永福一成のレビュー一覧
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三男に生まれ、お家も継げず、かと言って槍の腕一つで名を成す場もなく、醜男で、恐らく金勘定が絡まないと男色の相手も得られず、神輿大三朗は閉じ込められた世界で生きるしかない中、木久地に挑んで潔く命を散らした様はあっぱれだ。それを見届けた中元の源次が、普段このバカ殿みたいな主人に振り回され、見目が良いからと馬鹿馬鹿しい衣装を着せられ、町内を連れ回され、大三朗の目の保養のためになるのが仕事みたいな自分の身を嘆いたりもしたが、最後、「いよっ、大三朗、日本一っ!」と彼の空を飛ぶ首を見上げて叫んだ彼の、どうしようもないけれど愛おしい主人へのはなむけの言葉が泣けた…大三朗の、源次への純愛に見えるんだよなぁ…自分を好いてなかった源次へ無理強いはしなかった大三朗の。
2017年1月に再読。旗本の三男で、家からはごく潰し扱いされながらも市中を自主パトロールする槍の使い手である御輿大三郎と中間の源次の関係性もいい。三日と開けず陰間通いをする、美男子好きの大三郎を小馬鹿にしながらも、槍持ちの仕事を淡々とこなす源次。泰平の世で武士でありたいと言う大三郎に情は持ってる所が…大三郎、源次を連れ回すのは美しいものを愛でるのが好きだからでもあり、自分の顔が不細工なのは重々承知なのである。彼の妄想の世界の中での自分は美男子だったりして、美醜に敏感でありながら自分が醜い事を自覚しているがへそ曲げる事なく快活な性格の大三郎…憐れなんだが憎めない。源次はあくまでも槍持ちで、小姓ではない。多分、お小姓になるんだったらあなたの元では働かない、とはっきり言ったのか、もしくは寝屋の世話までさせたら源次はここにとどまってくれない事を誰よりも大三郎が理解していて、傍に置く為だけに「槍持ち」と言う仕事をこしらえたと思うんだよね。源次は男前なので女にモテてるし女遊びもする、女の所から帰って来た事が分かっていても「咎めはしないが」くらいは大三郎も言ってしまう訳で、そんな主を(気持ち悪ー)くらいは源次も思っている。しょうがないごく潰しだな、でも槍持ってるだけで給金貰えるし、顔を眺めるくらいは我慢と言う…主の悪癖に辟易しながらも、大三郎の大舞台となる木久地との決闘を(これを行う意味さえあまりないのだが、大三郎は武士として生きたかったと言う夢を持った男なのだ…)見届けるんだよね…ネタばれになるからこれ以上は書かないが、もう、主に仕えるってこう言う事だなー、と泣けてくるんだよ… -
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これは普通の漫画を描くGペンとかで描かれているんだろうか…イメージは竹を割り箸みたいに加工した木切れの先を色んな角度や太さに尖らせて描いている様に見える。
神輿大三朗と源次の関係性が切ないんだよねぇ…男色家で三男坊で醜男でさぁ、源次は根っからの女好きのノンケでさぁ、強要出来ないのに傍に置いておきたいとか、大三朗がせめて美男子だったらさぁ、他の事は運命変えられなくてもさぁ、って切なくなるんだよ。源次もさぁ、見目麗しさで雇われているようなもんで、ノンケだから大三朗の趣味嗜好に理解があるわけじゃないし、派手な服着せられていやいややってるし、心の中で毒づいてるし、給金がいいのでこうやってるんだろうけど、後半…泣けるんだよ…どうしようもないな、と思っていても主人なんだよねぇ。大三朗が一番欲しいものはあげてない、あげない源次に対して、大三朗が強要出来ないのは、自分が醜い男であったり、三男で家督を絶対に継げない日蔭の身分であると言う引け目から来てるんだよね…切ない。
勘吉がかしこ可愛いんだ、これが。宗一郎を現世へ繋ぎとめておく天使に見える。 -
