永井荷風のレビュー一覧
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単純に4名の文豪の吉原をテーマの作品を揃えただけかと思いきや、これはこの文庫を企画編集された人のアイディアが面白い。
まず最初に荷風の「里の今昔」という随筆を持ってきて、その中で江戸の情緒が残る明治期の吉原の思い出を語らせます。
そしてその随筆内で荷風が推す「当時の吉原が上手く作品に描かれている」として、樋口一葉の「たけくらべ」、広津柳浪「今戸心中」、泉鏡花「註文帳」の3作品を挙げており、それを続けて掲載した一冊という体裁になっています。
ですので、読み方によっては「永井荷風セレクト吉原アンソロジー」って感じで楽しめる仕上がりです。
巻末解説(川本さん)に詳しく述べられていますが、3作品それぞ -
Posted by ブクログ
ネタバレ向島を舞台にした小説の中で、向島を舞台にしようと取材している老小説家が、やはり若い女性と交流する筋の小説を書いているという、作中作のような構造を持っている。というより、登場するあらゆる人物はやはり作者荷風自身の像なのであって、正直なところ小説というより、随筆に近いといっていいのではないかと思う。「小説」とする必要性はよくわからないようにも思ったが、それはともかくとして、品格があってすらすらと余裕のある文体は、やはり当時の一流の作家の力量のなせるものだと感じた。恥ずかしいことに荷風先生の作品は他に読んでいないが、おそらく、私が内田百けん先生に対して抱いている感想と同様、この方に関しては小説よりも
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Posted by ブクログ
川端康成の「雪国」に似ている。
今に生きる私の感覚からすると、昭和初期の匂いのする場末の私娼と初老の私の話。
初老の私は作家、取材に行った先で私娼のお雪と知り合う。その彼が平凡な人生を生きてきた初老の男性が退職金を持って、かつての女中の元に出奔する話を書く。そして、さらに著者の永井荷風がいる三重構造で不思議感はある。
職業柄男性が訪れ立ち去る女性なのに、自分との馴れ初めを覚えていることから自分を好きではないかと勘繰るところなど男性はいつの時代も変わらないと思った。それに対して女性側も最終的には結婚を匂わせるところも変わらない。男女とは、いつになっても進化しないものなのかもしれない。
印象