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この国には、巨大な時空間の歪みが存在している。
それは、サラリーマンと妻のあいだに横たわる、暗くて深い「時空の溝」に由来する。
この国で、多くの夫と妻はたとえ「生涯」を共にしても、「生活」を共にしてはいないのである。――
家庭で孤立する中高年、生涯未婚者増、年間約3万人の孤独死、産みたくても産めない「社会的不妊」……
「普通の幸せ」は、今なぜこれほどハードルが高いのか?
気鋭の社会学者が「時空間の歪み」をキーワードに、現代の男女の抱える問題を読み解く。
※以下、内容より抜粋
●「愛情ビジネス」に弱い中高年男性たち
●正統な男性性のあり方「覇権的男性性」が男性をも苦しめる
●職場・家庭で女性に期待される「感情労働」と“プロ彼女”
●生涯未婚率、孤独死リスクは圧倒的に男性が高い
●「暇な主婦」は幻想である
●ウーマノミクスと日本女性超人化計画
●日本の母は育児の手間が多く、責任も重い……
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Posted by ブクログ
少し前に読んだ本だが、処分するにあたってざっと見直して、これほど日本社会の宿痾を浮き彫りにした本もないな、と改めて思った。
少子高齢化社会が到来していて、子供を生める社会にしないと立ちいかない―そんなこと、もう何十年も前から言われてきたのに、少子化の度合いはさらに高まっている。昔ながらの社会観、家族観からいつまでたっても抜け出せず、場当たり的な対応しかしてこなかったつけだ。男女平等やダイバーシティなどと掛け声は立派だが、男と女のありようはかつてなく広がり、双方にとって居心地のよくない時代になってしまった。
それがデータ分析に終わるのではなく、今の社会で子育てをしている視点からの問題提起がある点が、類書と違うように思う。法制度や企業運営はもちろん、労働観や家族観のみならず、私たちの社会の公共性のあり方にまで著者は踏み込んでいく。
「生まないのが悪い」という時代錯誤的な考え方は論外だけれど、この本で指摘されているように、混んでいる電車にベビーカーが乗ってくると、ついその車両は避けてしまう、というようなことを自分もやっていて(さすがにお母さんの前で舌打ちするなどというデリカシーのないことはしないけれど)、公共性のあり方というのは、そういう姿勢にもかかわってくる話。男の関係貧困や孤独死問題など、自分にかかわるテーマもあって身につまされた。
Posted by ブクログ
P114 日本の男性は国際比較からしても突出して「孤立化」リスクが高い。これは男性が就業時間以外の社会参加に乏しいという社会的背景による。
P119 男性も含めた雇用環境の再編が求められている。男性の働き方を全く変えないまま、社会の変化を女性のライフスタイルを変更するだけで対応しようとするやり方は既に限界を迎えている。
P182 日本人男子が「働きバチ」であるという神話は労働を有償労働のみ限定した場合にいえることで、無償労働を加えた総労働では男性ではアメリカ人男性が最も働いており、そのアメリカ人よりも長時間労働に従事しているのが日本人女性である。日本のワーキングマザーは世界一の働き者だが「暇だと思われている」。
P149 今の日本に必要なのは「女性の活躍」以上に男性も含めた総合的な就労・家庭生活・地域コミュニティ・余暇のあり方の再編である。
P268 現在必要とされているのは、男性も含めた労働と家庭生活のあう方の再編である。単位時間あたりの生産性を高めかつ評価し、就労インセンティブを保ちつつ生活満足度を上げるためには、総合的な見直しが必要である。
政府が述べてきた「女性活躍」は、スーパーウーマンが飛来して問題を解決してくれることを待っていてはかなわない。そうではなく、今、就労の現場にいる普通の女性が、普通の男性と協業しその能力を発揮するための環境整備こそが求められている。
このためには、逆説的に「既存の男性の就労モデル」を疑い、問題を検証する必要がある。「居場所のない男」。この観点は、現状の男性の社会的地位や経済的優位性が、決して当の男性にとって幸福なものではないことを示している。
だから、女性の社会進出と男性の家庭・地域社会進出を是非とも推進することから始めてほしい。女性を企業のメンバーに加えると同時に、男性な地域社会のメンバーに加えることが必要である。このためには、旧来の「標準世帯のライフスタイル」な前提とした社会制度を見直し、全方位的な雇用環境の改善を行う必要がある。それこそが、今日の日本社会の巨大な「リビングにいる象」を正視し、少しずつ解体する方途であると信じる所以である。
Posted by ブクログ
日経土曜面でコラムを担当している水無田女史の一冊。夫と妻は生涯を共にしても、生活は共にはしていない、という双方にそびえるベルリンの壁問題を扱う作品。結婚・出産・育児とキャリアの両立という難題を個人の力で現代日本で乗り切る事、超人であるという指摘に納得。良作。メモ。
(1)(とりわけ中高年層にとって)結婚とは金と安らぎの交換である。戦後の民主化と核家族化により作られた妻による癒しを当然視するイデオロギーに依っている。したがって昭和的価値観にそれ程共鳴しない30代より下の男性にはあまり通用しない。
(2) 地域にもよるが、日本人の未婚率は歴史を通して2割前後で推移して来た。農家で継ぐ畑のない次男坊、三男坊などは結婚出来ないのも珍しくなかった。‥中には長屋住まいの未婚男性数名で遊女を一人妾として囲い妾シェアリングをしていた、という事まであった。
(3)引退する前から少しずつ地域コミュニティに参加しあるいは仕事以外の繋がりを積極的に作っていく事を心からお薦めしたい。日本の社会は男性の就労には積極的だが男性の幸福には無頓着。
(4)少し俯瞰して見れば、この国の政策は多くの問題を女性の時間を活用する事で解決しようと考えている。
(5)今の日本に必要なのは男性も含めた総合的な就労、家庭生活、地域コミュニティ、余暇のあり方の再編。
(6)家事を端的に減らす為に一番効果的であるのは家族の成員を減らす事。子どもを持たない選択はこれ以上家事時間を増やす事は不可能という女性の暗黙の心の叫び。
(7)女の子は大人にはなったらまだ結婚しないの?と言われ、結婚したら子供はまだと言われ、一人産んだら二人目はまだと言われ、人からあれこれ言われ続けます。でも離婚してしまえば、もう誰も言ってきません。
(8)私の幸せは自分一人で追求できても、女の幸せは難しい。
(9)仕事をする事以上に会社村の住人である事が求められる企業風土では標準的な会社員の働き方は妻に家事育児を丸投げの男性労働者が基本である。
Posted by ブクログ
“「居場所」のない男”とは何とも良いネーミングです。本書を読まなくとも新聞・雑誌やテレビなどで日本の30代〜50代の中年未婚男性が増えていることはわかることですが、著者の視点・切り口は読んでいてとても興味深かったでした。
男性は同性の友人には弱音を吐けず、配偶者がストレスの軽減のために果たしている役割がとても大きい。それゆえ男性の方が妻からのサポート効果が高く、結婚によって得られるメリットが大きい。また、女性は、孤立そのものには弱いが、ストレス軽減のためのサポート資源は男性より多い。
本書で著者が述べているように日本社会における男性の「就労第一主義」こそが社会的孤立の源泉となり世界一孤独な日本人男性を作り出していると本書読んでいて納得しました。日本の男性も女性のようにストレス軽減のためのサポート資源を持つように努力したいところです。
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