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ストーリー、絵、キャラクター、あらゆる点でツボ過ぎる。
ページのすみずみまで配慮が行き届き、かつそれをあざとく感じさせないユーモアと脱力感がスバラシイ。
読み終わった時の、満ち足りた、すがすがしい気持ちをまた何度も味わいたくなるに違いない、そんなマンガです。
登場人物すべてが魅力的で、その中でもさらに際立つ主人公宗一郎のキャラクター。
子どもたちの表情の豊かさと、人の生活に溶け込む動物たちのさりげない存在感。
ストーリーは軽快で、深くて、面白い。
宗一郎と矢場の看板娘お勝、二人のシーンが好き。
大人の女性たちにこそ、この情感を味わってほしい気がします。 -
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これはすごいマンガだ、と驚きました。
ひとこまひとこまの絵に感じる、徹底したこだわりとセンスのよさ。筆ペンで描かれた世界には、力強さと温かさと繊細さが心地よく同居している。
なんというか、一般的なマンガの絵とはちょっと違う領域に属しているような。…うーん、見れば見るほどすごいなあ。
ある日、江戸の長屋に住みついた、キツネ顔の浪人、瀬能宗一郎。
実は凄腕の剣客なのだが、腰に差しているのは竹光。
飄々として間の抜けたような不思議な人柄と、その奥に潜む剣客としての禍々しいほどの性(さが)。
隣家の少年、勘吉との交流を描きつつ、何やら事件に巻き込まれそうな流れで1巻は終わる。
絵だけじゃなくてストーリーもいい。この絵あっての、この物語であり、この物語だからこその、この絵。
1冊900円は高いな、と思ったけど、読んでみたら納得。
それだけ払う価値はあります。(むしろ、おつりがくるくらい。)
とはいえ、さすがに大人買いは厳しいのでちょっとずつ買いそろえていくことにします。 -
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これは、すごい!と思わず唸らされました。絵のタッチ、そして対決のシーン、場面が切り替わる、主人公が持つ暗黒な部分が浮き出てくる感触…全てが漫画という範疇を超えた作品。帯に「松本大洋大団円を描く」と書かれているように清々しい幕が下りました。対照するのは「バガボンド」と思います。活殺の真実に迫ったのが「バガボンド」なら(武道家や武術家の共感を得られるという意味で)竹光侍はその身体的な感覚をしっかりと表現しているように思います。時に日本画が流れていくようであり、怪談を聴いているようであり、墨絵を目の前に翳されたよう、そして流れる風や雲が本当に流れるよう。
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Posted by ブクログ
巧いんだか、ヘタなんだか解らないような絵だと感じがちだが…
漫画と認識するより、絵画、またはアートっと認識した方が正解かもしれん。
古い漫画を知っている人には「劇画タッチ」っと言った方が解り易いと思う。
なにせ絵が動くように感じる。
原作者は別な人だが、実に見事なほど松本大洋は自分らしさを出している。
主人公の「瀬能宗一郎」は、浮世離れした侍
同じ長屋に住む大工の息子「勘吉」など、子供等に好かれている。
ってことは、悪い人だとは思えんのだが…
だがフっと見せる一面には、何か人知の及ばざる物にとり憑かれている様も見受けられる
それに彼は滅法剣の腕が立つ、それに伴い心も強い。
人は自分の弱さを知っているだけに、強いエネルギーには惹かれる。
でもあまりにも強いエネルギーに接すると、逆に怖さも感じてしまい腰が引ける。
ただ当の本人がノホホ~ンとしているもんだからつい傍に寄って行ってしまうのだが
時々ミョウ~な緊張感をまとう瀬能にドキっとすることしばし(笑)
