日本経済新聞社のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本を読んだ2016年3月の時点で(本の出版は2016年2月)、シャープの行く末は鴻海に委ねられたが、偶発債務が出てきたことで、まだ確定していないという状況にある。本書は、シャープが経営に失敗して内部から崩れていく様子を取材によって明らかにしたものである。会社が傾いた原因は、一時は成功のシンボルとなっていた液晶事業の不振、ことに堺工場などの過剰投資、にあるが、その判断に至る経営層の駆け引きが描かれている。
もちろん、ここに書かれた人物評価は一面的なものではあるだろう。また、その行動評価は結果を見た後付けの評価であるかもしれない。それでも、その結果に対する責任は問われるべきではあるだろう。片山氏が社長に就いたのは、49歳の若さであったのは驚き。期待と不安は大きかっただろう。自分が学生のときの企業訪問で天理の研究所を紹介してもらったとき、TFTカラー液晶搭載の試作ノートパソコンの上でカラー動画が滑らかに動くのを見せられ、これからは液晶の時代だと説明してくれた方が言っていたのを思い出す。液晶の時代は確かに来たが、それが仇になり命取りとなったのは皮肉だ。そして悲しい。
ただ、似たような事例は海外でもあり、NOKIAやKODAKもそのよい例だろう。企業が成長を目指して何かに賭けるのはそのときには合理的な判断である場合もあるだろうし、古典となっているクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』にあるように既存顧客と製品を重視するという合理的判断が破壊的イノベーションによって致命的となることもあるだろう。企業のライフサイクルはもしかしたら個人のライフサイクルよりもずっと短くなっていくのかもしれない。企業が行う賭けや判断に個人の人生を同じようにかつ受動的に賭けてしまうべきではないのだろう。別の本だが、最近読んだ東芝から出た竹内健氏の『10年後、生き残る理系の条件』などで語られる話ももっと一般的な話になっているんだろうな。富士通の人事から飛び出した城繁幸氏の『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』という本も読んだ方がいいのかもしれない。
第10世代のガラス基板を作れるのは今でも堺工場しかない、とか太陽電池用のシリコンを2008年に20年まで長期購入契約を結んだ後にシリコン市場が暴落した、など結果として大きな経営判断ミスが重なったが、成功と成長を積み重ねる中でシャープ経営陣の中でリスクに関する意識が弱くなっていったのかもしれない。設備投資はキャッシュフローの中で済ませ、売上高の1割を超えない、というのがシャープの基本的な財務のルールだったそうだ。結果論であることはわかっているし、当時に投資抑制の判断をすると批判や反発を浴びたであろうことは想像に難くないが、その受け継がれたルールを守っていればこのような破滅的なことにはならなかっただろう。そのルールの裏には、かつて行った人員整理をもう二度と行わないという昔のシャープの経営陣の想いがあることを考えるとなおさらである。 -
Posted by ブクログ
日経新聞電子版に掲載されていた「お悩み解決!就活探偵団」が元ネタの本。「「電通が第1志望」って正直に答えても博報堂に入れる?」といった就活についての素朴な疑問を、日経新聞記者が「就活探偵団」として解き明かすという設定。
経済報道のプロである日経新聞記者が取材してるだけあって、採用担当者たちのホンネをうまく引き出していると感じた。違法インターンシップや「就活塾」、就活に介入する親の問題、採用代行業者など、就活の「闇」の部分にも切り込んでおり、最近の就活事情を知るうえでよくできた構成になっていると思う。
「採用面接、こんな学生は嫌われる」というテーマが特に興味深かった。 -
Posted by ブクログ
リクルートのDNA以来、久しぶりのR本。書店で眼に飛び込み、ふと外から見るリクルートは今、どうなんだろうと思い立ち手にとった。
