片野ゆかのレビュー一覧
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著者がこの本を書くきっかけになったラッキーハンターという引退競走馬との出会いから始まる。
その来し方が時系列を追って語られていくが、今は幸せになっていると分かっていても、彼の行く末を案じてこちらはハラハラドキドキ。
冒頭からぐっと読者の心を捕らえる、巧い掴み。
その後、著者が精力的な取材を通して馬に関する知識を急速に吸収し、また彼らを取り巻く境遇に思いを寄せて意識の段階で変革を遂げていく様が等身大の目線で綴られ、"引退競走馬をめぐる旅"というサブタイトルの通り、まさしく追体験しているかのよう。
取材対象者についても、馬たちの命を守らんと奮闘する人たちの活動が子細に、そして温かい眼差しでリポートされているので、読者が共感を抱きやすいと言えよう。
宮田朋典さんがディープインパクト産駒三兄弟のリトレーニングに取り組む軌跡は、紛れもなく前半のクライマックス。
後半でも、地道な取材に基づく興味深いトピックスの数々が、それらに携わる人たちのキャラクターとともに紹介されているが、雑誌連載をまとめたものなので詮無いこととは知りながら、構成的には一本調子でややまとまりに欠けたかなという印象がある。
通読して強く心に残るのは、競走馬がいかに特殊な環境で生きることを強いられているか、ということ。
改めて、競馬というものはなんと重い"原罪"を持っているのか…と鬱々とする。
犬や猫の保護活動に携わっている人たちの口から、"蛇口を止めないときりがない"という言葉をしばしば聞く。
経済的な観点において、既に一定のポジションを占めている競馬を今すぐなくすことは、著者も本書の中で指摘しているように不可能だが、愚かな人間なりに長いスパンでなすべきことを考えていくことはできる。
引退競走馬の行方について真剣に苦悩し、行動に移す人たちが少なくないことを知ることができたのは、非常に嬉しかった。
特に、富裕層でない一般的な会社員ながら、地方競馬で複数の馬を所有してきた林由真さんには心より敬服する。
四肢の骨折等を発症した馬を"予後不良"と言い、即座に安楽死処分としているこの業界の慣習に対しては、私も以前より疑念を抱いていたのだが、林さんのピュアな想いと熱意によって、やはり救える命はあるのだということが証明されたのはとりわけ印象的だ。
仮に競走馬として"死んだ"のであっても、走らなくていい世界で生きていけるのであれば、その環境を整えることは彼らを生み出した者たちの責務ではないのか。
ラッキーハンターは幸運にも恵まれたセカンドライフを送りつつあるが、世の中には"ラッキーハンターになれなかった"馬たちがたくさんいる。
そこに気付かせてくれる価値ある一冊だ。 -
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ネタバレ柴犬雑誌の元編集長とそのお仲間、愛犬達の楽しすぎる日々が綴られた作品です。
愛犬への愛情、わかるー!と共感するところ多数!
愛犬の歌を作って歌っているのって我が家だけじゃなかったのー、と思ったり、おしりのにおいを嗅ぐなんてマニアックにもほどがあるだろ!(肉球の臭いは時々嗅いでますが。。)とツッコミを入れたり、愛らしいふくちゃんをみて、ついニマニマしてしまったり、ひとりで読んでいるのに心の声が溢れてきてとにかく楽しい本でした。
柴犬さんは正直、誰にでも愛想のよいタイプではない場合が多いので、大好きな犬種ではなかったのですが、そんなこと関係ないですね。
犬はみ-んな愛すべき生き物です。。 -
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ネタバレ<目次>
プロローグ
第1章 狼に憧れた神童
第2章 白日荘のにぎやかな住人
第3章 動物文学に集う人々
第4章 愛犬の系譜
第5章 戦火のなかの動物たち
第6章 犬は笑うのか?