だから誰もが彼から目が離せない。
ノホホ~ンとした表情と、時折見せる獣のような表情と、
どちらも人を惹きつけてやまないのだ
そんな漫画だから、読んでいる側もたまらん程、瀬能に惹きつけられるのだ(笑)
今回は最終巻を前にし、読みきってしまうのが勿体ないので、
もう一度、一巻から一気に楽しみながら読んだ。
悪を切り、ついでに自分の悪をも断つ。
な~るほど、そういう風に結論を持っていったか・・・
まったく考えていなかった最終回だったが、一度読み終わると
確かにコレしか無いってな終わり方だった。
なにか偉業を遂げた人物、または波乱万丈な人生を送った人の伝説ってのは
こんな風に始まり、こんな風に終わるのかもしれんな
そうして時代とともに脚色され、語り継がれるのかもしれん。
松本大洋の描く人物は、いつも、とてつもない強さを持って登場する
普通は色々とあって経験を積み、強くなる過程を描く話が多い中
いきなりMAXな強さで登場するもんだから、見ている側には安心感どころか
MAXの次は落ちるだろうってなセオリーに捕らわれ、ドキドキの連続となってしまう
それを毎回「そう来たか」ってな落としどころへ持っていく技には感服する
強い主人公を登場させてた作者は、読者にハラハラ・ドキドキ感を持たせるために
次から次へと強い相手を登場させるか…主人公に怪我を負わせて多少弱らせるか…
体は強いが心が弱い…なんぞと話を持っていきがちだが
彼の描く漫画には、そういったセオリーが当てはまる作品は無い。
今回の竹光侍は先にも述べたが原作は永福一成氏である。
この話に松本大洋の絵が見事にハマっているので、大変満足していたが
どうやら永福一成氏の原作が文庫化されているらしい。
ちょっとソソルのは、漫画にはない場面が載っているそうで…読みたいかもっと思った。
しかし…最近、江戸モノに気持ちが持っていかれるのはどうしてだろう。
色々な本や漫画を読んでも、必ず合間合間に江戸モノを手にしてしまう。
士農工商の完全なる封建制度な時代にも関わらず、気持ちが江戸へと飛んでいく(笑)
さて、民主主義に嫌気でもさしているのだろうか?(ハハハハハ)
なにはともかく、松本大洋ファンも、そうでない人も
漫画好きも、漫画なんぞ見ない人も、機会があれば是非見るべし。
きっと訳の解らない幸福感に戸惑うこと確実である(笑) -
Posted by ブクログ
圧巻。漫画は絵に引っ張られ、吹き出しもあまり目を通さず読んでしまう事がありますが、「竹光侍」は、最後まで、ヒトコマヒトコマじっくり目で読んで、文字も読んで、読みました。そうしないと、作品に失礼な気がしてました。大団円の8巻、刀を振るって人の命を奪う殺生に対して、相反する精神性で在る二人の対峙は、音の無い、静寂の世界でした。漫画は沢山読みますが、この漫画を読んで良かった、なんか、お話の内容云々ではなく、幸せな気分になった、大切な一冊になりました。
二人の死闘の間に、木久地の顔がどくろのように見えてくるのは、彼が死へ向かっている暗示なのか…凄いの一言しかない。 -
Posted by ブクログ
待ってましたの4巻。
初めてこのコミックをみつけた時は、なんで松本大洋が?
と思ったものでしたが、読み始めてから、
きっとずっとこういうのが書きたかったんだなーと感じました。
浦沢直樹が「モンスター」のような作品を描きたかったけれど
その前に「YAWARA!」と「HAPPY!」を描かざるを得なかったように
作家というのは自分が描きたい作品を作るまで
カンタンにはいかない部分があるように思います。
特に巷でよくいわれるように漫画家は編集者の意見が大きいらしいですしね。
オットはいつも「松本大洋絵がめちゃうま!」っていうんですけど
これまでとは絵柄もかなり違い、江戸の雰囲気にとてもあっています。
静かに過ぎる日常の陰で、逃れられない運命の刀が振り下ろされようとしています。