木崎伸也のレビュー一覧
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仕事柄統計や確率を扱っているサッカーファンですが、読んでいて電撃が走ったというか、いやーこんなにもサッカー界でデータや統計学がすでに使われていたかと驚くとともに、なぜだか悔しい気持ちになった。自分もサッカー界で働いてみたかったな…と。
サッカークラブにとっての移籍金負担は非常に重くなってきており、選手一人一人を買ったり売ったりする判断はクラブにとっても重要なものになっているのだろう。そういった中でその一つ一つの経営判断をサポートするべく、サッカーの試合や選手のプレイをモデル化すると言う試みは、素晴らしいアプローチだと思ったし、その行動のないようにただただ感嘆した。
サッカーの見方をまた一つ変えてくれるとともに、大変刺激を与えてくれる本だった。何かオープンなフットボールのデータを使って色々分析してみたいなと思わせてくれた。 -
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地政学がサッカーに与えてきた影響を切り口に、現代起きている現象を読み解く一冊。めっちゃ面白いし、ワールドカップを観戦するのに解像度が一つ上がる。
第一章では、なぜ日本代表が強くなったのかについて、Jリーグ創設前から現代までを語る。フットボールの中心の欧州から10000km以上離れているというハンデをどう乗り越えたのか。2002年のW杯招致の裏側、2014年ブラジルで惨敗した理由、2018年ハリルを切らざるを得なかったことなど、日本サッカーの物語を楽しく読んだ。そして現在、森保ジャパンは世界で唯一のボトムアップ型の監督。そこに行き着いた理由は日本でしか起こり得ない現象なのかもしれない。
3章『ナショナルチームと地政学』では、スペイン、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、モロッコの趨勢を地政学の観点から。スペインのマドリードとカタルーニャの対立、ベルギーの南北問題など、やっぱり壁を乗り越えた先に強くなってきているのがわかる。移民と植民地の歴史と、アフリカの身体能力とヨーロッパの規律が融合していく様子が印象的。
5章『サッカーマネーと地政学』が特にブラックで面白かった。選手やクラブの裏側のオーナーや代理人の法律スレスレのビジネスは、これからも問題になり続けるだろう。ここが一番、世に出にくい話だろう。巨額が動くピンハネビジネスは聞いているだけでワクワクする。 -
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ネタバレサッカーファンでデータ分析が好きな人には最高の本。サッカー版の「マネーボール」。著者はケンブリッジ大学で物理学博士号を取得。ポスドクからサッカーデータ分析に進出しつつあったコンサルに転身(トッテナム・ホットスパーのサポート)、その後リバプールでデータ分析からリサーチ部門の責任者に。「マネーボール」と違いリバプールは弱小チームではないが優勝からは遠のいており、そこからデータ分析を用いて過小評価されている選手を移籍で獲得しチーム強化を図っていく。
著者の本書での目的は3つ。
1.フットボールにおける「データ分析の物語」を伝えること~著者自身の経験からデータ分析の進化とリバプールの成功を語ること
2.「フットボールを見る目」を変えること~データ分析における最重要コンセプトをいくつか説明しながら、それがプレミアリーグにどのような影響を与えてきたかをケーススタディを使って示すこと
3.フットボールにまつわる様々な問いに統計的思考を用いて答えること~リオネル・メッシはクリスチアーノ・ロナウドより優れた選手であるのか、ホームアドバンテージの大きさなど
主なモデル・概念
・ゴール期待値(Expected Goals)~各シュートがゴールとなる確率を数値化したもの
・ポゼッション・バリュー~ボールを保持しているときにそこからボールを失わずにゴールを決める確率
・シュート後ゴール確率(Posy-Strike Expected Goals)~その軌道のシュートがゴールになる確率
・ピッチ・コントロール~ピッチ上の任意の場所に誰よりも早く到達した人がその場所を支配する、という概念
これらを精緻に計測し、改良し、うんと能力を分けることにより、選手の能力、チームの実力を計測していく。
