永井荷風のレビュー一覧

  • 裸体談義

    匿名

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    戦後浅草の劇場に荷風は足しげく通った時期があったという。この作にはそんな経験が相互作用しているように思われる。

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    2024年09月05日
  • 葛飾土産

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    晩年に暮らした千葉を背景とした作品。ほとんどが昭和21年ころに書かれたものだ。戦後の荒れた東京に比べて、江戸川を越えただけで長閑な風景が描かれる。荷風は、そこで暮らす人たちの穏やかでいて逞しく、飢えも貧乏もしたたかに乗り越える姿に惹かれたのだろう。慎ましやかな庶民の何でもない日常が描かれる。
    市川、船橋、江戸川、本八幡など、私にとっても聞きなれた身近な地名がでて来るたびに町の風景も感じながら読んだ。
    荷風作の戯曲が載っていたのは意外だったし、浅草で上演されていたことに、当時にタイムスリップして一度観てみたいと思った。

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    2023年01月31日
  • 畦道

    購入済み

    エッセイ風

    田舎、競馬、女性との出会い、思い出。
    歴史的仮名遣いで書かれています。

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    2022年05月16日
  • 小説集 吉原の面影

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    単純に4名の文豪の吉原をテーマの作品を揃えただけかと思いきや、これはこの文庫を企画編集された人のアイディアが面白い。
    まず最初に荷風の「里の今昔」という随筆を持ってきて、その中で江戸の情緒が残る明治期の吉原の思い出を語らせます。
    そしてその随筆内で荷風が推す「当時の吉原が上手く作品に描かれている」として、樋口一葉の「たけくらべ」、広津柳浪「今戸心中」、泉鏡花「註文帳」の3作品を挙げており、それを続けて掲載した一冊という体裁になっています。
    ですので、読み方によっては「永井荷風セレクト吉原アンソロジー」って感じで楽しめる仕上がりです。
    巻末解説(川本さん)に詳しく述べられていますが、3作品それぞ

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    2021年07月05日
  • ぼく東綺譚

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    ネタバレ

    向島を舞台にした小説の中で、向島を舞台にしようと取材している老小説家が、やはり若い女性と交流する筋の小説を書いているという、作中作のような構造を持っている。というより、登場するあらゆる人物はやはり作者荷風自身の像なのであって、正直なところ小説というより、随筆に近いといっていいのではないかと思う。「小説」とする必要性はよくわからないようにも思ったが、それはともかくとして、品格があってすらすらと余裕のある文体は、やはり当時の一流の作家の力量のなせるものだと感じた。恥ずかしいことに荷風先生の作品は他に読んでいないが、おそらく、私が内田百けん先生に対して抱いている感想と同様、この方に関しては小説よりも

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    2020年03月10日
  • 日和下駄 一名 東京散策記

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    これを書いた当時永井荷風は35歳だったわけですが、文章読むと、もう60越えた老成した人が書いてるような貫禄が漂っててビックリしましたね。
    記載されてる内容についても、今の東京に当時と同じように残っている風景、消えてしまった風景とそれぞれあり、当時の荷風と同じ感慨に私もひたれる、面白い読書でした。

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    2017年11月02日
  • ぼく東綺譚

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    東京の下町を夜歩きする話。
    表紙のあらすじだと、私娼のお雪との話が主題にように見えるが、どちらかというとそういった印象を持った。
    第二次世界大戦が起こる三年前に書かれた話で、当時の町の様子がよくわかる。話の最後の方に書いてある、世の中に対する批評があまり今と変わらなくておかしい。
    永井荷風はよく町の中を彷徨っていたらしい。解説に紹介されていた、永井荷風の日記「断腸亭日乗」も読んでみようと思った。

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    2016年11月09日
  • ぼく東綺譚

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    川端康成の「雪国」に似ている。
    今に生きる私の感覚からすると、昭和初期の匂いのする場末の私娼と初老の私の話。

    初老の私は作家、取材に行った先で私娼のお雪と知り合う。その彼が平凡な人生を生きてきた初老の男性が退職金を持って、かつての女中の元に出奔する話を書く。そして、さらに著者の永井荷風がいる三重構造で不思議感はある。

    職業柄男性が訪れ立ち去る女性なのに、自分との馴れ初めを覚えていることから自分を好きではないかと勘繰るところなど男性はいつの時代も変わらないと思った。それに対して女性側も最終的には結婚を匂わせるところも変わらない。男女とは、いつになっても進化しないものなのかもしれない。

    印象

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    2016年07月26日
  • ぼく東綺譚

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    社会人としてはダメなボンボンだった匂いしかしないけど、じっくりと洗練された趣味人だったのだなとは思う。
    あまり同調できなかったが、ある種の深い美しさは感じた。

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    2014年11月22日
  • ぼく東綺譚

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    この作品に描かれる東京は関東大震災後の風情であるから、もう江戸はほとんど残っていない。ここには、日中戦争勃発前の息苦しい世相が見られると同時に、主人公と私娼お雪との交情には心温まるものを感じる。現在はこの息苦しさだけが台頭しつつあるようだ。

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    2014年02月06日
  • ぼく東綺譚

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    濡れ場が全く描かれていなくても、行間から湿っぽいエロスが立ち上る。爺さんが若い女にモテてドヤァっていう顔もついでに立ち上る。背徳的なヨロコンデルっていう感情を、如何に婉曲に表現するかに腐心しているように見えた。小難しく書くなエロ親父と言いたくもなる。

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    2014年01月26日
  • 日和下駄 一名 東京散策記

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    荷風ぶらぶら散歩譚。まずは30代で執筆されたとは思えない、頑なに古き東京の景色を愛そうとするその頑固で老成した姿に驚かさせられる。大戦景気が正に始まらんとする大正初期、誰もが色めき立って駆け足になる時代に荷風は独り散策を続け、見落とされた風景、見捨てられた路地に偏愛を注いでいた。『濹東綺譚』の時と同様、声に出す事で趣がより高まる日本語の流れが素晴しい。速読が流行し効率性が重視される現代において、のんびりと景色を眺めながら散歩する歩幅の如くゆっくりと音読を楽しむ行為は、それだけで一つの態度表明たり得るのだ。

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    2013年08月15日
  • ぼく東綺譚

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    墨田川の東を舞台とした、美しくもまた優れた物語。作者の分身である大江匡とお雪との、束の間の関係を描いた本作は音読することで美しさを堪能し、木村荘八の挿絵はその抒情感にそっと彩りを添えてくれている。実際、雰囲気だけの本といってしまえばそうなのだが、その感想を覆されたのが荷風自身の後書きだった。日々を語る相手には相次いで先立たれ、移りゆく世相に批判の眼差しを向けながらも己を見失うこと無く晩年を過ごす姿が浮かび上がっている。先立つ友の墓に添えられた、風情の込められた一枚の落葉ー本書にはそんなイメージも悪くない。

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    2013年08月13日