない。同時に、現在の沖縄の人々が、内地よりも愛国心が強い人が多いことにも、本書を踏まえると驚いてしまう。
また中国が、沖縄を自国領土と主張する所以も、分からなくないように思う。沖縄で分断が進んでいるのも、もとを正せば、琉球役人の蒙昧な態度に端を発しているのではないかと感じざるを得ない(薩摩侵略だけが要因でないように思う)。
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2022年5月15日沖縄本土復帰50周年の節目ということもあり、本書を読み始める。明治時代の黎明期 明治5年から物語が始まる。
琉球は、当時清国と薩摩藩に両属していた。日本が明治となったことがきっかけに、清国から切り離し、日本に組み入れることを前提に政治的な駆け引きが行われた。
日本政府と琉球との交渉がつぶさに展開され、興味を掻き立てられる。名前を覚えるのが大変だが、それぞれの理論展開が登場人物の立場から語られる本書のスタイルに魅了された。続きは下巻へ
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面白い。あまり期待していなかったという事もあるが。一応小説なので本当にこうだったか検証のしようがないが、こういう空気だったのだろうなと想像出来る。しかし琉球のお偉方の人たちにはイライラする。それは日本側の視点で読んでしまうからなんだろう。軍隊を持たず、清と日本の両方に両属してきたとする人たちには皇民になれというのは難しい。日本も外国の干渉を避けるためにも事を荒げず進めたい。駆け引きが面白い。沖縄を理解する上ではとても大事な物語だと思う。ついつい当たり前に日本でしょ、って思ってしまうから。今の沖縄の人たちはどう思うんだろうか。
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元防衛次官、守屋武昌の「普天間」交渉秘録に続いて読んだのだが琉球処分時の松田道之の姿がかぶる。政府の官僚からするとなぜこの理屈がわからぬのか、一旦受け入れたことをなぜ反古にするのかと言ういらだちが募り、琉球〜沖縄からすると日本政府の言い分はわかるがなぜ我々の言い分を少しも聞いてもらえないのかとなる。琉球政府もその中で意見が分かれている。沖縄の本土復帰の交渉についても政府と沖縄で同じ様な軋轢が有ったらしい。
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教科書にはない沖縄の歴史を思い知らされる1冊。明治政府の処分官松田道之の明治国家建国に向けた官僚としての責任感及びそれに基づく役割遂行への意思に共感する一方、独立国としての誇りを持ちつつ、生存のためのプラグマティズムとして日本と支那両属国の道を選択した琉球王国の立ち位置も理解できる。両者の狭間で多くの人間が苦悩し、その苦悩の積み重ねの上に歴史が動いてきたという事実の理解なくして現在の沖縄問題は語れないと思う。そのような歴史への理解なく沖縄の人々の気持ちを弄ぶ民主党政権の罪は重いと言わざるを得ない。
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沖縄の文化や習慣が好きで今沖縄に住んでいる身として、沖縄の歴史を学んでおこうと読んでみた本。
歴史苦手だから読みにくいかなと不安だったけど割と読みやすかった。
何となくしか知らない琉球の歴史。
史実を元にしてあって、ページを次々めくりたくなるようなストーリー性があるわけじゃないんだけど勉強になる。
今の沖縄にも根強く残る内地の人間に対する差別感は、なるほどここからもきていたのか。
ナイチャーと言われると少し悲しいんだけど、仕方ないのかもなぁと。
琉球は武器を持つことを禁止し、武器を捨てた国と書いてあって、モンパチの曲で武力使わずみたいな歌詞があったなと思い出してこれのことだったのかと納得。
平和主義なのね。
やっぱり沖縄は不思議な魅力のある場所。
下巻へ続く
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知らなかった沖縄の歴史。面白かった。
ヤマト(薩摩)と中国(明・清)の両国に属した琉球王国に対し廃藩置県に伴い国王を廃し深刻と縁を切ることを迫る新政府。採算の先延ばしをするもついに首里城を明け渡すことになる琉球。何も持たない無力な琉球。東京の政府と現地で直面する担当官との温度差。現代に尾を引く沖縄の根深い話。
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むつかしい。
娯楽というよりは、勉強という感じで読み進めている。
物語の総括は、下巻のレビューに。
★3つ、7ポイント。
2014.11.30.図。
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史実を踏まえた物語。日本と琉球は別の国だったのだなと今更ながら考えさせられた。但し、士族からの視点で書かれているので、百姓がこの琉球処分をどうとらえていたのかも知りたいものだ。
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元々は、1972年に出版された作品。
菅総理が、「『琉球処分』と言う本を読んでいる」と言っていたので、読んでみました。1972年といえば、5月15日に沖縄返還がなされた年です。この作品は、それに関連して出版されたと理解できます。
琉球処分は、過酷な経験を琉球・沖縄に課したと言う事になるのだと思います。過酷な処分自体を否定する気は毛頭ありません。しかし、小説なので話を割り引く必要があると思いますが、その根底には、“コミュニケーション不足”と言う問題があったんだなぁと言う事が、物凄くよく判りました。いや、“コミュニケーション【不足】”等と言う生やさしいものではなく、“コミュニケーション【断絶】”と言う方が適切かも。直接対話をして、やり取りをしているのに、お互いの事を表面的にしか理解していない、あるいは逆に深読みしすぎて理解出来ていないと言う事が積み重なっているんだなぁと思いましたね。
本の帯に「沖縄問題は、すべてここから始まった」と書いてあるんですが、今の沖縄問題も、相互の“コミュニケーション【断絶】”があるのかと思われ。