概念自体は1990年代から論文に発表されていたものが、データ処理能力の進化によって可能となり、理論も進化していった。
日本代表やJリーグのチームでこのデータ分析がどのぐらい活用されているのか、非常に気になるところ。
【原題】
How to Win the Premier League
【目次】
監修者序文
パート1 プレミアリーグで優勝する方法
第1章 最強チームへの道のり
第2章 私がデータ分析のプロになるまで
第3章 まだ来ぬ赤い夜明け――リバプールでの幕開けと苦闘
第4章 ヘビーメタル・フットボール――クロップ登場
第5章 大いなる成功――チーム史上初のプレミア制覇
パート2 誰も知らなかったサッカーの本当の仕組み
第6章 ギャンブルとデータ革命
第7章 「ゴール期待値」について正しく考察する
第8章 サッカーは「ポゼッション」で決まるのか
第9章 選手をどこまでも追いかけ、丸裸にせよ
第10章 「投資」のルール ――移籍金と年棒の裏にある真実
パート3 サッカーの「究極の疑問」を科学的に解く
第11章 「いい監督」「駄目な監督」はどう見分けるのか
第12章 史上最高の選手はクリスティアーノ・ロナウドかメッシか
第13章 シマウマは家畜化できない――なぜ移籍は失敗するのか
第14章 ホームとはゴール確率が30パーセント増す場所である
第15章 データは使い方を間違えると仇になる
第16章 統計データと原油――サッカーの未来はどうなる?
おわりに データ革命ブームにひと言
特別寄稿 日本語版に寄せて -
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スポーツライター・木崎伸也さんが書いたサッカー日本代表小説。YouTubeにもたくさん出演されていて、端切れの良い意見と観察眼にいつもサッカーを見る目を養ってもらっている。
挿絵は『GIANT KILLING』のツジトモさん。サッカーファンとして読むしかない。
発売は2018年9月で、それまでWeb連載されていたらしいので、ロシアワールドカップの予選や本戦と並行していたのだろう。ロストフの悲劇でベルギーに負けたところまでは描かれている。
舞台は2030年。2022年のカタール大会は出場できず、2026年の北米大会はベスト16に進んだ世界線で描かれている。
主人公はたくさん笑
メインはユベントス所属のFW上原と、東京ウェルディ所属の小高かな。
オラルジャパンは混迷の予選を経て、ワールドカップの出場を決めていた。しかしワールドカップの三ヶ月前、フランクフルトにて交通事故に会ってしまう。
監督の座を託されたのは、かつてオラルの下でコーチとして働いたことのあるノイマン。ドルトムントの監督を勇退し夏からパリサンジェルマンの監督になる予定だった。ワールドカップまで三ヶ月、どのようにチームを仕上げていくのか。
「80%の事実と20%の創作」とあるように、かなり踏み込んで書いていると思う。ワールドカップのスタメンがメディアに漏れた過去を踏まえ、苦言まで呈している。
戦術を元にした人間ドラマがまさにサッカーチームで面白い。どこでプレスに行くのか、引いて守るのかは今のところ日本代表の永遠のテーマとなっている。また日本人の気質である真面目すぎる問題にもメスを入れていて、何はOKで何は越権行為となるのかについて欧州のベーシックな考え方を日本で実現させるための難しさもひしひしと伝わってきた。
2025年、リバプール、アーセナル、バイエルンなどにも選手が所属していて、国内組が限りなく少なくなっていることは木崎さんも予想してなかったのかもしれない。 -
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ネタバレドイツ編の命運を握るチャリティマッチが描かれた3巻である。
今回もまた表と裏で物語が進行する、実に代理人稼業らしいドラマが見られる一巻になっている。
表でアクセントになっているのが、チームメイトの先輩アジア人であるヨンピョ。
どのチームでもそうだが、同国人や意思疎通しやすい関係の選手が居るかどうかは、移籍におけるかなり重要なポイントになる。
敵方代理人の契約選手ながら、ここでのヨンピョの振る舞いは爽やか極まりない。
初の公式戦参加で緊張する沼田選手は彼とのやり取りで奮起している。良いスポーツマンシップだろう。
