水無田気流のレビュー一覧
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少し前に読んだ本だが、処分するにあたってざっと見直して、これほど日本社会の宿痾を浮き彫りにした本もないな、と改めて思った。
少子高齢化社会が到来していて、子供を生める社会にしないと立ちいかない―そんなこと、もう何十年も前から言われてきたのに、少子化の度合いはさらに高まっている。昔ながらの社会観、家族観からいつまでたっても抜け出せず、場当たり的な対応しかしてこなかったつけだ。男女平等やダイバーシティなどと掛け声は立派だが、男と女のありようはかつてなく広がり、双方にとって居心地のよくない時代になってしまった。
それがデータ分析に終わるのではなく、今の社会で子育てをしている視点からの問題提起があ -
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P114 日本の男性は国際比較からしても突出して「孤立化」リスクが高い。これは男性が就業時間以外の社会参加に乏しいという社会的背景による。
P119 男性も含めた雇用環境の再編が求められている。男性の働き方を全く変えないまま、社会の変化を女性のライフスタイルを変更するだけで対応しようとするやり方は既に限界を迎えている。
P182 日本人男子が「働きバチ」であるという神話は労働を有償労働のみ限定した場合にいえることで、無償労働を加えた総労働では男性ではアメリカ人男性が最も働いており、そのアメリカ人よりも長時間労働に従事しているのが日本人女性である。日本のワーキングマザーは世界一の働き者だが「暇だ -
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日経土曜面でコラムを担当している水無田女史の一冊。夫と妻は生涯を共にしても、生活は共にはしていない、という双方にそびえるベルリンの壁問題を扱う作品。結婚・出産・育児とキャリアの両立という難題を個人の力で現代日本で乗り切る事、超人であるという指摘に納得。良作。メモ。
(1)(とりわけ中高年層にとって)結婚とは金と安らぎの交換である。戦後の民主化と核家族化により作られた妻による癒しを当然視するイデオロギーに依っている。したがって昭和的価値観にそれ程共鳴しない30代より下の男性にはあまり通用しない。
(2) 地域にもよるが、日本人の未婚率は歴史を通して2割前後で推移して来た。農家で継ぐ畑のない次男坊 -
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“「居場所」のない男”とは何とも良いネーミングです。本書を読まなくとも新聞・雑誌やテレビなどで日本の30代〜50代の中年未婚男性が増えていることはわかることですが、著者の視点・切り口は読んでいてとても興味深かったでした。
男性は同性の友人には弱音を吐けず、配偶者がストレスの軽減のために果たしている役割がとても大きい。それゆえ男性の方が妻からのサポート効果が高く、結婚によって得られるメリットが大きい。また、女性は、孤立そのものには弱いが、ストレス軽減のためのサポート資源は男性より多い。
本書で著者が述べているように日本社会における男性の「就労第一主義」こそが社会的孤立の源泉となり世界一孤独な日本 -
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今日の社会であらゆる面で自由競争が標榜される一方実質的に女性が一人で子供を産み育てる自由は乏しい。それはこの国の女性が本当の意味では「生む自由」を手にしてはいない証左ではないか。
・「子供のいる世帯」の多数派は両親と18歳未満の未婚の子供から成る「標準世帯」である。家族政策もこの家族像を中心に作られてきた。近年はこの常識は崩れつつあり、一人親が着実に増加傾向である。
・2011年調べで日本の母子世帯は推計123万8千世帯、父子家庭は約22万3千世帯と推計されている。子供のいる世帯数は約1180世帯。子供のいる世帯のうち約12%はひとり親。8世帯に1世帯が一人親。
・保育の利用希望者はおおむね昼 -
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著者が「対談を終えて」のコメントにも書いたように、萩尾望都さんのプライヴェートなお話が聞けてよかった。就活の学生さん、本当の「貴重なお話」っていうのは、こういう話のことなんですよーーだそうですw
まあ皆さん酷い母親をお持ちで。私も機能不全家庭で育ちましたが、大して珍しい事ではなかったんだなと。また母親と距離を置きたいと思う事に罪悪感を感じなくてもよかったんだと今更ながら納得しました。水無田さんのように理路整然と考えていれば、もっと早くに楽になれたのかなと思いました。
母性は存在しない、精神分析的には男性は身体を持っていない、にはビックリ。
p152
信田 だからあんなメタボな身体でも平気でさ -
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2時間ほどかけて,さらっと『黒山もこもこ,抜けたら荒野』という奇抜なタイトルの本を通読する。あまりこういった社会学的な本は読まないのだけれど(読むと立ち直れなくなるため・・),著者の出身地が相模原というぼくにも馴染みがある「郊外」であること,そして個人史的な視点から語られていることから楽しく読めた。とくに,「腐女子」について書かれた第四章は面白かった。政治家の密室会談の「密室」に萌えるなんて,知らなかったわあ。でも気持ちはなんとなく分かる。考えてみれば政治ほど男性原理が強く働いている場はないかもしれない。でもその男性原理って,なんと儚く脆く危ういものだろうと最近思うのです,オトコの一人として。
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1970年生まれの詩人にして社会学者の女性が自分の成育史と重ねてバブルを体験することなく超氷河期→デフレという時代を読み解く本。社会学専攻だけにいろんなデータが用いられているが、なによりも個人の記憶に裏打ちされた内容が(若干世代は下だけれど)実感を持ってうなずける。私も一度くらいはバブルの恩恵を享受してみたかったよ!偉そうに晩婚化がどうの、少子化がどうのっていう人たちはこの本読んでみるといい。ついでにこの本のごく一部ですが、Boy's Love論としても面白い。本人は違うけれど友人には多かったというだけに視点が引いてて、BL読み手/書き手の自己弁護/開き直りに走ることも男たちが興味本