仲達志のレビュー一覧
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黒船、敗戦、バブル崩壊、3.11と多くの国難に見舞われながら、その度に立ち上がってきた日本という国と日本人の物語である。上下巻に分かれている。原題は『Bending Adversity: Japan and the Art of Survival』そのまま訳すと「災い転じて福となす:日本とその生き残りの芸術」といったところか。英語の他にも独、伊、仏、中国語などに翻訳されるようである。上巻では、3.11の地震と津波に襲われた被災地から物語ははじまる。そして、震災の時に日本人が見せた規範意識の高さから、話は「日本論」へと移っていく。本書の第一の特徴は著者が直接インタビューするなどして得てきた情報が
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ネタバレファイナンシャルタイムズの日本支局長を務めたイギリス人である著書が、現在の日本が彼の目にどう見えているかを描いている。
上巻では東日本震災、明治維新、敗戦からの復興、バブルとその崩壊、小泉劇場を扱う。多くのデータやインタビュー、著作を引用して、楽観・悲観どちらにも大きく偏らないよう気をつけている感じが伝わってくる。押し付けがましくなく、また突き放しもしない、ほど良い距離感で書かれていて参考になる。翻訳も読みやすくてよい。
はかなく消えゆくものに美しさを感じる感性は日本人の「文化的連想」で説明ができる、つまり生来的に日本人に固有のものであるという説明を持ち出す必要はないのではないか、という指摘に -
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有名無名を問わず、あらゆる階層の日本人への膨大なインタビューと、詳細な情報に基づき、著者の巧まざる好奇心の赴くままに、日本と日本人を論評した日本文明論。
失われた20年以降、自信を無くした日本人に、ちょっと楽観的かもしれないが、希望を持たせてくれる著述に好感を持ってしまう。
経済的衰退は避けられないかもしれないが、国民一人当たりで計算すると、現在でも中国人より平均して八倍裕福である、と著者は、励ましてくれる。そして、「日本が非欧米圏の中で最も早く近代化に成功し、先進国の生活水準に追いついたという点で卓越したモデルを提供している事実に変わりない。」と述べる。
さらに著者は、あとがきでこう助言して -
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600ページ超の大作。だが噂や憶測は皆無で、事実を基にしたGoogleの成長と混沌が描かれている。隠蔽主義のGoogleをよくぞここまで調べ上げたなというのが率直な感想。「クラウド」「ビッグデータ」がBuzzwordとして持て囃され、どこか上滑りな印象を受けるのは、その言葉を生み出したGoogle文化にあるのかもしれない。彼らは日々増えるデータと悪戦苦闘しながら、必然性の中でクラウド(Google流だとクラスターですね)やビッグデータという仕組みを生み出してきた。その本質を理解しない日本企業が真似ても上滑りに感じるわけだ。「常識を疑う」「既成にとらわれない」、そして徹底的に考える、その新しい組
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一般的に非常に洗練された企業に見えるgoogleを泥臭くと言うか、人間臭く描く事に成功している。あのgoogleも色々な壁に突き当たり、もがき苦しんでいるのかと思うと、googleに対する親しみもわくし、見方も変わってくる。googleはfacebookに追いかけられていると言うが、全くそんな事はないと思う。ネットを通じて真理というか、厳然とした世界を目指せば良い訳で、所詮学生の出会い系サイトに動じる必要はないはずなのに、オロオロしてしまう所が人間臭い。今の日本の状況を見ると、確かに優秀な若者が起業したりしているが、googleの本質は金儲けではなく、より崇高な物を目指している事を考えると、ま
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ネタバレノンフィクションよりもエンタメに振っていて、トム・カリンスキーのセガにおける物語といった感じ。
広報に力を入れて値段を安くしてと様々な事をするが、損得的な話は薄く。顧客やファンでない層からの評価も弱くて当時の雰囲気が掴みにくいというか。内部からだと見えない事が、内部をメインで書いているから、やっぱり見えない。
バンバン売れているのにセガ・オブ・ジャパンに何度も足を引っ張られて、それが嫌なら独立するなり本部と子会社の立場逆転するよう動けば良かったのにな。サードパーティに誘いをかけるも本命やハードが本部だよりだったり、それが出来る体制までにはなれてなかったのか。
PRが上手くて時勢を作れはした。が -
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【要約】
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【ノート】
・阪コミのtweetで面白そうと思った
・googleの始まりからgoogle+が始まった現在に至るまで、内部で何が議論され、何が起こっていたのかが分かる。・orkutやwaveの記述まである割にbaseへの記述がなかったような。
・まずやってみて後で謝るという哲学こそグーグルにせいこをもたらしてきた要因だった。アイディアは誕生して間もない赤ん坊のようなもの。周囲の厳しい環境を目の当たりにすれば赤ん坊がいきのびることなどとうてい無理に思える。(略)ここに腰が引けて何もしない企業と多くのことを成し遂げたグーグルのちがいがある、新しいことに挑戦しない方が無難だということ -
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上巻は日本の歴史を概観。日本人にとって、外国人が書いた日本史の意味は、日本の出来事の世界的な評価や、日本的行動を外から観察することにあるのだろう。
ドイツ帝国下の経済学者フリードリッヒ・リストは、保護関税を導入し、国内産業を育成するための補助金を交付する国家的経済計画を進めたアメリカを高く評価し、自著でドイツも同じような政策を採用すべきであると主張した。同書は日本語に翻訳され、明治のエリート層の間で広く読まれた。
明治政府が導入した義務教育は、農民に武士階級の美徳を混入させた。
20世紀まで生き残った明治の指導者たちが元老となって、枢密院などの機関で責任を問われることなく拒否権を行使する -
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ネタバレ"ツェルはペイジがどういう人間なのか初めてわかったような気がした。どうしたら目の前の人間を助けてあげられるかということより、10年後に人類に最大限の社会的インパクトを与えられる大がかりなサービスとは何か、ということで頭がいっぱいになってしまう。そういう人だった。" p384
"しかし、SNSは基本的に友人からの個人的な推薦やアドバイスのほうが全人類の英知とそれを代表するグーグルの検索エンジンより価値の高い情報を提供するという前提に基づいている。それはグーグルではまったく受け入れられない考え方だった。" p594
googleの最大の弱点は、技術のみ -
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通読したが、印象は上巻と余り変わらない。
ステレオタイプな日本人論から離れたというが、ステレオタイプ以外の何物でもないように感じる。
東アジアの隣国との関係において、共産党独裁の中国との関係はともかく、「同じ」民主主義国家である韓国との関係が悪いことが日本の歴史認識における特殊性を示す何かの指標であるかのような記述は、正に著者の浅薄な歴史認識を示す以外の何物でもない。
こうして西洋至上的な史観は上塗りされていく。
所々に現れる優越的な視点は、英国人特有の皮肉の表れと都合よく解釈されるのか?
NYTに代表される自称中立的な欧米ジャーナリズムの常套的論説に触れるには、最適かも知れない。