そしてハーフタイム、遠地でひっそりと暮らすムシッチ監督のチームメイトからかつての売春スキャンダルの真実を聞かされた先崎は、監督へと真実を投じる。
その真実が監督に決断を促し、そして後半の幕が上がる。
表と裏の動きが試合という決定的な瞬間に繋がっていく展開は、非常に心地いいものがある。まさに代理人の物語だ。
そしてそこまでしても、結局選手が活躍できなければ元の木阿弥。
沼田選手が「死体の上を歩く」ほどの覚悟を決めたことで、物語は躍動する。
劇的なゲーム展開の直後の、下品な契約模様で物語はクローズ。
こうした落差の大きさもまさにこの作品らしいところだろう。
今回も楽しませていただいた。星五つで評価したい。
内容的に二倍量を要求する構造だけに、演出はわりあいシンプルなのだが、魅せ方が上手い作品だ。次もどうなるのか楽しみにしたい。 -
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ネタバレ先崎と因縁を持ち、対立するドイツ人代理人ラルフ・シュバルツが登場する2巻である。
フロント主導でドイツ二部アルスターSVは沼田選手を獲得したが(1巻の#01)、そこに横やりを入れたのがこの男である。
ラルフ・シュバルツは、実際にドイツへと日本人選手を引き入れた実在の代理人をモデルにしたキャラクターであるそうだ。
要は長谷部選手や香川選手といった若き才能を見抜き、売り込んでくれた人物である。
そうした人物がこうして明確に悪役として描かれているというのも、なかなか興味深い描き方である。
彼へのやっかみ交じりの批判を踏まえてのデザインのようだが、やはり一筋縄ではいかない世界なのだろう。
シュバルツによる選手市場の独占がもたらす問題が「癒着」である点は、アルスターSVのSDによって巻の中間で語られている。
その支配体制に楔を打つべく、先崎はアルスターSV監督のムシッチ監督に直談判し、戦術変更の提案をする。
その上で、運命の決戦となるチャリティマッチ(その結果によって沼田の契約締結の合否が決まる)の目前、先崎はリサの案を拾って騒動を企てて……。
と言った形で、スキャンダラスな物語の中で、サッカー面も充実して描かれているのが特徴的な一巻である。
シュバルツの支配体制が成立した経緯が物語後半では明かされ、さらなる真実が明かされる目前で物語はクローズされている。
リアルタイムで動くサッカーの現場と裏が同時に描かれたダイナミズムは素晴らしい。
今回も星五つで評価したい。
現実のグロテスクさを描きながら、それがエンタメ的な盛り上がりに昇華されてあるのは素晴らしいの一言だ。楽しませていただいている。 -
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ネタバレ裏金、キックバック、脅迫、裏切り――。
薄々サッカーファンも気付き始めている、そんなサッカー界で暗躍する代理人の稼業を描いた物語シリーズの一巻である。
同じくサッカー代理人を描いた能田達規さんの「となりの代理人」が表の代理人を描いているとすれば、こちらは裏の代理人を描く物語になる。
スポーツライターの木崎伸也氏が原作となり、サッカー界の実相が暴かれるような内容だ。
国連で働きたい夢を抱えながら、足踏みする主人公・夏目リサがサッカー代理人業のインターンに合格したところから物語は始まる。
彼女を雇うのは金満代理人と悪名高き先崎恭介。
彼はリサを従えて、テストすると言い、この業界の様々な旧悪を眼前に突き付けていく。
そして彼女に「どう思う?」と問うのだ。
あたかも読者にまで問いかけるかのように。
裏金でアンダー世代代表の親善試合の招集される権利を買い、選手獲得のためにキックバックを約束する。
代理人業の(我々ですら耳にするような)よくある出来事に対して、彼女は真摯に立ち向かっている。
その姿勢こそが物語の軸であり、我々の持つ視点を常にスキャンダラスな世界にぶつけてくれている。
そんな彼女もまた、身内がスキャンダルに絡んだ事実を示唆し。
第一話で契約を結んだ日本人選手・沼田がドイツ移籍でトラブルを抱えた事実をクローズにおいてこの物語は終えられている。
スキャンダラスな世界をエンタメに昇華している、興味深いシリーズである。
大きな謎も柱として用意してあり、主人公の二人が謎へと向かっていく物語構成もまた良い。
大変楽しませていただいた。星五つで評価し、シリーズの刊行に期待したい作品である。