書かれてあるだいたいのことは知っているつもりだが、こうして編集されて一つの読み物としてリクルートという会社を見つめると、手前味噌だがつくづく“この会社が好き”だと思う。
こんなことは入社した頃には考えもしなかった。8年近く鍛えてもらっている今、この会社で学ぶこと、得た機会はどれもかけがえがなく、そしてこれからも大変楽しみに思っている。
新橋の学生ベンチャーからリクルート事件を経て多額の借金を負い、ネット化の遅れで散々転げまわりながらも上場して世界に羽ばたこうとしている歴史が、なかなかどうしてグッと来るストーリーにしあがっているなぁと、愛情が溢れてくるのである。
起業家精神と、自らの機会創出を無くさずこれからを楽しみにゆこう。 -
Posted by ブクログ
民営化してすっかり商売の色気がついているJR。そんなJRが各地で展開しているのが駅の中に様々な飲食店などを誘致して、駅の中でも買い物をしてもらい収益を上げようとしているのがいわゆる「エキナカ」だ。
いつ頃から使い始めたのか、日経の校閲記者が調べてみたとある。「日経MJ」という日経よりももっと専門的な記事が掲載されている新聞の記事をもとに調査したとあり、2003年3月18日に初登場。
「就活」、「婚活」など何とか活と名のつくものが目立つ今日この頃。そんなに「活」が必要なほど、今の時代はへなへなと萎れているのかとふと思ってしまう。モクモク羊場合、「豚活」と「甘活」だな。前者は、「豚カツに限らす、豚肉を食べる活動。ブタミンパワーでブーブーと生きていく」。後者は、「スイーツを食べて身も心もとろける活動」を意味する。
あともう少し寝て待つとやってくるのが秋の紅葉の季節。紅葉があたりの景色を彩り何とも言えない美しさを醸し出す舞台装置になる。この本を読んでみるまで、「紅葉」はなせ「もみじ」と読むのかという疑問を抱いたことがなかった。その疑問に答えてくれるのが今回の本だ。答は手に取ってみて読んでください。
意外に思ったのが「青山一丁目」という駅名だ。東京メトロの駅名の1つとしてあるこの名前。駅名になっているくらいなので地名からとったものかと思ったら甘かった。実際に、校閲記者がいろいろ調べてみたが答は出てこなかった。分かったことと言えば、そう簡単には分からないことが世の中にはたくさんあることの証明になったことか。
同じ漢字でも日本語と中国語では意味が違うことがある。その代表としてよくあげられるのが「愛人」だ。日本だと、頭の中が紅葉のようにピンク色に染まりモヤモヤしたイメージがあるが、中国だと文字通り「愛する人」で、「妻」や「夫」を意味するとありびっくり。日本のサラリーマンが中国人から「この人は私の愛人です」と紹介されて、にやにやしないよう気を付けてもらいたいものだ。
言葉は、人生のごとくいろいろあり面白いなあ。 -
Posted by ブクログ
本書は、日本経済新聞社を代表する記者陣が、2026年を見据えた政治・経済・ビジネスの論点を横断的に整理した一冊である。準戦時ムードが漂う国際情勢、AIエージェントによる働き方の変化、株価や国内政治の行方など、いずれも「押さえておくべきテーマ」が過不足なく並ぶ。全体としては日経らしい安定感があり、現状認識の確認には有用だ。
しかし数ある論点のなかで、最も強く印象に残ったのは「令和の米騒動」を扱ったコメの話だった。地政学やAIのような大きな概念に比べ、コメは一見すると地味だ。だが、供給不安、価格変動、農政、流通、消費者心理が絡み合うこのテーマは、日本社会の脆さと構造問題を最も具体的に映し出している。コメ不足が一過性ではなく常態化する可能性に触れた記述は、食料安全保障を「現実の生活問題」として突きつけてくる。
AIや安全保障の議論がどうしても抽象論に流れがちな中で、日々の食卓に直結するコメの話は、読者に確かな実感を残す。未来を予測するとは、遠い世界を語ることだけではない。本書の中で、もっとも未来をリアルに感じさせたのがコメだったという点に、日本のこれからの論点の核心があるように思えた。