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Posted by ブクログ
先崎と因縁を持ち、対立するドイツ人代理人ラルフ・シュバルツが登場する2巻である。
フロント主導でドイツ二部アルスターSVは沼田選手を獲得したが(1巻の#01)、そこに横やりを入れたのがこの男である。
ラルフ・シュバルツは、実際にドイツへと日本人選手を引き入れた実在の代理人をモデルにしたキャラクターであるそうだ。
要は長谷部選手や香川選手といった若き才能を見抜き、売り込んでくれた人物である。
そうした人物がこうして明確に悪役として描かれているというのも、なかなか興味深い描き方である。
彼へのやっかみ交じりの批判を踏まえてのデザインのようだが、やはり一筋縄ではいかない世界なのだろう。
シュバルツによる選手市場の独占がもたらす問題が「癒着」である点は、アルスターSVのSDによって巻の中間で語られている。
その支配体制に楔を打つべく、先崎はアルスターSV監督のムシッチ監督に直談判し、戦術変更の提案をする。
その上で、運命の決戦となるチャリティマッチ(その結果によって沼田の契約締結の合否が決まる)の目前、先崎はリサの案を拾って騒動を企てて……。
と言った形で、スキャンダラスな物語の中で、サッカー面も充実して描かれているのが特徴的な一巻である。
シュバルツの支配体制が成立した経緯が物語後半では明かされ、さらなる真実が明かされる目前で物語はクローズされている。
リアルタイムで動くサッカーの現場と裏が同時に描かれたダイナミズムは素晴らしい。
今回も星五つで評価したい。
現実のグロテスクさを描きながら、それがエンタメ的な盛り上がりに昇華されてあるのは素晴らしいの一言だ。楽しませていただいている。