第7章 狼との対話
第8章 奇人先生の愛した犬たち
エピローグ
<内容>
戦前の日本には「奇人・変人」が数多いたようだ。南方熊楠然り、牧野富太郎然り…。この平岩米吉もその一人。彼らは裕福な家に生まれ、その財力で自由気ままに自分の興味を掘っていった。それだけで無く、ちゃんと成果を出したワケだ。米吉は犬の生態から狼やハイエナの生態まで。さらにちゃんとした動物文学の紹介まで。人口に膾炙したところでは、『シートン動物記』の紹介か。片野さんは「イヌ」など動物への視点が温かい。 -
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ネタバレ<目次>
第1章 突然だが、馬主になった
第2章 馬と生きる新しい仕組み
第3章 知られざるリトレーニングの世界
第4章 馬と暮らした日本人
第5章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第6章 ホースセラピーの力
第7章 旅して食べて馬を応援
第8章 社会が変わる交差点
<目次>
最近、テレビで競馬を見ることが増えた。決して賭けたりするわけでなく、走る馬が美しいことと、走っている最中の馬はなにを考えているのかを考えたりしているたからだ。この本で、そんなことの一端が知れたらと思ったが、それ以上の成果があった。著者は、動物系のノンフィクションを多く書いている人。前回は『平成犬バカ編集部』を読んだ。動物への優しい視点がよい。今回は、その競走馬のセカンドキャリア(引退後の世界)を追いかけた。有名な競走馬も「安楽死」の話をよく聞く。勝てない馬は引退後に屠殺されることも多いと聞いた。JRAなどが広報しないため、知らない人が多いのだ。この本に出てくる人たちは、そうさせずに、馬の余生(大体20~30歳まで生きるらしい)を幸せに過ごさせる努力をしているのだ。その振り幅は大きいが、近年アニマルセラピーの観点が広まり、競馬については、ゲームアプリ”馬娘”のおかげもあり、理解が深まっているようだ。馬は感性豊かで、人との共生も普通らしい。ただ体が大きい分、気をつけないと人に危害を加えてしまうわけだ。詳細は触れないが、もっと日常に馬がいる生活(江戸時代までは普通だった)が広がればいい。 -
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ネタバレ<目次>
第1章 崖っぷち男、最後の挑戦
第2章 めざせ⁉?『VOGUE』みたいな犬雑誌
第3章 お笑いに転じて、創刊号
第4章 ラブレターfrom柴犬
第5章 時をかける愛犬たち
第6章 書を捨てよ、犬を見よう
第7章 スタッフ犬、続々デビュー!
第8章 兄貴、星になる
第9章 クレームも、シモネタも
第10章 ダメな上司が犬をしつけにも失敗する5つの理由
第11章 涙のバースデー
第12章 戌年バブルがやってきた⁉
第13章 嗚呼、憧れのワンコ旅
第14章 インターネットと犬災害
第15章 シーバ、炎上
第16章 ニッポンの犬、変化する
第17章 福ちゃん、奇跡の生還!
第18章 我ら、犬バカ編集部員
<内容>
雑誌「SHI-BA」。今や辰巳出版の看板雑誌なのだが、それを作ったのはこの会社の落ちこぼれ編集部員。ただ彼は、バカの付く犬好きだった。ここから始まるお話。著者は、雑誌の話よりも日本の「犬現代史」が書きたかったのだが、調べても面白みに欠けていた。そこでちょっとだけ編集に携わったこの雑誌に、編集長に注目したわけだ。いまは文庫本になっているこの本(集英社文庫)。読みながら思わずニヤニヤした私も「犬バカ」⁉ -
Posted by ブクログ
「犬部!」以来、出ると読んでいる片野ゆかさんの新作。今回は、動物好きの著者でもこれまでほとんど縁がなかったという馬について。いつも通り、いやいつも以上に、へぇ~知らなかったなあということがたくさんあって興味深かった。
そもそも捕食動物である犬や猫と違って、馬は被食動物なのだということからして、言われてみれば確かに!と目が開かれる。だから基本的に臆病なのだ。体が大きいからそういうイメージがなかった。そうなのか、ということが次々と出てくる
・背中に人間が乗れる動物はごくわずかで、馬、象、ラクダくらい。
・前足近くに乗れるのは馬だけ。だからあまり揺れず乗り心地がいい。
・日本は世界一馬券が買われている国。公営も珍しい。
・レースの賞金(5着まで)は8割が馬主、残り2割の半分が調教師に渡される。調教師が重要。
・日本で「生産」される馬のほとんどはサラブレッドで、年間数千頭に及び、競走馬として活躍するのはその一部。
・競走馬の引退後は、多くが所在不明。
・公営競馬の(莫大な)収益は、畜産振興などに当てられ、欠かせない財源となっている。
馬って誰もが知ってはいるが、身近ではない。競馬についても、近年そのイメージが変わってきているとはいえ、ギャンブルのネガティブな印象はぬぐえない。大体サラブレッド自体、生き物として不自然じゃないかという感覚はわたしも持っていた。そういったところにも十分目を行き届かせつつ、丁寧な取材が積み重ねられていて、具体的で実感を伴ったものになっていると思う。
かつては、引退競走馬については業界内で口にすることもタブーだったそうだ。近年その状況が大きく変わっていこうとしていて、まさに取材をする過程でダイナミックな動きがあり、そのことへの著者の驚きと嬉しさがストレートに伝わってくる。「犬部!」などの他の著作でもそうだが、片野ゆかさんの書かれるものには一本芯が通っていて、それは行動する人間への信頼だ。
