あらすじ
フットボール代理人。彼らは選手に代わり契約や移籍を執り行い、スター選手の移籍を実現させると天文学的な金額を動かすことも。サッカー選手の兄を持つ女子大生の夏目リサは「金の亡者」と悪名高い代理人・先崎恭介の事務所のインターンとして採用される。それをきっかけにリサは魑魅魍魎の世界へ踏み出した。試合に出たい選手、戦力が欲しいクラブ、その間をつなぐ代理人―。日本人選手の海外移籍、自分の野望とクラブへの恩義に揺れる選手に代理人は何を語るか。若手ブラジル人選手獲得の裏で会長と代理人の間で動く黒いお金、果たして正義はどこにあるのか。業界騒然、フットボールを裏から牛耳る代理人の真の姿を描く。サッカー界の事情通と気鋭のサッカー漫画家のコンビが贈る第1巻。
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Posted by ブクログ
裏金、キックバック、脅迫、裏切り――。
薄々サッカーファンも気付き始めている、そんなサッカー界で暗躍する代理人の稼業を描いた物語シリーズの一巻である。
同じくサッカー代理人を描いた能田達規さんの「となりの代理人」が表の代理人を描いているとすれば、こちらは裏の代理人を描く物語になる。
スポーツライターの木崎伸也氏が原作となり、サッカー界の実相が暴かれるような内容だ。
国連で働きたい夢を抱えながら、足踏みする主人公・夏目リサがサッカー代理人業のインターンに合格したところから物語は始まる。
彼女を雇うのは金満代理人と悪名高き先崎恭介。
彼はリサを従えて、テストすると言い、この業界の様々な旧悪を眼前に突き付けていく。
そして彼女に「どう思う?」と問うのだ。
あたかも読者にまで問いかけるかのように。
裏金でアンダー世代代表の親善試合の招集される権利を買い、選手獲得のためにキックバックを約束する。
代理人業の(我々ですら耳にするような)よくある出来事に対して、彼女は真摯に立ち向かっている。
その姿勢こそが物語の軸であり、我々の持つ視点を常にスキャンダラスな世界にぶつけてくれている。
そんな彼女もまた、身内がスキャンダルに絡んだ事実を示唆し。
第一話で契約を結んだ日本人選手・沼田がドイツ移籍でトラブルを抱えた事実をクローズにおいてこの物語は終えられている。
スキャンダラスな世界をエンタメに昇華している、興味深いシリーズである。
大きな謎も柱として用意してあり、主人公の二人が謎へと向かっていく物語構成もまた良い。
大変楽しませていただいた。星五つで評価し、シリーズの刊行に期待したい作品である。
新鮮!
サッカーマンガも、選手自身が主人公だった時代から、監督が主人公となる作品が生まれてきた。
本作はさらに進んで、「代理人」が主人公。
これは非常に新しい。
表の面だけでなく、裏の面も取り扱う…というか、むしろその裏の面がメインとして扱っているのも斬新。
こういう世界、考えれば当然存在するだろうと思われるが、指摘されるまでは深く考えなかった世界。
一方で、そちらがメインになっているだけに、全体的に「陰」の強い作品になってしまっている。
主人公のアシスタントが明るく、また選手たちも明るく熱い面を出すことでカバーしようとして入るが、やはり全体的に暗い印象は否めず、ドロドロ感があふれる。
これは、スポーツマンガとしてはマイナスなんじゃないだろうか?
絵も、勢いはあるけれど内面を強調するあまりかなりデフォルメされたシーンも多い。
そのあたりを気にするか、気にしないかで本作の評価というか、感想は大きく変わってくると思う。
個人的にはちょっと気になったので評価は平均点まで。