永井荷風のレビュー一覧

  • 日和下駄 一名 東京散策記
    荷風ぶらぶら散歩譚。まずは30代で執筆されたとは思えない、頑なに古き東京の景色を愛そうとするその頑固で老成した姿に驚かさせられる。大戦景気が正に始まらんとする大正初期、誰もが色めき立って駆け足になる時代に荷風は独り散策を続け、見落とされた風景、見捨てられた路地に偏愛を注いでいた。『濹東綺譚』の時と同...続きを読む
  • ぼく東綺譚
    墨田川の東を舞台とした、美しくもまた優れた物語。作者の分身である大江匡とお雪との、束の間の関係を描いた本作は音読することで美しさを堪能し、木村荘八の挿絵はその抒情感にそっと彩りを添えてくれている。実際、雰囲気だけの本といってしまえばそうなのだが、その感想を覆されたのが荷風自身の後書きだった。日々を語...続きを読む
  • ぼく東綺譚
    取材のため訪れた玉ノ井の私娼窟で、小説家・大江匡はお雪という女に出会う。やがて大江はその女のもとに足しげく通うようになる。
    濹東陋巷を舞台に梅雨明けから秋の彼岸までの季節の移り変わりとともに美しくも悲しく、物語は展開する。昭和12年、著者58歳の作品である。

    挿絵が多く、平易な文章で淡々とつ...続きを読む
  • ぼく東綺譚
    NHKの番組「Jブンガク」で、本書を知り購入。
    昭和初期の東京は下町のまだのどかだった時代の風景が、想像できそうな文体で綴られている永井荷風の私小説。