「社会問題を考える際、その課題があまりに深刻すぎたり大きすぎたりすると無力感におそわれ、個人的に行動することは無意味と感じてしまう人は少なくない」
「だが社会問題が世間で注目され、改善へ向かうムーブメントに至った実例に目を向ければ、その原点には今できることを考え、行動した人がかならず存在している。同調圧力の強い社会では、こうした行動や発言を疎ましく思う人もいるが、それでも活動を継続させることで多くの賛同者を集め、それが世論や社会を動かす力になった例は数え切れない」
本当にそうだと思う。本書には、馬が好きで、行き場をなくした馬たちに何とか安息の地を与えたいと奮闘する人たちが出てくる。目の前の馬だけでも救いたいという必死の思いが、やがて事態を動かす力になっていくさまには、心を動かされるものがある。励まされる一冊だった。
・表紙の馬は著者が一口馬主になっているラッキーハンター。すごーくいい表情。
・著者の「馬ってかわいい!」という気持ちがあふれていて、そこも読みどころ。
・片野さんは犬好きで、馬と犬に共通点を感じている。どっちもカシコイ系。わたしはどっちかっていうと、コイツは何を考えてるのかいやたぶん何も考えてないだろタイプの牛や猫が好き。(猫好きの反論可)
・よく思うのだが、こと動物に関する議論が、しばしば感情的でヒステリックな応酬になってしまうのはなぜなのか。
・とか言いつつ、自分も実は、一部の人だとはわかっているけれど、みんなが動物(特に犬)好きだとは限らないということを理解しない人たちのせいで、犬好き一般に警戒心があり苦手にしている。 -
Posted by ブクログ
引退馬のキャリア形成に関する言説は昨今取り沙汰されるが、その中での多様な取り組みに関して内側に入り込んで取材が重ねられていて勉強になる。
拡がる支援の手や経済システムの新たな構築が、いくらかでも行方不明となり得た引退馬のその後を紡いでいくことに一役買っているのは間違いない。
旧態然とした体制に否を唱える各々の活動者が理念を掲げ、それらに触れ拡散する熱に筆者も加わっているのは、それがひいては読者のもとにも届くことで理想の成就への一助となりうるだろうが
コロナ禍を経て経済全体に軋みが生じた現今では、経済合理性の元で、一筋縄でいかない課題があることも、取り上げられた施設のその後をSNSなどから拾い上げてみると考えさせられる。 -
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犬が大好きだ。
幼稚園の頃は、毎日30分は近所の秋田犬をフェンス越しに撫でていたし、小学生の頃は実家で柴犬とポメラニアンを飼っていた。そして自宅を建ててからは、ずっと大型犬が家族の一員だ。現在は二代目。
なので「犬」と付く本が目に入ったら基本的に読む。そこで本書。「Shi-Ba」という日本犬(柴犬メイン)雑誌の誕生から現在までの約20年を追ったノンフィクション。実はそのことを知らずにページを開いてしまった。そしてちょっぴりがっくりした。実は年齢を重ねるごとに小型犬に興味が持てなくなっているのだ。
「柴犬か……。無愛想でちびっこいしなぁ」と思いながらも、せっかく読みはじめたのだからと、半ば無理やり文章を追った。
ところが追えば追うほど、ぐんぐん引き込まれていく。その「熱さ」にだ。同雑誌の編集長は、根っからの犬好きではない。しかし、新築一戸建てを購入したことをきっかけに柴犬を迎えることになる。するとしばらくして犬バカ愛が爆発。新築住宅をどんなに壊されても許し、自分の欲望のままに突然愛犬を抱きしめる。そして挙句の果てには、愛犬のテーマソングを作詞作曲してしまう。
「えっ、そんなことするのオレだけじゃなかったの!?」
そんな描写の連発だった。「やっぱり」「そうそう」「がはははっ」と共感の嵐。犬好きの気持ちを見事に活写している。もう犬種の好みなんてどうでもいい!
編集長をはじめとする登場人物の異常ぶりは賞賛に値する。同時にそれを臨場感あふれる筆致で描く作者の力量もすばらしい。
なお、著者は「おわりに」で「犬の現代史を書きたくて、同雑誌を題材にした」と書いているが、雑誌の内容が面白すぎて現代史部分が浮いて感じることがあった。そこが残念(勉強にはなったけど)。なので惜しくも☆5にはならなかった。 -
Posted by ブクログ
保健所の犬や猫を引き取って飼うことだけが良いことじゃない。ちゃんと飼えない人たちが、引き取って再度保健所に返されることがないようにすることが、動物たちにとっての幸せじゃないのかと書いてあり、なるほどと思った。野良犬は狂犬病の予防から保護、捕獲しなければならないって初めて知った。猫はそういった法律がないけど、野良猫による地域の被害があることもある。猫は1年で70匹くらい産むらしく、飼い主がいない猫を増やさないために、不妊手術をすることが一般的になっている。人間の都合で勝手にそんな手術されるのはどうかなと思うが、そのせいで野生で生きる力もないのに捨てられることと天秤に掛けると悩む。なにが動物たち人間にとって良いことなのか、人それぞれの価値観があるからこれが正解とは言えないな。でも、今のペット業界が無責任な飼い主に動物を売り、不幸せな動物たちを増やしていることはたしかなので、飼い主になる時には最後まで責任を持つという当たり前のことをしよう。